7. 六月十五日


六月十五日日曜日

 父はあれからは、もう全く私に関心を示さなくなってしまった。父にとっては、一応娘の気持ちも聞いたことだから、終わったことなのだろう。
 でも、この態度はすごくむかつく。何で自分の考えをぶつけてこないんだ。父だって、自分の娘にはこうなって欲しいという夢みたいなものがあるはずだ。こんな私に言いたいことはあるはずだ。何で自分の言いたいことをいわないんだろう。父に好かれる娘になる気はないけど、自分の思いをもっと素直にぶつけて欲しいんだ。
 父はいつもこうなんだ。自分の気持ちや自分の意見が通りそうもないとわかると、すぐ黙ってしまう。すぐ自分の意見をひっこめてしまう。もっと自分の思った通りにふるまえって言いたくなる。・・・

 ここまで書いてみて、はっとした。
 私に父を責める資格はない。だって、私も自分の思った通りにふるまったことなどないからだ。自分のしたいことができないとわかると、その場ですぐ自分の考えを引っ込め、父や母や周りの者に気に入られるように行動してしまう。
 そう。私も自分自身を裏切っているんだ。裏切っている?。そう。裏切っているんだ。自分を偽っていると言ったほうが正確かもしれない。
 父もそうなのかもしれない。自分を偽り、そして心の中では、そんな自分にむかついているのかも?・・・・・。 ・・・。
 そうだ!。私がむかついているのは自分で自分を偽っている、私自身に対してなんだ。自分のやりたいと思ったこと、自分の好きなこと、自分の意見。それを押し通したことなどなく、いつも周りの人の思惑ばかり気にして、自分を裏切ってきた私。
 自分を偽っているうちに、何が自分にとって大切なのか、何を自分が好きなのか、つまり、自分自身が分からなくなっている自分に、私自身が嫌になってるのかもしれない。


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