テツandトモ

テツandトモを笑点で初めて見た時、誰かに似ているなあと思った。
もともとの設計が悪く、さらに錆び付いた頭ゆえに、ずっと思い出せないでいたのだが、やっとシナプスが接合したようだ。
嘉門達夫の嗚呼小市民。日常のすぐ忘れてしまうようなばつの悪いひとコマなどを再現して観客の「あー、ある、ある」という共感を得て笑わせる。テツandトモは、嘉門達夫の毒を抜き、身振りをつけた優等生版で本質は同じだと思う。
しかし、この笑いの後味は余り良くない。笑われる対象が私たち庶民自身であり、強くないものに対する嘲笑とまでは言わないけれども、強く悪い者を笑い飛ばすような反骨精神豊かなものではない。ビートたけしがのし上がっていった時も色んな建前ばかり強調される社会に対して「世の中は弱肉強食なんだよ」という現実に開き直って共感を取り付けたのではないかと考えているが、こういった精神にも通じてしまっているのではないか。
この手の芸は強い者のまやかしを暴く時にこそ本来の力を発揮する。現実社会でもネタに困らないはずだ。例えば「陸空海軍を持たないといっているのに自衛隊があるのなんでだろう」とか「小学生には約束を守れと教えているのに憲法を守れないのなんでだろう」とか「大国はいいが北朝鮮の核兵器がだめなの何でだろう(核兵器は全てだめだと思っています)」とか「福祉のために消費税を上げるというけれど所得税は何のために使われているのだろう」とか「骨太方針というけれど日米地位協定では骨無放心になってしまうのなんでだろう」とか・・・。でも、こんな芸をやったら直ぐにテレビから追放されるのだろうな。辛口の芸人出てこないかなあ。いるんだけれど出れないんだろうなあ。(2003/7/21)