１．遺伝子による生物種分離の概念
（１）染色体とＤＮＡ
真核生物が持つ染色体はその形状や大きさ、数に違いがあり、生物種を分離可能な一つのマーカーであると考えられる。 しかしながら染色体は、近縁関係や系統関係を必ずしも的確に表現する手段としてふさわしくなく、更にはこれらを抽出し て観察するためには多くの経験と労力を必要することから、生物種を分離する手段としては普及してこなかった。
すべての生物の再生産は『遺伝子』を情報源に行われている。ほとんどの生物の『遺伝子』はＤＮＡである。この遺伝子 の情報がすべて揃ったものをゲノムと言い、幾つかの生物種ではその配列が解読されている。染色体はこのゲノムＤＮＡが 編み合わさって立体構造をとったものに他ならず、染色体そのものからはＤＮＡの情報は得られない。
（２）塩基配列
遺伝子の表現方法は、ＤＮＡ一本鎖から突き出るトゲ構造の『有機塩基』の配列として表現される。この有機塩基には Ａ（アデニン）、Ｇ（グアニン）、Ｃ（シトシン）、Ｔ（チミン）の４つがあり、４つの記号の組み合わせが遺伝子情報 を司っている。一般に言うＤＮＡの塩基配列とはこのことで、例えば大腸菌で400万個の塩基配列が存在する。表現方法は １個をmer（マー）と呼び、大きさではbp（ベースペアー）と呼ぶ。
Ａ，Ｇ，Ｃ，Ｔのうち、ＡはＴと、ＧはＣと水素結合によって結びつく性質（相補性）があり、正確な２本鎖を形成する。 例えば下のような塩基配列を考えると、
Ａ Ｇ Ｔ Ｃ Ｔ Ｔ Ｇ Ａ
これに対応する相補的塩基配列は、
Ｔ Ｃ Ａ Ｇ Ａ Ａ Ｃ Ｔ
となり、どちらも同じ内容を表現していることになる。また、ＤＮＡの２重螺旋上でもこのように配置されていることになる。
Ａ Ｇ Ｔ Ｃ Ｔ Ｔ Ｇ Ａ
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼
Ｔ Ｃ Ａ Ｇ Ａ Ａ Ｃ Ｔ
（３）断片情報
ゲノムＤＮＡの大きさはとてつもなく大きく、これらすべてを解読するには多大の労力と時間が必要である。前述の大腸菌 で400万塩基配列（４Ｍｂｐ）であり、ショウジョウバエで180Mbp、イネで400MBPと考えられている。ヒトの場合では3000Mbp （30億塩基対）である。しかしながらゲノムの持つ情報は、生命の発生から再生産、死に至るまでのすべての内容を含んでいる ため、個々の目的においては不必要な情報である。ゲノム全体ではなく、むしろ目的とする情報が断片として利用できればこれ に越したことは無いのである。
２種の大腸菌の分類について考えてみる。大腸菌ゲノムを４Mbpとし、この内それぞれの種の100bpまでが既知であったとする。 100配列の内１つでも配列に差異が認められれば理論上はＤＮＡを解析することで２種の分類が可能となる（下の太字ように）。
acgctggcgg cgtgcctaac acatgcaagt cgaacgggaa tcttcggatt acgggtgagt aacgcgtaag aatctaactt caggacgggg acaacagttg
acgctggcgg cgtgcctaac acatgcaagt cgaacgggaa tcttcggatt acgggtgagg aacgcgtaag aatctaactt caggacgggg acaacagttg
実際には１配列の違いを感知することはできないので、異なる幾つかの部分を含む部分を増幅し、これを電気泳動にかけて分 子量の違いを見ることで分類する。このＤＮＡ断片増幅技術をＰＣＲと呼ぶ。
２．ＰＣＲについて
近年、犯罪捜査や親子鑑定で有名になった技法がＰＣＲである。ＰＣＲとは『Polymerase Chain Reaction』のことで、鋳型 ＤＮＡを相補的に再生する酵素ポリメラーゼの作用を連鎖的に起こすことで、目的とするＤＮＡ断片を短時間で100万倍以上にする手法である。
ＰＣＲは目的に応じていくつかの処方を組み合わせて行うため、XX−ＰＣＲのように多くの方法に分かれている。しかしながら、 操作の基本は共通である。大まかな流れは以下のようである。
（１）目的決定
ＰＣＲはゲノムＤＮＡを解析するような総合手法ではなく、約１kbp程度までのＤＮＡ断片を短時間に増幅する手法である。 従って、『何を』、『どのように』求めるかはすべてユーザーが決定しなければならない。例えば親子鑑定であれば、ミトコ ンドリアＤＮＡに潜むＳＴＲ（short tandem repeat）を増幅するとか、組換え体の遺伝子発現部位を確認するためにプラス ミッドＤＮＡを抽出・増幅するとかである。目的によって準備内容や操作方法が大きく異なってくる。また、ＤＮＡやＲＮＡ の塩基配列が全く未知の生物については予備操作によって知っておかなければならないことが多くある。その意味では決して 夢の解析機ではない。遺伝子や酵素反応について十分な予備知識がなければ全く利用できない技術である。
（２）鋳型遺伝子の抽出
ＰＣＲが増幅できる遺伝子はＤＮＡである。ＲＮＡを目的とする場合はＲＮＡを抽出するが、逆転写酵素によってＤＮＡの形 に翻訳しておく。いずれもターゲットとなるＤＮＡを含む遺伝子を抽出する必要がある。
（３）プライマーの設計
ＰＣＲは目的とするＤＮＡ断片を大量増殖させることが可能であるが、この増幅部位を命令するための鍵（プライマー）が最低 ２つ必要となる。ＰＣＲはプライマーが付着した部位がら反対方向に鋳型ＤＮＡと同じ塩基配列を再生していく。
プライマーとは5'末端にリン酸基、3'末端に水酸基を持つ合成遺伝子で、目的に合わせて通常20mer程度のものを設計、合成する。 ＰＣＲの第一段階でこれを鋳型ＤＮＡに付着（アニール）させてＤＮＡ増幅が開始される。
今仮に下のような小さなＤＮＡ断片の赤い部分を含む部分を大量に増幅したいとする。この場合、プライマーは5'末から3'末方向 へと設計するので一つ目のプライマーは最初の20merと同じ配列を持つ【5'-gcatcggagacagaaacagg-3'】と設計して合成する。
gcatcggaga cagaaacagg gagtcaaaca ctaattgctt atgttgtggg tcagtctcaa gaaggggaac tcttgacgac
次に二つ目のプライマーは最後の20merを5'末から3'末方向へと設計することになるが、複製するＤＮＡ破片はもともと相補的に 結合しているもう一本の方である。この配列は下の図の下の列の様である。
5'⇒⇒
gcatcggaga cagaaacagg gagtcaaaca ctaattgctt atgttgtggg tcagtctcaa gaaggggaac tcttgacgac
cgtagcctct gtctttgtcc ctcagtttgt gattaacgaa tacaacaccc agtcagagtt cttccccttg agaactgctg
←←5'
この場合のプライマーは右から左に設計するので、【3'-cttccccttgagaactgctg-5'】または
【5'-gtcgtcaagagttccccttc-3'】と設計して合成する。
実際のプライマーの大きさは上記例題とほとんど変わらないが、このように単純には決定できない。反応条件等を考慮しながら設計していく。
（４）電気泳動とパターンの作成
ＰＣＲ増幅された無数の遺伝子の断片は電気泳動によって分離することができる。ＤＮＡはマイナスに帯電しており、分子の大きさ によってゲル内を通過する速度が異なるため、ある一定の時間を置くと、分子の大きさ別に最初の場所からの特定の場所に集積する。 この時、ＰＣＲ増幅された分子は確実にゲル上にバンドを形成する。バンドの存在は、目的とするＤＮＡが試料中に存在したことを意 味するので、かなりシビアーな判定が可能となる。
増幅された断片は、目的に応じて制限酵素によって切断することが多い。制限酵素は塩基配列のどこを切断するかが明確であるので、 電気泳動に現れる複数のバンドのどれがどの塩基配列を示すかは明かとなる。
下の図は電気泳動パターンを模式化したものである。例えばカビ臭生産遺伝子などの特殊な遺伝子の配列を検出するためのＰＣＲを 行い、これが増幅された場合は、試料中にカビ臭生産遺伝子が存在したことが証明される（左の例）。また３種類の似通った遺伝子を 持つ生物の特定部位をＰＣＲ増幅し、制限酵素で数ヶ所を切断することで、ＤＮＡ断片の大きさに偏りが生じた場合、以後同じ方法に よって生物が分類できる（右の例）。
図１ 電気泳動パターンの模式（左：固有の遺伝子の検出 右：３種類の遺伝子比較）
３．遺伝子判定技術を利用した有害微生物検出の現状
（１）食中毒とその原因例
厚生省による平成10年度におけるわが国の原因別食中毒発生数を下表に示した。原因物質が判明しているうち、細菌を原因とする発生 件数が最も多く全体の90.2％を占める。ここに示すものは実際に発生した食中毒と言う『急性毒』の事例であるが、この他にもかなり問 題視されているものにクリプトスポリジウムやレジオネラがあり、淀川水系で問題となるカビ臭藍藻や木曽三川で問題となりつつある有 毒藍藻などの食中毒以外の有害微生物も多く知られている。
表１ 平成10年度における原因別食中毒発生数
|
原 因 名 |
件数 |
％ |
患者数 |
％ |
死者数 |
％ |
|
|
総 数 |
3,010 |
100.0 |
46,179 |
100.0 |
9 |
100.0 |
|
|
病因物質判明 |
2,905 |
96.5 |
43,071 |
93.3 |
9 |
100.0 |
|
|
病因物質不明 |
105 |
3.5 |
3,108 |
6.7 |
- |
- |
|
|
原 因 名 |
件数 |
％ |
患者数 |
％ |
死者数 |
％ |
|
|
病因物質判明数 |
2,905 |
100.0 |
43,071 |
100.0 |
9 |
100.0 |
|
|
細
菌 |
総 数 |
2,620 |
90.2 |
36,337 |
84.4 |
4 |
44.4 |
|
サルモネラ菌属 |
757 |
26.1 |
11,471 |
26.6 |
1 |
11.1 |
|
|
ぶどう球菌 |
85 |
2.9 |
1,924 |
4.5 |
- |
- |
|
|
ボツリヌス菌 |
1 |
0.0 |
18 |
0.0 |
- |
- |
|
|
腸炎ビブリオ |
839 |
28.9 |
12,318 |
28.6 |
- |
- |
|
|
腸管出血性大腸菌 |
16 |
0.6 |
183 |
0.4 |
3 |
33.3 |
|
|
その他の病原大腸菌 |
269 |
9.3 |
3,416 |
7.9 |
- |
- |
|
|
ウエルシュ菌 |
39 |
1.3 |
3,387 |
7.9 |
- |
- |
|
|
セレウス菌 |
20 |
0.7 |
704 |
1.6 |
- |
- |
|
|
エルシニア |
1 |
0.0 |
1 |
0.0 |
- |
- |
|
|
カンピロバクター |
553 |
19.0 |
2,114 |
4.9 |
- |
- |
|
|
ナグビブリオ |
1 |
0.0 |
1 |
0.0 |
- |
- |
|
|
その他の細菌 |
39 |
1.3 |
800 |
1.9 |
- |
- |
|
|
ウ イ ル ス |
総 数 |
123 |
4.2 |
5,213 |
12.1 |
- |
- |
|
小型球形ウイルス |
123 |
4.2 |
5,213 |
12.1 |
- |
- |
|
|
その他のウイルス |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
|
|
化 学 物 質 |
総 数 |
14 |
0.5 |
216 |
0.5 |
- |
- |
|
メタノール |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
|
|
その他 |
14 |
0.5 |
216 |
0.5 |
- |
- |
|
|
自 然 毒 |
総 数 |
147 |
5.1 |
524 |
1.2 |
5 |
55.6 |
|
植物性自然毒 |
114 |
3.9 |
461 |
1.1 |
1 |
11.1 |
|
|
動物性自然毒 |
33 |
1.1 |
63 |
0.1 |
4 |
44.4 |
|
|
そ の 他 |
1 |
0.0 |
781 |
1.8 |
- |
- |
|
ここ数年、遺伝子判定技術を利用した食中毒菌の検出事例が増えつつあるが、従来の培養法や検鏡法が未だ使用されており、新技術へ の転換は必ずしもスムーズには進んでいない。この理由としては、遺伝子判定技術そのものは発達しているものの、この世界への知識的 転換が難しいことが挙げられる。遺伝子判定の施設の導入は比較的たやすいが、これらの解析に携わる技術者の再教育の問題がある。問 題がシビアなるが故の課題と言えよう。
急性毒をもたらさない『カビ臭』原因生物の特定等についての利用の現状は不明である。少なくとも当社の認識する範囲では未だ応用 されていないと考えている。この理由については後述する。
（３）商品化された技術について
下表にタカラバイオが販売している食中毒菌検出キット（遺伝子判定）を示した。商品説明が本論ではないので詳細は省くが、対象とな る食中毒菌を検出するための商品の大半は【プライマーセット】である。この理由は『２．ＰＣＲについて』で概説したように、遺伝 子解析における基本はプライマーと呼ばれるＤＮＡ増幅スイッチの設計と合成であり、その後に続くＰＣＲや電気泳動の操作は機械的な問 題であり、いわゆる技術の達成度はかなり高い。プライマーの設計にはその基となる『目的』、『配列データの入手』、『設計』、『合成』、 『確認』までが必要とされ、あたかも建築物の設計のようである。
検出遺伝子の欄を見て分かることであるが、食中毒のように有害な微生物では生物種そのものをターゲットとせず、有害作用を及ぼす遺伝 子に直接アプローチしている。従って、ここに紹介する商品は食中毒菌を検出するキットではなく、食中毒を引き起こす毒素合成遺伝子を検 出していることになる。結果的な意味合いはニアリーイコールである。検出可能な遺伝子の数の２倍のプライマーが設計・合成されているわ けである。
表２ タカラバイオが販売している食中毒菌検出キット
|
対 象 菌 |
商 品 名 |
検 出 遺 伝 子 |
|
ウェルシュ菌 |
ウェルシュ菌検出用Primer Set |
ウェルシュ菌毒素遺伝子 |
|
コレラ菌 |
コレラ毒素検出用Primer Set |
コレラ毒素遺伝子（CT） |
|
サルモネラ菌 |
サルモネラ菌One Step PCR Screening Kit |
サルモネラ菌侵入性因子関連遺伝子（invA） |
|
ボツリヌス菌 |
ボツリヌス菌検出用Primer Set |
ボツリヌスA型毒素遺伝子 ボツリヌスB型毒素遺伝子 ボツリヌスC型毒素遺伝子 ボツリヌスD型毒素遺伝子 ボツリヌスE型毒素遺伝子 ボツリヌスF型毒素遺伝子 ボツリヌスG型毒素遺伝子 |
|
黄色ブドウ球菌 |
黄色ブドウ球菌検出用Primer Set |
エンテロトキシンA遺伝子 エンテロトキシンB遺伝子 エンテロトキシンC遺伝子 エンテロトキシンD遺伝子 エンテロトキシンE遺伝子 毒素性ショック症候群毒素1型遺伝子（TSST-1） |
|
赤痢菌および腸管侵入性大腸菌 |
赤痢菌および腸管侵入性大腸菌（EIEC）検出用Primer Set |
invE遺伝子（病原遺伝子） iipaH遺伝子（病原遺伝子） |
|
腸炎ビブリオ |
腸炎ビブリオ検出用Primer Set |
耐熱性溶血毒遺伝子 耐熱性溶血毒類似毒素1型遺伝子 耐熱性溶血毒類似毒素1型および2型遺伝子 |
|
腸管出血性大腸菌 |
腸管出血性大腸菌用Primer Set |
ベロ毒素1型遺伝子 ベロ毒素2型遺伝子 ベロ毒素2型の変異型遺伝子 |
|
毒素原性大腸菌 |
毒素原性大腸菌検出用Primer Set |
易熱性エンテロトキシン遺伝子 （LT遺伝子） ヒト型耐熱性エンテロトキシン遺伝子（STh遺伝子） ブタ型耐熱性エンテロトキシン遺伝子（STp遺伝子） |
|
特殊細菌 |
特殊細菌検出用Positive Control Template |
PCR反応が正常に行われているかを確認するためのポジティブコントロールテンプレート |
４．環境調査における微生物同定技術の現状と問題点
（１）細菌類
環境基準として定期監視項目に組み入れられている細菌類は『大腸菌群』のみである。一般に細菌類は顕微鏡による形態分類が不可能で あるため、外囲に対する反応や性質を試験する生理分類が用いられている。ここで用いられる大腸菌群とはEscherichia属 Citrobacter属 Enterobacter属Klebsiella属等の大腸内に共生または寄生する細菌類を総称した言葉で、O157のような特定の種を示す言葉ではない。この ことは、キンギョやコイ、フナ、メダカ等の魚類を『サカナ』と呼ぶ行為と何ら変わらない。一方、遺伝子組換えで有名になった大腸菌は Escherichia coliで人間の大腸には不可欠な固有種である。Ｏ157はEscherichia coliの更に細分化した一種で、大腸菌の一種でもある。
大腸菌群が環境監視項目の一項目に加えられた理由は大腸菌群が病原性を持つからではなく、食中毒が発生した場合の糞便汚染経路の特 定やそれ以前の糞便汚染の可能性を知ることにある。このことは一般にはあまり理解されていない。それではなぜ最初から病原菌を監視せ ずに大腸菌群と言う漠然とした細菌群を監視項目にしたのかと言えば、上述のように細菌類は生理分類が採用されており、この同定には多 くの反応試験と時間を要すからである。例えば前出表の２−２にあるウエルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、ボツリヌス菌、黄色ブドウ 球菌等を定期監視項目に組み入れた場合、一滴の水の内、これらを分析するだけでも30万円程度の費用がかかるであろうし、同定試験の方 法が複雑であることから多くの誤認も生じることが予想される。更に言えば、現在の環境監視業務を担っている民間業者ではこれらの体制 を構築できない。要するに細菌類の同定分析は環境基準として成立しないと言うことである。従来の生理分類によらない確実かつ容易な分 析技術の確立が求められている。
（２）植物プランクトン（全般）
淡水域海水域に発生する植物プランクトンは環境監視項目として定められてはいない。この理由は定かでないが、植物プランクトンの同定 の現状は形態分類が専らである。顕微鏡による分類操作が主体であり、多くの生物群を一連の操作で同定・分類することから多くの経験が要 求され、更には結果が分析者によって異なってくる。化学分析のように方法の統一化ができない項目である。 一方、建設省や都道府県、電力会社などのダムを所有する機関や沿岸域を管轄する機関では水質監視の一環として定期的な植物プランクト ン監視を行っている。植物プランクトンの中にはカビ臭発生藻類や有毒藻類、赤潮藻類等が含まれており、富栄養化の監視や産業上、公衆衛 生上の監視としての必要性が高い。
植物プランクトンには多くの生物門が含まれ、その形状や性質も大きく異なることから分類操作上の問題点も多く、内容的にも多様である。
（３）植物プランクトン（カビ臭産生藻類）
水道水に異臭味やカビ臭を与える藻類は全国的に問題となっており、そのほとんどが種の特定が難しい藍藻類である。種の特定には藍藻分 類の専門スタッフを置く必要があるが、そのような専門家は全国的にも少なく、結果的に民間委託されても正確なデータを要求できない。更 には形態学的に種が特定できても、これがカビ臭を生産する株であるか否かは依然不明である。即ち、カビ臭藻類の正確な監視はこれまでの 形態分類による方法では不可能であることになる。従来の形態分類によらない確実かつ容易な分析技術の確立が求められている。
表３ わが国でカビ臭産生が確認された藍藻種
|
ジオスミン産生種 |
２−メチルイソボルネオール産生種 |
|
Anabaena macrospora Anabaena spiroides Aphanizomenon flos-aquae Oscillatoria agardhii Oscillatoria animalis Oscillatoria splendida Oscillatoria amoena Phormidium autumnale Schizothrix muellerii |
Oscillatoria cortiana Oscillatoria limnetica Oscillatoria geminata Oscillatoria tenuis Oscillatoria favosum Phormidium tenue |
（４）植物プランクトン（ミクロキスチン産生藻類）
現在水道水源中に存在する有毒物質にミクロキスチンやアナトキシンがある。ミクロキスチンは藍藻ミクロキスティス属が生産し、アナト キシンは藍藻アナベナ属が生産する毒素である。厚生省ではこれらの毒素を水道水基準に組み入れるか否かの検討に入っているが現在は組み 入れられていない。これらの毒素には構成アミノ酸の違いにより多くの誘導体が存在するが、ミクロキスチンは主として肝臓障害を、またア ナトキシンは神経毒性を有している。ミクロキスチンは特に低濃度における発癌性が認められており、今後更に注目されていくものと予想される。
これらの藍藻類の種の特定にはカビ臭藍藻と同様、藍藻分類の専門スタッフを置く必要があるが、そのような専門家は全国的にも少なく、 結果的に民間委託されても正確なデータを要求できない。更には形態学的に種が特定できても、これが毒物を生産する株であるか否かは依然 不明である。即ち、有毒藍藻類の正確な監視はこれまでの形態分類による方法では不可能であることになる。従来の形態分類によらない確実 かつ容易な分析技術の確立が求められている。
表４ 有毒あるいはその可能性が示唆されている藍藻類
|
藍 藻 種 名 |
|
Synecocystis sp. Synecococcus sp. Microcystis aeruginosa Microcystis viridis Coelasphaerium kutzingianum Gloeotrichia pisum Cylindrospermopsis raciborskii Aphanizomenon flos-aquae Nodularia spumigena Anabaena affinis Anabaena circinalis Anabaena cylindrica Anabaena flos-aquae Anabaena Lemmermanni Anabaena spiroides Anabaena torulosa Anabaena variabilis Anabaena venenosa Nostoc ellipsosporum Nostoc rivulae Oscillatoria agardii Oscillatoria raciborskii Anacystis montana |
（５）植物プランクトン（有毒赤潮）
時として沿岸域で大発生する赤潮生物の中には猛毒を有するものがある。赤潮の発生は多くの場合漁業被害として報道されるが、現実の話は そう簡単ではない。例えば沿岸域に普通に浮遊するProtoperidinium属やProtogonyaulax属などの生物は神経毒であるゴニオトキシンやサキシ トキシンを産生するものが多いが、これらの毒は神経伝達物質であるアセチルコリンの遊出を妨害する。アサリなどの軟体動物はこれらの物質 による神経毒の影響を受けないばかりでなく、植物プランクトンを餌として摂食し、毒物を体内に濃縮していくのである。これを知らずに食べ た不幸な市民は死に至るのである。毒の性質はオウム事件で有名になったサリンやボツリヌス菌の毒と同様である。
各都道府県の水産試験場ではこれらの監視体制を敷いているが、これがまたやっかいで、形態学的には有毒種であっても毒性が発現する株と しない株が存在するのである。所轄の都道府県では有毒の疑いのある植物プランクトンが警戒濃度に近づくとアサリなどの水産生物の出荷制限 をして警戒を呼びかける。あまり一般的ではないが、沿岸漁民にとっては常識である。有毒の有無が確実に分かる確実かつ容易な分析技術の確立 が求められている。
（６）植物プランクトン（同定不明種）
植物プランクトンの中で多くの種は固い細胞壁を持たないものがある。特にクリプト藻綱に属する大半の種や渦鞭毛藻綱に属する半数は生サ ンプルや特殊な固定液中でないと細胞形状を保てない。しかしながら一般の調査では植物プランクトンの固定にはホルマリンを用いる。ホルマ リンは安価かつ危険性が少ない薬物であるが、細胞の保存性には優れていない。かと言ってこれらの保存性を良くするための固定液は極めて危 険で、水泡の破裂した雫一滴で失明した例さえある。従って、ホルマリンで固定不可能かつ有害な植物プランクトンは大発生したり漁業被害が 発生するまでの間、その発達経過を監視することは極めて難しいことになる。ホルマリンによって破壊や収縮などのダメージを受けた生物の容易 な分析技術の確立が求められている。
５．一部実施例の紹介
５−１．Microcystis属数種のＤＮＡ塩基配列比較について
（１）ＤＮＡデータベース
既に調べられている遺伝子の塩基配列についてはＤＤＢＪやＳＲＳなどのデータベースがあり、生物分類学の基礎知識さえあれば簡単に検索、 入手が可能である。
（２）入手形態
下の図のパターンで入手が可能である。
図２ Microcystis sp. の遺伝子情報
（３）遺伝子比較
藍藻Microcystis aeruginosa（上段）とMicrocystis ichthyoblabe（下段）のＤＮＡ塩基配列を下図に示した。 配列の80番目以降は大きく異なっている。
001 aagggagacc taattcgggt ataagacgaa aaaatagtag tcgaaaccaa gaatcaatcc
001 aagggagacc taattcaggt aaaagacgaa aaaaaagtag tcgctaccaa gaatcaatcc
061 caaaaggtcg gaacgaggta tgtggctttc aaactaggtt ctgggttcat aaaagacctg
061 caaaaggtcg gagcgaggcg aaattggctt tcaaactagg ttctgggttc aaacaagacc
121 aatcaggaac aagggctatt agctcaggtg gttagagcgc acccctgata agggtgaggt
121 tgaatcagga acaagggcta ttagctcagg tggttagagc gcacccctga taagggtgag
181 ccctggttcg agtccaggat ggcccacctg cacaggtggc aaaaacaaag aaaagaagcg
181 gtccctggtt cgagtccagg atggcccacc tgcacaggtg gcaaaaacaa agaagcgagg
241 aggaatcagc accttatctt acttatatag taagagagaa tgctggctct gagtacagag
241 aatcagcacc ttatcttact gacatagtaa gagagaatgc tggctctgag taaagagtcc
301 tccagaggaa ccttgaaaac tgcatagagc taggtgaaaa agccaaaaaa gaagaccgca
301 agaggaacct tgaaaactgc atagagctag gtgaaaaagc caaaaaagaa gaccgcaa
図３ 藍藻Microcystis属２種のＤＮＡ塩基配列比較
５−２．ミクロキスチン同定塩基配列について
（１）ミクロキスチン合成酵素遺伝子の配列
Microcystis aeruginosa strain UWOCC 001におけるミクロキスチン合成酵素遺伝子の配列を下図に示した。
BASE COUNT 397 a 254 c 297 g 371 t ORIGIN
0001 gcatcggaga cagaaacagg gagtcaaaca ctaattgctt atgttgtggg tcagtctcaa
0061 gaaggggaac tcttgacgac ttcagaaaat gggcaattat tcgatgaaca aatcgggcaa
0121 tggcaaagcc tctataatca aatttacagc caaacatcgg cagattctca gggtatattt
0181 aatattgttg gctggaatag cagttacacg ggggaaccta tcccggctgc ccagatgcga
0241 gaatggctag atgataaagt taaggttatt ctggctcaaa aaccgaaaaa agttctggaa
0301 ataggttgtg gaaccgggtt aatattattc caagttgctc cccattgcca gtgttattgg
0361 ggaaccgata tctcatccgt tgccttagac catattcagc gaattaatca agaagggccg
0421 aagctagagc aagtcaggct attgcatagc acagccgata aatttgaggg tttggagtca
0481 gaaggattcg atacaattat ccttaactcg gttgtgcagt atttccccca tatagattac
0541 ttactgcggg ttttagaggg agctatcaag gtactaactc cgggggggtg tattttcctt
0601 ggagatgtgc gaaacttgca actcatggaa gcttttcacg ctgatgtaga actttataag
0661 gctaaccctg aagattcgat taaggatttt aaacagcgag tacagagaaa aattgagcaa
0721 gaaaatgaat tatttattga ccctgatttt tttagagcaa ttcagtccta ttttcctcag
0781 attactgaag tcgagattca tctagagaga ggtcaacacc acaacgaatt gactcaattt
0841 cgttacaatg ttgttctacg aagcgcaaca attctggatt ttagcaccga ctttccagaa
0901 ttaaactgga ctgaacagca gctgacttta tctgaggtaa gaaatcaact ggggacatct
0961 gaggggttaa gggtgatagg tgtccctaat tctcgcttgt ttcgaccttt aaaaagtgtg
1021 gaattgttca gaaattctca agactttggg acgaccgagg aatttcaagc tattaaatcg
1081 gaaattatcc cagaaaatgc cgtagaacct gaagattttt cggctttagc tgaggattta
1141 tccctttcgg tttgggtaac ttggtcggat actccggacc gttacgatgt gatttttgct
1201 ccgctggaaa attcccagag aaattacatc gcttttaccc ccacccacac tgtaaaacct
1261 gaagggcaac tttatgcaaa tcacccttta aggtctaagt taaatagtaa actgattcc
図４ Microcystis aeruginosa strain UWOCC 001のミクロキスチン合成酵素遺伝子の配列
（２）プライマーの設計
ＤＮＡ解析ソフトSequence Assistant Ver.1.5を用いたプライマーの設計結果を下図に示した。最も長い塩基配列 を増幅する場合のプライマー１は【5'-tggctggaatagcagttacacg-3'】、プライマー２は【5'-aagtcagctgctgttcagtcc-3'】 である。その他すべてのプライマーは使用可能である。
5'-tggctggaatagcagttacacg-3', 189-210 nt, sense, 22 mer, GC%: 50.0, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-ggctggaatagcagttacacg-3', 190-210 nt, sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-atctcatccgttgccttagacc-3', 370-391 nt, sense, 22 mer, GC%: 50.0, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-tctcatccgttgccttagacc-3', 371-391 nt, sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 1.0
5'-gttgccttagaccatattcagc-3', 379-400 nt, sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-ccgaagctagagcaagtcagg-3', 418-438 nt, sense, 21 mer, GC%: 57.1, Tm: 66.0, Comp.Score: 1.0
5'-tcaggctattgcatagcacagc-3', 434-455 nt, sense, 22 mer, GC%: 50.0, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-caggctattgcatagcacagc-3', 435-455 nt, sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-catctagagagaggtcaacacc-3', 799-820 nt, sense, 22 mer, GC%: 50.0, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-agagaggtcaacaccacaacg-3', 806-826 nt, sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-cgtgtaactgctattccagcc-3', 210-190 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-tctagccattctcgcatctgg-3', 251-231 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-aggcaacggatgagatatcgg-3', 385-365 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-tgaatatggtctaaggcaacgg-3', 398-377 nt, anti-sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 1.0
5'-ctgaatatggtctaaggcaacg-3', 399-378 nt, anti-sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-ctgacttgctctagcttcggc-3', 437-417 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 57.1, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-gcctgacttgctctagcttcg-3', 439-419 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 57.1, Tm: 66.0, Comp.Score: 2.0
5'-tgtatcgaatccttctgactcc-3', 495-474 nt, anti-sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 1.0
5'-atactgcacaaccgagttaagg-3', 522-501 nt, anti-sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-tcaattcgttgtggtgttgacc-3', 832-811 nt, anti-sense, 22 mer, GC%: 45.5, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
5'-aagtcagctgctgttcagtcc-3', 928-908 nt, anti-sense, 21 mer, GC%: 52.4, Tm: 64.0, Comp.Score: 2.0
図５ ミクロキスチン合成酵素遺伝子増幅のためのプライマー設計結果
上段：プライマー１ 下段：プライマー２
２つのプライマーによって挟まれた領域（下図の青文字の部分）がＰＣＲによって大量に増幅される。 この例ではプライマー１が22mer、プライマー２が21merで構成されている。これらの配列の組み合わせが ＤＮＡ上に存在する確率は10-12以下であると計算される。一方、ヒトゲノムのような巨大なゲノムでも ３×109pbであるので、下図の青文字の部分は他のどのような生物の遺伝子情報にも含まれることはないも のと考えられる。即ち、天然から採集したアオコを含む試水を下図のプライマーを用いてＰＣＲ増幅して やることで、ミクロキスチン生産能を有する生物の存在の有無が判定できる。
0001 gcatcggaga cagaaacagg gagtcaaaca ctaattgctt atgttgtggg tcagtctcaa
0061 gaaggggaac tcttgacgac ttcagaaaat gggcaattat tcgatgaaca aatcgggcaa
0121 tggcaaagcc tctataatca aatttacagc caaacatcgg cagattctca gggtatattt
5'-tg gctggaatag cagttacacg-3'
0181 aatattgttg gctggaatag cagttacacg ggggaaccta tcccggctgc ccagatgcga
0241 gaatggctag atgataaagt taaggttatt ctggctcaaa aaccgaaaaa agttctggaa
0301 ataggttgtg gaaccgggtt aatattattc caagttgctc cccattgcca gtgttattgg
0361 ggaaccgata tctcatccgt tgccttagac catattcagc gaattaatca agaagggccg
0421 aagctagagc aagtcaggct attgcatagc acagccgata aatttgaggg tttggagtca
0481 gaaggattcg atacaattat ccttaactcg gttgtgcagt atttccccca tatagattac
0541 ttactgcggg ttttagaggg agctatcaag gtactaactc cgggggggtg tattttcctt
0601 ggagatgtgc gaaacttgca actcatggaa gcttttcacg ctgatgtaga actttataag
0661 gctaaccctg aagattcgat taaggatttt aaacagcgag tacagagaaa aattgagcaa
0721 gaaaatgaat tatttattga ccctgatttt tttagagcaa ttcagtccta ttttcctcag
0781 attactgaag tcgagattca tctagagaga ggtcaacacc acaacgaatt gactcaattt
0841 cgttacaatg ttgttctacg aagcgcaaca attctggatt ttagcaccga ctttccagaa
0901 ttaaactgga ctgaacagca gctgacttta tctgaggtaa gaaatcaact ggggacatct
3'-cct gacttgtcgt cgactgaa-5'
0961 gaggggttaa gggtgatagg tgtccctaat tctcgcttgt ttcgaccttt aaaaagtgtg
1021 gaattgttca gaaattctca agactttggg acgaccgagg aatttcaagc tattaaatcg
1081 gaaattatcc cagaaaatgc cgtagaacct gaagattttt cggctttagc tgaggattta
1141 tccctttcgg tttgggtaac ttggtcggat actccggacc gttacgatgt gatttttgct
1201 ccgctggaaa attcccagag aaattacatc gcttttaccc ccacccacac tgtaaaacct
1261 gaagggcaac tttatgcaaa tcacccttta aggtctaagt taaatagtaa actgattcc
図６ ＰＣＲ増幅される領域とプライマー位置
（３）制限酵素の検索
図６におけるＰＣＲ増幅される領域内の使用可能制限酵素について表５にまとめた。
単独あるいは複合酵素の使用によって幾つかのセグメントに分割が可能である。
表５ ＰＣＲ増幅されたミクロキスチン合成酵素遺伝子上の使用可能制限酵素
|
酵 素 名 |
切断塩基配列（！は切断部位） |
切断可能部位（配列番号） |
|
AluI |
AG!CT |
243 382 451 741 |
|
AseI |
AT!TAAT |
224 |
|
DraI(AhaIII) |
TTT!AAA |
510 |
|
EcoRV |
GAT!ATC |
189 |
|
HaeIII |
GG!CC |
237 |
|
HhaI(Hin6I) |
G!CGC |
683 |
| HindIII |
A!AGCTT |
449 |
001 aatattgttg gctggaatag cagttacacg ggggaaccta tcccggctgc ccagatgcga gaatggctag 070
071 atgataaagt taaggttatt ctggctcaaa aaccgaaaaa agttctggaa ataggttgtg gaaccgggtt 140
141 aatattattc caagttgctc cccattgcca gtgttattgg ggaaccgata tctcatccgt tgccttagac 210
211 catattcagc gaattaatca agaagggccg aagctagagc aagtcaggct attgcatagc acagccgata 280
281 aatttgaggg tttggagtca gaaggattcg atacaattat ccttaactcg gttgtgcagt atttccccca 350
351 tatagattac ttactgcggg ttttagaggg agctatcaag gtactaactc cgggggggtg tattttcctt 420
421 ggagatgtgc gaaacttgca actcatggaa gcttttcacg ctgatgtaga actttataag gctaaccctg 490
491 aagattcgat taaggatttt aaacagcgag tacagagaaa aattgagcaa gaaaatgaat tatttattga 560
561 ccctgatttt tttagagcaa ttcagtccta ttttcctcag attactgaag tcgagattca tctagagaga 630
631 ggtcaacacc acaacgaatt gactcaattt cgttacaatg ttgttctacg aagcgcaaca attctggatt 700
701 ttagcaccga ctttccagaa ttaaactgga ctgaacagca gctgactt 748
図７ 再配置したミクロキスチン合成酵素遺伝子配列と制限酵素切断可能部位