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[ Камов Ка−60 Касатка ]
Kamov Ka-60 Kasatka [ Russia ]


 カモフKa-60/Ka-62カサッカは、ロシアのカモフ設計局が21世紀の主力汎用機を目指して設計したヘリコプターだ。
 カサッカの特長として、中型サイズでありながら大型級のペイロードを持つこと、軍用譲りの全天候・夜間飛行能力を持つこと、西側への輸出を睨んでアメリカ製の部品を使用できることなどが挙げられる。

 よくアエロスパシアル(現ユーロコプター)AS365Nドーファンとの類似性が揶揄されているが、後発だけあって輸送能力や運用能力などの面で優位といわれる。
 だが「ドーファンに似ている」という言葉の裏には、単に外観が似ているという以外に「カモフのヘリコプターにしては普通過ぎる」という意味も含まれる。

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ヘリコプターのアキレス腱:
 古くはダ・ヴィンチが考案したといわれるヘリコプターは、20世紀にようやくシコルスキーの手によって実用化された。
 ヘリコプターが抱える大きな問題は、揚力を生み出すメインローターを回転させると、反トルクによって機体が逆方向に回転してしまうことだ。シコルスキーは機体の尾部――テイルブーム――に反トルクを相殺するためのローター――テイルローター――をつけることによって解決し、後年ほとんどのヘリコプターに採用された。
 だが、このテイルローターには大きな問題がある。重心から遠い部分の、しかもコクピットから見えない部分にあるため、人間や物にぶつかって傷つけてしまったり、逆にテイルローター自体が傷ついて墜落する事故が起きやすいのだ。
 また、たとえ事故を起こさなくても、小さなプロペラが高速で回転するため騒音や空気抵抗が大きいという問題がある。

 このため、テイルローターのないヘリコプターをつくる試みがなされてきた。
 ひとつは近年マクダネルダクラス・ヘリコプター社が開発したノーター・システム(空力利用方式)、もうひとつは複数のメインローターでトルクを相殺する方式だ。

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同軸反転ローター:
 複数のメインローターを持つヘリコプターとして、古くはバートル製のタンデムローター方式が挙げられる。縦長機体の前後にひとつずつメインローターを配置し、そのトルクを相殺する。
 この方式は大型のヘリコプターには適するが、前後に大きなローターを持つため小型化できない弱点を持つ。

 カマン社は小型でありながら二つのメインローターを持つ交差反転方式を実現した。機体直上の近接した位置に二つのローターを持つが、互いに衝突しないようわずかずつ傾けて取りつけられている。
 ローターが二組ありながら制御系が単純なため、通常のヘリコプターよりもサイズやコストの面で有利である。ただし操縦性が劣るなどの弱点があり、一般的ではない。

 そしてカモフである。カモフは同軸反転ローターを実現している。というか、カモフはこの同軸反転ローター方式のヘリコプターしか造っていなかった。
 この方式は一本の軸上に逆転する二組のローターを持つため、軸自体の機構は複雑である。が、力学的には単純な形であるために安定性や信頼性・運動性などの面で有利だ。狭い艦上で運用する対潜哨戒ヘリKa-27シリーズや、世界唯一の単座攻撃ヘリKa-50などが採用されていることからも、それがうかがえる。

 だがカサッカは、カモフで唯一の同軸反転ローターを採用しないヘリコプターとなった。

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フェネストロン:
 カサッカにはテイルローターが装備されている。ただしシコルスキーの発明した露出型ではなく、フェネストロンと呼ばれる方式を採用している。
 フェネストロンは英語でダクテッドファンと呼ばれ、その名のとおり換気扇のような外観をしている。テイルフィン(垂直尾翼)にブレードが内蔵されているのだ。
 世界で最初にフェネストロンを装備した実用機はアエロスパシアルがSA341ガゼル。空気抵抗を減らして直進性や速度性能・燃費などを向上させる目的だが、同時に衝突事故の被害を小さくする効果もあった。
 こうしたメリットが認められ、後に複数のメーカーで採用されるようになったが、いわゆる東側のメーカーでフェネストロンを採用したのはカサッカが最初になる。

 空気抵抗を減らす他の工夫として、降着装置は引き込み脚となっている。

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冷戦の後:
 フェネストロン以外の面でも、カサッカは「東側らしくない」機体である。
 国内向けにはリビンスクRD-600ターボシャフトエンジンを2基搭載するが、輸出型はジェネラルエレクトリックT700/CT7-2エンジンを使用することも可能。また、各種アビオニクスも西側のものを装備できるように設計されている。
 またメインローターは、計画当初3枚ブレードというカモフ伝統の形態だったが、結局は一般的な4枚ブレードに落ち着いている。

 カモフは世界唯一の同軸反転ローター式ヘリコプターメーカーであり、同時に同軸反転ローター式ヘリコプターのみを生産するメーカーだった。
 だがソ連崩壊の後、縮小の一途を辿るロシアの軍需に頼るわけにはいかなくなった。
 そのため、カサッカは海外への輸出を強く意識した設計になっている。これまで培ってきた独自性を思い切って捨て、汎用性の高さを重視したのだ。

 冷戦後の世界を象徴する回転翼機。カサッカは『メタルギアソリッド2』に出るべくして出た機体なのだ。


参考文献:

参考リンク:


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