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[ SOCOM ]
Heckler & Koch Mk23 USSOCOM pistol Cal. .45ACP [ Germany ]

[ Mark23 ] [ Suppressor ] [ Laser aiming device ] [ Flash light ]


 アメリカ陸軍の制式拳銃は、20世紀のほとんどをコルトM1911A1ガバメントで通してきた。.45口径(11.34mm)の弾が人体抑止力(打撃力)に優れていたことを、先住民との戦闘で知ったためだ。
 ところが軍用銃は、小口径弾の多弾携行が世界の主流となる。特別な訓練を受けずとも「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の理屈だ。20世紀末には米陸軍も各国に倣い、9mm口径の銃を採用する。ベレッタM92Fだ。
※とはいえM92Fは、9mm拳銃としては異様に大きい。

 だが米軍内にそれを受け入れない勢力があった。米軍特殊部隊総司令部、通称ソーコム(USSOCOM = United States Special Operation Command)である。
 ソーコムとは、米4軍(陸・海・空・海兵隊)に散らばる数多くの特殊部隊を、統括的に司令するためにつくられた組織だ。
 大人数で行動する通常部隊とは異なり、特殊部隊では少数精鋭での作戦行動が主体となる。したがって「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」銃は敬遠され、一撃必殺の高性能攻撃拳銃が求められた。
 こうして特殊部隊専用拳銃「ソーコムピストル」を開発するための計画が始動した。アメリカのコルト社と、ドイツのヘッケラー・ウント・コッホ(H&K)社に試作品が発注されたが、その条件は厳しいものだった。

 コルトはガバメント、H&KはUSP……それぞれ自社の拳銃をもとに改造を加え、ソーコムの要求に応えようとした。
 が、その結果は散々なものだった。機能に対する要求を満たそうとすると、どうしても重量が重過ぎた。拳銃としては常識外れの2kg超。試作ソーコムピストルは実用性の低さ故、銃器関係者の笑い者となった。

 その後、粘り強い改良を重ね、実用に足るソーコムピストルを完成させたのはH&Kであった。
 古来優秀な銃器を輩出してきたドイツの職人芸と最新技術、その結晶がMk23だ。
 数多くの機能を盛り込み、結果大柄な銃になりながら、その重量は約1.4kg(オプション除く)に抑えられた。

 Mk23は、多くの特徴をUSPから受け継いでいる。
 ポリマー樹脂製のフレーム。
 古典的で信頼性の高いティルトバレル・ロッキング式ショート・リコイル。
 ショート・リコイルを滑らかに動作させるための2重リコイル・スプリング。
 押しやすく、それでいて誤操作を防ぐ、押し下げ式マガジンキャッチ。
 古典的なコック&ロック式と、流行のデコッキング式といった2種類を使い分けられるセフティ。
 レーザーやライトを簡単に取り付けられるマウント・グルーヴ。

 その一方で、USPに比して多大なる改良も加えられている。
 命中精度を向上させるため、バレルやスライドは鍛造鋼を削り出して造られ、またその長さは延長されている。バレルとスライドとのがたつきを防ぐため、バレルに樹脂性のOリングがはめられている。ライフリングは命中精度とメンテナンス性が高いポリゴナル・ライフル(多角形断面施条)になった。(ポリゴナル・ライフルにはキャスト(鉛むき出し鋳造)弾を使えないという欠点があるが、軍ではキャスト弾を使用しないため問題ない)
 バレルの先端には、サプレッサーを装着するためのネジが切られた。
 USPでは2種類のセフティをひとつのレバーで使い分けるため誤操作しやすいと指摘されたため、これらを独立させた。
 その他トリガーの操作感なども再調整され、結果、世界有数の高級拳銃となった。


[ Mark23 ]
Heckler & Koch Mark23 USSOCOM pistol commercial Cal. .45ACP [ Germany ]

 ゲームには関係ないことだが、この特殊部隊用攻撃拳銃は、なんとアメリカでは一般に市販されている。
 通常の拳銃と同じ手続きで買うことができるのだ。

 ただし市価は$2,000以上。普通の9mm拳銃が$300程度、高級銃と呼ばれているものでも$800程度であることを考えれば、これはとてつもない高値であることがわかるだろう。カスタムガンならばともかく、量産型の拳銃(しかも本体のみ)でこのように高価なものは珍しい。他にはSIG/Petter P210ぐらいではなかろうか。

 軍用版との違いは、名前の差によるスライド刻印の違いと、マガジン装弾数。アメリカでは法規制により、市販拳銃のマガジン・キャパシティは10発に制限されている。
 なお、後述のサプレッサーは市販されていないにもかかわらず、装着用のネジは切られている。マズル・コンペンセイター等、サプレッサー以外のオプションを装着する余地を残したのだろう。


[ Suppressor ]
Knight's armament MFR-1S002 [ United States ]

 銃声の音源にはいくつか種類があるが、その最たるはマズルブラスト(発射の爆風)だ。銃弾を押し出した爆風と、外気との気圧差が衝撃波を生み、爆音となる。
 サプレッサーの原理はこうだ。銃口と外気との間に取り付けられた筒は、いくつかの小部屋に分かれている。マズルブラストは、これら複数の小部屋を通って行くうちに、段階的に圧力が減ってゆくため、圧力差が小さくなり、爆音は小さくなる。
 また、銃弾の速度が低下するため、銃弾自身の発する衝撃波も小さくなる。ただしこの代償として、銃弾の威力も低下する。

 映画などでは「サイレンサー」(消音器)と称されるが、実際に『消音』と言えるほどの効果を持っているものは、ほとんどない。わずかに、暗殺用の小口径銃と組み合わせて高い消音効果を得られる例があるだけだ。
 ましてや.45ACPは、拳銃の口径としては大きい方から数える方が早い。

 とはいえ、特殊部隊が使う最高の攻撃拳銃に装着するのだ。少なくとも発射位置を特定できないだけの減音効果を備えていなくてはならない。
 この条件に応えるべく、Mk23用のサプレッサーを開発したのは、ナイツ・アーマメントというメーカーだ。この会社はかねてより特殊部隊用銃器を開発してきた、軍御用達の企業だ。
 このナイツがつくったサプレッサーは、その大柄さも手伝って減音効果は非常に高く、また、銃本体のティルトバレル機構をスムーズに動作させるための特殊機構が組み込まれているという。

 なお、このサプレッサーは市販されていない。護身には適さない暗殺道具であるが故に法で禁じられているのだが、同時に軍の機密が含まれるためでもある。


[ Laser aiming device ]

 ゲームでは重宝する拳銃用レーザーも、実際の軍はあまり実用視しなくなった。護身用や威嚇用としては高い効果を示す装置だが、特殊部隊の隠密作戦には不向きなことが判明した。

 射手がレーザーの点を見つめてしまう傾向があり、拳銃を用いる近距離戦(広範囲を警戒する必要がある)には不利となる。
 複数人の射手が突入した場合、複数のレーザー点が映るため、誰の照準だか分からず混乱するおそれがある。
 空気の汚れた場所や降雨時などには、狙いが敵に丸見えとなる。
 あと拳銃にはあまり関係ないことだが、遠距離を狙うときに、銃弾が放物線を描くことを忘れてしまいがちになる。

 以上のような弱点が指摘されたため、現在軍に納入されているMk23にはレーザー・ディバイスが付属しない。
 しかし赤外線レーザーの導入や操作性の向上など、新機軸を盛り込んだものが再開発中という話も聞かれる。


[ Flash light ]

 ゲームではソーコムではなく敵のFA-MASに装備されているフラッシュライトだが、フラッシュライトは拳銃用の装備として重宝されている。

 拳銃が主力火器となるような狭い場所では、視界の悪い暗がりなどが多い。そこで拳銃にライトを装備し、閉所に潜む敵を探索するのだ。
 また特に輝度が高いライトには、眩しさで敵をひるませる効果もある。

 こういったことから、軍や警察の特殊部隊が装備する拳銃には、フラッシュライトを装備することが多くなっている。


参考文献:


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