ゲルトマ劇場・改

第1幕 赤の脅威


 以下の文章はフィクションであり、実在の個人および法人とは一切関係ありません。
 つーか混同しちゃうようなオコチャマは、こんな毒サイトに来ちゃいけません。

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倶零舎「おう、この新聞記事みろよ。『ファービー 飛行機内で使用禁止』だとさ。」
ゲルトマ「そんなことが記事になるのか? この前秋葉原のワゴンセールで、本物のファービーが野積みになってたぞ。」
倶「えっ!? ニセモノならともかく、本物が?」
ゲ「その記事を書いた記者と同じく、お前も流言に惑わされ、世の中を自分の目で見る態度が欠けているようだな。」
倶「いや別に飛行機で使用禁止になるのと、本物が野積みになるのとは関係ないような……。」
ゲ「ふん、そのような些事を新聞記事にしてよいと考える時点で怪しい。だいたいだな、新聞社というのは自らを卑しめている愚かな集団なのだ。勧誘員がオマケをつければつけるほど、新聞自体の価値は相対的に低くなっていくのだぞ! それに……」

(以下、ゲルトマによる新聞批判が2800字ほど続くが割愛)

ゲ「……そもそも報道に品性を求める発想自体が下劣なのだ! 報道が公正であるべきなど、すべては愚民どもの妄想だ! マスコミは自らをバカと宣言する義務があるッ! はあ、はあ……。」
倶「気は済んだかバカ1号。」
ゲ「誰がバカだ。」
倶「ファービーの話を忘れてマスコミの悪口に興ずるヤツがだ。」
ゲ「ふん、それではファービーがなぜ没落したか、キサマにわかるか?」
倶「まあもともと煽った人気だから、便乗ニセモノで簡単に醒めちまったってトコだろ。」
ゲ「甘いな。」
倶「は?」
ゲ「ファービー没落の陰には、綿密に計算されたシナリオがあったのだ……。」


 鉄のカーテンの向こうにある国。その中枢であるグレムリン宮殿では、ある重大な会話が交わされていた。

「ギギー、同志ギズモスキー将軍。資本主義者どもの間で、我々の姿を模した人形が流行しているようであります。」
「ムギギ、同志ギズモビッチ大佐。それは本当か?」
「ギギ、本当であります。これをご覧ください。」
「ムギ、『ファービー』とな。確かに我々に似ている……しかし、我々に比べてマヌケな面だ。ブクブクと肥え太る資本主義者どもにお似合いだな。」
「ギギ、しかし我々に似せて人形をつくるなど、我々人民に対する冒涜であります。駐米大使館を通じて抗議を……。」
「ムギ? 待て、ギズモビッチ大佐。」
「ギ……なんでありますかギズモスキー将軍。」
「ムギギギギ、いい作戦を思いついたぞ。この『我々のニセモノ人形』の、さらにニセモノをつくるのだ。」
「ギはぁ?」
「ムギー! それを大量生産して資本主義市場に流し込めば、きゃつらの経済は一気に混乱するぞ!」
「ギギーッ! 素晴らしい考えであります、ギズモスキー将軍!」
「さっそく党直属の工廠に開発命令を下すのだ、ムギギィー!」
「了解ギギィー!」

 所詮は変態ケモノの浅知恵……そう思われたが、グレムリン体制下の国営工場で大量生産された『ファービッチ』は、ファービー市場を荒らすのに十分な勢力を持っていた。
 なにしろ人件費の安いグレムリン体制下のこと。ファービッチ1体の単価は 800円を大きく下回り、ファービーには不可能なゲーセンプライズデビューが可能となったのだ。
 ファービーはたちまち危機に陥り、緊急会議を開くこととなった。しかし。

「おなかすいたなー。」
「あははははー。」
「おっけーい。」

 ……勝手気ままなことをしゃべるように製造されたファービーにはテーマを持った会議などできるわけもなく、結論出ず。ファービー帝国には早くも斜陽がさしていた。

 一方、UFOキャッチャーのショバをめぐっても戦いが繰り広げられた。それまで圧倒的なシェアを誇っていた『たれぱんだ』にも危機が訪れようとしていたのだ。同様に緊急会議。

「……。」
「…………。」
「………………。」

 だれて……もとい、たれているだけのたれぱんだでは、会議はおろか会話すら成立することがなく、結論出ず。そのままファービー帝国と同じ運命をたどるものかと思われた。だが。

「ギギギギギーッ! 大変でありますギズモスキー将軍!」
「ムギッ! 声をかけるときは『同志ギズモスキー将軍』と呼べ、同志ギズモビッチ大佐!」
「ギ! 失礼いたしました、同志ギズモスキー将軍。」
「ムギ、よろしい。ところで何の用だ、ギズモビッチ大佐。」
「ギーッ! そうでありました、大変であります!」
「ムギーッ! 何が大変なのか早く言え!」
「ギギギギギーッ! 実は『ファービッチ』が異常な値崩れを起こしております!」
「ムギ。それこそ連中の資本主義に付け込んだ、我々の作戦ではないか。」
「ギ、そ、それが……値崩れを起こしているのは、他の国営工場がつくった『ファービッチ』のニセモノが原因なのです。」
「ムギ!? どういうことだ?」
「ギ。ご承知の通り、党内でも将軍の『ファービッチ』作戦は高い評価を得ておられます。」
「ムギー、当然だ。私が考えた作戦なのだからな。」
「ギ……ところが党幹部の中に、将軍の二番煎じを試みる者どもが多数おりまして……。」
「ムギ? 詳しく話してみろ。」
「ギギ、国内多数の国営工場で『ファビネンコ』『ファビーリン』『ファビコフ』『ファビツィン』『ファービチョフ』などの類似品が粗製濫造され、今まで流れてきた外貨も入らず、おまけに生活物資の生産が滞り……国家経済に大きな破綻が……。」
「ムギー。安心しろギズモビッチ大佐、経済破綻などいつものことだ。」
「ギギィ……ギズモスキー将軍……。」(泣)

 こんなやつらに政治を任せざるを得ないギズモどもに同情する。とにかく、ファービーのパチモンは、こうやって本物のファービーよりも早く崩壊した。普通の玩具店では普通にファービー売ってるからな。
 たれぱんだは UFOキャッチャーのプライズ王に返り咲いた。

 しかし安心してはいけない。新たなる尖兵『犬福』が、UFOキャッチャーめがけて突進してくるのだから……。


声の出演(希望)

ギズモスキー将軍:大塚明夫   
ギズモビッチ大佐:大塚芳忠   

ファービー:犬山犬子

たれぱんだ:高木均 

 ゲルトマ:戸谷公次
  倶零舎:二又一成

ナレーター:緒方賢一


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