Research Methods
心理学研究法の本

書名 心理学研究法 心理学研究法
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副題 心を見つめる科学のまなざし
編著者 高野陽太郎
岡隆
その他著者 坂本章
横澤一彦
山田一成
遠藤利彦
南風原朝和
前川あさ美
亀田達也
吉田俊夫
出版年 2004年
出版社 有斐閣 アルマ
ページ数 360ページ
コメント 日本語で書かれている研究法のテキストの中では、今のところ一番のおすすめ。
筆頭の編著者のお二人については寡聞にして知らないのですが、その他の著者の顔ぶれをみると、坂本章氏、南風原朝和氏、吉田俊夫氏など名だたる方たちの名前が連ねられています。
これだけの著者を集めただけでも十分に話題性がある思うのですが、この本はそれだけでは終わりません。

世に出回っている心理学研究法のテキストの多くは、いわゆるHow to(ハウツー)本、つまり「質問紙を作成するには、始めにこうして...」というテクニック集です。
そういう本はもちろん実用的に役に立つのですが、心理学という、きわめて扱いづらいモノを対象にした研究をする上での心構え(つまりは研究哲学とか研究法論)といったものについて十分に触れているものは、余りありません。
本当はそういう部分がとてもに重要だと思うのですが、そういったことを学ぶ機会が少ないのか、最近の学生の研究を見ていると、仮説の取り扱い方がいい加減だったり、数字が使ってあれば実証研究だと思い込んでいたり、逆に実証主義的研究が無意味であるとまくし立てるオコチャマまで出てきます。

翻ってこの本。
How to部分もあるにはあるのですが(それでも他のテキストに比べればずっと少ないけど)、それ以上に、研究を行ううえでの基本的な了解事項や、心理学研究の根底に存在している哲学、方法論について、十分なページが割かれています。
例えば最初の36ページ(全体の10%)まるまる使って、心理学研究における「実証」とは何かについて、丁寧に解説しています。
しかも書き方がやさしく(学生をナメているのではなく)、本当に丁寧でわかりやすい。
学部レベルでの研究法論の理解としては、十分ではないでしょうか?

本書の欠点としては、How-to部分がないということが裏目に出て、逆にこれ一冊を読んでも、具体的にどのように研究を進めていけばよいのかがわからない点があると思います。
本書にプラスアルファHow-to本が必要となりますが、考えても見ると、通常、心理学の研究法を勉強するシチュエーションは、独学なんてことはほとんどないだろうし、大学の講義や実習を伴って学ぶということになるでしょうから、How-toはそこから学べばよいわけで、そういう意味ではこれ一冊で授業のテキストとしては十分なのでしょう。

定価2,100円(税別)、これから研究法を学ぶ学部生にも、研究法を一通り知っているがさらに深めたい院生にもおすすめの一冊です。


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