Psychological Statistics
心理統計の本

書名 心理統計学の基礎 心理統計学の基礎
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副題 統合的理解のために
編著者 南風原朝和
その他著者
出版年 2002年
出版社 有斐閣 アルマ
ページ数 394ページ
コメント 心理統計というのは、心理学を志している人にとって、時には鬼門であり、時には救世主ともなる。
言うなれば、諸刃の剣みたいなもんです。
かく言うワタシも、小学校の算数の時代から高校数学まで一貫して数字が苦手で、高校の担任には、「たとえ東大に受かったとしても、国立K大学教育学部は数学の試験があるから絶対にムリ」と太鼓判を押され、受験を諦めたという過去を持っています。
そんなワタシも、心理学の中に統計学があるのを知り、一念発起、かなり頑張って勉強し、今では学部生の質問程度だったら答えられるまで成長しました。
その成長過程ではたくさんの本にお世話になってきたのですが、ホントに心理統計の本ってのは、玉石混交ですね。
本の世界にも、「買ってはいけない」があると思います。
買ってはいけない代表が石‖≡≡≒≒÷::∃(がりがりぃ〜)(←テキストシュレッダーfrom言霊工房様)。
んでまた、良書といっても中身はさまざまで、目的やレベルに合わせていろいろ選ばなきゃいけないところがメンドクサイ。
おすすめ統計書より、初心者から上級学生まで役に立つ一冊をご紹介します。

統計テキストにも、How-to系と理論系があるのですが、これは完全に理論系です。
理論系ってのは、とかく心理の学生にはキラワレモノで、確かにSPSSやSASを動かすのに理論なんているかぁー!!というご意見は正しい部分もあると思います。
でもやっぱり、正しい統計手法を正しく選択し使用するためには、統計の理論背景を知っていて損はないわけで、そういう意味で本書で取り扱われている内容は、このくらいのレベルを知っておくと後々役に立つよ、という部分です。

現代の心理統計おおもとにあるのが、「古典的テスト理論」と「一般線形モデル」です。その2大メインストリームを、初歩からわかりやすく解説しているのが、本書です。
心理の学生の統計アレルギーの根源である数式も、この本ではわかりやすく、必要最低限までしか書いてありません。
だけど言葉に頼りすぎず、適切なところで適切な数式提示(高校1-2年レベル)を行うことで、「わかった気分が盛り上がる」書き方になっているのが、大当たりのポイントでしょう。
[基本理論]→[一般線形モデルへの発展]→[個別の分析手法]へと進む中で、重要なことが繰り返し、しかも内容を発展させながら登場する書き方は、脱帽です。
さすが、日本の心理統計の第一人者、南風原先生だと思います。

本書の欠点としては、すこしばかり内容が高度なので、本当のまったくの初心者が、コレ一冊で独学できるような内容ではないという点が、難アリという感じですか。
ですが、適切な解説を伴って勉強をすると、本当に統計がわかるようになります。
事実、数年前の夏休み、本書を使用して、ワタシが講師役で学部生の勉強会を開きましたが、大評判で、お礼においしいものを食べさせてもらえました。
もう一つの欠点としては、重要なことを繰り返して書いてあることが裏目に出て、何度も前を見返さないといけない、しかもどこを見ればよいのかがわかりにくい点ですが、ま、これは瑣末な問題でしょう。
あとは、いわゆる記述統計からt-検定、分散分析などの統計的検定の基礎、重回帰分析などの一般線形モデルの入り口までは十分ですが、それ以上(共分散分析、因子分析)などは触れられている程度ですし、いわゆるノンパラについては皆無なので、本書で学んだことをベースに、より高度なテキストへと進むのが妥当でしょう。
もっとも、学部レベルでしたら、コレで十分かもしれません。

最近の流行の分析と言えば、共分散分析(構造方程式モデリング)や階層線形モデル(複階層分析)ですが、その基本である古典的テスト理論と一般線形モデルを、本書で固めてはいかがでしょうか?


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