2006年日本シリーズ 中日ドラゴンズ対日本ハム ファイターズ

 

2006.11.03

 

2004年にリーグ優勝したばかりの中日が2006年にまたリーグ優勝した。プロ野球をほとんど観なくなってしまった私だが、中日の胴上げ試合だけは義務感から球場に足を運ばざるを得ず、東京ドームでの胴上げ試合までの直近3試合を観戦した。リーグ優勝が決まりそうな試合のチケットは優勝マジックが点灯した直後に買っておいたのだが、阪神の猛烈な追い上げにあったことから胴上げの時期が遅れ、関東圏での試合以外のチケットは全て友人にあげたため、かみさんの分もあわせると7試合 x 2人分のチケットを無駄にした。2年ぶりのリーグ優勝では感動はさほどなく、それどころか、これでまた日本シリーズ観戦の苦行が始まるのかと思うと苦痛にさえ感じた。中日は1954年に初の日本一となったのを最後に、1974年、1982年、1988年、1999年、2004年と5回連続でシリーズに負け続けているが、私は1999年と2004年のシリーズに足を運び、辛酸を舐めさせられているからだ。この2006年のリーグ優勝時も私はシリーズに勝てるとは思えなかったので、シリーズとは別の目標を定めた。私が中日のリーグ優勝を球場で目の当たりにしたのはこれで4回目だが、それは1982年の横浜スタジアム、1999年の神宮球場、2004年のナゴヤドーム、2006年の東京ドームで、これに甲子園と広島市民球場での胴上げを加えたい。

 

中日対日本ハム・ファイターズのシリーズは初の組み合わせで、2年前に設立された新球団である楽天を除き、セ・パとも最も日本一から長く遠ざかっているチーム同士の戦いとなった。下馬評では中日有利の声が多かったが、派手なパフォーマンスでファンを沸かせる球界のプリンス・新庄がそのシーズン限りでの引退を表明していたことから、世間では「新庄のいる日ハムを勝たせたい」という声が圧倒的だった。なにせ新庄を古巣の阪神に勝たせたいことから、多くのプロ野球ファンが阪神のリーグ優勝を望んでいたほどだ。両チームのスタイルはとても似ていて、どちらも守備と犠打重視の地味な試合を特徴としていただけでなく、打撃力、投手力もほぼ同じ数字を残していた。ヒルマン監督率いる北海道移転3年目の日ハムはレギュラー・シーズンを1位で通過し、同2位の西武をプレーオフで破った同3位のソフトバンクを、なんとダルビッシュと八木の2完投で退けていた。中日の主力先発陣は17勝の川上、13勝の朝倉、11勝の山本昌。レギュラー・シーズン前半に5連続完投という離れ技をやってのけ9勝を上げた佐藤充が後半の不振からシリーズの40人枠に入らなかったのは痛かった。対して日ハムの主力先発陣も12勝のダルビッシュ、12勝の八木、そして9勝の金村といった布陣で、両チームとも強力な4人目の先発投手はいない。中日は2年前の西武とのシリーズでは福留をケガで欠いたが、今回はケガ人がいないということでは万全の状態。そしてパでプレーオフが実施されるようになってからここ3年、セのチームはシリーズまで日程が空きすぎて不利だったが、雨天中止の振替試合が多かったこの年の中日は、中4日でシリーズに臨めるという好条件だった。シリーズ開幕前の私の中日優勝の期待度は40%

 

 

1戦:10/21() 名古屋ドーム

先発投手は順当に川上とダルビッシュ。投手戦が予想されたが川上は初回からコントロールが定まらず3回までに4四死球と波に乗れない。公式戦11連勝中だったダルビッシュも精彩を欠き、3回が終った時点で中日の3-2と予想外の点の取り合いに。しかし4回以降川上が立ち直り、8回を5安打2失点の好投。9回から2年連続40セーブ・ポイントの偉業を成し遂げた岩瀬につないで中日が4-2で勝利した。これは中日にとって32年ぶりのシリーズ初戦の勝利だった。中日は1番荒木、2番井端、3番福留がノーヒットだったものの、8番谷繁の2点先制タイムリー、7番井上の勝ち越しタイムリー、6番アレックスのダメ押しタイムリー2塁打と、好機で下位打線が頑張った。日ハムは中日の4番ウッズを警戒しすぎた逃げのピッチングでウッズに2四球を与え、それが共に得点に結びついての消極的な戦いぶり。緊迫した1点差の8回表に大きなプレーが出た。二死1塁での日ハム新庄の打球は三遊間にとび、抜けないまでも内野安打は確実かと思われた。それを99%という驚異的な守備率を誇るショート井端が逆シングルでつかみ、セカンド荒木にジャンピング・スローして間一髪のアウト。日ハムは武田久が7回から2番手でマウンドにあがったが、球威・制球ともに今ひとつで、日ハムの投手陣の脆さが露呈した初戦だった。2年前のシリーズ第1戦では鉄壁を誇った中日の守備がボロボロだったが、今回は皆シリーズを経験しているからか堅い守りであった。私の期待度は60%に!

 

2戦:10/22() 名古屋ドーム

先発投手は41歳の山本昌と21歳の新人八木のサウスポー同士。初回に両チームとも1点ずつを取り、その後は投手戦に。4回裏にそれまでノーヒットだった福留が泳ぎながらもライト上段へソロ・ホームランを放ち、中日が勝ち越し。しかし7回表に谷繁のエラーがきっかけで、山本昌が金子に逆転2点タイムリーを浴び降板。ここは結果論でなく、明らかに疲れの見えていた山本昌が2死を取った時点で代えてやるべきではなかったか!右の金子に対して平井投入でなかったか!落合監督はこのときマウンドに行って山本昌・谷繁のバッテリーと話し合った末の続投だったのだ。山本昌は投げたいと言ったかもしれないが、投手交代を選手に決めさせるべきではないだろう。投手交代は森ピッチング・コーチに任せておけ!と言いたい。山本昌はそれでなくともシリーズでは7回に打たれることが多い投手なのだ。2年前の西武とのシリーズで、落合監督が岡本を引っ張りすぎて痛い一敗を喫したのを思い起こさせる采配だった。7回から第1戦に続いて登板した武田久は、この試合では好投した。落合はバントの下手な井上にバントを命じて失敗。屈指の好打者で、1戦、2戦ともヒットを打っているバントの下手な井上にバントのプレッシャーをかけさせることがいかに愚かなことであるかを、バントを命じられたことのない天才打者落合には理解できなかったのかもしれない。8回には中日3番手の岡本が打ち込まれ、2-5で中日の敗戦。これで11敗のタイとなった。しかし私にはこの敗戦がただの1敗には思えなかった。勝てる試合を落としたことで、中日がどうしてもシリーズに勝てないことを思い起こさせるに十分な1敗であり、落合監督の采配に対する私の怒りは頂点に達した。それにしても1番バッターの荒木が四球1つの通算7-0は痛い。セカンド荒木を代えるのが難しいことはわかるが、短期決戦だけに思い切ることも必要だろう。少なくとも打順の組み換えが必要だと思われた。対して日ハムの1番森本は通算8-3と絶好調。また、中日は犠牲フライもタイムリーも出ず、ホームラン2本で2得点、二つのエラー(1つは記録上はヒット)、そして二つのバント失敗と、野球が下手すぎる。中日は武田久も調子付かせてしまい、私の期待度は40%に。それにしても山本昌念願のシリーズ初勝利が・・・。

 

3戦:10/24() 札幌ドーム

先発投手は朝倉と武田勝。中日はDH6番で立浪を起用。1回表に1番荒木がついに今シリーズ初ヒットで出てから2盗に成功し、3番福留のタイムリーで1点先制。最も心配していた2人のヒットが初回から出て私は安堵したのだが、その裏またもや谷繁のフィルダース・チョイスが出て、その後小笠原のシリーズ初ヒットとなる2点タイムリー2塁打で逆転され、稲葉の犠牲フライで3失点。その後に朝倉は立ち直るも、中日は3併殺の拙攻。8回裏には中日3番手の中里から稲葉が3ランを放ち、1-6で勝負あり。3連投となる日ハム2番手の武田久を中日は全く打てなかった。中日は結局9安打で1得点という連日のタイムリー欠乏症で、平井や岩瀬を出す場面にいたらない。何かの呪いでもあるとしか思えない、シリーズに弱い中日が完全に蘇ってしまった。私は胴上げの可能性がある第4戦〜第7戦のチケットを手にいれていたのだが、これで札幌での胴上げがなくなったため、行くのが嫌になってきた。私の期待度は20%に。

 

4戦:10/25() 札幌ドーム

私は仕事の関係もあり、結局この日はテレビ観戦。先発投手は中田と金村。中日はDHの立浪を5番に繰り上げた。3回裏無死で、絶好調の日ハム森本の3塁打がとびだし、続く田中賢のタイムリー2塁打で1点を先制された中日の中田だが、その後の二死満塁のピンチをなんとか切り抜けた。以降中田は立ち直るが、中日は第3戦に続いて、ヒットは出るものの拙攻が続き、どうしても得点できない。5回裏に登板の中日2番手の石井がついに稲葉の2点タイムリー2塁打をあび、中日は0-33連敗。中日は完全に打ち負けていた。日ハムは5回を零封した好投の金村をスパッと代えて継投での完封。中日はなんとヒット7本、四死球6つの12残塁。それなりに打って守っている中日だが、あまりにもつきに見放されている!!!荒木は通算15打数1安打の絶不調が続いていた。これで13敗となった私の期待度は0%に。

 

5戦:10/21() 札幌ドーム

日ハムの胴上げを見させられることはあっても、中日の胴上げの可能性がない試合だったので札幌まで行くかどうか迷ったが、結局木曜、金曜と休暇を取って札幌ドームを訪れた。敵地での試合を観ずに名古屋での胴上げだけ観てもつまらないと思ったし、札幌で私が中日の応援をしないで誰がする!とも思ったのだ。しかし実際のところ既に戦意喪失状態となっていた私の一番の目的は、新庄の引退試合観戦、そしてこの機会を逃したら生涯訪れることもないであろう札幌ドームでの観戦だった。開場時間を待っている間、いかに川上とはいえどうしても中日が勝てるとは思えず、その場で日ハムファンになれるものなら、この日長年の念願が適うのに・・・などと考える。

先発投手は第1戦と同じ川上とダルビッシュ。川上はそれなりに押さえ、中日のヒット数は日ハムと同数の8本だったものの、中日はこの日も第4戦までと同じような展開で、タイムリーと長打が出ず、勝てる気がしないまま1-4であっさりと負けてしまった。私が気に入らないのは落合が8回以降も久本を続投させ、決定打をあびてしまったことだ。ここで負ければ終わりなのだから岡本、あるいは岩瀬でさえ投入すべきではなかったか。結局岩瀬はこのシリーズを通して第1戦の1イニングだけ、平井は第2戦の1/3イニングと第5戦の2/3イニングだけ、岡本は第2戦の2/3イニングしか投げていない。短期決戦でこの3人を出し惜しみしてどうするのだ!また、このシリーズで一番当っていた井上に代打川相で送りバントなどという采配はどうかと思える。まさかこのときすでに負けを覚悟し、川相の引退試合のための代打だったとは思いたくない。私はこれで3回連続敵側のシリーズ胴上げを観させられた。ホテルに戻る札幌の夜はとても寒かった・・・。

 

名古屋に行く必要のなくなった私は、札幌-名古屋便をキャンセルし、翌日札幌でレンタカーを借り、日本最北端の宗谷岬まで23日の傷心旅行に出かけた。職場の連中は私が札幌まで中日の応援に行っていることを知っているので、月曜の出社はとても気が重かった・・・。

 

 

野球は投手力とよく言われるが、投手力だけではシリーズには勝てないようだ。今回のシリーズでは、監督の采配と長打力の差が明暗を分けた。中日はそれなりに守ってそれなりに打ってはいたのだが、この5試合で日ハムは37安打を放って20得点したのに対し、中日は36安打でたったの8得点という事実がそれを物語っている。まるできつねにつままれたようなシリーズであった。これで至近4回の中日のシリーズは星野が監督をやって2回、落合が監督をやって2回負け。こんなことなら弱くてもいいから、また打撃のチーム、野武士野球に戻ってほしい。それにしても今回のシリーズは新庄と、レギュラー・シーズン中の問題発言によってプレーオフ出場が許されなかった金村のためのシリーズとなってしまった。日ハムは東映時代以来44年ぶりの日本一だが、北海道県民にとってはたった3年で達成した日本一。名古屋は52年間勝ってない。6回連続でシリーズに負ける確率は、1/26 = 1/64という困難さ(?)で、実際中日の6回連続シリーズ敗戦は新記録となった。しかもシリーズ優勝どころか、1勝か2勝しかできないチームに戻ってしまった。そして一度でも日本一の胴上げを見ない限り、シリーズ観戦の義務感から開放されない私は、次の中日のシリーズも観戦しなければならない。日ハムが44年前に優勝したときのエース土橋氏が日ハム優勝のコメントをテレビで述べていたが、52年前の中日優勝時のエース杉浦氏は中日が勝つときに生存しているのだろうか。今後12球団が平均して12年に1回ずつ日本一になると仮定して、中日が12年後に勝てるとしても、それは64年ぶりの日本一。そのとき私は57歳になっている・・・。

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