2007年日本シリーズ 中日ドラゴンズ対日本ハム ファイターズ

 

2007.11.03

 

この年からパ・リーグを真似てセ・リーグもペナントレース上位3チームでのクライマックス・シリーズ(CS)で日本シリーズ出場チームを決める方式となった。ただしリーグ優勝チームはあくまでペナントレース1位のチームということになっていて、どうも気持ち悪い。また、CSのせいでペナントレースの重みがなくなってしまい、巨人・中日のリーグ優勝争いにあまり興味が持てなかった。だいたい日本シリーズぎりぎりになるまで中日が日本シリーズに出場するのかどうかわからないというのは、仕事のスケジュールを直前まで決められない点でとても困る。日本シリーズのチケット入手にしても、セ・パのCS途中から抽選の受付が始まり、パ各3チーム分の受付をしなければならないなど、面倒至極だ。

 

今回もなんとかやりくりして日本シリーズ第4 7戦のチケットを入手した。ただでさえ日本シリーズに弱い中日の相手が、前年の日本シリーズで完膚なきまでに叩きのめされた日ハムなので、本来ならほとんど期待できないところだが、中日は今回のCSで阪神に2連勝、巨人に3連勝と負けなしで勝ちあがってきたことから、日本シリーズ開幕前の中日の53年ぶりの優勝への私の期待度は50%

 

 

1戦:10/27() 札幌ドーム

昨年に続き、先発投手は中日がエース川上、日ハムは球界のエースとなったこの年沢村賞男のダルビッシュ。1回裏、川上が2四球のあと日ハムのセギノールに2-0から投じた高めの見せ球を3ランされ、初回で試合が決まってしまった。超エース級のダルビッシュは3失点するような投手ではない。実際ダルビッシュの150km/h台の速球と打者の手元でするどく曲がる変化球に、中日はシリーズタイ記録の13三振をきっし1-3で負け。2回以降は日ハム打線を完ぺきに抑え2安打完投と絶妙のピッチングをした川上だけに、またもや日本シリーズに弱い中日を見せつけられた。私の期待度は30%に・・・。

 

2戦:10/28() 札幌ドーム

中日は14勝を上げてチーム最多勝の中田、日ハムは9勝のグリンが先発。第1戦で3三振を含む4-0DH立浪をそのまま5DHに起用した落合監督にはがっかり。堂上兄ではだめなのか。中日は1回表に森野の犠牲フライで1点を先制。4回表には一死満塁から中村紀の2点タイムリー2塁打と押し出し四球で4-0。このイニングだけで5四球の日ハム投手陣に助けられた。4回裏に日ハムセギノールのソロ・ホームランで4-1とされるも、6回表に中日イ・ビョンギュのだめ押し2ランで6-17回表には森野の2ランが飛びだし8-1と大差をつけた。中日で最も頼れる先発投手に成長していた中田は8イニングを投げ抜き8-1の大勝。これで11敗のタイに。中田はCSからのポスト・シーズン3連勝と大車輪の活躍だ。ダルビッシュは別格としても、第2戦の先発が球威のないグリンでは、日ハム投手陣の手薄さが見えた。対して中日は川上、中田、朝倉の強力な3本柱を擁している。しかも日ハム打線はこの日もわずか4安打。私の期待度は60%に。

 

3戦:10/30() 名古屋ドーム

中日は朝倉、日ハムは武田勝の先発。これは昨年の第3戦と同じ組み合わせで、昨年は武田勝が勝ち投手になっている。しかし今年の中日と日ハムの戦いは不思議なぐらい昨年とは違っていた。中日は1回裏になんと日本シリーズ新記録の7打数連続安打での7得点と怒涛の攻撃を見せて試合を決めてしまったのだ。武田勝はわずか1/3イニング、翌日の先発が有力視されていた二番手スウィーニーも1/3イニングで降板。日本シリーズでこんなに強い中日は今まで見たことがない。中日は2回裏にも2点を追加し、朝倉は71失点の好投。中日は9-1で完勝し21敗に。日ハムはこの日9安打したが、昨年の日本シリーズMVP男でペナントレース首位打者の稲葉が未だ9-0と絶不調。それにしてもこの年中日にテスト生で入団した中村紀の調子がいい。今年の日ハムは弱い!いけそうな気がしてきた!私の期待度は70%に。

 

4戦:10/31() 名古屋ドーム

4戦までの胴上げはないことからこの日も自宅にてテレビでの応援。中日は巨人とのCS1戦で好投した左の小笠原、日ハムは高校生ルーキーの吉川が先発。中日は1回裏に、四死球とエラーに乗じて2点を先制。4回表に日ハム金子のタイムリーで2-1に。中日は5回表に二死満塁とされたところで好投の小笠原を諦め、二番手に鈴木を投入。鈴木はストレートの押し出し四球を出し2-2の同点とされた。まだ5回とはいえ、ここは三振が取れる平井または岡本を投入してほしかったところ。その裏に中日ウッズの打席で吉川のタイムリー・ワイルドピッチにより中日は再び3-2と勝ち越したが、その後の絶好のチャンスにウッズ、中村紀が凡退。19歳ルーキーの日ハム吉川は52死で2四球を出し降板したが、被安打3の好投。中日は7回からいよいよ平井を投入。7回裏から登板の日ハム武田久に対し中日は無死23塁とし、ここで犠牲フライでも出れば勝利はほぼ確実という場面で、昨年に続きシリーズ不振のウッズが三振。しかし中村紀が粘りのタイムリーを放ち、4-28回表から中日は岡本を起用。2点差の残り2イニングなら直接岩瀬に繋いでほしかった。岡本は過去の日本シリーズの大事な場面で打たれている投手だ。しかし今回の岡本は8回表を無失点に抑え、9回表には3年連続40セーブ以上の鉄腕岩瀬が日本シリーズ初登場。完璧に抑えて、なんと中日にとっては日本シリーズ初の3勝1敗に!ついにそのときがやってくるのか!!!それにしても落合監督、ペナントレースでは岩瀬を酷使するくせに、日本シリーズではどうしてこう出し惜しみするのか。稲葉はシリーズ13打数目で初ヒットが出るも、時すでに遅し。この日中日が負けたら第5戦を観に行くべきか悩んでいた私だが、これで心おきなく翌日会社を早退し名古屋に行く決心をした。私の期待度は75%に。しかし未だ中日が日本シリーズで勝てるというイメージが沸かない。

 

5戦:11/1() 名古屋ドーム

中日はペナントレース後半になって先発の機会が増えた64敗の山井、日ハムはダルビッシュの先発。確実に日本シリーズで優勝するためにダルビッシュの先発が予想されるこの試合を捨て、第6戦に中6日でエース川上、第7戦にチーム最多勝の中田を起用するためのこの日の山井先発だろうと中日ファンの誰もが思った。ところが山井はケガが多くシーズンを通しての活躍ができない投手ではあるものの、3年前の西武との日本シリーズで勝ち投手となるなど大舞台には強い投手。その山井は初回から絶好調でパーフェクト・ピッチングを続けていく。中日は2回裏、ウッズのヒット、中村紀の2塁打で無死23塁とし、一死後平田の犠牲フライで1点先制し、大手をかけた試合で先取点を奪った!しかしなぜか私は53年ぶりの日本一がかかるこの試合を、気持ちの高ぶりもなく、オープン戦を見ているような気分で観戦していた。ペナントレースをテレビでさえあまり観なくなったので、53年ぶりとは言え、この年の日本一にかける意気込みが足りなかったのか、はたまたプロ野球への情熱が失われていたからか、それとも46歳になっていた私の歳のせいなのか。

 

なんと山井は1-0の緊迫した試合を8回までパーフェクトに投げ抜いていた。日本シリーズでの完全試合は過去になし。私も中日ファンも優勝以上に山井の完全試合に期待し始めた。ところが中日最後の守りの9回表に、史上かつてない采配が振るわれた。ベンチから落合監督が出てきたときに初めて岩瀬投入の可能性に気がついたが、私としては山井に投げ抜いて欲しかったし、中日ファンの悲鳴に近い山井コールも。しかし無常にも落合監督は岩瀬を投入。その瞬間私はへたり込んでしまい、落合監督への怒りが込み上げた。確かに実績と確率論で言えば岩瀬投入かもしれないし、53年ぶりの優勝もかかっているが、勝てばいいのか。一つ目のアウトを三振で奪った背番号13を見たとき、この投手交代は入団以来9年連続50試合以上登板という奇跡の貢献をしてきた岩瀬への温情であり、落合監督は勝ちにこだわったわけではないとも思え、なんとか気持ちを切り替えようとした。しかし中日が優勝した瞬間、私は全く感動できずにいた。夢のない野球だと思った。オリックスとの仲たがいで、背番号なしの育成選手から再起を果たし、シリーズ全試合でヒットを放ち(18-8)日本シリーズMVPに輝いた中村紀の涙のインタビューには感動したが・・・。

 

NPBのルールではこの試合は完全試合にはならないが、MLBでは継投であっても完全試合になるようだ。山井は途中から指を怪我していたようだし、53年ぶりの優勝と一投手の記録の重みを比較すれば、岩瀬投入はわからないでもないが、中日ファンだけでなく、野球ファンのことも考えて、山井を続投させてほしかった。プロ・スポーツは客を楽しませてなんぼだろう。だいたい落合監督になってから、守備力強化で中日は強くなったが、私の興味は遠のき続けた。中日のカラーは野武士野球・恐竜打線だ。守り勝つ野球は玄人眼にはいいかもしれないが、つまらない。万年Bクラスでいいから巨人にだけは強い打撃のチームになってほしい。こんなことだからメジャー野球に選手もファンも離れていく。この継投に対するプロ野球OBのコメントは次のようなものだった。

広岡:賛成

森:賛成

星野:反対

谷沢:「落合は監督の器ではない」と強硬に反対

野村:反対

賛成が巨人OBだけであることからも、勝ちにこだわるつまらない野球ではなかったか。

  

私のシリーズ行脚はこれで終わる。ここ数年めっきり興味のなくなったプロ野球観戦もこれで卒業。中日の優勝より、これで日本シリーズ行脚の呪縛から解き放たれたことの方が嬉しい。それにしても山本昌抜きの寂しい日本シリーズ優勝であった・・・。

 

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