Round 19 SUGO R6レーシング・スクール

2001.11.20

 

今回はSUGOサーキット初体験記だ。会社をなんとか二日休んで、念願のヤマハ主催SUGO TZ125・R6 レーシング・スクールに行って来た。平さんが校長で、WGPのNHK解説者やってる元ヤマハのライダー難波恭司氏が教頭の一泊二日合宿スクール。65名の応募があり、書類選考で35名が参加。おらはこの年齢では選考通らんと思ったが、サーキットやってることを書いたのが効を奏したか、選考通ったのだ。おらより年配の人も少なくとも2人いたから年齢は関係ないようだ。SUGOは仙台の近く。遠いから前日の日曜に出て前泊することにした。最初は四輪で行くつもりだったが風邪ひいて体調悪く、新幹線で仙台まで行き、そこからバスで行った。自宅から5時間程かかり17:30に到着。SUGOサーキット内のホテル、くぬぎ山荘の8人ぐらい泊まれる大部屋に3人が相部屋。同室のお二人は長野からきたリピーターで、話が止まらないヤマハ店の店長とその客。

 

11月12日(月)

平校長はなんと浜松から例のBMWのツアラーで来てる。日本中どこでも二輪で行っちゃうんだろか。ジョーもこのスクールに申し込んでて、東京からヤマハTDM850で来てた。R6にTDM850たー、奴はおら以上のヤマハ信者だ。ジョーはヤマハのレーシング・スクールには2年前のこのSUGOと今年の鈴鹿についで3回目の参加になる。

 

総勢35名の定員の内6名がST600仕様のYZF-R6、29名が2スト・レーサーのTZ125を借りる。遠路韓国から参加のライダーが9人もいて彼らはみなTZ125に乗る。車種は違うが、GP125のSUGOのコース・レコードとST600のそれとは若干GP125が速いがほぼイコール・コンディション。

 

最初に簡単な講義を受けた。その際、路面が冷たいから転倒しやすいので、くれぐれも注意するように言われた。本書読者の平校長には、以前平レーシングでお会いしたとき、おらが転倒しすぎることを注意されたから、おらはここでは絶対転倒したくない。でもどんなに気を付けても転倒するのがおらなんだ。二日間まるまる走って転倒しないわけがないと最初から諦めてた。


5425 講義中の平校長

 

次にバスでコースを回りながら難波教頭のコース説明を受けた。シケインではバスを降りてシケイン内の芝生に入れてもらい良い例と悪い例のライダー1人づつを同時に何回か進入させて、シケインの走り方を説明してもらった。難波教頭にR6でのシケインのギアを聞いたところ、「シケインは2速。R6で1速を使うところはない」と。このシケインはかなり登ってるからか、FISCOのシケインと違って対処しやすかった。SUGOの特徴は、下りコーナーが多いってこと。特に110Rは随分急な長い下りのコーナーだ。FISCOにも筑波にもこんな下りコーナーはないから、最初は入り方が全然わからなかった。

 

今回用意されたST600仕様R6のノーマルとの違いは、おらが知る限りでは、以下の通り。

・軽量サイレンサー

・バック・ステップ

・メッシュのブレーキ・ホース

・ショートなスプロケット

・シングル・シート

・ライトなしのフロント・カウル

・ウィンカーなし

 

残念ながらタイヤはミシュランのパイロット・スポーツ、つまりノーマルのスポーツ・タイヤ。どのR6もまだ1,000Km程しか走ってない新品で、走ってみた印象は倒しこみが軽くてシフト・チェンジがスムーズってことだ。

 

各ヒート20分弱を無作為に分けられた二つの班に別れて走行した。R6の6人組は三浦インストラクターが先頭ひっぱり、西川インストラクターが後ろから各人を見てくれる。三浦インストラクターはSP250の日本タイトルとスーパーバイクのエリア選手権タイトルとって既に引退したライダーだ。


5429 三浦インストラクターと

 

1ヒート:まずはタイヤを暖めるための暖気走行。ところが発進していきなりトラブル。シフト・アップできない!ギアが壊れてると思い1速のまま一周走ってピット・ロードに入ったとたんにシフト・チェンジできた。ギアが直ったと思ったおらはそのままピット・ロードを走りぬけ再びコース・イン。そしたらやっぱりシフト・アップできない。やっと逆シフトだとわかり、また1周した後ピット・インして間違いではないかと聞いてみたらR6も逆シフトとのこと。再びコース・インして逆シフトに慣れようとしたが、脳たりんのおらにはどうしてもだめ。ギアをあべこべに入れてS字出口のイン側縁石に乗り上げるわ、バック・ストレートでシフト・アップしたつもりがシフト・ダウンしてリア・タイヤを滑らすわと、危なくてしょうがない。おらは逆シフトを諦め、またすぐピット・インして三浦インストラクターに正シフトに変えてもらえないか頼んだらすぐ変えてくれた。変えてくれなきゃ二日間パーになると思ったよ。それにしても、他の連中は普段から逆シフトで乗ってる奴らばかりじゃなさそうなのによく対応できるもんだ。

 

暖気走行終わった後、4ラップ走ったおらのファステストは208。クリッピング・ポイントにパイロンが置いてあるのがいい。ジョーは206。110Rでジョーに抜かれたときにゃー、ジョーのスピードにはとてもついてけんと思った。ところがその後ジョーはシケイン抜けた最終コーナーの入り口でスロットル開けすぎて転倒した。後でジョー曰く、転倒したのはおらのせいだと。おらがバック・ストレートのブレーキングで抜いた何台かの中にジョーがいたらしく、抜き返そうとしたジョーが飛ばしすぎた結果だそうだ。普段転倒してばかりのおらが転倒せず、絶対転倒しないジョーが転倒した。

 

気温10度だが、走り終えると汗びっしょり。雨は降りそで二日間とも降らなかったからよかったよー。FISCOや筑波と違って、ここでは自分が何速に入れてるか、最初から良く分かる。なんでだ?

 

西川インストラクターにブレーキングをどこまで引きずるのか聞いてみたら、「クリッピング・ポイントまでフロント・ブレーキは引きずり、オーバー・スピードと思ったらちょっとブレーキングすればいい」と。おらのやってるブレーキング二本がけでは、シフト・ダウン時のアクセル・ワークでブレーキ・レバーも引っ張ってしまいスムーズにいかないことを話し、西川インストラクターがどうやってるのか聞いたら、「人さし指と中指の二本がけでブレーキングし、その後中指だけでブレーキングしながらシフト・ダウンし、シフト・ダウンが終わったら、またブレーキングを二本がけに戻す」そうだ。おらの問題を解決するにはいい方法かもしれんが、なんだかややこしそうだ。試してみたら、おらにはやっぱり難しすぎた。また、「ストレートではつま先でステップに乗る」そうだ。

 

もう一つ。「例えば左コーナー前のブレーキングのニー・グリップは下半身を左によせながら両膝で行う」と。おら今まで片膝でやってた。というか片膝だからちゃんとできなかった。レッスン書にステップを足で押す方法も載ってたが、バック・ステップではそんなこととてもできんから聞いてみたら、「ステップを押すってことはない」と。それはネイキッドのノーマル・ステップでのやり方か。

 

お弁当の昼食。

 

2ヒート:おら一挙に7秒縮め、201出してジョーも同タイム。2コーナー、ヘアピン、レインボー・コーナーでやっと膝をかすかに擦る。こんときゃ8ラップくらいして走り終わったときには膝が笑ってた。ピット内にあるラップ・タイム・モニターに全員のファステストが刻々と表示されて、みんなは走り終わるとまず自分のタイムを見る。おらは走り終わるとまず膝から崩れ落ちる。ここしばらくテニスやってないし、ここはFISCOよりも体重移動が忙しいからだろう。8ラップ目には右手の握力がなくなって、ブレーキングは3本がけに変えた。

 

コース・イン時とピット・イン時にみな左手伸ばして合図するが、それってやらなきゃだめなの?おらもピット・イン時にそれやってみたら、ピット・ロードに入る直前で何故かマシンが右に寄り出し、みるみるうちに結構なスピードでコースを外れ、芝に乗ってしばらく走り、ピット・ロード手前のコース路面に再び復帰した途端ハンドルが左右に大きく揺れ出して、おら転倒を覚悟した。幸いしばらくしてからハンドルの揺れは止まり、ことなきをえたものの、それ以来、おら左手合図を一切やめた。いくらハンドルに入力しないのがセオリーとはいえ、サーキットでハンドル放すなんて不器用なおらには自殺行為だ。そこへ片手運転の得意なライダーが現れた。

 

おらがへたり込んでたところへ、平校長がタンデム(二人乗り)に誘ってくれたのだ。ノーマルのペケJ1300でのタンデムだ。いやー、おらがこのスクールを申し込んだのは、ジョーから平さんの後ろに乗せてもらったことを聞いてたからなのだ。おら、長いストレート後のコーナー手前での連続シフト・ダウンで、プロがどのくらいの時間間隔でシフト・チェンジしていくのかを前から知りたかったのだ。ところが…。平校長のシフト・ダウンはショックがまるで感じられないし、左手のクラッチ・ワークを見てもほとんど動きが見えないから、ずっと同じギアに入れっぱなしなんじゃないかとホントに疑った。シフト・チェンジしてないわけがないから、シフト・ダウンがめちゃんこスムーズなんだろう。まるで無段変速機の二輪に乗ってるような感じだった。だからシフト・ダウンの間隔などわかりゃしない。右手のスロットル・ワーク見ればよかったと後で気付いた。ブレーキングの力強さにも驚かされたなー。しかし、平校長のタンデムで最も驚かされたのは下りコーナーへの進入速度だ。その速度は、おらの常識を根本的に覆す速さだった。さすがにシケインへの進入ではスピード殺してたが、他の下りコーナーではホントにこんなスピードで入ってグリップできるのっ!てなスピードであっけなく入っていく。二人乗り、ノーマル・ステップ、ノーマル・タイヤのXJR1300でだし、絶対転倒しない様に相当余裕を持ってるはずだから、WGPレースでの進入スピードは想像を絶するものなんだろう。おらと速いライダーとのタイム差はこれがいっちゃん大きいと確信した。そして平校長はとても親切なことに、右コーナーになると左手でクリッピング・ポイントを指さしながら片手運転でコーナリングしてくれちゃう。「クリッピング・ポイントもう十分わかりましたから、許して下さーい!」と叫んだ人間が何人かいるに違いないが、二輪に乗ってるときに声は聞こえない。

 

平校長に「スムーズさを心がけるように」と言われた。誰かに言われた言葉と一緒だ。そうだ、ラッセルさんだ。平さんはラッセルさんと面識があるとのことだから、あのラッセルさんの言葉は平校長の受け売りか?あんなにスムーズなシフト・ダウンができれば次のコーナリングに集中できていいだろうなー。ちなみに平校長のブレーキングはオーソドックスな二本がけ。平校長は難波教頭の後ろに乗ることも薦めてくれた。やたー。おら難波教頭のタンデムはワイルドだと相部屋の人に聞いてたからそれも楽しみだったが、お二人にお願いするのは気が引けてたのだ。

 

そういや最近ラッセルさんと何回かやりとりした。筑波でMV AGUSTA F4のワン・メイク・レースに出たそうだ。ちっともFISCOに顔を見せなくなったラッセルさんは、もてぎや筑波で走ってた。で、おらに筑波で走ることを強く薦める。筑波で走ると速くなると。筑波まで行くのはちょっと億劫だが、FISCOだけでは月に一度くらいしか走れないし、MCFAJのレースは筑波でもあるから筑波のサーキット・ライセンスも取ってみようかしらん。ジョーはもてぎのサーキット・ライセンスを取って何回か走ってるようだ。ラッセルさんに、おらが妙なスペル・ミスをしてることを教えてもらった。おらはFISCOで良くやるクラッシュをcrushと綴っていたが、crashと綴るべきだったのだ。おもろいことに、crushという単語もちゃんと存在し、かつこの二つの単語の意味は似てるようで似てない。発音の使い分けはおらにはできん。

 

3ヒート:おら平校長のタンデム時にグラブ・レールを右手で必死こいて握り続けて握力なくなったから、タンデム終わってすぐ始まった第3ヒートは、思いきってパスした。ジョーはこのヒートでタイム伸びなかった。おらは、ちょっとおちついたところで難波教頭を見つけ、タンデムをお願いした。平校長はつなぎを来ていないが難波教頭はスリムなつなぎのいでたちだ。恐らく平校長は選手時代のつなぎはもう物理的に着れないし、つるしで買えるサイズもないのだろう。

 

難波教頭から「上中下のどれがいいですか?」と聞かれ、おらは迷わず「上お願いします!」でも、後述のモンスター女の話では、“スペシャル”もあったらしい。難波教頭、サービスいいぞ。ピット・ロードでいきなり長ーいウィリーだ。師匠といい難波教頭といいこの年代のヤマハのライダーはウィリー好きじゃのー。そして噂どおりのステップガリガリ超高速タンデム。難波教頭は、おらがサーキットやりだす前までやってたのと同じ人差し指抜きの3本がけ。逆シフトについて聞いたところ、偶然にも難波教頭は正シフト。ヴィアッジも正シフトだそうだ。正シフトのトップ・ライダーがいるってのは嬉しい。


5430 難波教頭と

 

平校長からアドヴァイスを戴いた。おらの着座位置はいつも後ろすぎ、つまりストレートでの着座位置一辺倒で、ブレーキングやコーナリング時にはタンクの前まで下半身を持ってこなきゃいけないと。そしてブレーキングの際、背筋で上半身が前につんのめらない様に踏ん張るようにと。S字ではリズムに乗ること。イン側の足はもっと後方につま先近くでステップに乗せると。

 


5427 平校長と

 

4ヒート:2秒縮まり159で、ジョーは202。一日目で既に2分切れるなんて嬉しかー。平校長に教わった着座位置にすると、なぜか驚くほど恐怖感なくコーナーに進入できる。これはどえらい為になるアドヴァイスだった。んでもって、このヒートはすごく乗れてて、8ラップを毎ラップ機械のように正確に同じペースで走ったって感じ。こんな感覚は未だかつてない。実際タイムを見ても計8ラップ中、4ラップ目から7ラップ目にかけての4ラップが全て58-59秒台と嘘みたいに安定してる。でも自分の間隔では155は出てると思ったんだがなー。このヒートでは膝を全く擦ってないからだろう。もっと寝かせて、まだまだコーナー進入スピードは上げられるはずだ。それにしても着座位置でなぜこうも感覚が変わるのかとても不思議だが、今読みかけてる和歌山利宏の“サーキットライディングを科学する”にそのように乗る必然性が書かれていた。和歌山氏の著作を読むのは2作目だが、かなり難しいもののいずれも秀れた作品だ。

 


5428 左が80ccで筑波のレースやってるウィリー君こと浦野君。ウィリー君は随分ためらっていたものの、モンスター女の強引な押しで実現した平校長のタンデムの後、一挙に10秒短縮し、おらのタイムに迫ってきた。右がジョー。もちろんこの並びは表彰台同様、真中が一番速いライダー

 

今日はこれで終了。転倒したのはたったの3人。それにしてもおらはこの日、計測周回だけで24ラップもしてるのに、転倒しなかったってのは快挙だ。初めてのコースでおっかなびっくりだったのか?そうとも思えないし、実際それなりのタイムも出てる。FISCOの方が未だによっぽどおっかないよ。

 

R6に乗る6人中一番速かったのがなんと女性で153台。ドゥカティ・モンスターでレースやってるという、名付けてモンスター女。彼女が去年このスクールに参加してTZ125で走ったときは更に7秒速く、R6でタイムが伸びないのをぼやいていた。「TZ125の方がスリック・タイヤと車重の軽さのおかげでコーナリング・スピードが断然速いし、R6はTZ125に比べて車高が高すぎて走りにくい」と。ちなみにR6組でもう1人翌日に53秒台を出した人が二輪でパリダカに出たことがあるというバイク・ショップの店長、名付けてパリダカ店長。この二人がR6組ではダントツに速かった。

 

前述のようにSUGOでのGP125とST600のコース・レコードはGP125が若干速いがほぼ同タイム。まあ、コーナーの多いSUGOだからそれもしかたあるまいと思ったが、なんとFISCOでもGP125の方がST600より若干速いほぼ同タイムだった。あんなに長いホーム・ストレートを持つFISCOで125ccがそんなタイムを出すなんて、2スト・レーサー恐るべし。さすがサーキットを走る為だけに作られた二輪だわ。そういやFISCOの最終コーナーを路面に張りついたようにかっ飛んで行く2スト・レーサーに、おらはよくぶっちぎられる。ストレートも長いが高速コーナーも長いFISCOだから125ccでもそんなタイムが出るんだろう。ちなみにどのクラスのコース・レコードもほぼ、SUGO + 7秒 = FISCOだから、おらのFISCO 205に対し、初日のSUGOで159は上出来だわ。逆に言うとおらはFISCOでもっと速いタイムが出てもおかしくないってことだ。おらはFISCO向きじゃない?それともR6とTTの違い?

 

全員バスでSUGOの敷地内にある、くぬぎ山荘へ移動。ジョーは前回は相部屋だったそうだが、今回は一人部屋になってた。たぶん外国人ってことでツインのベッド・ルームでも与えられたんだろうとふんだおらは、「おらはジョーの部屋に移る」と朝からジョーに言っておいた。で、ジョーの部屋を覗いたら3人部屋の相部屋より随分狭かったが案の定ツイン・ベッドだった。ジョーは転倒したことで落ち込んでて一人にするのも可哀相だったから、親切なおらはやはりジョーの部屋に移ってあげた。ジョーが最後に転倒したのは2年前のこのSUGO TZ125スクールで他のライダーにシケイン入口でぶつけられて以来だと。ホンマかいな?そういや奴のR6は無傷だった。全く贅沢な落ちこみだわ。おらは借り物のマシンでは転倒しなかったぞ。部屋のソファーを占領したおらに対して文句を言うジョーへのおらのやさしい一言。「勝った方の特権だろ」

 

ジョーはトラに乗るおらを外国人扱いした。しかもTTのことをツーリング・マシンとぬかした。ふだん笑顔を絶やさないジョーが本性を現わし始めたのだ。確かに同じスーパースポーツ600でも車種によって性格が異なることがだんだんわかってきた。例えばスズキのGSX-R600は最もサーキットを意識した作りでYZF-R6がそれに次ぐ。対してホンダのCBR600F4iはサーキットを重視しないスポーツ系マシンと言われている。カワサキのはわからん。TT600も日本で話題になることはないので、その位置付けがどうなのかおらは知らなかった。しかし奴はアイルランド人だけあって英国車のTTの生い立ちをよく知ってたから、ホントにTTはそういう位置付けなのかもしれない。しかしそうはいっても大した違いはないだろうから、やっぱり肝心なのはデザインだ。おらがR6のデザインの悪さをつくと奴はデザインまでもR6の方がいいとぬかす。こうなるとおらのヤマハ教への信仰心は消えうせ、R6対TTのデザインの良さ比べの応酬となった。

 

夕食は、R6組6人とそのインストラクター2名が一つのテーブルにつき、なかなか結構なお料理。三浦インストラクターにおらへのアドヴァイスを求めたら、「ブレーキング・ポイントが速すぎる。もっと遅くかけ始めてコーナー奥までブレーキ引きずるように。そしてメリハリつけること」と。意外なことに食事中に発表されたバック・ストレートのブレーキング開始地点で計測される最高速度は、R6組の中でおらの188Km/hがダントツの速さで、あとはみな170Km/h以下だった。でもタイムではモンスター女とパリダカ店長に負けてるから、三浦インストラクターの言うとおり、全てのコーナー手前でフル・ブレーキングし、スピード殺しすぎてるのがいけないんだろう。また、SPインの前で3速に上げ、SPインへの進入ではノー・ブレーキ、SPアウトの進入もノー・ブレーキ、110R手前ではなんと4速に上げここもノー・ブレーキで行くことを知った。そんなん信じられんー!おらはここを2速に入れっぱなし、かつブレーキングを多用してたぞ!

 

モンスター女に良いこと教わった。レインボー・コーナー出てバック・ストレートに入ったところで、スロットル全開にしようとしても、手首が完全に回りきらず、どうしてもスロットルを握り直してたおら。それを話すと、彼女が、「スロットルをまっすぐ握るのではなく、横握りにすれば全開まで回せると習った」と。確かに素手でやってみても横握りの方がより多く回せそうだ。実際翌日試したら、それでスロットル握り直す必要がなくなった。また彼女は、「SUGOはゼブラ、ゼブラ、ゼブラと習った」と。おらはコーナー脱出後のアウト側に膨れて乗るゼブラ・ゾーンはコース・アウトと紙一重に思え、おっかなくてなるべく近づきたくなかったし、だいたいゼブラ・ゾーンってのは、膨れてしまったときのエスケープ・ゾーンだと思ってた。しかしそうじゃなかったのだ。そういや平校長のタンデムでもゼブラ・ゾーンを有効に使ってたし、WGP見てても皆当たり前のようにゼブラ・ゾーンに乗る。ジョーにそれを話したら「FISCOの最終コーナーを走る俺達がゼブラ・ゾーンに乗るって発想できるわけない」と。でも逆に考えればFISCOの最終コーナーで膨れることを思えばSUGOのゼブラ・ゾーンなど恐くないはずだ。しかし結局翌日もゼブラ・ゾーンに乗ることができない、小心者のおらだった。

 

夕食後、ロビーのソファーでジョーとうだうだしてたらSUGOスクール総括の渡辺さんが、ビール数本持っておら達のところに来てくれた。他のインストラクターも何人かやって来て、いろいろ教わった。顔も言葉も典型的な大阪人の久保副教頭からこう教わった。

・「クラッチきる前にシフト・ペダルを足で持ち上げておくと速いギア・チェンジができる」

おら翌日やってみたがアクセル戻すタイミングが合わずギクシャクするので途中で止めたが今後練習してみるかな。

・「3速から2速にシフト・ダウンするとき半クラッチで繋ぐとリアがスリップしにくい」

こりゃまだおらには高度すぎる。

・どうしても3コーナー手前のストレートでアウトに膨らんでしまうことを話したら、「2コーナーを殺す」と。S字も同様で、「最初の左コーナーを殺す」と。これはその場にいた各インストラクターの意見が分かれるところだったが、おらはこれを意識して翌日S字に挑んだら、出口の右コーナーの縁石が気になることはなくなり、S字が随分うまくなった。でも、2コーナー出てからのクリッピング・ポイントへの寄せは最後までものにならなかった。

 

 

11月13日(火)

6℃と昨日よりかなり寒い。「絶対に転倒しないように」と平校長、難波教頭から昨日以上にくれぐれも念を押されてしまった。しかし、昨日転倒しなくて今日も転倒しないわけがないと信じて止まないおら。

 

おらは昨日初めてメガネかけて二輪に乗った。本書の執筆のせいか最近視力がめっきり落ちてきたのだ。で、昨日「コンタクト・レンズつけると風圧で動いちゃってだめ」とジョーに話したら奴もコンタクト・レンズ使ってるようで、「ヘルメットのエア・ダクトを空けると大丈夫」だと。ホンマかいな?おら風が入らん方がいいと思うけど。でも試しにこの日やってみたら、ホントに大丈夫だった。

 

西川インストラクターからエンジンのレーシング(暖気)の方法を教わった。2スト・レーサーと違って4ストのR6は6,000rpmを目途にふかし続け、80℃になったら2回ほどぶん回せばいいと。

 

1ヒート:205。なんでこんなに遅いの?膝こそ全く擦らなくなっちゃったし、まだまだ各コーナーへの突っ込みが甘いのは分かるが、110Rでは4速は無理としても3速に無理矢理入れて、ブレーキングも極力抑えて感覚的には157くらいなのに。110R下りコーナーへブレーキングなしで進入するのはなかなか度胸がいったが、周回重ねる毎にちょっとづつ慣れてきた。でもあと100ラップくらいはせんと、人並には突っ込めん。

 

ジョーをシケイン出口で抜いた。ジョーは昨日のここでの転倒が尾を引いてるようで、スロットルの開けが甘い。

 

西川インストラクターから、いい話を聞いた。「スロットルさえ開けなければ相当寝かせながらコーナーに進入してもタイヤが滑ることはまずない」と。ちょっと乱暴なアドヴァイスかもしれんが、そう思い込むことが今のおらには必要だ。おらは公道でこそSRV250で交差点突っ込み過ぎて前輪から転倒したことがあるが、今までサーキットでそういう転倒の仕方をしたことがない。WGPライダーが前輪から滑っていく光景はよく見るが、おらの進入スピードとは全然次元が違うはずだ。前輪から滑りだすぎりぎりを追求するとなると限界分かりにくいだろうが、おらのスピードならまだ相当余裕があるはず。

 

2ヒート:159で、一日目のファステストと同タイム。今度は110Rで無理矢理4速に入れ、感覚的には155くらいだったのに、これじゃー1日目の記録を抜けないよ。

 

ここでおらの前後に結構付いててくれた西川インストラクターにおらの欠点を聞いてみた。「ハイポイント・コーナー前とSPイン前でのブレーキングが強すぎる。イン側を見て、目線を先に持って行けば回れるから大丈夫」と。目線は師匠にも教わった注意点だが、ハイポイント、おまえもか!そう言われれば、おらはいつもハイポイント・コーナーまではついてけるが、そこからモンスター女に置いていかれる。こりゃー、清水の舞台ならぬハイポイント(コース最高地点)の舞台から飛びおりる覚悟で突っ込まなきゃ、いつまでたってもコーナー進入速度は上がらん。また、「イン側をつま先でステップに乗り、靴底を内側に向ければれば膝は擦りやすくなる。S字は両足の爪先をステップに乗せ、体重移動をし易くする」と。

 

三浦インストラクターに、ハングオフの際、イン側の膝と肘があたってしまうことを訴えると、「イン側の肘は外に出す」と。後にWGPライダーの写真見て気付いたが、ハングオフでも背がある程度立ってればイン側の肘が膝に当たるなんてことはそもそもないはずで、おらは背をイン側に傾け過ぎのようだ。

 

1コーナーは3速」だって!おらずっと2速で行ってた。でもあそこでホントに3速?

 

お弁当の昼食。

 

3ヒート:本スクール最後のタイムアタックになる第3ヒートは午後1時からの予定が、昼に走ってたホンダの白バイ軍団の内の1台が3コーナーからバック・ストレートの終わりにかけてライン上にオイルまいたせいで、1時間遅れ、追い越し禁止かつバック・ストレートはイン側だけを走る自由参加となった。おらはせっかくここまで無転倒で来たからやめようかと思ったが、ジョーがツーリングするというので行った。202。ツーリングにしては、まあまあのタイムだわ。しかし最後のタイム・アタックをポリに邪魔されてみんな怒ってたなー。それにしても一言も詫びがないとは宮城県警なっとらん。

 

最後は待ちに待ったスタート練習。計2回のスタートだ。おら公道での信号発進がすばやいから、やったこともないスタートなのに絶対得意なはずだという、妙な自信があった。「2スト・レーサーの1速はプロダクション・レーサーの2速か3速くらいに相当するから、TZ125はウィリーしにくいがR6は簡単にウィリーするので気を付けるように。8,000rpmでスロットルとクラッチを徐々に繋いで行くように」と。WGP見てて、みんなスタート遅いなーと思ってたが、そういうことだったのか。レーサーが発進用のギアを持つのは確かに無駄だな。スタートでフロント・ブレーキ使わなくていいのか聞いてみたら、「フライング止めにリア・ブレーキを使う」と。へー、リアかー。まあその方が簡単そうだな。公道でSRV250のフロント・ブレーキ使ってスタートしたらひどくウィリーしてシートから落っこちそうになったことあるもの。

 

1回目:R6とTZ125のA班混走で18台での一斉スタート。ジョーが図々しくも1番グリッドに、おらは控えめに2番グリッドに、三浦インストラクターが3番グリッドに立つ。レース同様フラッグ持った人が消えてから、信号での発進。回転数を合わせてから赤信号見続けてたら、回転数が上がってるような気がしたが、タコ・メーター見なおしてる間に青信号になったらまずいからタコ・メーター見なおせない!信号が青に変わって発進!おら真っ先に飛び出したが、やっぱり回転数が相当上がってたみたいでウィリーした。で、前輪着地してふらついた瞬間、三浦インストラクターに右横すれすれを抜かれ、そのテールがおらのブレーキ・レバーに接触した!たいした衝撃はなかったが、ブレーキ・レバーがいかれて全く使えない。レースならいきなりリタイアだ。

 


SUGO.gif ファースト・ローの右から1番グリッドのジョーと2番グリッドのおら

 

リア・ブレーキ使って1ラップして戻り、修理ピットに行くと難波教頭がすぐにブレーキ・レバーを取り替えてくれた。と、かなり破損したR6が一台ある。ウィリー君こと浦野君がはでなウィリーしてそのまま真後ろに落っこちたらしい。ケガはなかったものの、今回のスクールで脅威適にタイムを上げてきてここまで無転倒だったのに最後の最後でやっちゃったから彼は相当ショックを受けてた。おらがウィリー君と呼ぶと本気で嫌がる彼とは、その後とてつもなく長時間になった大宮までの新幹線の道中で随分話が盛り上がった。

 

2回目:   危ないからだろう。今度はR6組は単独のスタートとなった。ジョーのやつはまたずうずうしくも1番グリッドに、おら2番グリッド、三浦インストラクター3番グリッド。それにしてもファースト・ローっていい気分だわ。リア・ブレーキ踏んでおくのはややこしくてまたウィリーしそうだから、今度はスロットルとクラッチ・ワークだけで行くことにした。発進!おらはまたもや、一人真っ先に飛び出した。しかも今度はウィリーしなかったからホール・ショットいただき!と思ったら、またもや右から三浦インストラクターがウィリーしながらおらをぬいてった!ホール・ショットは残念ながら三浦インストラクターに持っていかれてしまったが、おらは2番手。その後がおもろかった。3コーナー、ヘアピン、S字とパリダカ店長と接触寸前のバトルが続いた。スタートっておもしろーい。後で三浦インストラクターにいったいどうやってスタートしたのか聞いてみたら、11,000rpmでクラッチ・ミートしたと。ずるいよ、おらたちには8,000rpmって言ってたのに。

 

難波教頭の総評で、「適切なラインを走ることが安全かつ速い」と。おらが転倒せずにそれなりのタイムが出せたのは、全くそのおかげだろう。


SUGOcourse.gif SUGOのライン

 

今日の転倒は5人。おらがこんだけ走って転倒しなかったのは嬉しすぎる。インストラクターに先導してもらうと、ラインはわかるし、コーナー進入速度も分かるから助かる。1ラップもしないうちにモンスター女とパリダカ店長にぶっちぎられちゃって前はいなくなるんだけど。この日おらは29ラップしたが、29ラップ以上走ったのは35人中4人だけ。そしておらは二日間合わせてなんと計測周回だけで53ラップしてるから、2時間程走ったことになる。それで1回も転倒しなかったってのは確率的に言って奇跡だ。やはりラインを示めしてくれたからか?コースがいいのかクリッピング・ポイントを示めすパイロンのおかげか?うまくなってるのか?「コケるな!」とさんざん脅されたからか?R6だからか?おらはコースの違いによるものと思ってる。FISCOはおらのようなビギナーには難し過ぎるんだろう。対して、TT600でのFISCO通算ラップ数は、5日間でたったの40ラップだから、集中的に走れるこういったスクールで走る方がフリー走行よりも時間的にも金銭的にも、ずっと有利だ。FISCO、筑波、もてぎ、鈴鹿でも同じようなスクールがあれば嬉しいがなー。

 

じゃーん。リザルト発表。おらは結局二日目も一日目と同タイムの159で、35人中15位。上位8人はTZ125で、いっちゃん速い奴は147。韓国人のライダーの中には二人速いライダーがいた。R6の中ではモンスター女とパリダカ店長がダントツの153であとはゆったり派の1人を除いてダンゴ状態。ジョーは201でおらに負け、11月23日(金)のFISCOでおらに雪辱戦を挑んできた。FISCOでも何とか2分切りたいよー。

 

SUGOは何と言っても下りコーナーに慣れることだ。特にSPイン、アウト、110Rをブレーキングなしで突っ込んでいくのに慣れれば、ブレーキングを必要としない分、つかみやすいサーキットかもしれん。バック・ストレートのブレーキングでは、初日は何回か減速しきれず冷やっとしたこともあったが、二日目には随分慣れてブレーキ二本がけでのシフト・ダウン時のアクセル・ワークも気にならなくなった。それにしてもいい練習になったなー。転倒しなければいっぱい練習できるってことをラッセルさんに教わったが、ホントそのとおりだよ。

 

おらは立ち上がり重視の観念にとらわれ過ぎて、少なくともSUGOでは、コーナー前でスピードを殺し過ぎてた。恐らくこれはどのコースにも言えるのではないか。コーナーへの進入スピードはもっともっと速くて良いのだ。FISCOでいえば、

1コーナー

・サントリー・コーナー

・ヘアピン

はもっとスピード乗せて入れるはずだ。

 

このスクールは黙ってたら損。こちらから聞けばインストラクターはいくらでも丁寧に教えてくれる。西川インストラクターは口は悪いが、みんなの走りを良く見てくれてた。三浦インストラクターは優しいからウィリー君もファンになってた。サーキット・ライダーがタイム・アタックしながらライディングについての疑問や自分の欠点を教えてもらうにはうってつけのスクールだ。どんなスポーツにおいても、自分で自分の間違いにすぐに気付く天才的なアスリートというのも存在するが、大多数の人間は人に自分のフォームを見てもらい、間違いを指摘してもらう必要があるだろう。

 

二輪メーカーでサーキットを使ったレーシング・スクールを主催してるのはヤマハだけ。宿泊費、食事、マシン・レンタル費込みで\50,000は破格値だ。たぶんこれは主催者側としては採算合わないだろうし、ケガ人がでる危険性を考えると躊躇したくなるかもしれない。ホンダでさえ、ジムカーナもどきのスクールしかやってないのだ。その点ヤマハは偉い!SUGOも気に入ったから、おらは来年もぜひ参加したい。んでもって、150程度を目指したい。TZ125に乗ってみるのもいいかもしれん。

 

 

SUGOからの帰りの新幹線が電力事故で遅れに遅れ、翌日は会社に行かなきゃいけないのに自宅にたどり着いたのは夜中の02:30。途中の東所沢駅からはJRがタクシー代を出してくれた。おらは重いつなぎを持つのが嫌で、行きも帰りもつなぎ着たまま電車に乗った。んだからこの日はつなぎの着たきりすずめで、タクシーの運ちゃんにはスキー帰りと間違われる始末。18時間つなぎ着続けた人間なんてこの世にいるんだろか?24時間耐久だって、ライダー交代したときはつなぎを脱いでるはずだ。

 

back