アメリカ・ノーヘル・ツーリング

2004.11.13

おらは米国北東部のニュー・ハンプシャー州への出張中に海外で初めてバイクに乗った。アメリカ人の友人がバイクを2台持っていて、前からツーリングに誘われていたのだ。その日はサマー・タイムがちょうど終わる10月31日の日曜日で、ハロウィーンの日でもあった。バイクは1981年式ホンダのゴールドウィングGL1100とこれも随分古いヤマハのXJ750Seca。どっちに乗るかと聞かれたので、おらは迷わずGL1100を選んだ。おらはアメリカン・バイクにも1100ccという大排気量車にも乗った事がなかったからだ。

GL100は800ポンドというから360kgぐらいの重さ。友人の家のガレージに頭から突っ込んであったGL1100を外に出して反対に向けようとしてもびくともしない。友人の助けを借りてやっとこさ走りだせる向きにしたが、これだけのビッグ・バイクにリバース・ギアがないのは致命的だと思う。おらは大型免許を持っているとはいえこんなビッグ・バイクに乗れるのか心配になってきた。しかし一旦走り始めれば何の問題もなく快適なバイクで、低速時でも安定感抜群だし、足つき性がすこぶる良い。アメリカで長距離を走るなら、まさしくこのアメリカン・タイプは座り心地が楽でいい。でも重いから27PSのおらのヤマハSRV250より加速が悪いし、ブレーキかけてもなかなか止まらない。だから普段使わないリア・ブレーキをその日は使った。

友人の選んだツーリング・コースは東海岸まで行き、途中友人の娘の大学寮に寄る、ニュー・ハンプシャー州とメーン州をまたがるものだが、なんとこの二つの州ではヘルメットの着用が義務付けられておらず、友人もおらもノーヘルで走った。後で調べてみたら、米国では2003年現在イリノイ州、アイオワ州、コロラド州では年齢制限なくヘルメットの着用が義務付けられておらず、ニュー・ハンプシャー州は18歳以上、メーン州は15歳以上ならヘルメットの着用が義務付けられていなかった。最初はノーヘルで走るのが怖かったがすぐ忘れた。ノーヘルのいいところは開放感があることと、2人が信号待ちで止まったときに、容易に会話ができることだ。

米国東北部の10月末にしては華氏73度(摂氏約23度)と気温に恵まれ、タイツにジーンズ、Tシャツ4枚とセーターにジャンパーを着込んで走り始めたおらは、すぐに一旦止まってジャンパーもセーターも冬用の分厚いグローブも外した。GL1100のグリップが太すぎて、分厚いグローブをはめていてはブレーキ・レバーもクラッチ・レバーもまともに握れなかったから助かった。

好天のせいかツーリングしている連中が多く、日本とは違い二人乗りが多い。アメリカでは高速道路の二人乗りが許されているからだろう。日本も来年はいよいよ高速道路の二人乗りが解禁になりそうで楽しみだ。アメリカでも日本同様ツーリングしている連中同士がすれ違うと合図し合うが、アメリカでは手を横に伸ばして手の平を向ける。

09:00にメリマック市にある友人の家を出て、ハンプトンという海岸沿いの町まで一般道路と高速道路を使って走ったが、ニュー・ハンプシャーの紅葉が美しかった。日本では北海道あたりでしか見ることの出来ない、北国ならではの見事な紅葉だ。ハンプトンは同じ海岸沿いの葉山あたりとは全く趣が違って、オーシャン・ヴューで大きな庭付きの豪邸が立ち並ぶ。その後メーン州のキッタリーに立ち寄りコーヒーを飲んで、友人の娘が通う大学まで走った。その大学のキャンパスは日本の大学と違い、綺麗で広々としている。キャンパス内にある寮に入り、その娘の部屋にまで入った。たった6畳程の部屋に女の子2人で住んでいたが、17歳のアメリカ娘の部屋に入れたなんて嬉しかったよー。


2017

そこからは高速道路だけを使って友人の家まで一気に走った。高速道路で道が合流する地点では、クルマが前後左右に寄ってくるから、さすがにノーヘルではおっかない。そして高速道路で飛ばし続けると髪の毛がばたついて、えらく痒くなる。ノーヘルのときは野球帽が必要だ。GL1100のスロットルが重いものだから、しまいには右肘が痛み出した。昼飯も食わずに走り続けて15:30に友人の家に無事到着し、120マイル(約200km)のツーリングが終わった。

日本で有料道路を走るときはハイウェイ・カードを持っていても、料金所を通るたびにグローブを外して・・・と面倒くさいが、アメリカの高速道路には滅多に料金所がなくてほとんど無料だから、高速道路を何度乗り降りしても面倒くさくないのがいい。

おらは去年サーキットで骨折して会社の上司からバイク禁止令が出ているだけに、海外出張中にノーヘルでツーリングしたなんてことが会社に知れるとクビになりかねないツーリングだった。しかし死にたくないのならノーヘルは絶対にやめた方が良い。転倒したら即死だ。“Live Free or Die”(自由に生きなきゃ死んだ方がまし)が標語のニュー・ハンプシャー州だが、実際は“Live Free and Die”(自由に生きて死ね)って感じの、おらの“脳減る“ツーリングであった。

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