ロッシ捨て身の最終コーナー!

 

2005.04.16

 

2005410日、ヘレス・サーキットで開催されたロードレース世界選手権第1戦スペインGPMotoGPクラス決勝レースの優勝争いは、前年チャンピオンのヴァレンティーノ・ロッシと前年ランク2位のセテ・ジベルノーが序盤から3位以下を引き離し、一騎討ちの状態が続いていた。残り3ラップになってそれまでジベルノーの後ろにピタリとつけていたロッシがジベルノーを抜き、最終ラップでは抜きつ抜かれつの激しいバトルが続く。そしてジベルノーが先行し、もうロッシに勝機はないと思われた最終コーナー手前。ロッシはブレーキングを遅らせてジベルノーのイン側に並び、そのまま最終コーナーに進入。ジベルノーはロッシのアウト側から曲がり始めるが、突っ込みすぎて曲がれないロッシに接触!二者は接触しながらコーナー外側にはらんでいき、ロッシはコース幅いっぱいで体勢を立て直して最終コーナーをクリア。ジベルノーはロッシに押し出されてコース・アウトし、転倒こそしなかったもののロッシを楽々と先行させて2位でゴール。ロッシは失格となることなくこのレースに優勝した。レース後のロッシのコメントは、「信じられないようなすばらしいレース」。対するジベルノーは、「最終コーナーで起きたことは、すばらしいレースを台なしにした」というものだった。

 

  

 

ロッシのこの強引な追い越しには賛否両論あったが、コーナーでの追い越しに関する危険行為が詳細にルール化されているわけではないので一概には決め付けられない。しかし私の見解は、世界最高峰ロードレースにおける決勝レース、しかも最終ラップの最終コーナーでの優勝争いであれば許される範囲、というもの。ならばスーパーバイク世界選手権なら?全日本選手権なら?となると判断が難しいが、少なくともアマチュア・レースでならやりすぎだとは思う。しかしアマチュア・レースをやっていた私でも、接触すれすれの強引な追い越しはしたものだし、されたこともある。抜いた後に悪かったかな?とは思うものの、レースの最中にためらうことはなかった。強引に抜かれたときは頭にきたが、それは私のわがままだと思う。

 

同じようなスピードで走る相手を抜くときこそ、ライダーの腕の見せ所。そして抜きつ抜かれつは、車体の大きい四輪レースでは見ることのできない、二輪レースの醍醐味だ。私は歴史に残るバトルを見せてくれたロッシの執念を賞賛したい。あれだけコーナーのイン側から進入したら曲がりきれないだろうことは自分でもわかっていたはずだが、ロッシはコース・アウトすることを覚悟で、唯一勝てる可能性のある方法を選んだのだ。極端ともいえるイン・アウト・アウトの追い越しラインと限界を超えたブレーキング・ポイントに賭けたロッシ。対して、ブロック・ラインを使っていなかったジベルノーは、勝敗への執念でロッシに負けていた。レコード・ライン(セオリー・ライン)だけでなく、追い越しラインやブロック・ラインを使いこなせてこそ、一流のレーシング・ライダー。ブロック・ラインを使うことを潔しとしない考え方もあるが、私はそうは思わない。レースはタイム・アタックとは違うのだから抜かせない技術は必要だし、抜く方にしても相手がわざと抜かせてくれるのではつまらない。だから、抜かせることを促す青旗が頻繁に出る四輪レースに私は魅力を感じられない。そしてロッシがそこまで考えたかどうかはわからないが、もし両者転倒となっていても、あのままジベルノーを先行させてチャンピオンの行く手を阻む最有力候補に5ポイント差をつけられるよりはましだったのである。

 

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