・奥西勝さんへ  〜やまかわみつる〜

あなたはそうやって
毎日
鉄格子の一室で
独り
袋貼りしているのですか

あなたの亡くなられたお母さんは
面会室に入ってきたあなたの
顔をみるなりすくっと立ち上がり
――なんでお前はやっていない事を
やっていないとよう言わなかったのだ
何度も何度も
泣き叫ばれたという

二十何年も前のその母のさけびが
昨日のように聞こえています
そう書いて
再審の裁判官に
あなたは手紙を出されました

もう
寒さが身にしみます

膝が痛むという
六十六歳の
そんな体にあなたはなっているのですね

膝が痛むという
六十六歳の
そんな体にあなたはなっているのですね
三十年ちかい独房生活
どのように生き延びられたのか

思いつめればつめるほど私は
身がふるえてとまらないのです
憤りは天をつんざかんばかりです

見殺しの三十年
父と母を悲しませ
二人の子ども達を離散させる
そんな権利が誰にあるのでしょう

ただ ただ
年老うあなた
けれど
どうぞ長生きして下さい
あなたをおとしめた者たちの
恥入る姿をみるためにも
(1992年11月)

*  この詩は、名張事件を題材にした小説『銀の林』の著者・佐藤貴美子さんから 「亡夫・佐藤則夫(やまかわみつる)の遺品のなかから出てきました」と送られた ものです。
(救援新聞2001年2月15日号より抜粋)