香功倶楽部

 


ここでは、私が愛好している気功法「香功」をご紹介します。

「香功(Xiang Gong)」の正式名称は、中国仏法芳香智悟気功」です。

伝人は、河南省洛陽の法号『釈迦開』の田瑞生師です。

【田瑞生(でんずいせい)師のプロフィール】
  12歳の時に難病にかかり、放浪中の香功伝人釈悟空法師によって癒される。
  治病後に弟子として香功を伝授される。
  「50年後に世に出て、人々を救え」という師の言葉を守り、浄厳法師、海法法師のもとで、
  50年の修練を積み、1988年5月に洛陽で香功を公開する。1995年9月30日永眠。

  93年には、中国での愛好者は1600万人に達し、爆発的に拡がりました。
海外においても、43カ国で多くの人たちが練功を行っています。
(中国においては、99年以降、法輪功問題によって、全国的組織をもつ気功団体はすべて解体させられている。)
 

香功の特徴は、簡単に習得でき、呼吸法、入静、意守などの必要がなく、
練功がしやすいこと、しかも効果が速いことが挙げられます。

初級、中級功法には、15の動作しかなく、すべてを行なっても16〜18分程度しかかりません。
この練功を1日2回行います。
練功中に芳ばしい香りを感じることができる人もいることから、香功と呼ばれるようになりました。



禅密宗の精華
香功は、仏教の中の「禅密宗の結晶」ともいえる功法です。
二千年前、一人の高僧によって創始され、
師から弟子へ伝授されてきた仏教功法の上乗法門です。

唐の時代になると、玄奘法に継承され、
南宋の時代には済公大師の李修縁に受け継がれました。
その後、代々受け継がれてきましたが、伝授方法はすべて、
師匠からの口伝と心による個人から個人への伝授でした。


伝授の際には、功徳が非常に重んじられました。
また、香功は潜在能力開発の気功でもあり、みだりに伝授してはならないとされました。
そのため、香功は人々にあまり知られてきませんでしたが、
現在、釈悟空法師の直伝により、釈迦開の田瑞生師に受け継がれました。


香功は、禅密宗の精華です。
意守にこだわらず、観念にとらわれず、功法の順序にしたがって鍛錬を続けていけば、
自然にその効果を得ることができるとされています。
(しかし、仏教気功といっても、仏教を信仰しなければならないということはありません。)

香功を習得することによって、全身が丹田のようになり、自然に外気が放出されるようになります。
話したり、笑ったりしながら、無造作に手を動かしているうちに、さまざまな生命の情報、香り、光、
気が放出されるようになるのです。
香功は、開放的で、敏感なタイプの人に目覚しい効果を見ることができるでしょう。


香功の理論には二つの重要なポイントがあります。

(1)仏教の功法は、「自らの内に仏性を見出すこと」に主眼がおかれています。
  すべて修行者自身が自らの体験でこれを悟らなければなりません。
  
  「悟り」という考え方は、仏教功法の知恵の結晶といえます。
  それは、認識過程において一切の邪念を取り除き、心身の調和を保って、
  一瞬のうちに自我意識を昇華し、認識上の一大変化を引き起こすということです。
  香功は、こうした認識方法の専門的な訓練法なのです。 
  これによって、悟り、身体を強くし、知恵や能力を高めることができるのです。

(2)人間の性格や気質、体質も様々であり、香功による効果も様々な形で現れます。
  禅の修業も人によって様々ですが、香功の道の進み方も千差万別ということです。
  つまり、その鍛錬過程を自然にまかせ、ゆだねるようにします。


  

空寂と悟り
禅宗では、空寂ということが強調されてきました。
悟るためには、自らが「ゼロ」になり、
「無」になることが非常に重要だということを意味しています。

空寂とは、気功の各派が最も重要視する虚静の状態のことです。
気功における最良の虚静の状態を言葉で表せば、
「気持ちの広さは無のごとく」ということになります。

この状態は、無になるといっても、けしてぼんやりしている状態ではなく、
常に意識がはっきりと目覚めている状態なのです。

つまり、時間と空間、主観と客観のない境地に入り、無為自然に戻る状態なのです。
人は、虚静の境地に入ると、小さな自然の境地(=入静)となり、天神感応が実現され、
そこで大自然の天地と通じ合えるのです。

観念をもたずに平然と香功を行なえば、やがて虚静に達し、
身体や手足を自然に動かすと、三宮(上、中、下丹田)は、自然に下がり、
すべての気脈は自然に流れていくようになると考えられています。

心身は、自然に無の境地に達し、「精」が「気」に変わり、
その「気」がまた「神」に変わるといわれています。

 

香功の仕組み
香功が意守にこだわらず、自然にまかせるのは、
「身体のすべてが丹田」であるという考え方によります。

これは、仏教学でいう「釈門循身観」の奥義でもあります。
全身の皮膚、毛、爪、髪、肉、骨および五臓六腑すべてを大事にし、
鼻や経穴だけでなく、全身で自然に呼吸することこそ、最高の調息法と説明されています。

鍛錬の際、経絡や経穴を意識する必要はありません。
全身にある8万4000の毛穴すべてが気を発する通路と見なしています。
これらは、気の調整や情報伝達の通路とも考えられており、
内臓とともに重要なものと考えられています。

「身体全体の経絡の運行を良くすることこそ、心身の全体が外界との交流の道を保ち、
 病気を治し、身体のバランスを維持し、健康状態に達する方法です。」

「人体のあらゆる組織が、それ自身でエネルギーと物質の獲得、
 使用、維持と情報の手渡し方法を備えている。」

香功の功法は、以上のことに一致した正に、人体組織の安定性を維持するための方法といえます。



香功の功法
香功の功法の動作の素晴らしいところは、天神感応に基づき、
人体の気の流れの法則に基づいていることです。
その動作は簡単に見えても、気を経絡の正常なルートに従って流れるように運行させ、
心身のバランスを調整します。

香功の鍛錬は、何よりも意念をもたないことが大切です。
動作を続けていくうちに、自然に入静し、邪念や雑念が次第になくなってしまいます。
静を求めずして、深く入静し、意識せずして自然に「悟る」境地に到るのです。

このような生理運動によって、心身が入静できる功法は、
意識的に入静状態に入る功法に比べてはるかに優れています。
この功法は安全で安定したものであり、偏りも滞りもなく、常に静寂で、
「悟る」という境地へと導いてくれます。

香功は、初級、中級、高級という三段階に分けられています。

初級は、基本となる功法で、主に上半身を動かす功法です。
これは人体の生理的機能を調整しながら、健康促進をしたり超能力をもたらしたり、
長寿に役立つ功法です。

中級は初級を基礎として、全身を練磨することによって、主に筋肉や身体を充実させますが、
他人の代わりに功を行なったり、またその功を発したりするための基礎功法です。

高級功の鍛錬は、比較的難しいもので、手印や信息(=情報)
の修行ともあわせて鍛錬します。これは誰にでも授功させるものではありません。
香功を鍛錬している人の功法や功力、またその人の素質の特徴を見極めた上で伝授するものです。




香功に必要な功徳
香功は、功徳を重んじています。
いつも穏やかな気持ちで、人と接し、人を助け、人を許す、おおらかな気持ちで鍛錬にいどんでこそ、
真の「虚」と「安」に入り、悟りを得ることができるのです。

田瑞生師は、五十数年に渡って、独自に研鑽を積んできた功法の公表を、
人々の健康の増進をはかり、病気を治すために行ないました。
田瑞生師自らが、その行動において功徳を重んじており、彼の人柄から功徳を学び取る人も少なくなりません。

田瑞生師、曰く
「人々のために奉仕をすることや実践が、香功を検証する唯一の基準である」

「修功は、まず他人を利することを目的としなければならない」

「喧嘩をするもの、手足が汚いもの、賭博や遊里に通うもの、親孝行をしないもの、
 名声に目のくらむもの、欲の深いものは、退学を勧告する」

「悪事を働くものは、大脳の皮質がいつも緊張や錯乱の状態にあるので、
 香功の鍛錬をしても効果がないだけでなく、偏差になりやすい」

「功徳は水の如く、功力は舟の如し。水かさが増して舟が高くなる。水があってこそ舟があるのだ」




香功初級功
予備式

第一節 金龍擺尾 きんりゅうはいび (金龍が尾を振る)

第二節 玉鳳点頭 ぎょくほうてんとう (鳳凰のおじぎ)

第三節 仏塔飄香 ぶっとうひょうこう (ひろがる香り)

第四節 菩薩撫琴 ぼさつぶきん (菩薩のピアノ)

第五節 鉢魚双分 はつぎょそうぶん (金魚鉢を持って)

第六節 風擺荷葉 ふうはいかよう (風が蓮の葉を動かす)

第七節 左転乾坤 さてんけんこん (天地を左にまわす)

第八節 右転乾坤 うてんけんこん (天地を右にまわす)

第九節 揺櫓渡海 ようろとかい (海を渡って)

第十節 法輪常転 ほうりんじょうてん (時は流れる)

第十一節 達磨蕩舟 だるまとうしゅう (達磨のお舟)

第十二節 仏風貫耳 ぶっぷうかんじ (風の音を聴く)

第十三節 耀眼仏光 ようがんぶっこう (光が見える)

第十四節 普渡衆生 ふどしゅじょう (みんなで向こう岸へ)

第一五節 童子拝仏 どうじはいぶつ (子どもの心)

収功

 

香功中級功
予備式 

第一節 俯掌擺胯 ふしょうはいこ (手のひらを下にして腰を振る)

第二節 推掌運気 すいしょううんき (手のひらを動かして気を運ぶ)

第三節 双手移物 そうしゅいぶつ (両手で物を移動する)

第四節 両手画葫 りょうしゅかっこ (両手で瓢箪を描く)

第五節 玉女纏絲 ぎょくじょてんし (仙女が糸をまく)

第六節 龍女採蓮 りゅうじょさいれん (龍女が蓮を採取する)

第七節 伏虎貫気 ふっこかんき (うずくまった虎が気を通す)

第八節 左右晃棍 さゆうこうこん (左右に棒を振る)

第九節 双手挿掌 そうしゅそうしょう (両手を下へ差し込む)

第十節 老翁擺掌 ろうおうはいしょう (翁が手のひらを振る)

第十一節 合掌画弧 がっしょうかっこ (合掌して弧を描く)

第十二節 飛天献花 ひてんけんか (天女が花を捧げる)

第十三節 飛天散花 ひてんさんか (天女が花をまき散らす)

第十四節 空拳運気 くうけんうんき (空拳を作り気を運ぶ)

第十五節 三聖打座 さんせいたざ (聖者が立禅をする)

収功

 

病気排出法
病気の邪気、濁気を排出する功法

歩行採気法
歩行しながら、周囲から採気する功法
  

                                                       

香功高級功
予備式

第一節〜第十五節  手印

収功

 

私の感想
香功は、動作が簡単なわりに効果が高く、
高齢者や病者にも無理なく始めることができる、といわれています。
しかし、動作の簡単さゆえに、その奥深さについてはあまり理解されていないようです。

おそらく、香功の練功をしている多くの人も、なぜ田瑞生師が、
健康法の枠を超え、この呼吸法も意念も使わない単純な動作をもって、
「香功は、禅密宗の結晶である。」とまで云うのか、分からないのではないかと思います。
「かなり誇大広告なのではないか。」そう思っている方も多いのではないでしょうか。

私が練功してみて思うのは、確かに香功は「禅密宗の精華」であろう、ということです。

香功は、初級、中級、高級功まで、同じ整然とした法則性のもとで成り立っている、
非常に洗練された、シンプルで、かつ高度な気功体系であるといってよいでしょう。
そのルーツは、「ヨーガ」にあると思われます。

呼吸や意念を使わないのではなく、使う必要がないほど高度に洗練されたものになっているのです。
その代わり、動作の自由度が低く、手足が意図された正確な軌道を描かなければ、
本来の効果が現れないようになっています。

香功の、その見かけ上の単純な型の中には、隠された深い功理があります。

香功は、田瑞生師の伝えたもので、基本的に完結しています。
物足りないからと新たな動作を付け加えたり、すでにある動作を省略したり、
順序を変えたりすることは、まったく意味がなく、香功本来の正果が得られなくなります。
功法は、すべて、「予備式、第一〜第十五動作、収功」の構成でなくてはならないのです。

この一定の法則の基に編まれた功法体系を見ると、
香功は、代々の先達が徐々にまとめ上げてきたものではなく、
非常に高度な悟りに到った一人の人間が、一代で創りあげたものであると思われます。
おそらくは、香功が成立したのは、二千年も前ではなく、数百年くらい前のことなのでしょう。

香功は、正果を得るために、その型を正確に行ない、順序を守る必要があります。
高級功と同様に、初級功と中級功のひとつひとつの動きは、「印(ムドラー)」なのです。

導引系の気功のように動作の自由度が高くなく、動きが大きすぎても、小さすぎても、
左右が違ってもいけないのです。男と女でも違いがあります。
それほど気楽ではいられません。
私個人の意見としては、初級功もテレビを見ながらとか、
雑談をしながらというのは、いかがなものかと思っています。(笑)

私は、ビデオなどを含めると、四人の中国人気功師の香功を見る機会を得ましたが、
率直にいって、四者四様の香功でした。
初級功もそうですが、特に、手の動きに加えて下半身の動きが入る中級功においては、
はっきりと分かる差異が見られました。

香功という気功は、簡単そうに見えて、
実は、それなりに習得が難しいものなのではないか、と思わずにはいられません。
ちなみに私自身は、初級、中級は主にビデオから、高級功は中国人気功師から学びました。

田瑞生というカリスマ的指導者の亡き後でも、香功の功法体系は、
他の仏教気功にも優るとも劣らない、シンプルで完成度の高い内容であると思います。

そうすると、香功を継承してきた中国の仏教学派についても興味が湧いてきます。

 

【参考資料】
『田瑞生「香功」』 監修 日本香功研究会 日本気功科学研究所  荒地出版社 1993年初版 絶版
『からだに優しい かんたん気功  香功』  仲里誠毅著  荒地出版社 2007年初版
ビデオとDVD  「香功」初級功   「香功」中級功    BABジャパン出版局

★香功を始めてみたい方へ
上記の本は、初級と中級功の動作の解説、練功時の注意事項などについて書かれています。
しかし、本だけでの自習は困難です。
本を参考に、ビデオやDVDの動きをじっくりと観察すれば、気功教室などと同程度の学習は十分できると思います。

また、「MICA BOX」という所から、
香功用音楽CDが発売されています。
http://www2.comco.ne.jp/~micabox/organic/xiang.html

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