さて、11話のシャーマモンと本部長様の意見を参考にするなら、スピリットエボリューションは上書きの進化です。
スピリットを使ったデジモンや人間が核(あるいは素体)となり、その上に十闘士から分化した姿があらわれるしくみなのでしょう。一属性につきわざわざ二種に分かれているのは、最初からひとつに統合されていると制御がむずかしすぎるからかもしれません。そのためかヒューマン・ビーストを使いこなす者はいても、融合体まで到達した例は本編開始時まで皆無にひとしかったようです。
ゆえに、ケルビモンは手持ちのスピリットに適合する者を見つけるため実験をくりかえしたものと推察できますし、33話でもそのように言っていました(闇のスピリットにはほとほと手を焼いていたようですが)。ならば、輝一をのぞく四闘士がもとは別のデジモンであった可能性はじゅうぶんにあります。
たとえばラーナモン。彼女は登場時、水のビーストスピリットを持っていませんでした。しかも、かなり以前からその所在を求めて調査をつづけていたようです。つまり、彼女は水のヒューマンスピリットによって進化をしたのでしょう。まったく違う水棲系デジモンだったのかもしれません。
が、本編の描写を見た限りだと、四闘士たちはスピリットを両方取られた時点で昇天していました。スピリットエボリューションなら、そのデータが消えた時点で前の姿に戻ってしかるべきだというのに。つまり、彼(女)らは前の姿があろうがなかろうが、存在するためにスピリットが最低ひとつ必要=不可分であるということなのです。素体とスピリットを強制的に融合させているのかもしれません。
ひとくちに融合といっても、さきに挙げた既存デジモンとのケースもあれば、そうでないケースもあるでしょう。またヒューマンとビースト、どちらを基本としているかも興味深いものがあります。最初にヒューマンで出てきたからといって、それが基本の姿だという保証はどこにもないのですし。
■鋼のマリオネット
ここで、メルキューレモンに目を向けてみます。
四闘士は全員ヒューマンモードで登場しました。当然、彼もその例に漏れません。ところが実は彼、28話でとんでもないことをやっていました。ビーストモード状態でありながら、その内部にヒューマン型で出現し戦闘までこなしてのけたのです。しかも、同エピソードで破れ消滅したにもかかわらず、なにごともなかったかのようにセフィロトモンとして襲いかかってきました。
ここから推測できる答えはひとつです。
メルキューレモンとしての彼は、はじめからその場にいなかった。
つまり、本体は徹頭徹尾セフィロトモンだったのです。
思い出してみましょう。セフィロトモンはそれ自体が一種の特殊空間です。内部にはデジモンたちまでいました。あれらの大半が虚像であったというなら、最初からもう少し多数を繰り出すことだってできたはずなのです。きちんとデジコードスキャンもできましたから、例外こそあれ、彼らはみな本物といっていいでしょう。
そんな場を維持したまま、おいそれとスライドエボリューションなどできるものでしょうか。もしそうだとしても、短期間のうちに手下を集められるものなのか……。どうも無理があります。ちなみに本編では一度もスライドしていません。
ところがセフィロトモンの方が本体だと仮定すれば、話はずっとわかりやすくなります。
セフィロトモンとしてふだんはあまり動かず、かわりに鋼のヒューマンスピリットを使ってみずからの分身を錬成し、それを端末として使っていた。そうは考えられないでしょうか。
この端末=メルキューレモンが手に入れたデジコードはそのまま持っていることも、専用の回線を使って本体のセフィロトモンへ蓄積することも可能…と仮定すれば、20話の段階で吸い取ったセラフィモンのデータを持っていなかったことにも説明がつきます。答えは明白、すでに本体へ送って隠してしまっていたのでしょう。
おまけに29話でメルキューレモン…いやさ、セフィロトモンは『おまえたちのおかげでヒューマンスピリットを失った』と拓也たちへ呪詛を投げていました。『自分の』状況を『客観的に』ながめていないとなかなか出ないセリフではありますまいか。
以上のことから、私はメルキューレモンが本体のあやつり人形であったと推測しています。
■いかがでしょう?
実はこの推測には続きがあります。題してメルキューレモンの野望。
28話時点で事実上頓挫した彼の計画が、本来どのようなものだったのか……
今回の書きこみを踏まえた上で推測するものです。それはまた、つぎの機会に……。