『フロンティア』のデジモン世界は、あらゆるものがデジコードであらわされています。デジコードは物質が在るためのソースであり、ゆえにそれを読み取るということは、そのものを取り込むことをも意味します。中にはデジコードを捕食=変換し、みずからの情報量を増やすことで進化するデジモンもいますが、人間である拓也たちは直接スキャンができないためデジヴァイスを使い、敵を根源の状態=デジタマに戻していました。というより、異物が入ることで自分のソースが混乱しないための措置かもしれません。だからこそ、これといった破綻もなくスピリットに融合ができたというわけです。
さて、ここからが重要なのですが、デジコードの中にはみだりにスキャンできないよう、ロックされているケースもありました。41話の豆の木村や43話の炎の街、46話のオファニモンの城などがそれ。いわばその場所の大地そのもののソースコードですから、このロックを解除しないかぎり、表面的な破壊はできても丸ごとをスキャンし生データ化するのは不可能なのでしょう。たとえ最強クラスのロイヤルナイツであっても同じことです。
同様のロックが、実はスピリットにも施されていたとしたらどうでしょうか。
スピリットは普通の進化とは違います。融合したデータが何であれ、かならず同じ姿のデジモンが出てきます。つまり使いようによっては、悪用することも可能。むろん、制御することができる者がそうそういるとも思えませんが、万が一ということもあります。
だから、最初の2種以上の段階へは進化できないよう、厳重にロックがかけられていたのではないでしょうか。
ダブルスピリットエボリューションの例がなかったのは、ベオウルフモンやアルダモンが出現するに必然なほどの危機がなかったか、それに足るほど器のあるデジモンがいなかったか。あるいは、その両方の要因で許可されなかったのです。
では、ロックを解除するためのキーはどこにあったのか?
他でもない、セラフィモンとオファニモンの中だったと私はにらんでいます。
あれは奇跡ではなく、自動的に発動したプログラムだったのです!
■錬金術師の誤算
このロックがいつ仕込まれたのか、そこまでは判断がつきません。
ですが、オファニモンたちは存在を知らないか、知っていてもだれにも話さず、おたがいに秘密を共有することさえしていなかったはずです。でなくば、ケルビモンが利用しないはずがありません。自分ひとりの胸のなかに収め外に漏らさぬことこそ、意味のある守秘といえるのです。
さて、これを踏まえて考えると、13話で斃れ、スキャンされたセラフィモンがなぜすぐにはじまりの町へ飛んでいかず、デジタマとして実体化したのか、そのわけが見えてきます。
あれこそまさに、ダブルスピリットエボリューションを許可するための鍵そのものだったのです!
その証拠といってはなんですが、拓也が取り戻したセラフィモンの生データを受信するまで、卵が孵ることはありませんでした。デジタマの形はしていても、単体でデジモンへ孵化するにはデータが足りなかったのでしょう。
セフィロトモンの誤算は、まさにここにありました。
スキャンされる瞬間、セラフィモンは最後の力をふりしぼってみずからのデータからキーを分離し、卵に偽装して残したのです。ここから、少なくともセラフィモンは自分の秘密を知っていた可能性がたかくなりますね。カモフラージュが功を奏し、四闘士が気をゆるめたスキに卵は泉に確保されています。
以後、ボコモンに手厚く(笑)保護されて十数話。いよいよ発動のときがやってきました。
まずは輝二、つづいて拓也にと、危機に瀕したふたりと世界のため、ダブルスピリットエボリューションの許可が下りたのです。
キーを手に入れていないセフィロトモンは、ダブルスピリットエボリューションの存在を知りません。
なので、ベオウルフモンを見ても単なる偶然かまぐれだと事態を軽んじ、迂闊にも拓也の前にメルキューレモンを差し向けました。が、拓也はこの時点ですでにかなりの成長をしていたと思われるので、資格は充分。
その上ブラックセラフィモンときています。
三大天使デジモンのデータをあるべきアドレスにもどすためにも、ここでのダブルスピリットエボリューションの発動は『必要』でした。奇跡は起こるべくして起こったのです。要因のひとつが拓也の成長であることは、もちろん言うまでもありませんが。
つまり、ダブルスピリットエボリューションのキーと情報を入手し損なった段階で、セフィロトモンの計画は瓦解していたのです。
私はそのように結論づけました。
…いや、セラフィモンがあんまりへた(略)だったのでフォローも兼ねてるんですが(^^;)
ちなみに、ハイブリッド超越体へ進化するには二体のダブルスピリット資格者がいれば良いようなので、この時点でどうやらふるい落としは終わっていますね。
輝二と輝一が逆の立場であれば、おそらく輝一が会得していたでしょう。
■鋼の反逆
それにしても、セフィロトモンはいつ、なぜ、どのようにあんな野望を持ったんでしょうね。
最後にそれを少し掘り下げてみたいと思います。
管理者でした。