メルキューレモン〜鋼の錬金術師〜 その4

最後にセフィロトモン=メルキューレモン反逆の理由について少々…。
 
 
 
■危機感
いきなりな表題ですが、なにについての危機感だとお思いですか?
ズバリ、それは自分自身の存在意義についてだと思います。セフィロトモンは自分の今後に不安をいだいたのですよ。これだけ書くとなんだかリストラに怯える会社員みたいですが、あながち間違いでもありません。

彼ら悪の闘士はスピリットをもとに、ケルビモンの手駒として産み出された存在です。その中でも特異な性質を持つセフィロトモンはひょっとしたら、デジタマの時点からスピリットと融合させられて生まれた、まさに突然変異個体なのかもしれません。いずれにせよ、彼らの運命はケルビモンの手の中。たとえ懸命に仕えたとしても、相応の報酬を受けられるとはかぎりません。それどころか、デジタルワールド支配の暁には用済みとして排除される可能性すらあったのです。

その上ダスクモンの存在があります。
どんなデジモンで試しても個体として定着しなかった闇のスピリットと融合し、強大な戦闘力を手に入れたのは人間……木村輝一でした。セフィロトモンがこの事実を知っているという証拠はありませんが、逆もまたしかりなので、何かをきっかけに知るところとなった可能性もじゅうぶんにあるでしょう。
そしてたぶん、この事実が決定的だったんじゃないでしょうか。

つまり彼は、デジモンに頼らなくても闘士を産み出せるすべがあるのだと知ってしまったのです。しかも、より確実にパワーを引き出すことができるかもしれない。となれば、邪魔になるのはすでに闘士として定着した自分たち……。
もともと、ケルビモンの手下として破壊のかぎりをつくすためだけに産まれたセフィロトモンです。失うものはなにもありません。こうと決めれば悪魔的に計画を組み立てていきます。能天気なほかの三人には頼れませんし、ダスクモンはケルビモンの言いなり。セフィロトモンの計画は最初から最後まで彼ひとりが立案し、実行したものなのです。

え? だったら回りくどいことをせずに人間を使えばよかったとおっしゃる?
そうなんですけどね。でも、オファニモンが拓也たちを呼んだときみたいな方法は、ばれやすいのでリスクが大きすぎます。
それに、彼のプライドが許さなかったと思いますよ。
 
 
 
■好奇心
セフィロトモンの上昇志向にはあともうひとつ、推測できる理由があります。
それは知りたがる心。

鋼の闘士エンシェントワイズモンは、また同時に十闘士きっての識者でもありました。そのばく大な知識をもって闘士たちの参謀をつとめていたであろうことは、容易に想像がつきます。
それだけの知識を貯めこむ方向へ進化をし、それそのものをも武器とするにはよほどの指向性が必要でしょう。
つまり、エンシェントワイズモンは知りたがる心を持っていたのです。

その力を受け継いで産まれたセフィロトモンが知りたがる心を持っていたとしても、さほど不思議ではありますまい。
きっと彼は知りたかったのです。自分が世界を手に入れ、宿るすべての知識とデータを思いのままとするに足る存在なのかどうかを。
根っこのところには、そういう理由もあったんじゃないでしょうか。
 
 
 
■おまけ
この長い論文?は友人との与太話からふと生まれたものなんですが、そういえばこんな話題も出ました。

『42話のメルキューレモンはなんでヒューマン型だったのか?』

このことであります。
たしかに、この事実は私がのべた『鋼の闘士、実はセフィロトモンが本体』に大きく矛盾します。
が、考えてみればそう難しい話でもありませんでした。要はこういうことだったのです。

『単にまわりに合わせた』

…これでは論理もへったくれもありませんが、正直、たいした理由はなさそうに思いました。
なぜならセフィロトモンは一度死んで、浄化された基本データだけがデジタマとして転生しているので、どちらを依り代にしようが別に問題なかったはずだからです。枷ははずれているのですから。

さらにもう少し深読みすると、50話の十闘士分離現象を参考にできそうだと気づかされます。
拓也たちが直接纏って戦うことはありませんでしたが、セフィロトモンたちのスピリットもまた、超越体やスサノオモンへの合体進化で触媒に使われていました。42話の段階で、すでに何度も超越体へ進化していますので、なんらかの影響が出ていても不思議ではありません。そのようにして宿った心のちからに、破れた闘士たちのデジタマが反応したのかもしれません。
最後の微笑みからは、思ったよりいろんな意味を汲み取れそうです。

しかしその後の包囲攻撃に、退散を決めるほどの脅威をロイヤルナイツに与えるほどの威力が本当にあったのかどうかはついにわからずじまいでした。ぶっちゃけて言うとよーするに奇跡が起こ(略)
 
 
 
……どうにも長くなりました。
これにておしまいです。おつきあいありがとうございました。