シャッガイについての考察

本部長です。
アリジゴク作戦はシャッガイなくしては語れません。
ですがオペレーション・ドゥードゥルバグを書いた時にはあまりにナゾ過ぎて『そういうモノ』で片付けていました。そこで改めて、シャッガイについて考察してみました。
 
 
 
■シャッガイ(Shaggai クトゥルフ神話に出てくる昆虫型種族が住む惑星)

そもそもこれがどういう仕組みなのか、シャッガイについて分かっていることを整理しましょう。

1. プログラムである
2. デジタルワールドとリアルワールドに相互に干渉する
3. Aにより、超小型ビッグバンを起こす
4. Bにより、ブラックホールを発生させる
5. Cにより、デジタル生命体を飲み込む
 
 
・1
まあ当然のことですね。
シャッガイはプログラムであってブラックホール発生マシンなど機械ではない、それ自体にはなんら物理的作用はないということです。
 
 
・2
1である以上そのままでは現実=リアルワールドに作用することはありません。
まずデジタルワールドに作用し、その影響がリアルワールドにも生じるということ。
言い換えればデジタルワールドからリアルワールドへ干渉するということ。

つまり、シャッガイは原理不明ながらもリアライズ現象を利用しているのです!

それはおそらくデジタルワールドの中心に輝く『リアルワールド球』への干渉によってなされるのでしょう。
シャッガイ開発時点でデジタルワールドのことはまだほとんど分かっていなかったでしょうから(その場合当時の室長ならデジタルワールドに到達できる改良型ユゴスでも作り直接攻撃、例えばリアルワールド球から地表への爆撃ぐらいやりかねません)、ワイルドワン=デジモンが観測される6層のレイヤー、その最外縁=リアルワールド球表層でシャッガイは機能するのではないかと思われます。
その結果、次に述べる超小型ビッグバンを引き起こすわけです。
 
 
・3
このビッグバンという言葉が何ともやっかいです。そのままの意味に捉えると宇宙開闢の大爆発、おおよそこの単語よりスケールの大きな事象は存在しないのではないでしょうか? 爆発直後の温度は千兆℃に及び、膨張に伴い温度低下するも数億℃もの超々高温が続くのです! こんなものがまともに起これば東京どころか地球、ひいては太陽系丸ごと焼き尽くしてなおお釣りがきます。
抜け道を探すにはまずビッグバンがどのようなモノと考えられているかを考え、その上で劇中のビッグバンが意味するところを考えねばなりません。

ビッグバンは宇宙の膨張から導かれる宇宙の始まり。
遥かな過去には宇宙は今よりずっと小さく、そして始まりの瞬間は大きさ無限小または0の点でした。それが大爆発を起こし、現在の宇宙にまで広がった。
現在ではいくつかの修正案が加わっているものの、おそらく最もメジャーな宇宙誕生説です。

ここではその一つ、大きさ0の点が真空に詰まった仮想粒子の量子的揺らぎにより、爆発的なインフレーションを起こした、という説を採りましょう。

シャッガイがデジモンに似せて設定するのは数学的な大きさ0の点と仮想粒子の揺らぎの場による宇宙誕生のシミュレーション空間。
それは原理不明ながらリアライズを起こします(トランスポーティックエディに運ばれてくるのですね。あれはどういうわけかデジモンらを選択的にリアライズさせていますし)。

デジモンの場合、リアルワールドの大気中の分子が量子変換を起こし擬似タンパク質が作られることでリアライズしますが、その際大気中を常時飛び交う電磁波に何らかの信号(劇中ではこう表現されていますが、信号というよりパターンとか波形とか言った方が適当でしょうね。信号とは発信者と受信者、そして両者の間に明確な意思と意味があって初めて信号と呼べるのですから)が観測されるようです。
この電磁波、有線無線を問わぬ様々な情報通信がリアルワールド球のリアルワールドでの姿であろうと思われます。
シャッガイの場合、電磁波に現れる信号が直接シミュレーション空間を表記します。
(この辺大ウソっぽいですね。電磁波は光子という素粒子でもあるのですから…)

リアルワールドに出現したその空間はトンネル効果などにより宇宙的短時間で急激に膨張を開始、現実の大きさを持つミニ宇宙となります。
そう、極小規模ですが宇宙開闢=ビッグバンです。
 
 
・4
ですがこのミニ宇宙は原子一個ほどの大きさになるかならないかで膨張が停止。
今なお膨張を続けている現実の宇宙の膨張に押し返されるのです。
ヒュプノスの全能力をもってしても設定できる数値では、リアルワールドでインフレーションを起こすに至らないのです。
宇宙の誕生はプランク時間と呼ばれる超々短時間で行われるため、いかなるコンピュータの処理速度をもってしてもサポートできません(つまりシャッガイシステムでは物質を生み出すことはできないのです)。
それでも何とか設定数値を修正し続け、ミニ宇宙をリアライズさせ続けます。

さて、存在し続ける限りミニ宇宙内部のエネルギーと粒子密度はどんどん高まってゆきます。
リアルワールドではエネルギーに応じてヒッグス場が質量を与え、質量と密度に応じて重力が働きかけます。
こうしてミニ宇宙は遂に重力崩壊を迎え、大きさ0の特異点=スタート時の状態に戻ってしまいます。
つまり原子一個の大きさ(まあ言葉のあやです。正確な大きさや質量は私には算出できませんし…)に至るかどうかのミニブラックホールに転じるのです。

こうしてミニ宇宙はリアルワールドから消えてしまいます。
インフレーションを起こさず極ミクロな存在のままだった為、本来のビッグバンの様に超々高温を撒き散らしたりはしません(微妙ですねー…)。
 
 
・5
人工知性限定ブラックホール『シャッガイホール』。
重力は全てに等しく働き、選択的に作用するということはありません(万有引力とはこの性質故の別名です)。ということは、シャッガイの吸引力は重力ではないということ。
少なくとも「本物の重力」ではありません。

これは推察ですが、シャッガイが作り出したブラックホール本体は消滅し、その後にワームホールだけが残されているのではないでしょうか。
そのワームホールはリアルワールド(球の表面)とデジタルワールドの間を貫通しているのでは。

デジタルワールドは現実の空間的広がりは持ちません。リアルワールドとは一切繋がりはないように思えます。が、デジタルワールド・リアルワールド間でメール通信が時系列に沿って(というより、おそらくリアルタイムで)行われたことがありました。唯一、時間軸だけは共有しているようです。
そしてブラックホールは空間のみならず時間さえも捻じ曲げます。というのは、時間と空間は本質的に同じモノ=時空の一側面ですから。
こうしてリアルワールドとデジタルワールドの時空は一つのブラックホールに向かって収束されてゆきます。
(大ウソっぽいその2ですね。デジタルワールドの時間は『情報量・小→大』というエントロピー増大の方向によるものであり、『記憶量・小→大』という人間の意識と同じものだと思いますが、結局それは人間の感覚に基く概念で表される仮想的なものに過ぎないかもしれず、物理的な時空間との関係はほとんど分かりません)

二つの世界が繋がった時点でミニ宇宙は消滅します。
結局コレはリアライズし損ねた存在に過ぎず、実体がある間こそリアルワールドの「本物の」重力=空間の力によってその様に振舞いますが、数学的・論理的存在となったところでリアルワールドには存在できなくなり、また「本物の」重力のないデジタルワールドではただのデータに過ぎないのです。
こうしてブラックホールの実体たる特異点は事実上消滅し、後にはリアルワールドとデジタルワールドを結ぶ時空の虫食い穴=ワームホールが残されます。

このワームホールはリアルワールド=現実の空間とリアルワールド球=諸々の通信が織り成すネットワークが混在し、双方の側面を持つ非常に奇妙な空間です。
故にヒュプノスによるネットワーク操作で操作することが可能です。
これにより、あるていどの時間存在を維持し続けれるのみならずその大きさや規模を拡大することもできます。
さて、デジタルワールドから見れば、リアルワールド球が「上方」、デジタルワールド地表が「下方」。
それはデジタルワールドの仮想重力が『日常感覚に基く上から下への引力』であり、リアルワールドに対しては(見かけ上)反重力として作用するかもしれない、ということ。
この仮想重力に従うもの=デジタルワールドの存在は、リアルワールド球内部からデジタルワールド地表めがけて「落っこちて」ゆくのです。
そしてワームホールを通る過程でリアライズした存在はデジタルな存在に戻り、その実体の構成分子はリアルスペースの大気に還るのです。

ただしこの現象はリアルワールド側の空間の膨張とネットワーク=リアルワールド球の活性化(こちらは管理システムたるヒュプノスの干渉で遅らせることができます)による修復でシャッガイホールが閉じるまでの短時間のみに限定されます。
またネットワークに文字通りの『大穴』が開くわけですから、回線の接続を変えるなどで時間を稼いでも、いずれ社会に深刻な混乱を及ぼすことになります。
その為システム起動前にあらかじめリアライズしているデジタル生命体をおびき寄せ、短期決戦で望む必要があるのです。

まとめるとシャッガイホールとはデジタル・リアルワールド間をブラックホールで繋ぎ、デジタルワールドの重力法則をリアルワールドに及ぼすもの=仮想重力をリアライズさせる『穴』ではないか、と思います。
つまりデ・リーパーが具現化した『筒』トランスポーティック・エディに近い存在、ということですね。
 
 
 
■ シャッガイ発動の流れ
では以上を踏まえ、シャッガイがどのように発動するのか考えてみましょう。

1. ネットワーク上=6層のレイヤー=リアルワールド球内にデジモンに似せた最初期状態の宇宙=大きさ0の点と真空の量子的揺らぎを設定する

2. デジモンのリアライズ現象同様、最初期状態の宇宙がリアライズする

3. トンネル効果などの量子レベルの現象により、大きさ0の点はビッグバンを起こしてミニ宇宙になる

4. リアルスペースの膨張により、ミニ宇宙はインフレーションを起こさない

5. ミニ宇宙内部のエネルギー・粒子密度上昇

6. リアルスペースのヒッグス場により、ミニ宇宙は質量を持つ

7. 質量と高密度故、ミニ宇宙周辺に曲がった時空=重力場が形成される

8. ミニ宇宙に掛かるリアルスペース膨張の圧力に重力が加わる

9. 重力崩壊を起こす

10. 時空の傾斜により、時間軸を共有するデジタルワールド側でもリアルワールド球表面が落ち窪んでゆく

11. リアルワールドとリアルワールド球が1つのブラックホールに収束、地続きになる

12. ミニ宇宙=ブラックホール本体=特異点は数学的・論理的仮想存在に戻る

13. 仮想存在にリアルワールドの重力は影響せず、消滅する

14. リアルワールドとそのネットワーク=リアルワールド球の時空が混合されたワームホールが残る

15. ヒュプノスはネットワークを操作し、ワームホールを維持しつつネットの大穴よる混乱を抑える

16. ワームホール越しにデジタルワールドの重力がデジタルワールド由来の存在に作用する

17. ワームホールに「落ちた」リアライズした存在はデジタルな存在に戻り、その肉体は大気に還元される
 
※1〜4まではプランク時間程度の宇宙的短時間、〜14までもコンマ数秒以下の短時間で完了する

…まとまってない(汗)。
 
 
 
■自分へのツッコミ
しかしトランスポーティック・エディがネット上からも操作でき、かつデ・リ−パーもそれを通ってリアライズしていたのなら先に『筒』を閉じてしまえばよいことに…。
そうすればデジモン同様、デ・リーパーも唯のプログラムに逆戻り…。
まあそれは結果論ですね。
デ・リーパーがリアルワールドに居座り続ける可能性がある以上、あまりにハイリスクの賭けですから。

あと、これはあくまで初期型シャッガイについての考察です。
シャッガイ改はまた異なったプロセスを踏んでいるのでしょう。

…それじゃアリジゴク作戦に直接関係ないのでわ…(汗)。

本部長でした。