『ポジトロンレーザー、デススリンガー』〜デジモン必殺技解釈3

お久しぶりです、本部長です。
総合掲示板[3155]にて陽電子砲への疑問を書いたところ、 [3156]にて大山様に

>ポジトロンレーザーとデススリンガー
 こちらはたしか陽電子という以外くわしい記述がなかったと思うので、
 どうとでも納得いくように考えられるんじゃないでしょうか?

との返事を頂きました。
ならば、と少し遊んでみました。
まあ必殺技じゃなく得意技なのですが(笑)。
 
 
 
■ポジトロン=陽電子、反物質=鏡像物質
電子(エレクトトロン)は−の電荷を持ち、+の電苛を持つ陽子と電荷を持たない中性子からできている為に+の電荷を持つ原子核と引き合って原子を形成しています。通常原子は陽子と同数の電子と結びつくことで±の電荷が釣り合い中性になっています。
この電子と量子的な特性(電荷とかスピンとか)が逆の存在が+の電荷を持つ電子=陽電子(ポジ・エレクトロン=ポジトロン)です。これらを「反物質」とか「鏡像物質」とかいいます。
通常の物質と反物質が接触するとその質量全てがエネルギー(それは光子=光=電磁波の形で放射されます)に変わってしまいます
この通常物質と反物質の接触反応を「対消滅」といいます。

可燃物の燃焼のような化学反応の時に出る熱はその質量の1/10億程度がエネルギーに変わったもの。
原子炉とか原爆とかの核分裂反応は質量の1/1000程度。
太陽とか水爆とかの核融合反応は1/100程度。

これらに対し、対消滅反応は全質量=1/1がエネルギーに変わるのです!
(具体的には0.3g程の陽電子が全て対消滅すると広島型原爆に匹敵)

更に電子が対消滅を起こして消えてしまえば原子は原子核のみになってしまい、他の原子と結合して物質を形作ることができなくなってしまいます。しかも放射される非常に強いエネルギーを持った電磁波はγ線という立派な放射線であり、周囲を被爆させてしまいます。

通常の物質は全て原子でできており電子を含んでいますから、陽電子はあらゆる物質と対消滅を起こしてしまいます。
即ち、破壊できないものはないのです。
かなりデンジャラスな、正に必殺技と言えましょう…ああ、得意技でしたね。

さて、繰り返しますが。
通常の物質は全て原子でできていますから、陽電子はあらゆる物質と対消滅を起こしてしまいます。
もちろん空気とも。
本当にデンジャラスですね(笑)。

従って今回の考察はいかに陽電子を空気に触れさせないようにするかに重点を置きました。だって自爆技だなんてどこにも書いていませんから(笑)。
 
 
 
■ポジトロンレーザー(positron=陽電子 laser=レーザー)
インペリアルドラモンの得意技なのですが、竜形態の背部・戦士形態の右腕部の砲から発射されるという以外はよく分かりません。名前から推し量るしかありませんね。
とりあえず、陽電子とレーザーを使った技なのは確実と思います。
 
 
・レーザー
ご存知の方も多いと思いますが、一応レーザーとはどういうものかおさらいを。
レーザー(Laser)とは、「放射の誘導放出による光の増幅作用(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)」の意味です。名前から分かるとおりこれは特殊な光を発生させる方法であり、普通はその方法によって作られた光=レーザー光線か、その方法でレーザー光線を作るレーザー発振機を指しますね。
レーザー光線の特徴は波形の位相が揃っていること。この為拡散しにくくエネルギーを短時間で一点に集中させることができます。また光=光子=電磁波ですから原子よりずっと小さく、高エネルギー粒子を加速収束しその熱と運動エネルギーを叩きつける、いわゆる粒子ビームの類ではありません。
 
 
・ 陽電子レーザー
これは自由電子レーザーなどと同様、レーザー光線の発生に陽電子を使っているという考えです。
具体的には通常の電子と陽電子を対消滅させ、発生する膨大なγ線の位相を揃えて非常に強力なγ線レーザーを発射するのです。
現在考案されているγ線レーザーが原水爆の核爆発=核分裂反応や核融合反応をγ線の発生源にしているに対し、陽電子レーザーは更に高効率(というよりこれ以上効率の良いものも無いのですが)な対消滅反応を使っているのです。
 
 
・ レーザー+陽電子流
陽電子は通常物質中の電子と接触するや対消滅を起こしてしまいます。それ故、特に大気圏内では発射直後に大爆発を起こしかねない。陽電子を目標まで届けるには、大気中の諸分子をどける必要があります。
具体的にはまず強力なレーザー光線を目標まで照射、それにより光線の軌跡上の様々な分子はそのエネルギーを受け取り運動を加速=加熱され飛び散ります(膨張)。一瞬後、そうしてできた真空に近いレーザー光線の中を陽電子流が進むのです(レーザー光線=光子は当然ながら陽電子と反応しません)。非常に強力なレーザーサイトな訳ですね。
もちろん完全な真空にはできないでしょうから、陽電子の幾らかはこのレーザー光線内でロスするでしょうし、その際発生する電磁波でレーザーも乱れるでしょう。しかしそもそも真空に近い状態を作れる程のレーザー、それ自体の威力もかなりのものでしょうから多少の乱れなど問題にならないハズ。それに加え若干数が減ったとはいえ陽電子が殺到するのですから…恐ろしいですね。
 
 
 
■デススリンガー(death=死 slinger=投げるもの)
ベルゼブモンブラストモードの得意技。名前からは致命的な飛び道具であることしか分かりません。
『デジモン大図鑑(双葉社)』によると右腕のブラスターで敵を原始分解する技です。…原子分解の誤植でしょうね(もしかしたら原始分解とは何かスゴイ現象を指す造語かもしれませんが)。
陽電子は原子から電子を消し去ってしまい他の原子との結合を解いてしまうので、陽電子をぶつける技という解釈でも問題ないと思います。

ところで右腕の砲を撃つ「だけ」の技だとしたら、実はデススリンガーとは砲の名前かもしれませんね。
 
 
・陽電子カプセル弾
一番簡単なのは陽電子を封じた実弾を発射すること。
容器の中を真空にし、その内壁を+に帯電させれば陽電子を閉じ込めることができます。
目標に命中、カプセルが壊れるや対消滅を起こし強烈な爆発と放射線が発生します。つまり銃撃の命中箇所=傷口で核爆発が起きる様なもの(!)。この為容器はある程度壊れやすいことが望ましいと思います。
核爆弾付銃弾、といったところでしょうか。
正に悪魔ですが、これではブラスター=光線兵器にはなりません。
 
 
・陽子砲、陽イオン砲+陽電子
前述しましたが、通常原子は陽子と電子が同数であることで±の電荷が釣り合っているわけです。電子が幾つか欠けた場合、当然ながら+の電荷を持つことになります。この+の電荷を持つ原子を陽イオンといいます。
陽子または陽イオンの粒子ビームで真空中の陽電子を包み込んでやれば上記の陽電子を封じ込めたカプセルと同様の効果が得られるでしょう(発射の過程は非常にデリケートなタイミングを要するでしょうが)。
ビームと陽電子のダブルパンチ、正に『死』を『投げるもの』です。

※この陽電子の保持を電荷で行うという解釈は大山様のアイデアを基にしました。ありがとうございます。
 
 
 
■総括
私の中でインペリアルドラモンが別格なのは偏にこの陽電子の性質に他なりません。
量子レベル、物質の根底に関わる存在にしておそらく最大最高のエネルギー効率。それらから容易に想像できる尋常ならざる破壊力。
これらの性質がある故、メガデスはああいう技−ダークマターというこれまた量子レベルの存在(仮想ですけどね、観測されてないし別の解釈もあるし)とか、負の物質という反物質以上に根底から異質な存在を用いる−として解釈されました。

そしてその過剰なまでの威力とそれに伴う制御の困難さは後世においては七大魔王でも『孤高の魔王』ベルゼブモンのみが−それも精神と力を最高に高めてようやく再現したのだと。

最後に今回のツッコミ。
実はですね、発射即大爆発は私の誇張表現というより思い込み兼SFのお約束なんですよ(謝)。
実際は大気の分子密度なんてホントスカスカなんです。おまけに原子の構造は原子核を野球のボールとすると電子の軌道は野球場の外周位なんですよねえ。もうスッカスカ。
ですから陽電子をムクで飛ばしても大気中の分子を素通りしていく可能性はあります。
…まあぶつかる可能性は0ではないし、その場合でも上記の「 レーザー+陽電子流」のようなことが起きるかもしれませんが。正直、どの位の量の陽電子なら目標にちゃんと当たって爆発するのか、それを大気中で飛ばしたらどうなるのかは実験しないと分からないと思います。
まあ、なんでもそうですね。

本部長でした。