闇の使者デビモン

 脚本:西園悟 演出:角銅博之 作画監督:出口としお
★あらすじ
 ファイル島は絶海の孤島だった…。この事実に意気消沈する子供たち。
 いっぽう、黒い歯車の謎を追っていた島の勇者レオモンは、宿敵オーガモンに襲われ一戦を交えていました。そこへ現れたのは悪魔の翼を持つ最強最悪の魔物、デビモン。その圧倒的な闇の力は、レオモンさえも操ってしまいます。

 闇の配下となったレオモンと、乱暴者オーガモンに挟まれてピンチの子供たち。その場はなんとか難をのがれるのですが、デジモンたちはもうグロッキー状態。そんなとき、彼らの目の前にあらわれたのは不思議な洋館でした。警戒しながら中をさぐってみると……そこにはご馳走がいっぱい! おまけに風呂も完備です。しだいに警戒心もとけ、眠りにつくのですが…。

 それはデビモンの作戦でした。洋館も食事も風呂もすべて幻。ファイル島がばらばらに割れて黒い歯車があふれ出し、みんなのベッドが宙に舞い上がります。あきらかに自分たちをねらうデビモンの意図へとまどう太一に、正気を失ったレオモンの刃が!
 窮地を救ったのは、太一のデジヴァイスが発したまぶしい光でした。我にかえったレオモンは怒りに震えてデビモンを攻撃し、みずからを囮に太一とアグモンを逃がします。しかし、一行はデビモンの力によってバラバラに分散されてしまい…。
 そして、レオモンはふたたびデビモンの手に堕ちていました。



★全体印象
 8話です。タイトルコールはアンニュイな読み上げがいかす故・塩沢兼人さん。背景の影絵はもちろんデビモンです。

 この回はある意味、1話とならんで記念すべきエピソードといえるでしょう。なぜなら「選ばれし子供」というキーワードがはじめて登場するのですから。これはフロンティアにまで登場するほど息の長い用語で、ファンにとっては一種の言霊といってよいもの。
 また、ファイル島の裏に蠢動する闇がとうとう姿をあらわしたという意味においても、この回はきわめて重要です。4話あたりからじわじわと示唆されてきてはいたのですが、7話までを受けていよいよ本格的に動き出しました。「デジモンアドベンチャー」のストーリーは、ここからつよい潮流となって視聴者を引き込んでいくことになります。

 さて、ここで思い返してみましょう。1話〜7話の段階では進化とバトルを確実に挿入しながら「似てるようでいてなにかが違う」デジタルワールドという世界観、それぞれの子供たちの性格や行動パターン、ある程度の家庭環境、そして深まっていくパートナーとの親交を確実に、その時点でできる必要充分なだけ描写しています。ここでしっかり積み上げられたものがあるからこそ、「では、そもそもなぜ彼らはここに呼ばれ、なにを為すためにいいるのか」という根本的な理由が示されるという展開に説得力が出てくるというもの。
 もしここでつまずいていたら、その後そうとう頑張らないと挽回はできなかったでしょう。これはどんなストーリーにもいえて、つかみの部分でちゃんとキャラを…制作者と視聴者の両方が…つかまないと、たとえ全体のストーリー自体に無理がなくても、なぜかちぐはぐな印象になってしまいます。逆に言えば、それさえ最初にできていればストーリーは勝手に後からついてくるのですが。

 そのほかに見どころをあげるなら、やはりデビモンとレオモンの初登場でしょう。両者とも最古参デジモンなだけに、今見ても貫録というものがちがいます。特にレオモンはクロニクルのTVスペシャルでも重要な役目を負っているようなので、今から楽しみ。
 オーガモンものちにいい役をもらえるのですが、この時点ではまだそんなに目立っていませんね。インパクトはありますが。

 脚本には2話以来となる西園悟さんが再登場しています。つまり3〜7話までが全員違う脚本家ということで、しかも02でシリーズ構成の一翼を担う前川淳さんがまだ登場していません。合計で常時7人のローテーションは、デジモンシリーズ最多。それでこれだけ流れにブレや無駄が少ないということは、やはり時間をかけて練り上げた企画であり、その分スタッフの連携がきちんとできていたってことなんでしょう。テイマーズでさえ、ややもすれば小中さんが一人で突っ走るところを他がフォローする感じだったのを思えば、これは凄いことです。
 …まあ、直前に映画をつくるくらい長い熟成期間があるのだから当たり前といえば当たり前なんですが。

 演出と作画については特にこれといって見どころはありません。
 一つあげるなら、デビモンが天使の絵から出てくるシーンと、直後にレオモンとオーガモンが翼の陰からあらわれるシーンくらいでしょうか。



★各キャラ&みどころ

・太一
 そういえば、Vテイマー01版でもレオモンとのやり取りがあるんですよね。どうやらそういう運命にある間柄らしい。
 また、他のみんなとは少し違う視点から物事を見ていますし、かなりの観察力というか、洞察力がかいま見える。こうした部分や、デビモンを目の前にしても怯むどころか逆に質問を投げる勇敢さを見るにつけ、みんなを引っ張るのは彼しかいないということをすでにこの段階で自然と理解させられますし、じじつ初見でもう名実ともに「主役=リーダー」なのだと捉えることができました。

 …考えてみれば彼とアグモンは、「身を盾にして自分たちを救ってくれたこの世界の住人」を最初に目の前で見てるんですよね。
 「彼らのためにも、為さなければならないことがある」という意識の萌芽は、もう始まっています。


・ 空
 で、太一の目のとどかないところをカバーするのが彼女。なんというか、言葉に重みがあります。今回も例外ではありません。
 ミミや年少組には最後までたよりにされる存在でした。


・ヤマト
 今回は小ネタで目立ってますが、ちゃんとした出番は次回に持ち越し。
 慎重でシャイに見えて案外あけっぴろげだったり、あいかわらず真っ先にタケルのフォローへ走ったりとポイントは抑えてます。


・光子郎
 つねに疑問や好奇心を持って動いている彼の姿勢も、確認するかのように短いながら、描写されていました。
 思えばこの8話は太一を中心にした全員の話で、各個人エピソードを受けてのものなんですね。


・ミミ
 前回と今回はタケルと一緒に写ってる場面が目立ちます。そのわりにこの二人って案外接点がないんだよな。
 よーするに、それだけ彼女の精神年齢が低めだってことなんでしょうけど、育ちがいいからでしょう、言葉遣いと目上への最低限の礼儀はちゃんとしてるあたりがけっこう面白いところ。
 …まあデジモンに出てくる女性キャラはたいてい、フツーに女の子しゃべりですが。留姫ですら上品なもんです。


・タケル
 言うまでもないことですが、パタモンとのやり取りに今後への伏線が隠されています。
 注意深く見ていればかなり自分の意志で動いてることがわかるので、そういう目でみると12話もあまり違和感ありませんね。


・丈
 現実を認識したことと空腹のためか、前半こそ落ち込んでましたが後半ははっちゃける一幕がありました。この回や11話あたりは、とにかく力技で無理矢理自分を納得させて突っ走る傾向が目立ちます(笑)。
 その段階を越えると今度はむしろ落ち着いていって、空よりもさらに一歩退いた立場から全員の現状を判断できるようになるわけですね。


・デジモンたち
 今回はレオモンに譲った形になりましたが、ちまちま可愛らしい出番が見られます。
 アグモンのトイレなど、あちこちで堂々と下ネタに走るのも01の特色。02はともかくテイマーズからは、そういう面が完全に消えてます。できれば残してほしかった…粗相といえば、デジモンのお約束ですから。
 いや、御多分にもれず下ネタは苦手なんですけどね。それとこれとは話が別。


・レオモン
  誇り高き勇者がついに登場です。デジモンが世に出た当初から、よきデジモンの象徴として活躍してきました。実力も心・技・体のバランスが取れており、弱点があるとすれば飛べないことくらいでしょうか。

 まあ実のところ、今回は出たとたんにデビモンに敗れてあっさり操られ、支配から抜け出たとおもったら最後でまたあっさり負けて操られと戦績としてはメタメタなのですが、それでもかっこよく見えるのは堂々とした態度とこれぞ勇者という姿勢や、ナレーション兼任の平田さんの好演、それに最後で身を呈して太一を逃がし、その命を救うという最高の見せ場のおかげでしょう。
 彼を見つけたときデジモンたちが笑顔になっていたのは、強くて優しいレオモンのことをよく知っていたからにちがいありますまい。
 幼年期時代になにかと助けてもらった経緯もありそうです。

 今度のクロニクルスペシャルでどうやら三度目の出演となる彼ですが、その三度が三度ともある宿命を背負っているようです。
 それについてはいずれ語る機会があるはず。


・オーガモン
 レオモンの宿敵。彼ともどもお話序盤でアニメデビューを飾りました。
 ゴマモンは「正真正銘の悪いヤツ」と言ってますが、デビモンというさらなる悪役がいることもあり、どっちかというとコミカルな面が目立ちます。しかし、実力ならレオモンと互角のものがあるようす。一回も勝ったことがないように見えるのは、意外と小心者で劣勢になると弱気になりがちな面があるためでしょうか。デビモンに従っていたのも、レオモンがやられたのを見てびびったからでしょうし。

 それにしても、レオモンと対峙してるときの彼はミョーに楽しそうです。アニメだけ見ると、必殺技の霸王拳もレオモンの獣王拳に対抗して編み出したものだとしか思えません。所かまわずレオモンに喧嘩を売っては周りに迷惑をかけまくっていたのでしょうか。

 彼が持っている骨はスカルグレイモンの骨だとか。テントモンもこの個体のことを知っていたようなので、実はスカルグレイモンが一度ファイル島にあらわれたのではないか? との推測意見も耳にしたことがあります。だとすれば、その時ばかりはレオモンとオーガモンも協力して戦わざるをえなかったにちがいないでしょう。


・ デビモン
 ファイル島を陰で闇に染める、堕天使型のデジモン。闇のボスデジモン一番手が、ついに登場しました。
 まともな出番はわずか数話で、実力もいま思えばたしかに以後の列強にはおよばないのですが、個人的には異様にインパクト大。おそらく「魔」そのもののような物言いや最後まで崩れない不敵な態度と、故・塩沢兼人さんの妖しい演技がツボにはまったからでしょう。また、子供たちのひとりにトラウマを残したという意味でもはずしては語れないデジモンです。このへんは13話でいろいろ語るとしますか。

 それにしても塩沢さん演じる闇はじつに素晴らしい。キャラソングでも恐ろしいまでの迫力で聴かせてくれます。
 同期である井上和彦さんの活躍ぶりを思うと、かえすがえすも早逝が惜しまれる。



★名(迷)セリフ

「あの山から降りそそぐ黒い歯車が原因で、デジモンたちがつぎつぎと凶暴化している。
 見過ごすわけにはいかん!」(レオモン)


 まさしく勇者にふさわしいセリフです。これがあるから操られているときの異様さが際立つ。


「…それぐらいにしておけ。
 …これからお前たちふたりは、協力しあわねばならんのだからな…」(デビモン)


 まったく唐突に聞こえてきます。闇の底から聞こえてくるようでゾクゾクする。
 レオモンたちの反応からして、どうやらそれなりに名が知れているようですね。ファイル島の住民としてはまちがいなく新参者でしょうが、闇へひっこんだまま何を狙っているかわからないので、潜在的に警戒していた者も多かったことでしょう。


「子供たちだと…!? まさか!?」 (レオモン)

 このあとのセリフからすると、レオモンは何度か太一たちを目撃していたことがありそうです。あるいは噂を聞いていたか。
 黒い歯車を追っていたのなら、ありそうな話ではあります。


「…悪の洗礼を受けよ…」 (デビモン)

 うーん、妖しかっこよすぎる。語尾が少し上がるあたり、まるで優しく言い聞かせるかのような。
 これはたとえるなら、DIOに対面したモハメド・アヴドゥルのような気持ちッ!


「もうイヤ! こんなのッ!」 (ミミ)

 考えてみれば、これってわりと普通の反応です。彼女の場合、最後までこういう所は変わらなかった。イヤだと思ったときに声を上げることは時に和を乱しますが、結果的にはよい方へ転がることもあるでしょう。遠回りですが、それがたぶんミミの道。
 初見では聞き流したセリフですが、いま聞くとそんな感じの印象を持ちます。


「…なんで急に崖がくずれたのかと思ってさ…」 (太一)

 5話といい、この子は本当に周りをよく見てます。直後に光子郎がもっともらしい理屈をつけたので、そこで納得してしまいましたが…。
 洋館を見たときも地図に描いたかどうか、疑問を持ってました。
 

「どう考えても変ですよ。一日に二回の進化だなんて」 (光子郎)

 あいかわらず研究に余念がないようです。02ではデジタルワールドにさえいれば、パートナーが近くにいなくても成熟期を維持できるほどになるので、空の言葉どおりパワーアップし始めてるってことですね。テイルモンに至っては自力でやってのけたし。
 逆に言うと、それだけ完全体レベルへの進化は困難だってことでしょうか。


「タケル、天使ってなに?」 (パタモン)
「それはねぇ…」(タケル)


 伏線をぺたぺた張っています。この後、天使の絵からデビモンが出てくるあたりの描写が秀逸。


「ああいうのがいちばん許せねえな。男風呂でがっちりガードしてるヤツ…」(ヤマト)
「同ぉー感!」(太一)


 ということは、ヤマトはいつも堂々と湯船に向かうってことですね。こういうところではシャイじゃないわけだ。というか、けっこう自己顕示欲はあるはず…場合にもよりましょうが。水着はひょっとしたらビキニかも。
 やんちゃ坊主らしく、いきなり飛び込む太一もそうですが丈の入り方もいかにもで、よく性格が出てます。

 ところでバスローブも幻だったので、全員パンツ一丁で寝てたことになって女子がたいへんなことになりました。寒そうだ。
 服も記号の一種ですから、ゴーグルもスーパールーズもない太一はひどく無防備に見えます。


「夢はもう失われた…」(デビモン)

 妙に詩的で大仰なセリフですが、デビモンにはなぜかよく似合う気がします。


「お前たちが…選ばれし子供たちだからだ!」(デビモン)

 ここで初めて太一が…そうか、最初にこの単語を聞いたのは太一なんですね。まあほかのみんなも聞いてたかもしれませんが。


「邪悪消滅!」(レオモン)

 このあとかなりいいセリフを言うんですが、この一言のインパクトがありすぎてちょっと霞んでます(^^;)




★次回予告
 次回はひきつづき太一と、それにヤマトのお話。12話まではわりと同時進行ってところでしょうか?
 つまり冒険6日めは対デビモン戦というわけで、このたった一日でいろんなことが起きるってことですね。
 とすると大陸への出発はちょうど一週間目というわけか。

 さて、予告にはユキダルモンとモジャモンが登場。二体同時におそってくるように「見える」ところがポイントでしょうか?