荒ぶる海の王! メタルシードラモン

 脚本:浦沢義雄 演出:川田武範 作画監督:清山滋崇
★あらすじ
 大きな犠牲をはらい、子供たちはなんとかファイル島の海にたどりつきます。
 しかしここは既にメタルシードラモンの縄張り。アノマロカリモンの罠にはめられ、力をうばわれてみんな動けなくなってしまいます。残った丈とミミが敵のスキをついて超進化し、仲間の救出に成功するのですが、今度はメタルシードラモン自身がおそってきました。

 圧倒的な強さを発揮するメタルシードラモン。ズドモンもリリモンもまるで相手になりません。
 そのとき、海の底からあらわれたホエーモンがみんなを体の中にかくまい、ふたたび水底に消えるのでした。
 こうして、子供たちは再び当面の大ピンチを知己のデジモンに救われたのです。

 ですが、海はディープセイバーズ暗黒軍団の庭。そう簡単に逃げられるのでしょうか…。

 

★全体印象
 41話です。影絵は当然メタルシードラモンで、タイトルコールは声を担当する風間勇刀さん。ヤマトと二役です。
 ヤマトがぜんぜんしゃべってないので、今回にかぎればこちらのほうが主ですね。エコーがないと分かりやすい。

 おおむね緊迫したイメージのあるダークマスターズ篇ですが、この41話だけは比較的明るい…というより、少々おバカなノリになっています。
 海の家へなんの疑いも抱かず飛び込んでいく子供たちもおバカなら、メタルシードラモンもディープセイバーズ暗黒軍団(通しで呼ぶのが浦沢流)もおバカ、ものすごい直球の釣りで子供たちをだまそうとするシェルモンもおバカ。40話がああだったのでかなりの違和感があります。浦沢脚本だけじゃなく、僕らのアイドル・川田先生のなごみ系演出(好意的解釈)によるところも大きいです。ミミの前をへろ〜っと横切るリリモンは必見。

 その一方ダークマスターズの軍団名判明や、シェルモン撃退とアノマロカリモン戦によるデジモンたちの成長確認と課題提示などの要点もあります。
 大百科にも載ってる「成長進化」という用語も出てきました。つまり、今後の戦いに克つには以下の条件が必要というわけです。


 1. 選ばれし子供たち全員の心の成長と戦いへの覚悟

 2. 激戦を経ることによるパートナーデジモンたちの成長進化



 ミもフタもない言い方をするなら「いっぱい戦ってレベル上げなさい」ってことですか。
 ただこの場合、2よりも1のほうがむずかしい。というか、1ができれば2は勝手についてくるといったところでしょう。
 問題なのはデジモンたちじゃなく、子供たちの気持ちなんですから。


 全体的にみて、再見性は低めな回です。42話のできがいいので、どうしてもつなぎに見えちゃいますね。
 


★各キャラ&みどころ

・太一
 成長進化について考察してましたが、ほかはいいところなし。
 海の家へ先頭を切って飛び込んでいくくだりは「ちょっと待てお前」と笑うところ。


・ 空、ヤマト、光子郎、タケル、ヒカリ
 今回は特になにもなし。


・ミミ
 チューモンの死を眼前で見たばかりですが、この段階ではまだなんとか堪えてるようですね。
 ただ、前回からの引きがあんまり効いていない感じのお話なのでなんとも言えませんけど。


・丈
 ミミの靴を踏んづけてしまうあいかわらずな間の悪さを発揮しましたが、今度ばかりはそれに救われたかっこう。
 危機にあってもミミともども意外に冷静なのは、成長というべきですね。


・デジモンたち
 海が舞台ということもあってズドモンと、それにリリモンの出番があります。
 しかし、 演出に問題があるのもあってあんまりいいイメージがありませんね…メタルシードラモンにやられてるシーンしか憶えてない。
 ただ、成長進化を証明するように二体とも幼年期への退化はしなくなっていましたが。

 あとは屈託のない表情を見せはじめたテイルモンが心に残ります。


・ホエーモン
 ラストに登場。子供たちを助けてくれましたがあのまんま食われてたらある意味すごいオチでした。
 いや、だってあの時のホエーモンかどうかなんて、誰にもわからないでしょ? 結果的には助かったけど。

 ともあれ彼も海が住みづらくなったことに憂いをおぼえ、選ばれし子供たちが来るときを待っていたのでしょうね。


・ アノマロカリモン
 声があからさまにテントモンなメタルシードラモンの手下。はっきり言って相当のバカです。
 また、丈たちを見失ったと思ったらいきなり地面にもぐってそのまま出てこないという意味不明な行動もしており、わけがわかりません。
 ディープセイバーズ暗黒軍団は全体的に、総身に知恵が回りかねという感じです。なんせ大将からしてアホですから…。

 最後はメタルシードラモンに怒られて、砂浜にぶん投げられてしまいましたがズドモンのハンマースパーク食らっても気絶程度ですんでいるくらいなので、あれくらいじゃ死なないでしょう…海が消えた後はわかりませんが。アルティメットストリームの刑食らわなかっただけでもラッキーですかね。


・メタルシードラモン
 こうして見るとすでに小物臭が漂っているなあ…。
 面倒そうなことは部下のアノマロカリモンに丸投げしていたり、そもそもその必要がないのに子供たち全員をとらえるまで妙に律義にその部下を待っていたり、途中で待ちきれなくなって時すでに遅くまんまと逃げられてしまったり、なんともアホです。40話の言動をみてもかなり単純で短絡的みたいなので、どうにも格下のイメージがありますね。42話をちゃんと見返さないと断言はできませんが。

 しかし、その強さだけは圧倒的です。アルティメットストリームの破壊力は健在。
 直撃を受けてあの程度ですんだのは、たぶん防御態勢を取ったズドモンだからこそでしょう。リリモンだったらかなりやばかった。


・ピエモン
 この段階ではまだ道化口調のままです。記憶ではムゲンドラモンのあたりで普通になってたんですが、42話のラストですでに崩れてた憶えも。


・シェルモン
 なんかしゃべれるようになってました。これも成長進化?
 相対的に凄みが減って、そのせいかフルメンバーですらない成長期たちに追い払われてしまいましたが。


・海の家
 ひさびさの不条理シリーズ。フロンティアにも出てきてやっぱり罠でしたっけ。
 あの凝った外装を作ったのはメタルシードラモン…なわけないか。きっと気づいたらそこにあったんでしょう。



★名(迷)セリフ

「なんだ、がっかり…」(テイルモン)

 ヒカリに褒めてもらおうとして現実的なことを言われショボーン? …初登場のころからはまるで想像つかないなあ。今さらですけど。
 でもまあ姐さんは純粋に戦歴だけで言うなら断トツでトップですよね。パートナーを得てから日があさいというだけで。
 甘えられる対象ができたというのは、心の余裕にもつながっていくでしょう。


「ファイヤー!」(メタルシードラモン)


 おや、火を吐けるんですね。設定にはなかったと思うけど、そのくらいのことは朝飯前にできるってことでしょうか。
 それにしてもアホな掛け声だ。



★次回予告
 段違いの動きで魅せる八島作画と今村演出の躍動感。ホエーモン、最後の大活躍です。
 画面いっぱいに広がるメタルシードラモンの顎門は大迫力の一言!