デジモン牧場の決闘

 脚本:浦沢義雄 演出:今村隆寛 作画監督:伊藤智子
★あらすじ
 のどかな休日、突然空のもとに届いたピヨモンからのSOS。
 知らせに気づいた大輔、伊織、京を頼りに、彼女は大切なパートナーを救うべくデジタルワールドへ向かいます。

 たどりついたそこは、西部の町グレイブヤード。
 一行は正義の保安官を名乗るスターモンに話を聞くのですが、彼もすでに操られていました。
 いったんは逃げるものの、スターモン必殺のメテオスコールを食らって子供たちは捕らえられてしまいます。
 牢屋の中で、空は先に捕まっていたピヨモンと再会しました。とりあえず互いの無事を喜びあうふたり。

 やがて、またまた正義を名乗るリボルモンが現れました。すわ救援かと喜ぶ皆でしたが、リボルモンは女の子だけ連れ出し、
 大輔と伊織たちは置いてゆかれてしまいます。宿敵の登場を知ってスターモンは激怒! 子供たちそっちのけで決闘をはじめました。
 その間に、なんとか脱出した大輔と伊織。間一髪でスターモンの技を凌ぎ、隠されたダークタワーの破壊にも成功するのでした。

 こうして事件は解決するのですが、子供たちはリボルモンたちと延々トランプをさせられる羽目に……
 
 
 
★全体印象
 12話です。タイトルコールを一人ではなく、複数の方が行っていますね。今回のメイン一同でしょうか。
 影絵はリボルモンとスターモン。なんだか腕を組んでるようにも見えます。

 ヒカリとタケルがほとんど登場せず、はでな戦闘もあまり無いという第1クールにおいては異色中の異色作。
 単に異彩というだけなら次の13話もそうとうなものですが、全体的な雰囲気や独特のテンポという点に絞ってみれば
 こちらもかなりのものです。いわば第1クールは、異色話の連続で締めをむかえたことになりますね。
 他のどのシリーズも13話といえばひとつの山場だったのを思うと、02そのものも異色ということになるでしょう。
 まあ、本来の山場が前倒しされたと思えばいいのかもしれませんけど。

 登場人物が少ないためか、全体的にかなりゆるいテンポで進むお話でもあります。
 このなんとも独特の雰囲気を作りあげているのが、ご存知今村演出。ロングと影絵を多用するお馴染みの節回しは健在で、
 セリフの間の取り方にまで気を配っているように感じました。リボルモンの第一声とか。

 しかも今回は作監が伊藤智子さんなので、たいへん良いレベルで安定してます。
 この組み合わせをできれば11話に持ってきてほしかったものですよ。だいぶ印象がちがったことでしょう。
 もっとも、そうでなければ今回がこれだけのクオリティにはならなかったと思うので、悩ましいところです。

 脚本はもちろん浦沢義雄さん。思い切ったメンバー構成やユーモアある舞台装置など独自のお話づくりもさることながら、
 どの人物も一味ちがった崩れ方になるのがポイントです。

 なぜか中盤以降に進化エピソードを担当することが多かったため、一部のファンの間ではあまり好かれてはいないようですが、
 01でも同氏担当の進化回は厳然と存在しているのですから作風のちがいというか、あまりに異色を強調しすぎたというか、
 濃い一話完結カラーが裏目に出たのかもしれませんね。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大輔
 ブイモンともどもバトル担当なんですが、実はたいして目立ってません。
 いてもわりに何もしない人たちばっかりだったんで、まともに戦ったのは本当に彼らだけだったりするんですが。
 前半ではポテチをつまんでいたりと、小学生らしい旺盛な食欲を見せています。
 
 
・チビモン→ブイモン→ライドラモン→フレイドラモン
 大輔以上に食べまくっていることが前半でよーくわかりますが、後半でもアルマジモンの食事にヨダレをたらしたり
 食い意地がたいへん強調されています。スターモンへの態度や頭突きの後のフラフラ具合など、お茶目なところも続発。

 また戦闘ではライドラモンが早々に退場してフレイドラモンで戦うという、これまた異色なパターンを披露しました。
 ライドラモンは現場に急行するためだけに出てきたようなものです。新進化が出たての時期ということを考えたら普通は逆。
 フレイドラモンの出番もほぼ必殺技一発で終わりな、バトルといっていいのかどうかすらわからない流れだったり。

 
・京
 その場にいたのに特に何もしてません。リボルモンと七並べしたり、決闘をボーッと見ていたりしていただけです。
 大輔たちの乱入であっというまにけりがついたため、出るヒマがなかったという説もありますね。
 前半では店の商品をせっせと運んでいたり、なにげに日々のちょっとした苦労がうかがえました。休日なのに。
 いや、休日だからむしろ体よく手伝いをさせられるのでしょう。
 
 
・ポロモン→ホークモン
 リボルモンに連れて行かれたメンバーの中でひとりだけどう見ても女の子ではありません。
 女の子のパートナーということで、特別に同行を許されたのでしょうか。それともあの声で実はメス?
 ピヨモンオス疑惑の陰にそんな謎がかくれていたのでしょうか。んなわけない。
 
 
・伊織
 なにやら異様にマイペースというか冷静というか、奇妙な存在感を発揮していました。セリフも実はかなり多い方です。
 壁に穴をあけたと思ったら特になにもせずそのへんを歩いていたのにはひっくり返りましたが。
 君らももうちょっと働こうぜ。
 
 
・ウパモン→アルマジモン→ディグモン
 ウパモンの姿ではコテモンのコスプレで脱力系の笑いを誘い、アルマジモンの時は自分のほうが腹ペコなのに、
 ブイモンへサンドイッチを差し出すという気のいいところを見せていました。
 回復して牢屋の壁を破ったあとはなんにもしませんでしたが、余力が出なかったのかもしれません。
 その分だけブイモンのほうが元気バリバリで、メテオスコール食らってもすぐ再進化していましたが。
 
 
・タケル&パタモン
 休日らしくお寝坊さん。冒険があったことにすら気づいていませんでした。
 二人そろっての鼻ちょうちんは、ここでしか見られない超レアな激ヤバショットです。
 
 
・ヒカリ&テイルモン
 二人して優雅に休日のお散歩。彼女たちも冒険には参加してません。
 ただこの時の表情とか会話とかは他じゃなかなか見られない類なので、けっこう貴重ではないかと思います。
 なんだかほんとうの姉妹みたいで微笑ましいものがありました。
 
 
・空
 1話でさりげにサッカーからテニスへの転向が描かれていましたが、今回でやっと部活動の場面が出てきました。
 SOSを受けてからそのまま来たため、テニスウェアでの参加です。デジタルワールドでも変化しなかったので、
 服装の固定はD-3を持っているか、またはここ最近以内に新しくデジタルワールドへ来た子供のみに発生するのかもしれません。
 
 先輩らしく要所で音頭を取ってはいましたが、特に何かしたわけではありません。
 結果的に現役組のほうが目立つかっこうなので、前回や前々回とは対象的な流れです。
 
 
・バードラモン→ピヨモン
 冒頭でエアドラモンの群れにボコられ、前半ラストにほとんど半死半生みたいなようすで出てきました。
 しかし空と出会ったとたんに見る見る回復したようなので、パートナーの存在がデジモンにとってどれほど重要か
 よくわかるような気がします。それでもダメージは残っているはずだしダークタワーも厳然と存在していたので、
 前作組の客演としては異例なほど地味でした。

 7話をみるに、バードラモンが登場してエリア開放に一役買ったエピソードも存在しているはずなのですが
 描かれていません。そのため空と京のからみは第1クールだと2話にこの12話だけで、しかも片方にあたるこの回は
 ただ一緒にいるだけという感じなのでミミ関係のほうが目立っている状態です。

 空みたいなタイプは人物としてよくてもキャラとしては自己主張が弱いので、やむをえないところでしょうか。
 
 
・賢=デジモンカイザー&ワームモン
 今回は後姿だけ。かろうじて賢のほうには一言のみセリフがありました。
 イービルスパイラルを改良中ということは、大量生産が可能になるように仕様のシェイプアップでもしてるんでしょうか。
 
 
・スターモン
 ピヨモンを捕らえ、グレイブヤードで大輔たちを待ち構えていました。いちおう今回の走狗デジモンです。
 正義の保安官を名乗っていますが、操られていないフリをしたりする妙な器用さなどからみて、普段からあんまり
 誉められた仕事はしてなかった疑いがあります。だいたい宿敵のはずのリボルモンがぜんぜん違和感を口にしてません。

 必殺技のメテオスコールは数と規模から命中率は抜群に高いのですが、食らったその場では昏倒するものの
 皆ピンピンしてたので、破壊力にはいまいち疑問が残ります。
 ライドラモンの進化解除には成功しましたが一時的ショックのようなもので、すぐ再進化されて負けてしまいました。

 そんな彼ですが、決闘には一定のこだわりを持っていたようです。
 カイザーを心から崇拝しているようだったり(何あの弁当)、変に段取りを踏むところがあったり
 ゲストとしては非常に濃いキャラでした。さすがに浦沢氏といったところ。
 
 声を演じる坂口候一氏は多数のサブキャラを演じる名脇役だそうですが、調べてみたらガオレンのヤバイバの人でもありました。
 たぶん、氏のいちばん有名な役はこのヤバイバでしょう。
 
 
・リボルモン
 後半から登場するガンマンデジモン。おかしな木の馬(?)が引く馬車を持っています。
 あまりにも唐突な出現でそれ自体がほとんどギャグ。

 これまた正義の味方を名乗っており、イービルリングはついていないので大輔たちの目標にはなっていません。
 といっても彼の正義も自分勝手なもので、むしろ決闘だっつってんのに後ろから正義の弾丸撃ちまくるまさに外道(^_^;)
 京たちのセリフじゃありませんが、どっちがイービルリングつけてるんだかわかりません。

 本来は大のロシアンルーレット好きなのですが、さすがに洒落になんないのか再現されたことはないですね。
 かわりにこの回では無類のトランプ好きに設定され、女の子たちと七並べに興じるシーンがありました。
 最後の場面からみて、スターモンもそうなのかもしれません。このふたり、普段仲がいいのか悪いのかわかりませんね(^_^;)

 声は草尾毅さん。役柄の幅が目に見えて広がってきた頃です。
 それ以前にもコメディリリーフ的なヒーロー役は多数こなしていたので、下地はあったとみるべきでしょう。
 でもこの人が山羊座のシュラっつーのはさすがに無理があったような……
 
 
・エアドラモン
 集団でバードラモンを襲撃し、グレイブヤードに叩き落とした連中。
 メタルグレイモンの周囲にいた同種や、13話の同個体との関連は不明です。
 なぜか目から変なビームを出していました。ありゃ一体なんて技でしょう。
 
 
・グレイブヤード
 今回の舞台となる西部劇のような町。ただし住人はどっかに駆り出されたのか、ほとんどいません。
 古風なスタイルの周囲には冷蔵庫や車が山積みになっていたり、多分に01を意識させるたたずまいです。
 屋内の天井で回る扇風機にはクラシックアメリカを感じますね。

 打ち捨てられた鳥篭は当然囚われたピヨモンと、囚われる大輔たちを暗示したものでしょう。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「はいはい、王子様♪」(ヒカリ)
「よろしい」(テイルモン)

 この回のふたりはほんとにナチュラルな笑顔と会話で、羽根を思うさま伸ばしているのがよくわかります。
 電波受信してちょっと陰入ってる表情の印象が強いヒカリですが、やはり笑顔も魅力的ですね。
 むしろ太一にすら見せないんじゃないでしょうか、こんな笑顔は。
 
 ……次回とのギャップが凄いことになってますな。
 
 
「おぼえてろよ、パタモン…」(タケル)
「そっちこそ〜」(パタモン)

 出番ほとんどないのにセリフだけ殿堂入りしてるこの方々。なぜかやたらと心に残ったんです。
 というかいったい何があったんだタケル。鼻ちょうちんはむしろ好感が持てますが。
 
 
「自分で正義を名乗るヤツに、ろくなヤツはおらんがや」(アルマジモン)

 いつからそうなっちゃったんですかねえ。
 少なくとも自分で神を名乗るヤツに関しては、ろくなのを見たことがありませんけど。ギャグなら別ですが。
 
 
「来るの……おそい……」(ピヨモン)
「ごめん……」(空)
「でも…来てくれたから、許してあげる……」(ピヨモン)

 地味ながら、良いやりとりです。
 
 
「正義の味方ぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁーーーー── リボルモン!」(リボルモン)

 この伸ばし具合がたまりません。馬のいななきとちょうど重なるような具合ですね。

 いきなりバッターンと開く扉とあわせてすばらしい出オチです。 
 この後のシーンで地の頭が栗みたいにとんがってることや、服の下がおそらく全身真っ黒だということが判明するので
 実はなにげに貴重な場面だったりもするんですが。
 
 
「ろくでもないヤツというよりは、変わり者なのでしょう」(伊織)

 なんでそんなに冷静なんですか君は。
 
 
「昼飯食ったあとにスターっと処刑しよっ」(スターモン)

 無駄にさわやかです。いい味だ。
 
 
「食うきゃ?」(アルマジモン)

 いいヤツです。
 それにしても太ったイメージがあるアルマジモンより、ブイモンのほうが食い意地張ってますよね。

 
  
★予告
 とうとうこの回について書くときがきたか………