デーモン軍団の襲来
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脚本:吉村元希 演出:梅澤淳稔 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
世界の混乱を未然に防ぎ、意気揚々と帰国した大輔たち。
しかし、一部の子供たちの心には今後への漠然とした不安が残っていました。そして徘徊く黒い影。
賢は悪夢の中、重大なことを思い出します。かつて仲間をかばい、首に負傷したときのことを……
翌日、突然複数の地点に強大な闇のデジモンたちがあらわれ、暴れはじめました。闇の勢力デーモン軍団です!
子供たちは完全体のパワーを活用して二体を退散させますが、銀座に現れたスカルサタモンには苦戦を強いられました。
長く現実世界にいたため力を発揮しきれないアグモンたちは成長期に戻り、インペリアルドラモンでさえデータを破壊されて動けません。
残忍なスカルサタモンは関係ない人間まで巻き込み、傷つけようとします。
アグモンたちは最後の手段として、残された進化の力をインペリアルドラモンに集中させました。
大輔の叫びにこたえ、ついに皇帝龍が覚醒。姿をインペリアルドラモン・ファイターモードへ変化させていきます。
その力は一撃でスカルサタモンを消滅させますが、悪とはいえデジモンを殺した大輔たちのショックは小さなものではありませんでした。
気を抜く間もなく、今度は軍団の首魁・デーモンが現れます。彼は賢に埋め込まれたという、あるものを欲していました。
そこへ姿を隠していたアルケニモンたちが乱入、賢を連れ去ってしまいます。
はたして、一乗寺賢に隠された謎とは!? デーモン軍団との戦いの行方は!?
★全体印象
43話です。タイトルコールは単独ではひさびさという感の木内レイコさん(大輔)。
影絵はデーモン軍団です。いちばん大柄なマリンデビモンを後列にまわしているのがポイント。足元には魔法陣が。
ここから三話はデーモン軍団篇となります。
なんの前触れも伏線も裏付けもなしに大量デビューする闇の勢力にまずポカーンとさせられることしきり。お前ら今までどこにいた?
しかも何しに出てきたのか、目的がなんなのかわからない。役割ならハッキリしているんですが。詳しくは後で。
とはいえこの回、以下3点のポイントを含んだきわめて重要なエピソードでもあります。
1. ラストに関わる設定、暗黒の種の前フリ
2. 倒さねばならない真の悪に属するデジモンの存在をアピール
3. 2に関連し、はじめて正真正銘のデジモン(と少なくとも子供たちが思っているモノ)を斃したという事実
1番はベリアルヴァンデモン関連ですから言うまでもなし。そして2番以降も、実はラスト前の仕込みです。
絶対というわけじゃありませんが、ラスボスとは討たねばならないもの。または、その気迫をもって戦うべきものです。
言っちゃ悪いですけれど、そんな時に倒せないとか殺せないとか言ってては話が進まないでしょう
(実際はそれでも強引に進められないことはないんですが) 。
だから今のうちにラスボスではないけど明らかにヤバいのを出しておいて、葛藤を昇華する必要があったのです。
またまた言い方は悪いですが、最後に向けての予行演習みたいなものも兼ねてるんですね。
今回で大輔と賢だったので、次回が京と伊織というわけ。
ほか、ミレニアモンの存在がはじめてアニメ上でも示唆されました。
そいつと戦ったのが賢ちゃん&ワームモンだったという事実に加え、決戦にリョウさんが参加していたこともわかります。
ゲームファン向けのサービスですね。あのメンバーでどうやって倒したんだとかそういう話は置いといて。
作監は竹田氏。さすがに美麗です。戦闘メインの回ですが綺麗どころふたりのキャットファイトなど、本領発揮の場面あり。
エンジェウーモンの唇にこだわりの艶が光っています。
★各キャラ&みどころ
・大輔
前半、あんまりまともなことを言うので全員に驚かれたり、素直に喜んで呆れられたりしてましたが、
彼ってやっぱりそういう位置なのかもしれないなあと思いました。
つまり普段は一歩下がっていてみんなを引っ張るわけじゃないけど、ふと異様な存在感を発揮して「こいつ何者だ!?」という。
そして追い詰められるほど、困ったときほど頼りになるタイプ。そこに立っているのだろうなと思ったのです。
また今までを注意して見ていれば、今回のような事態を他の02組の誰よりも覚悟していたことがわかると思います。
キメラモンのような暴悪を倒さなければ、誰かがやらなければ罪もないデジモンたちが、人びとが傷つけられ、殺される……
あの時、そのことを一番強く実感していたのは彼だったのかもしれません。
だからもし同じ暴挙におよぼうとする輩が現れたら、どんなことをしてでも止めたいと思っていたのでしょう。
誓いとか大袈裟なものではなくて、たぶんごく自然にそう決めていたのではないでしょうか。
ベリアルヴァンデモンは、なんとも致命的な見落としをしていたんですね。
自分にとって誰が一番危険な存在になるかなど、あの時点で予見することは不可能だったでしょうけれど。
・京
特筆するほどの事項がありません。
もちろん今回が02組全員にとって重要なチェックポイントなのは確かなんですけど、彼女にとっては次が本命ですから。
そういえば、家族がひさびさに出てきてます。
・伊織
父親・火田浩樹について踏み込んだ描写がみられました。47話以降の仕込みです。
親が片方いないということは5話の時点で語られていたんですが、ここへ来てこういう風に使われるとは思いませんでした。
考えようによっては遠大な伏線に見えなくもありません。後付けかもしれません。
どうあれ、ラストへかけてのドラマで彼が大きくフィーチャーされていくことだけは事実です。
やっぱり構成さんがたのお気に入りだったのかもしれません。
デジモン殺しうんぬんは京といっしょに、44話でじっくり語るとします。
・タケル
母親づたいで、及川の影を最初に察知したメンバーです。
あまり心配をかけたくないからなのか、世界篇のくだりは曖昧に答えていました。彼にしちゃ切れ味が悪いのは、
たとえ安心させるためであってもお母さんにはあんまり隠しごとをしたくないからかもしれません。
子供というのは本来そういうものです。
ただパタモンについてはすっかり公認のようで、帰宅したときにも頭にのっけたまんまでした。
まだ公認されてない一乗寺家とはだいぶ事情がちがってます。
・ヒカリ
やっと帰ってきたところで今後の不安を煽るという、微妙に空気の読めないことをやってました。これもちょっと珍しい。
しかし、ここまでのことをしでかしたアルケニモンやマミーモンたちをもうこれ以上放置しておくわけにはいきません。
連中に投降の意志が無い以上、もはや取るべき選択肢がほとんどないということを予感していたのですね。
彼女のことだし、邪悪なヴァンデモンとの戦いが発端だった自分はまだ良いほうだと思っているでしょう。
大輔たちのようにはじめからデジモンは友達だと教えられ、その危機を救うために戦ってきた者たちにとっては
手をかけること自体が大変なショックとなるはずなのです。どんな理由があれ、同胞と認めた者たちなのですから。
これはもう、人殺しをさせるのとほとんど同じことではありませんか?
彼女はそのことを恐れていたのだと思います。
誰かの痛みをわが事のように感じ取れるヒカリ自身にとっても、恐れるべき事態といっていい。
あの後ろ姿は、それを示唆していたのでしょう。
・賢
2年前の冒険で戦った相手がミレニアモンであると判明しました。
そのときリョウさんを庇ったことで首の後ろに傷を受け、暗黒の種の苗床を宿すようになったというわけですね。
しばらくは普段どおりだったようですから、現実世界に戻ったあとで発症したのでしょう。
21話でワームモンが出した証言とも一致しています。
それにしても、
ミレニアモンとは。
01と02の間にそんなとんでもないヤツが出現していたんですね。いまいち実感わかないのがアレだけど。
本当に、いったいどうやってあんなのを倒したんでしょうね? リョウさんのパートナーが見えないようなので、
そいつがものすごく強かったと考えるしかないのでしょうか。ちょうどゲームのように。
そしてわざわざ庇ったところから、リョウさんが彼にとって大事な友人であったとわかります。
しかし本人のコメントが一切ないので、存在そのものがボヤけてる可能性もありますね。
実際は単に話がややこしくなるから省かれたというか、サービスでリョウさんを映しただけなのでしょうけど。
・先代組
太一さん……大輔がまともなことを言ったからってなにもそこまで固まらなくったって……みんなも……(^^;)
あとはアレですかね。物議をまたまた醸したというアレ。
すっくと立って空の肩を抱くヤマト。アレです。本放送では確認しそこねたショットですがこれは皆さん煽られますね。
何故ここまでする必要があったのか全然わからないところに、やはり問題の根幹があるのだと思われてなりません。
マリンデビモンが相手だったこともあって、バトルでは丈が比較的目立っていました。
敵がすぐに逃げてしまったので、あまり長い見せ場ではないんですが。
・パートナーたち
意外に早くインペリアルドラモン・ファイターモードが登場しました。
ただしこの回では明らかに「ファイターフォーム」と言っています。仮面ライダーと被るから変更されたそうで。
そういえば、02が放映した2000年は平成ライダー発祥の年でしたっけ。
ということは、もし02のほうが先だったらライダーのほうに「〜モード」が採用されていたかもしれませんね。
ただドラゴンモードと同様、ボスクラスの敵相手に発動したわけではないのが玉に瑕です。
いかに強いとはいえ、スカルサタモンは所詮デーモンの手下でしかありません。段階としても格下です。
そんな相手にファイターモードを使うというのはデフレといいますか、皇帝龍のほうが弱く見えてしまう。
せめてデーモンを相手に発動できていたら、もっと盛り上げられたのに……
やっぱり、そういう方針じゃなかったのかなあ。
その他では丈つながりで、ズドモンがわりと目立っています。
ハンマースパークの攻撃力にはさすがのマリンデビモンも退散を余儀なくされたので、タケルたちが個別進化ではなく
ジョグレスを選んでいれば倒せていたかもしれません。44話ではシャッコウモンだけで勝てたぐらいなんだし。
あとはワームモン。
どうやら毎回あの方法で親御さんをごまかしているようです。そうとう回数をこなしていることがセリフでわかる。
・ジュン
前半にちょっと登場。大輔とはあいかわらず遠慮のない間柄のようです。
真っ二つになったバンドコンテストのチケットが、以降のお話と心変わりを暗示していますね。
・奈津子さん
タケルに及川と接触したことを知らせる役として登場しました。
パートナーやデジモンのことは承知しているので話は通りやすいのですが、タケルとしては気が進まないようです。
時には荒事になるし、今後ますますその可能性が上がるので巻き込みたくはないのでしょう。
・火田主税
かなり久々に登場しました。ひょっとして24話以来?
まあもうすぐ及川がらみで一役買うので、ここからが最大の出番になっていくのですけれど。
・賢ママ
ちょっと弱々しい雰囲気がやっぱり印象的な人。
賢との会話シーンが高石家のそれとよく似ているあたりは面白い対比です。
・ヤマトパパ
出しやすいのか、38話からこっちちょくちょく出てきますね。
特に何かするわけじゃないんですけれど……
・アルケニモン&マミーモン
ようやく表舞台に出てきました。デーモン軍団の暴走に乗じて、横から賢をかっさらっていきます。
考えてみたらこの方々、誰かに便乗してばっかりだ。
・デーモン軍団
何の前触れもなく現れた自称「闇の勢力」。
首魁デーモンを筆頭にスカルサタモン、レディデビモン、マリンデビモンの四体で構成されています。
それぞれデーモン閣下、ゾッド親分、ルーク参謀、ジード大将と名乗っているかどうかは定かではありません。
というか絶対ウソなので信じてはなりません。
閑話休題。
彼らは実のところまったくの正体不明なのですが、その実力は折り紙つきです。
大将たるデーモンの底知れなさは言うまでもありませんが、スカルサタモンの強さはハッキリいって異常の域。
究極体のはずのインペリアルドラモンまで動きを封じられてしまうのですから、ただの完全体ではありえません。
圧倒的スピードをもって、メタルグレイモンら完全体軍団をノックアウトするという実績までついでみたいに挙げてます。
そして全員が冷酷無情、卑怯卑劣上等という性格。話しあいなどは一切通用しないでしょう。
そもそもこんな連中、デジタルワールドにいるという噂すら聞こえないし、アルケニモンたち以外誰も心当たりがないのです。
彼らこそ正真正銘、別の世界からやってきた敵なのかもしれません。
名乗りのとおり、まさしくこの世ならぬ闇から来た軍団なのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、選ばれし子供たちがほんとうに恐れるべき敵はベリアルヴァンデモンではなく、彼らかもしれません。
しかしまあ、正直あまりに唐突に出てきたので何が起こったのかと思いましたよ、正直。
物語上の役割はハッキリしていて真の邪悪の存在を知らしめ、大輔たちに覚悟をさせておくための捨て石プラス
暗黒の種まわりの騒動を派手に盛り上げる賑やかしとしての立ち位置なのですが、どうにもシナリオの都合が見えます。
どこから来たのか、暗黒の種を手に入れてどうする気なのか、最終目的はなんなのか全然見えない。
おまけに最後はダゴモンの海に放り込んで臭いものに蓋ですからね。完全に捨て駒。
悪党に徹し切る姿勢は見てて楽しいんですけどねえ……こういう根っからの悪党も増やして欲しくなりますよ。
ところで、デーモンはなんであんな恰好なんでしょうか。言っちゃなんだけどすごく弱そうです。
なにか事情があるのかもしれんのですが、どうも本気を出してないように見えて大変ムズムズさせられるんですよね。
これはデジアド七不思議のひとつに数えていいかもしれません。
……アルケニモンたちはいったいどこで彼らの存在を知ったのでしょうね? これもナゾだ。
★名(迷)セリフ
「はやくご飯たべたーい! ボルシチー! ピロシキー!」(京)
まだ言ってる。
もしかして結局なんにも持って帰れなかったのかなあ、やっぱり。
「あいつらはデジモンのように見えても、ダークタワーを変形させただけのものだよ」(アグモン)
それを君が言っちゃうか、アグモン。
まあ黒ウォさんについてはノーカンなんでしょうが……。
というか君、そもそもダークタワーデジモンと戦ったことなんて無いじゃないですか。
「三年前のときのように……」(太一)
「……!」(ヒカリ)
「デジモンたちを本当に倒すため、戦わなきゃならないときがそのうち来る……!」(太一)
なぜなら二人は、アグモンたちは知っているから。倒す以外にどうしようもない、真の邪悪がこの世に存在することを。
それでも、命のやり取りをするというのはひどいストレスです。とりわけヒカリのような娘さんにとっては。
びくりと震える肩がとてもとても印象的でした。
「スカしてんじゃないわよ……!!」(レディデビモン)
女の戦い、ふたたび。竹田氏の本領発揮です。脚本になかったのを無理矢理捩じ込んでいたんだとしたら楽しい。
何が何でもこの場面を描きたいという気持ちは、同じ男としてわからんでもないです。
ところでレディデビモンの声はまたまた永野愛さんが担当しているようですね。いまやすっかり正義のヒロイン役ですが。
あ、昔っからそうか。
「こいつはあまりにも強い……強すぎる……!
でも、ダークタワーデジモンじゃない……リングで操られているのでもない……!
いったい、何が起こっているんだ……!?」(賢)
それを真の邪悪と呼ぶのでしょう。太一の言うとおり、迷っていたら危ない相手です。
こんだけ煽っといて結局なんにもわからなかったのはアレですが。
それにしても、スカルサタモンの笑い方は嫌らしくていいなあ。ウフヒヒャヒヒヒヒヒ。
「究極体……!(ニヤリ)」(スカルサタモン)
次の瞬間! 大輔たちは仰天した……
普通、究極体が現れたなら警戒する! 相手が自分より大きいならばなおさらウカツには動けない!
そのスキに攻撃をしかけるつもりだった! しかし! スカルサタモンは……
逆 に お も い っ き り 前 に 出 た ッ !
……本当に何者なんでしょう、こいつら。
「そうか、アグモンたちは今までこんなに長く現実世界にいたことがないから……!」(光子郎)
つまり定期的に戻してあげる必要があったという話。
よりによってこんな時にそんな設定持ってこなくたって……それもこれも皇帝龍ファイターモードのためか。
「でも、そうしなかったら……あのバスに乗っていた子供たちは……!」(大輔)
スカルサタモン消滅を受けて。とうとう殺っちまいました。
上ではああ書きましたし、彼自身もわかってはいるようなのですが、やっぱりショックは隠し切れないようです。
「『闇の勢力』と張りあおうというのか……?」(デーモン)
そんなこと言われたって、あなた丈センパイの使い回しじゃないですか。声が。恰好もミストバーンみたいだし。
しかし闇の勢力ってホント、なんなんでしょうね。謎です。レイトン教授を呼ばねば。
「賢! 賢! けーん!」(大輔)
あ、普通に名前で呼んでる。
★次回予告
前哨戦はここまで。殺気ムンムンな暗黒デジモンとのガチバトルが始まります。
賢のパートだけ人物作画が良いのはご愛嬌。