デジモンアドベンチャー3D デジモングランプリ

 監督:細田守 脚本: 前川淳 CG監督:森田信廣
●あらすじ
 スピードNO.1を決めるため、自慢のマシンを引っさげてサーキットに集結したパートナーデジモンたち。
 激しくも楽しいレースが始まりましたが、ピコデビモンが他の選手の妨害を始めて……



●全体印象

 「とびだす!3D東映アニメまつり」内で映画公開された作品です。4本立ての中では一番手をつとめました。
 アトラクション用だった同作品(なぜかサンリオピューロランド及びハーモニーランド公開)を、3D映画として再上映したものです。
 つまりは過去作品のリサイクルですが、デジモン作品としてはほぼ3年ぶりの映画上映となりました。監督は今をときめく細田守氏。

 ただ過去作品とはいっても、かなり特殊な条件下で上映されたものなので見たことがなかったりします。
 そのため、新鮮な気持ちで臨むことができました。CGはさすがにずいぶん前のものなのでちょっとだけ見劣りしますが、
 もともと大画面を意識した作品だからか、あまり気になりません。
 彩度の高さにも時代を感じはしますが、それが面白さを減ずるには至らないでしょう。

 時間としては7分程度しかありませんが、めいっぱいサービスが詰め込まれています。
 パートナーたちのマシンに太一たち選ばれし子供の影響を感じたり、途中のかなり下品なシーンにある意味での細田監督らしさを感じたり、
 スタッフロールに至るまで一秒でも長く楽しませようという姿勢が感じられました。
 DVDはたぶん他の3本といっしょになるでしょうが、迷うことなく購入させていただきます。

 個人的には、なぜここで突然デジモンなのかと推測のひとつでもぶち上げたいところですが……
 単に穴埋めなんだろうな、という言葉しか出てこないのが現状。新作じゃないのがなによりの証拠です。
 もっと前の鬼太郎を引っ張り出すぐらいですから、3Dアニメであるという条件を満たす作品が他になかったのでしょう
(鬼太郎の場合、厳密には平面絵も一瞬混じってましたが)。

 一応、セイバーズが終わってからはまだ2年半ちょいしか経っていません。しかしその間に、世の中の流れがまた変わったような気も。
 今、それまでと同じような形式のメディア展開をしたとしても果たしてうまくいくかどうか。
 実際セイバーズではあまりうまくいかなかったですし、もしもまだデジモンを活かす気がバンダイと東映にあるのなら、
 何か別の手を考える時期に来ているのかもしれませんね。

 というか、今やデジモンのような純粋なモンスターものはポケモンを除き、ほぼ淘汰されつつあるのが実情です。
 そのかわり、以前にも増して勢いをつけているのがカード物。戦隊もカードバトルを取り入れるという噂がまことしやかに流れていますし、
 次のデジモンは案外バトルスピリッツみたいなカードゲームものになったりするかもしれませんね。

 いや、割とマジに。
 
 
 
●登場デジモン

・ブイモン
 愛機「ドラモンV」で参加。便宜上とはいえ、今となっては貴重すぎる主役映画です。上映当時は02が放映中でしたしね。
 ドラモンVは文字通りをかたどった流線型のエアスピーダーで、きわめて正統派のレースマシンです。カッコよさでは一番でしょう。
 前面に露出した大型の機関はガソリンエンジンのように見えますが、動力は不明です。

 バイクと航空機、F1カーが融合したデザインを見ると、「スターウォーズEP1」のポッドレースを連想しますね。
 やっぱり意識してたのかな。
 
 
・ピコデビモン
 まさかの劇場デビュー。ブラック魔王的立場です。セコい妨害で優勝を狙うも、最後にまとめてしっぺ返しを食らうのはお約束。
 こうして見ると、小悪党としてレベルの高いキャラだったんだと実感しますね。

 愛機「デビル・ドクター」は、必殺技「ピコダーツ」の注射器をそのままモチーフにしたマシンです。
 形そのものも空気抵抗が少なく、いかにも速そう。
 操縦はもちろん足で行います。その状態でピコダーツ撃ってた気がするし、器用ですね。
 
 
・アグモン
 こちらは暴走キャラ担当。まさにイリーガルです。
 下ネタ担当でもあり、中盤に大変恐ろしい攻撃(?)を披露します。これはキツすぎる。

 愛機「太一スペシャル」はほぼ小型ロケット。エンジンだけは凄いっぽいんですが、まっすぐ飛んでくれない暴れ馬です。
 重心の位置も悪いのかもしれません。しかし、最後は大きく空いた前面スペースを活かした展開に。
 
 
・ガブモン
 無意味に爽やかな印象。
 この日のために愛機をピカピカに磨いてきたといいますが、最悪の形でピンチに陥ることに……

 愛機「ヤマト2000GT」は正統派のタイヤレスエアカーで、どこか外車を意識したデザイン。
 安定性、居住性とも見るからに優れており、運も手伝って序盤はトップを独走する好ダッシュを見せていました。
 しかし中盤、文字通りウンの尽きを迎えることとなります。ああ無情。
 
 
・ピヨモン
 ファンシーなデザインの小型プロペラ機「ラブラブ・ハート」を駆ります。あまり速くなさそう。
 ちょっとだけセリフもありますが、基本的にあっさりとリタイアする役。
 
 
・テントモン
 なぜかシルクハット着用。
 愛機「ダヴィンチ・スクリュー」は名前まんまの機体です。滞空性能はありそうですが、レースには不向きな感じ。
 わりと序盤にあえなくリタイアしてしまいます。
 
 
・パルモン
 役割としては十把一絡げ。これだけキャラが多いなら仕方ありません。
 愛機「パラソル・コーン」はどうやって飛んでるのか不明すぎるマシンです。少なくとも、レース用には見えない。
 
 
・ゴマモン
 愛機「ひこうせん・ゴマ丈号」はパルモン機と同じく、のんびり飛ぶには向いてますがレースマシンとしては無理があります。
 とはいえ、実用よりもそれぞれのキャラ性をアピールするという意味では妥当なデザインばかりなのは確かでしょう。
 こちらも中盤、ブイモンとピコデビモンの小競り合いに巻き込まれてリタイアしています。
 
 
・パタモン
 開始早々リタイア扱いの和み担当。レース以前なのもキャラ性ですね。
 愛機(?)「パタパタ・ゴーゴー」はパタモン自体をスピードアップするというシロモノ。形もイメージも大違いですが、
 思想としてはボバ・フェットのジェットパックとまあ似たようなものです。

 劇中ではちゃんと固定してなかったせいか、パタモンからスッポ抜けて勝手に飛んで行ってしまいました。
 
 
・テイルモン
 バイクに似た愛機「ワイルド・キャット」を駆って参加しました。
 マシンのデザインだけなら一、二を争うカッコよさなんですが、ほぼセリフなしでリタイアとなっています。
 しかしこのマシン、スカウトトルーパーが乗っても違和感なさそうだな。
 
 
・ホークモン
 複葉機に似た「バロンホーク改」を操ります。改、ってことは単なるバロンホークも存在するんでしょうか。謎だ。
 このマシンは鳥らしく完全な飛行機デザイン。かつ実際の航空機に近いので、どの機体よりもちゃんと飛びそうに見えます。
 ただ剛性にはやや問題がありそうで、劇中でも中盤のトラブルに巻き込まれてあっというまにリタイアしてしまいました。
 
 
・アルマジモン
 甲羅をチェッカーフラッグの模様で飾ってます。工事現場のヘルメットが妙によく似合う。
 巨大なタイヤが印象的な愛機「スーパー・アルマジモン」は、無骨すぎるデザインから頑丈さではナンバーワンに見えます。
 しかし不運が重なったのか、わりと真っ先にリタイアしてしまいました。
 つうかこの形でどうやってスピードを出していたんだろう。
 
 
 ちなみに夏の公開だったため、残念ながらワームモンの出番はありません。
 登場していたら、けっこうな確率で緑色の多脚型マシンに乗っていたことでしょう。不整地でのレースに強そう。



●まとめ
 当時はともかく、3Dまつり版はデジモンとしてみると微妙な扱いですが、作品としてはとても楽しめるものになっています。
 時間も短いので、思いついたときに振り返りやすいでしょう。