マサル人生最悪の日 いたずらソウルモン
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脚本:横手美智子 演出:門田英彦 作画監督:伊藤智子 |
★あらすじ
トーマの家に招待された知香。しかし、同伴者としてついてきた大とアグモンのあまりにも不作法な振る舞いに腹を立てた彼女は壮絶な捨てセリフを残し、飛び出していってしまう。後を追った大の身に次々と振りかかる災難。ソウルモンのしわざだった。知香の怒りに反応したのか、彼女の捨てゼリフ一語一語を実現させていたのだ。しまいには、最後のセリフ通り20万トンタンカーが横浜にあらわれる。ソウルモンが動かしているのだ。
単身、タンカーを引きつける大。それを見て兄を止めようとする知香だったが、そこへトーマが対策を携えて駆けつける。特殊スプレーによって、透明なソウルモンがついにその姿をあらわした。視認さえできればこっちのもの、大の怒りの拳とジオグレイモンの必殺技が勝負を決める。
だが、トーマの心には疑問が残った。デジモンが人間界に出てくる理由と、人間との関係とは…?
★全体印象
10話代に突入しました。また少し構成が変わって、今回はサブタイトルが最初に出てきます。
そのかわりアバンが短く、8話からみれば半分以下。それでも「アバンパート」として見ると長いんですが。
半分ギャグみたいな回ですが、8話と9話を踏まえて今後への示唆もなされており、待ち受けるという急展開を予感させる作り。
特に「人間とデジモンの意志がどちらかか、または相互に影響を与える」という現象は2話の段階からすでに見られるものなので、仕込みがそろそろ活きてくるようです。とうとう来るか……そんな心境ですね。
それにしても、戦隊シリーズの経験者を多く脚本にむかえているだけあってその匂いも強いのが今シリーズの特色ですね。
ひいては他のどのシリーズよりも一話完結色が濃く……というより、こうした形のドラマ展開は旧作にみられなかった類いです。わずかに02が近いですが、あれとてデジモンカイザーという共通の敵役がいました。今作のように一話完結形式を採りつつ、シリーズ通しての敵がいないつくりは初めてです(いちばん近いのはウルトラマン)。連続形式に比較してのメリットはバラエティ性と、舞台リセットによるキャラ描写のしやすさで、事実まだ10話にもかかわらずかなりのパターンのお話が展開されていますし、キャラも少しずつこなれてきています。ここからなら少しぐらいイベントがあっても、そんなに困ることはないでしょう。もちろん一話完結を守る作品も少なくはありませんし、セイバーズならどちらへでも行けるはずです。
いずれにしても、節目は近い。この先数話に目がはなせませんよ。
★各キャラ&みどころ
・大
知香が恥ずかしい思いをするのもまぁ、わかるんですが…いつも通りに振る舞ってるだけなんですよね。よけい悪いか(^^;)
でも、知香がフィンガーボウル落としたときの顛末を「確認してから」自分も飲んでことさら声高にうまいと言い、彼女の恥を一緒にひっかぶって軽減しようとしているように見えますし、そんな妹が疑われれば本気で庇い、タンカーが出たらオトリになろうとする。日に日に漢気が増しています。
頭脳面はトーマの独壇場ですが、こういった分野ならやっぱり彼の出番ですね。
そしてあいかわらず強烈な拳。相手がゴースト型であろーがフェンス外に吹っ飛ばします。おまえは剣崎順か。
・ アグモン
パートナーと別行動を取ってあとから合流するという、これもわりとセイバーズならではのパターンで動いてます。
ひとりだけで知香と会話してるシーンも前からけっこうあるので、このシリーズのパートナーたちは似た者同士なパーソナルを持っていつつ、それぞれ自立した行動をとりやすいようになっているんですね。ガオモンも次第にそういう顔を見せてきていますし。
そーいえば珍しくデジヴァイスの中に入って行動するシーンがありましたが、人さがしをするには目立ちすぎるからなんでしょうか。
そのわりに後半は普通に知香をさがしにいって普通に見つけていましたけど。
・ 知香
ああして思いっきり怒ったりヘソを曲げたりするのって、ある意味肉親だからできることなのかもしれないなあ…。
もちろん大は不作法でしたし、彼なりの気遣いってものも伝わりませんでしたが、本心ではやっぱり繋がっているという。
いったん安心したら、またもとの生意気な妹に戻るのもお約束。
あの緑の一張羅(たぶん)も、きっとお母さんが見立ててくれたものなのでしょうね。
・トーマ
今回は大の脇を固めて、要所要所を締める役回りでした。
ただ、知香のセリフを大真面目に反復するシーンは何だか天然色がつよい。
知香が相手だと茶目っ気が出るというか、当りがやわらかくなりますね。実感です。
序盤、大の不作法なテーブルマナーに口を出さなかったのは知香の手前という以上に「言っても無駄」だと見切っていたからなのでしょうけど。
または「見なかったこと」にして知香の相手に集中する気だったとか。
・ガオモン
実は3話以来はじめて進化していません。けっこう働きっぱなしだったんだなあ。それでもジオグレイモンの出番のほうが多いけれど。
テーブルマナーについてはマスターに教わってるんでしょうが、記憶力あるみたいなので覚えはよさそうです。
・淑乃&ララモン
あいかわらず、サポート役を着実にこなしています。
プライベートでは少々だらしないらしい淑乃ですが、8話がそうだったように仕事は非常にマジメにやってますね。
DATSに入ったきっかけは何だったのでしょう? やっぱりララモンに関わった事件なのでしょうか。
・薩摩隊長
……もしかしたら表に出てきたの初めて?
なにげにクダモン巻いてないのも初めて見たような気が…。
オペレーターさんたちに退避命令を出す横顔はまるで艦長のようでした。
・DATSのみなさん
お話の流れ上なのかなんなのか、今回はまたオペレーターさんたちがデジモンの紹介をやってました。
回によっては別にパターンを踏まなくてもいいようです。脚本しだい?
そういえば、おっちゃんを最近見かけないなぁ…。忘れた頃にひょっこり出てきそう。
・ソウルモン
最初のイタズラは個人レベルでしたが、言葉しだいでいくらでもエスカレートする手合い。捨ててはおけますまい。
透明な敵を特殊スプレーでいぶり出すという作戦は知る限り「帰ってきたウルトラマン」7話に登場の透明怪獣・ゴルバゴスにまで遡る由緒正しいものですが、
ここまでベタなものは物凄くひさしぶりに見ました。
もっとも、ゴルバゴスの能力は体色を変えて周囲に同化するというもの。このソウルモンの場合は、どちらかと言えば同じ「帰りマン」15話に出てくるエレドータスに近いのですがこの怪獣、エネルギーを吸うと視認が可能になってしまうので消えっぱなしでいられるソウルモンの方が一枚上手でしょうか。
ただ、巨大化したときは電気を吸ったように見えなくもありません。
透明といえば他に忍者怪獣サータンがいますけど、こちらは透視光線で居場所を見切られています。
その理屈でいくとララモンには透視能力があるそうだから、それで見つけられるんじゃ? なんて思ってしまいますが……
でもまぁ、世の中そう都合よくはいかないってことですかね。スプレーは効いたけど。
…と、今シリーズのデジモンはわりにウルトラ怪獣にも連想を飛ばすことができるようになってるみたいです。
まぁ、透明化による隠密行動なら01でもより上位のファントモンが見せていましたけど。
★名(迷)セリフ
「大にいちゃんなんか……大にいちゃんなんか…道ですべってころんでぶつかって看板に当たって橋から落ちて! 車に追っかけられて……!
タンカーに轢かれちゃえばいいのよー!」(知香)
何度見てもそこまで言うかというくらい壮絶な捨てセリフだ……(^^;)
これで間接的に大はひどい目に遭うんですが、むしろ彼の妹思い(親心?)が強調される結果に。
大真面目に検証するトーマやDATSのみなさんがお茶目。
いや、笑ってる場合じゃないんだけど。
「その可能性はある」(トーマ)
「あるかも」(ララモン)
「大だしね……」(淑乃)
ひどい人たちだ(^^;)
「ふざけんな!! 黙って聞いてりゃ、てめえら… 知香がデジモンを操ってるわけねェだろうが!」 (大)
自分がひどい目に遭ったのは完全に度外視で、妹の擁護。
皆も大のこういうところを知っているから、時には黙ってフォローに回るわけです。今回のサブはみな対応が大人。
それはさておいて、ぶん殴られたポーンチェスモンが気の毒ですが顔に反応が出ないので痛がってるのかどうかさえわからない。
「…淑乃。君も大のようになってきたのではないのかね?」(クダモン)
「え!? どこがですか!?」(淑乃)
…出会うのがもうちょっと遅かったら、祢音は淑乃にぶん殴られていたかもしれないってことなのでしょーか…。
どうでもいいんですが上官とはいえパートナーにも敬語使うんですね。大が誰に対してもタメ口聞く事が多いので知りませんでした。
それとも、単なる言い回しかな?
「君は馬鹿か」(トーマ)
だんだんツッコミの精度が上がってきているなあ。
このあとの会話などで知香というか、大門一家にだいたいの事情が伝わっていることが明確になりました。
さりげなーくDATSモーターボートも登場です。
「これは知香のぶんだあッ!!」(大)
兄の拳。何か思い出すと思ったらフェニックス一輝だ。
しかしいくら大の兄貴でも
「我が最愛の妹 知香の清らかな心を汚した罪は一番重い!!」なんて恥ずかしいセリフは言わないと思います。
★次回予告
おっ、今度はピコデビモンか。ほっといたら本当にウィザーモンやテイルモンが出そうです。
でも、ナレーションだけではいったいどんな話になるのかわかりづらい気が…。