人間界大パニック デジモン軍団進撃

 脚本:大和屋暁 演出:中尾幸彦 作画監督:八島善孝
★あらすじ
 国家機密庁に追われる身となったイクト。その場は大たちが助けるのだが、彼はDATS本部から姿を消してしまう。
 パートナーであるファルコモンの同行も拒否し、小さな姿は町へ消えていった。

 やがて、無数のデジモンが人間界へ現れる。強硬的思想を持つサーベルレオモン麾下の軍団を、ゴツモンが借り受けて攻めてきたのだ。
 迎え撃つDATSだったが、数があまりにも多すぎて総動員でも追いつかない。圧倒的不利な状況のなか、ゴツモンがたたきつけてきた条件は
 転送装置の破壊と、イクトの引き渡しだった。拒否しようとする大たちだったが、政府上層部の決定は要求の受諾。
 そこへ、他ならぬイクトが姿をみせた。居場所をなくしてなかば自暴自棄になっていた彼は、自分と引き換えに軍を退かせようとする。

 そんな彼を救ったのはファルコモンの行動と、彼とともにあるという言葉だった。イクトは戦う決意を固める。
 しかし、状況は好転しないままだ。苦戦をつづけるDATSを冷ややかな視線で見つめるの謎の男。
 彼が開いた巨大なデジタルゲートにより、デジモンの軍勢はデジタルワールドへ放逐されていく……この男は何者なのか!?



★全体印象
 21話です。19話からつづくイクト篇その3。

 メルクリモンとサーベルレオモンの確執、自分を見失ったイクトを助けるファルコモンの友情、襲いくるデジモン軍団、裏で蠢く陰謀と、
 今回もかなり盛りだくさんでした。まさか早くも倉田まで出てくるとは、出し惜しみなしにガンガンお話が進んでいきますね。
 思えばまだ20話そこそこなのに完全体はバンバン出てくるし究極体もすでに2体目が出てきてるので、派手な展開です。
 あんまり派手すぎて3クール目以降がちょっと心配になってくるぐらいの勢い。このぶんだとシャイングレイモンの登場さえ近い予感がします。

 上に書いたとおりイクトメインが続いているため、大たちの比重は弱め。
 しかし重要なポイントを躊躇なくたたみかけているため、これといって不満はありません。正直彼についてはもうちょっと引っ張るとさえ
 思っていたので、意外な流れでむしろ嬉しくなってくるぐらいのものです。
 しかも今回は、ファルコモンの行動によって大きな転機をむかえました。節目の回ですね。

 作監は八島氏ですが、原画にもう一人います。
 その方の作画と思われるナイトチェスモン登場のシーンは、すっかり忘れてたのもあってたいへん衝撃的で鮮烈でした。
 そういう意味でもたいへん重要なエピソードです。

 それにしても、大和屋氏の仕事はシリーズ構成並みかそれ以上に多いなぁ……。
 おまけに今週はボウケンジャーまで書いてますよこの方。前後してるんだろうけど。



★CM
 デジモンストーリーのCMが大ヒット御礼のバージョンに差し変わってました。
 20万本がほぼ確実みたいなので、その恩恵でしょうか。これは、WSで出てたころの売り上げと互角に近いものと思われます。
 ペースが維持されれば、20万越えも非現実的な話ではありません。



★各キャラ&みどころ

・大
 ああ、やっぱりイクトにあのセリフを言ったか…彼ならそう言うと思いました。
 
 あいかわらずの豪快さでボアモンの群れに拳入れてましたけど、それと同じくらい豪快に吹っ飛びまくっています。
 考えてみたら、テイマーの方にこれだけ被害が及ぶのってデジモンじゃ初めてかもしれません。テイマーズあたりでも多対一の状況は
 少なくありませんでしたが、 あんなに強調されてはいませんでした。

 それもこれも彼がガンガン前に出ていくという今までにないタイプで、そのぶん危ない橋も渡りやすい流れからきているのでしょうが…。


・アグモン→ライズグレイモン
 同格までなら圧倒できる完全体の姿でも、さすがに数でこられるとダメージの蓄積が馬鹿にならんようです。
 ましてアーマー体といえば、セイバーズにおいてもなみの成熟期とひと味違う位置づけ。それが群れをなしてくるとなれば、
 一発一発のダメージは決して無視できるものじゃないんでしょう。相手の数が少なければ、技の直撃をくらう前に勝てるわけですし。


・淑乃
 プロらしい行動の早さで子供を助けたりしてましたが、相当ヤバい状況が二度もありました。軍団規模を相手取る恐ろしさです。
 さすがにライラモンがあれだけ大きいと、01のヒカリみたいに全身でパートナーを受け止めるというわけにはいかんでしょうね。
 なんかセイバーズに関しては合体進化でもしてたほうが安全なような…留姫より6歳以上も年上なので放送できませんけど。


・ララモン→ライラモン
 攻めるぶんには一撃で数体をなぎ倒せるんですが、受ける側に転じると打たれ弱さが目立つ気がします。
 完全体ズのなかでは軽量級なので、物理的衝撃には強いほうじゃないのでしょう。死角に回られると危険パターンです。
 それでも。成熟期のままだった頃よりは遥かにマシなんですけど。へたすっと、最初のノーズブラスター被弾で戦闘不能です。

 前から思ってましたが、ゆかなさんの叫びは割れたときが取り分けエロいです。
 キ○アホ○イトのときも変身後の演技のほうがDANZEN好きですし、私。


・トーマ
 実は16話以来ろくな出番がありません。イクト篇でいちばんワリを食っている人物です。
 特にここ数話は淑乃以下の存在感という状態。まさかこんな展開になろうとは…。
 まあ、ほっといてもいずれ挽回するから安心感はありますけど。


・ガオモン→マッハガオガモン
 彼も完全体になったはいいものの、初回をのぞくと相手にめぐまれない状況がつづいてました。
 ブロッサモンの撃破はライズグレイモン任せだし、17話は出番なし、18話は負け。さらに19・20話と出番なしですから。
 次回もひどい目にあうみたいなので、しばらく雌伏の時期が続きそうです。17話ではいいセリフを言ってましたけどね。

 でも今回もトーマと一緒に、ライラモンのフォローへ回るケースばかりだったような…。


・白川さんと黒崎さん
 忘れた頃に華麗に登場。本来の業務をほっぽり出して来ているので、よほどの非常事態じゃなけりゃ出戦はしないのでしょう。
 現場スタッフじゃないからでしょうが、パートナーの能力が戦闘向きじゃなさそうというのも大きいんでしょうね。
 しかし、こういう局面となれば話は別だし能力も活かせるというわけですか。

 ナイトチェスモンは見た目完全にロボ。外観的に2体の差異はありません。ビークルロボだってもう少し違うぞ。
 あいかわらず全然しゃべりませんね。進化もお披露目しただけで、その後とくに見せ場はありませんでした。残念。
 

・隊長とクダモン
 ジリ貧まるわかりの状況を見かねて直接現場指揮をとるべく、出戦を考えたみたいですが長官の登場でお流れ。
 この長官、空気を読まない能力が天下一品です。何度視聴者をがっかりさせるつもりですか。


・イクト
 せっかく母親と対面できたというのに、ますます行き場所がなくなって自暴自棄になりかけるまでに追いつめられてしまいました。
 以前は人間を憎悪し、デジモンを同類と認識することで居場所を認識してましたがそれも消えたので、まさに根無し草。
 自分を犠牲にしようとしたのは、せめて存在意義が欲しかったからでしょうか。たとえそれが忌むべきものであったとしても…。
 
 そんな彼を救えるのはただ一人、パートナーでありまた、ともに育った兄弟でもあるファルコモン。
 彼の言葉は、イクトにとってどれほどの支えになったことでしょう。

 …そういえば、彼がなんでデジヴァイスを持ってるのかがまだ謎なままですね。
 大門博士かと思ってたんですが、こうなると倉田という線も出てきます。


・ ファルコモン
 最初は、過激な行動のわりにえらく素っ頓狂な声だなあと思ってました。
 回を追うごとにどんどん可愛らしくなっていって、いまではもう神代さんの声なしじゃ考えられません。これも声優さんの実力のうちか。
 次回で知香と対面したときの会話が楽しみです。ピヨモンは話題に出るでしょうか…。

 …しかし、イクトに激ボレですなあ君。


・メルクリモン
 城に引きこもりっぱなし。
 このところ、ますます慎重になったきらいがありますが…考えられる理由はいくつかあります。

 1.そもそも、戦より部下の安全を重んじる穏健派っぽい

 2.大たちと再度戦った際その成長ぶりに驚き、戦いとなれば自分はともかく、部下がただでは済まないと慎重になっている

 3.一連の事象に何かえたいのしれない臭いを感じ取っており、うかつな行動は謹むべきだと考えている

 こんなところでしょうか。
 あと、イクトの身が心配で全面戦争に持ち込むのは気が引けてたのかもしれません。イクトが巻き添えくらうかもしれないので。
 捜索をよりによってゴツモンに任せるあたり、あんまり人員にはめぐまれてないみたいですけど…といって、ゲートは壊れてしまったようなので
 彼自身がホイホイ出ていくというわけにはいかないみたいですが。
 あれ? でも、だとしたら次回のサーベルレオモンはどうやって人間界に出てくるんでしょう?

 ただ、ゴツモンにはさすがに疑念を持ちはじめてる節もあるので、イクトを巡ってサーベルレオモンと対立する可能性もあります。
 出てきた当初から思ってましたけど、彼ってホント、デジモンたちにとってならばよい長だと思います。
 確かにちょっとだけ慎重すぎるかもしれないけど、長っていうのは大抵そんなもんだし。

 …そういえば、彼は昔ザガンダ大森林の長でもありましたっけ。
 それがなんで、無限氷壁なんぞに引きこもってるんでしょう? 10年前の事件と何か関わりがあるのかな。


・ゴツモン
 今度はサーベルレオモンに取り入って軍団を借り受け、攻撃を仕掛けてきました。
 これに乗じてイクトを始末する気なのはひと目でわかります。いよいよもってナリフリ構わなくなってきました。
 でも彼、メルクリモンのことはどう思ってるんでしょう? 思想や姿勢はどうあれ、それでもまだ忠誠は感じてるように思うんですが…。
 そうでなければ、側近なんてやってられないでしょうし。無限氷壁出身なのかもしれないですけど。

 マジ声になるとちょっと怖い。前田健さんの演技がどんどんいい感じになってきてます。
 怨み屋本舗ではジャスミンと共演で奇声をあげており、すぐ聞き分けられました。


・サーベルレオモン
 デジタルワールド強硬派。多数の配下をしたがえているようす。もしかして、彼が現在の大森林を治めているのでしょうか?
 01に出てきた個体よりもはるかに巨大で、威圧感があります。これならば主役クラスを相手取っても、迫力でおくれはとりますまい。
 このクラスとしてはヘラクルカブテリモンなどと同時期の、いわば最古参。元祖究極体の実力、とくと見せてもらいましょう。

 性格はどうやらかなりの自信家で、やや傲慢なところもあるように見えます。
 その傲慢さがときには攻撃性に変わり、強硬派へ自然と導いていったのでしょう。人間のことは脆弱とみて見下していそうですね。

 イクトのことを知っているのか、彼をどう思っているのか。そのへんは、次回を見てみないとまだわかりません。


・羽柴長官@国家機密庁
 唐突にDATS本部へ現れました。隊長に出撃禁止の下命を下したのも彼だと思われます。
 状況を鑑みればぱっと見、一理あることを言ってるように見えますが前回の行動と、まるっきりその件の意趣返しみたいに見える態度から、
 とても同意できる心理にはなれません。視聴者の心理もそういう風に誘導されるようになってます。

 思い起こせば、この男は出てきた当初からDATS解散の口実をねらっていました。
 平たく言えば失策をネタに合法的な権利取り上げを迫ろうとしていたわけで、つまり国家機密庁としてはDATSが邪魔だということになります。
 DATSはもともとデジタルワールド探検隊が前身ですから、根幹にかかわったと思われる大門英博士の思想が色濃く反映されていたとしても
 不思議ではありません。それが邪魔だということはヘタをすると、大門博士の思想が邪魔だということになります。

 …さて、いったいどんな企てを目論んでいるのやら。どっちみち、ロクなことじゃないでしょうけど。

 初登場時、此奴が「ウルトラマンメビウス」のトリヤマ補佐官に似てると書いたことがありますが正式に撤回します。
 補佐官はダメダメな人物ですが、少なくとも誰かを胡散臭い嫌疑で拘束しようとするような人ではないはずですもの。

 
・倉田
 これまた意外に早く表舞台へ出てきました。大門博士の助手だった男です。

 助手……素敵な言葉ですね。人が生み出した裏切りフラグの極みですよ。
 ごく単純な推理としては、DATSに参加せず国家機密庁と通じてデジタルワールドへ導き入れ、何か恐ろしい事をたくらんでいる、
 またはその先にある目的に取り憑かれている。パッと出てくるのは、そのへんです。

 はたしてその考えは機密庁に持ち込まれたものか、彼個人の画策を持ち込んだものか、はたまた「第三者」に吹き込まれたものか。
 私としてはやはり国家機密庁もこの男も単なる隠れみので、本当の敵はその影にいる、というのが最有力だとみてるんですが…
 これもまあ、ごくごく当たり前の推理でしかありません。

 あと、これは単なる邪推なんですがこいつが小百合ママに横恋慕してたりしたらイヤだなあ。
 なんかDATSにコンプレックス持ってるようだし、それイコール大門博士へのコンプレックスって臭いがするし。
 どっちにしても、いずれ大に「お前ってやつは男らしくないんだよ!!」って殴られそうな顔をしていますが。

 声は菊池正美さんでした。今度は悪役か……。



★名(迷)セリフ

「甘ったれんな! 居場所なんて、自分で見つけろ! それでも無けりゃ、自分で作れ!
 やけになってそんな事したって、誰も喜ばねぇッ!」(大)


 やっぱりな、というセリフ。
 大ならそう言うと思ってました。彼は男ですから。


「ぼくはイクトが大好きだよ!
 だから、居場所なんていらない! ずーっとイクトと一緒にいられればいい!
 人間だろうとデジモンだろうと関係ない……ぼくにとって、イクトはイクトだから……!」(ファルコモン)


 出た、「大好き」。私がいちばん弱いたぐいのセリフです。愛よりココロに響く。
 わりに戦ってばっかりだった今回のエピソードですが、そんな中から選ぶならこれで決まりですね。
 「友と一緒にいるところが、自分の居場所」なんてセリフが「超星艦隊セイザーX」にも出てきますが、近いものを感じます。

 …しかしファルコモン…また随分とストレートに告りましたね。
 最初ッからベタボレ光線出しまくってたので、いつ言っても不思議じゃない雰囲気ではありましたが。

 そして今のファルコモンだったら、ピヨモンの気持ちが理解できるかもしれませんね。




★次回予告
 息つくまもなく強敵襲来です。完全体がそろってもぜんぜん足りません。
 マッハガオガモンが踏まれてやばい目になっています。今度はなんとか痛み分けぐらいに持ち込めるといいんですが…。

 しかしまあ、究極体が強いのは当たり前なので見ててちょっと楽しいのもたしかなんですよね(^^;)