倒せ究極体！ 怒濤サーベルレオモン

★あらすじ
　なんとか難をのがれた人間界。しかし、イクトの心に残った傷は依然深いままだった。
　大のはからいで大門家へ居候することになるも、ユキダルモンの記憶が彼を苦しめる。

　そんな折、ついにしびれを切らしたサーベルレオモンが単身、人間界へ渡ってくる。
　究極体の圧倒的パワーを前に大苦戦する大たち。イクトはなんとか彼を止めようとするが、どうにもならない。
　大はそれでもあきらめず向かっていこうとするが、そのとき突然謎のデジモンが現れた。

　イレギュラーの攻撃によってにわかに弱体化したサーベルレオモンは、大の拳とライズグレイモンの技によって倒れる。
　ところが、そのデジタマが消滅してしまった。いったい何故？
　薩摩隊長とトーマは、事件に前後してDATSへ出入りするようになった倉田という男にわずかな疑惑を抱きはじめる。
　大門英博士の助手だったというこの男の真意はどこにあるのか？

　何はともあれ、イクトの居場所はひとまず大門家の居候として落ち着くことになる。 　



★全体印象
　21話です。

　まさしく怒濤のように現れ、怒濤のように退場していったサーベルレオモンのお話でした。早すぎ(＾＾;)
　かつてはメルクリモンの友だったという実力派を相手にどう戦うのかと思ったら、気魄で押し切るのでも敵に力を認めさせるのでもなく、
　第三者の介入によって「勝たせてもらう」という、なんとも後味の悪いものでした。剣獅子様が気の毒なくらいです。
　事情を知らないとはいえ締めがほのぼの風味なので、なおのこと。

　ただ、これによって究極体に格下が正面から向かっていっても簡単には勝てない、という事実が保持されたことになります。
　そして、その究極体をもあんな風にしてしまう謎のデジモンの不気味さと恐ろしさもまた強調され、今後への興味をそそらせてくれる形に。
　サーベルレオモンは文字通り、格好のエサにされた形になってしまいましたね。

　その一方、大門一家とイクトの交流という微笑ましい場面もふんだんに用意されています。
　上ではああ書きましたが、このパートが謎と不気味を軽減させているのは確かで、バランスを取ってくれてるんじゃないでしょうか。
　元からそうですがサービスシーンも結構あり、なかなか見逃せない回でしょう。

　作画・脚本は安定株。前回ほどではありませんが結構動きますし、ヤバいショットも見られません。
　ただ、トーマがちょっとたれ目ぎみだったかも。



★各キャラ＆みどころ

・大
　あいかわらず兄貴です。言ってることがたまに滅茶苦茶ですが兄貴だからしょうがない。
　イクトへの接し方はまさに兄のもので、父親代わりとしてもなかなかのもの。時間が必要ないまの時期において、野口夫妻のかわりができるのは
　彼と大門一家しかないってことでしょう。話の都合を差し引いても、ほかに適役はいないと感じます。

　相手がメルクリモンと同格であろうが一切ひるまずに向かっていく姿勢は、第１クールですでに育まれたもの。
　自分が敵より力がないとわかった上で、それでも戦うしかないと踏み込むわけですからあの時とは違います。

　さすがに、サーベルレオモンの牙を折ったのは彼だけの力じゃないと思いますが…
　それでも、大でなければ折れなかったと思うのは、これまでの実績がモノを言う連想でしょう。


・ アグモン→ライズグレイモン
　敵の強さがうなぎ登りになってるせいでジオグレイモン時より苦戦がめだつ彼。
　しかし大の姿を見て奮起し、ネイルクラッシャーを食らった体で立ち上がったのは見事でした。日々確実に強くなってます。
　ふだんはボケてばっかりですが、ひさびさに熱い姿を見た気がしますよ。

　大もそうですけど、よほど卵焼きに飢えていたのでしょうね。


・淑乃
　大とイクトが中心なのもあり、目立った出番はありません。
　ライラモンのまわりで驚き役をやってます。


・ララモン→ライラモン
　よく考えてみたら、やる気まんまんな究極体の技を受けてもまだ完全体の姿を保っていたのですから、それだけでも大したものです。
　以前だったら成熟期の攻撃を受けた時点でグロッキー状態になっていたというのに…強くなりましたね。
　ところで今回は6メートル越えてるように見えます。


・トーマ
　ここへ至るまで活躍にめぐまれない彼ですが、倉田について何か違和感をおぼえたような表情をしてました。
　彼の正体をあばく役割が回ってくるかもしれません。


・ガオモン→ガオガモン
　ある意味予告編最大の見せ場、踏まれてヤバい顔になってるシーンがやっぱり最大の出番でした。
　今回も苦い杯をなめる羽目に陥っています。このぶんだと、もうしばらく辛抱しないといけない気がしてきました。


・イクト
　前回でファルコモンの言葉に救われたように見せかけてまたダウナーモードに落っこちていたので、おや？　と思ったのは事実です。
　でも、まあ……今までずっと信じてきた居場所に裏切られた（と思い込んでいる）のですから、栓無いことでしょう。
　行動の動機が「戦いを止めたい」へ微妙に変化してたぶんだけ、まだマシかも。

　そんな彼を救ったもうひとりの存在は、大でした。ひいては大門一家も含まれるでしょう。
　ついこの間は敵意むき出しだった相手をDATSがああもあっさり受け入れられたのは、大の存在が大きいはずです。
　他のメンバーだけではややもすると警戒が先に立って、彼を味方にまでは引き入れられなかったかもしれません。
　トーマの空気を読めない発言とか見てると、そう思わずにはいられないのです。
　だから、あのセリフ「まったく、君は……」があるわけで。

　まだまだ移行期なので、今回も戦闘への本格参加は見送り。前回ではいちおう戦ってましたけど、真のイベントは完全体進化かな。


・ファルコモン
　知香と対面したとき涙ぐんでいたので、やっぱりあの時は悪いことをしたと思ってるようです。ギャグ入ってましたけどね。
　初登場時から兆候はありましたけど、可愛らしくなってしまいましたねえ。つくづく、そう感じました。
　ピヨモンの話がもうずっと前のことのようにさえ思えます。

　あの忍者服みたいなの、地毛だったんだ……。


・大門一家
　ピヨモンのことでひと悶着あるかと思ったんですが、見事なまでに何もありませんでした。
　けど考えてみたらそれもなかば予想のうちで、セイバーズという番組の色を思えば当たり前の話でした。

　だって大もそうですけど、引きずってグダグダしてるなんて似合わないですもの、知香も小百合ママも。
　根に持つでもなく、さりとて改まって許す許さないでもなく、バーンと受け入れてドーンと風呂に蹴り入れる。あれでいいんです。たぶんね。
　前のことは前のことで、今ここに客として来ているのとは別。割り切り方が、16話あたりの大といかにもよく似ています。

　それにしても、小百合ママは当然として知香はホント、大人で強い娘さんです。さりとて、単なるいい子ではないし。
　ピヨモンと再び出会えることを個人的には半々ぐらいで望み、また希望を持ってますが、どうあれきっと乗り越えられるでしょう。
　もちろん、一度やっちゃったからこれでもうメンバー入りは無しだよ、という線もありますし、そっちの方向だと思ってはいますが。


・隊長とクダモン
　トーマと同じく、倉田に疑念を抱いているのは確実なところです。
　なぜ今になって現れ、しかもデジタルゲートを開くような技術を持っているのか、引っかかってしかたないでしょうし。
　おそらく、組んで独自に裏をさぐることになるんでしょう。

　ただ、手の内を明かす自体が向こうの誘いというケースもありえますが…。


・ 倉田
　アバンから登場。いきなり堂々とDATS本部に姿を見せるあたり、ますます不気味です。
　彼がどれだけあやしい人物か視聴者には良くわかりますが、主人公たちにはわからないという寸法。
　むしろあれだけやっといて行動があやしげなだけのいい人だったら、そっちの方が意外です。
　粘りつくように慇懃無礼な喋りが何ともいやらしい。とてもあの丈先輩と同じ声だとは思えません。さすがベテランです。

　デジモンオタクと自称しているため、デジモンの生態と構造については熟知しているはず。
　その知識を活かし、国家機密庁と組んで何かを企んでいるのは間違いないでしょう。それが何かまではわかりませんが、
　もしかすると自分の研究成果を証明したいだけなのかもしれませんね。ある意味最悪のパターン。

　アグモンが近づいた時だけクシャミをしているので、ひょっとするとデジモンアレルギーか何かなんでしょうか？
　研究しているうちに、そういう体質になったのかな。

　そういえばイクトにデジヴァイスを渡したのは彼かもと考えてたんですが、どうも面識がなさそうなのでそのラインは薄いかな。
　となるとやっぱり大門博士でしょうかね。というか、デジソウルを発見したのはまず大門博士でしょうし、
　そうなると独自にデジヴァイスを作れるのは博士しかありえないことになります。でも、なぜそれをイクトに……？


・ 羽柴長官
　前回あっさり売り渡そうとしながら、いけしゃあしゃあと「イクトを保護しようとしていた」などとは…。
　都合よく主張を変える人です。これでは信用を得ることなどできません。もとから無かったけど。
　まだしもゴツモンの方が一貫しています。

　いずれはDATSを完全排除にかかるとみていいでしょうが、その時期がいつになるか…このペースだと、もうすぐかもしれないですね。


・ゴツモン
　命からがらサーベルレオモンのもとに逃げ帰ってきました。
　サーベルレオモンもそうですけど、彼を憎み切れないのはその行動が同胞をいわれなく殺された強い怒りからくるのが明白だからで、
　ある意味ではイクトと何も変わらないと感じてしまうからです。犠牲者の中には当然、知り合いや友がいたはずですから。
　少なくとも、倉田や長官よりはよほど大たちに近いとさえ思ってしまうほどのもので。

　で、どうやらメルクリモンのもとで側近をしていたのはほんとうに伊達じゃなかったみたいですね。
　最後の大暴れになる気がしますが、見とどけたいと思います。


・サーベルレオモン
　やっぱり自信家の面があったみたいで、ただ一人人間界へ乗り込んできました。
　もう少し慎重さがあったら、あんな事にはならなかったのでしょうが…。

　とはいえ、その実力は傲然たる態度から連想するにあまりあるものでした。
　攻撃をまったく受けつけないばかりか、同時技でさえも咆哮だけでかき消し、一撃でライズグレイモンの固い装甲を穿ってみせた上に
　そのまま一歩も動かずライラモン、マッハガオガモンをなぎ倒す強さは、究極体の名にふさわしいものです。
　おまけにアレでもまだ手加減していたみたいで、一応は降伏を勧告する余裕まで持ち合わせていました。

　何より、大の拳を受けて怯まなかったのだから恐るべき敵です。
　本気でやりあったらメルクリモンのほうが強いかもしれませんが、そんな事実は何のなぐさめにもなりません。

　そして彼がこれだけ強いからこそ、あの謎の攻撃がどれだけの影響力を持っているかわかるというものです。
　そう、サーベルレオモンはその凄まじい強さをもって、一連の闇に潜む恐怖を証明したことになります。

　もうわかっている事ですが、真の敵は彼らではありません。
　もっと恐ろしく無慈悲な何かが、いよいよ静かに頭をもたげてきました。


・謎のデジモン
　サーベルレオモンに謎の弾丸を撃ち込み、その肉体に深刻な影響を与えて間接的にDATSを勝利へ導きました。
　もっとも私に言わせれば、あんなモノがデジモンであるはずがありません。デジモンに近い構造体は持っているかも知れませんけど、
　むしろやはり遥かにデ・リーパーのほうが容易に思い出される佇まいだと思います。

　能力としては頭のサーチアイらしきもので標的の構造を調べ、構成データ自体を破壊してしまうといったところでしょうか。
　存在そのものを破壊してしまうということですから、デジタマも残らないというわけですね。
　たぶん、物理的なものじゃないんでしょう。ひょっとして、目標のデータに自滅指令でも打ち込んでるのかなあ…。
　そんなことができるのは、ベターマンくらいなんですが。

　大の拳が牙を砕いたのは、アレによってサーベルレオモンの全身のデータが著しく劣化していたからに他なりますまい。
　そうでなければいかに兄貴とはいえ、ああも簡単に究極体の牙を砕けるとはちょっと思えないからです。
　このあたり、16話で出てきた謎のウィルスが伏線になってそうですね。

　とりあえず、謎の弾丸のことはデジモンから取ってＤ崩壊弾と仮称することにします。

　さて、こいつが姿を消したのとほとんど同時くらいに倉田が現れました。両者の関係はもはや明白といったところ。
　倉田はおそらく、改良を重ねてきた研究成果の威力を試すためにサーベルレオモンを生け贄に選んだのでしょう。
　ということはこれで、デジタルワールドで恐れるべきものがなくなったということ。
　次回でなにやら急にコトが動いているように見えるのはDATSじゃなく、機密庁か倉田自身の働きかけによるものでしょうか。
　
　でも、彼らはデジタルワールドで何をしようというのでしょうか？
　単にデジタルワールドを制圧したいのでしょうか？　それともデジモンたちをもっと大々的に研究し、その成果をフィードバックして
　あのデ・リーパー擬きのような兵器を造ろうというのでしょうか？　それとももっと別の、大きな何かを狙っているのでしょうか…？

　どっちにしても、DATSとの衝突は避けられないことでしょう。
　まあもっと大変なことが起こって、それどころじゃなくなるかもしれませんが。


・大災厄
　サーベルレオモンの口から語られた、過去の事件。
　嵐に乗じてというより、デジタルゲートの余波で嵐が発生したとみるのが妥当でしょうか。
　ひょっとして、オオクワモンのいた森はその影響で境界がゆるくなっているのかな？
　
　回想シーンにはポロモン、ポヨモン、パタモン、プカモン、ツノモン、タネモンと、デジアド系がずらり出てきます。
　殺されてるデジモンの中には、ガードロモンとアルマジモンの姿も……。

　なぜなのでしょう？　まるっきり意味もなく為された殺戮だとは、どうも思えません。
　何かを探していたのか、デジモンたちを破壊することで何かが得られるのか、はたまたD崩壊弾のテストか……
　まあ、ろくな事じゃないのはまず間違いありますまい。



★名(迷)セリフ

「だから、オレんちに来い！　お前の面倒は、オレが見る！　お前は何にも心配すんな！」(大)

　事後承諾もいいところですが、いい加減な気持ちではないはずです。
　もうすでに兄貴分みたいになってきてるので、こうなるのはむしろ自然な流れかも。


「……臭い。あんたら臭い!!」(知香)

　第一声がそれか(＾＾;)
　でもやっぱり、こうでなきゃなとも思ってしまうわけで。

　そーいえばイクトもファルコモンもずっと自然のなかで暮らしていたのだし、人間界に来た直後にこそ消毒を受けたでしょうが、
　それからは 風呂に入ってる描写がないので、それなりに汚れてるでしょーね、当然。

　ただデジタルワールドではデジタルなので汚れが蓄積されず、人間界に来た後にそうなった可能性もなくはありませんが。


「古今東西！　メシの邪魔をするヤツに、正義があった試しはねェんだ!!」(大)

　言ってることがメチャクチャでござるよ左之助……じゃなかった、大。
　オペレーターさん方もあきれ果ててました。それでもこれは、大でなきゃ言えないセリフではあります。


「腹へったなぁ…　きっと今日のカレーは、メチャクチャ美味いぜ。なっ！」(大)

　兄貴だ。イクトの兄貴がいる…。
　なんだか大のセリフばっかりになってしまいました。



★次回予告
　さて休む間もなく、今度はメルクリモンと対面です。
　でも今度は倉田と、それに国家機密庁のメンバーの姿も見えますね。波乱ぶくみです。
　その前にゴツモンが最後の奉公？　本気になった彼はなかなか手強そうだ。