マサル記憶消去 失われた絆
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脚本:山口亮太 演出:深澤敏則 作画監督:清山滋崇 |
★あらすじ
卑劣漢・倉田を追って人間界にもどってきた大たち。
ところが薩摩隊長はすでに国家反逆罪で捕らえられており、大たちもまた記憶を消されてDATS解任の憂き目に遭ってしまう。
すべては倉田の差し金だった。イクトだけは捕縛され白川、黒崎両オペレーターとともに収監される。
後ろ盾を失い、パートナーとの絆をも失って消沈するデジモンたち。
しかし、アグモンの鼓舞で脱出を画策。それぞれの友のもとへ向かう。イクトも無事救出されたが、彼は脱出を拒否。
メルクリモンの仇である倉田を討つべく奔走するが、仇敵のまわりには謎の影が蟠る…。
記憶をなくした大へ必死に訴えかけるアグモン。その甲斐あって、大はついにアグモンとの絆を取り戻す。
監視していたギズモンが始末しようと襲ってくるが、同じく記憶を取り戻した淑乃とトーマが救援にかけつけた。
新たな決意に燃える彼らの前には改造デジモンも敵ではない。反撃の狼煙が上げられた。
命からがら脱出してきたイクト、白川、黒崎らと合流する一行。その目の前で、DATS本部が爆破される……!
★全体印象
第2クールのトリ、26話です。またしても2分遅れ。
後続のワンピが直接いいともと繋がるように時間をずらしたという話も聞きますが、予告無しにやるとは。
とりあえず収録には問題なく、被害といえるほどのものはなかったのですが何ともはやです。
今後も続くんでしょうか、これ。念のため、予約開始は9時きっかりのままにしてありますけれど。
前後して、出たばかりのDVD1巻を使い1話を見返してみたんですが、ノリが変わってるようで変わってませんね。
突っ走るストーリーがシリアスを暗さへ落とし込むことなく、むしろ熱さへと昇華しつづけています。
さて記憶消去。
普通に考えたらたいへんな事態なんですが今回の場合はあまり重要ではなく、むしろダシに使っての総集編でした。
ちょっと見ただけという程度ならともかく、長いつきあいである彼らの記憶を消すのは不可能ってことでしょう。
だいたい、あの装置をDATS隊員に使ったことなんてなかったでしょうし。
これは同時に、いままで記憶操作してきた人々の心にもデジモンの存在は残されているという伏線にもなりえます。
最終的には「ウルトラマンネクサス」のようにすべての人々がデジモンを認識し、ふたつの世界の間で起こる問題を
根気よく対処していく、という着地点になるのかもしれません。
というわけで新展開を前に、今までのおさらいという回でした。
次回からは新キャラも出てくるようなので、しばらく彼らとの戦いになりそうです。
が、そこはセイバーズ。3クール目も見逃せないお話が続くでしょう。
当面の目標は倉田の眼鏡をブチ割ること、ですね。大ならきっとやってくれます。
演出関係はよくまとまってますが作画はちらほら変でした。気にするほどじゃないですけど。
★CM
アナザーミッションの宣伝が始まりました。
アイツだけでなくアイツもアイツも出るのかぁ……11月末発売なら究極体ズも出るでしょうね。
ゲストキャラとレナモンとの絡みも気になるし、やはり買うべきかなあ。
DVD2巻は10月27日発売です。頭からシッポまで大とトーマばかりの構成ですな。
★各キャラ&みどころ
・大
今回から普段着が変わりました。腕にはベルト風まで付いて、だいぶ派手になってます。今まで普通だったので、なんだか変。
たぶん、野に下り制服を着られなくなった補完をするためなのでしょう。
というか誰が着替えさせたんだアレ。
本編では今までの映像がガンガン流れますが、今さらここで語るまでもありますまい。
でもこの分だと、次からOPの絵が変わりそうです。
・ アグモン→ライズグレイモン
今回の主役はむしろこっち。
いつのまにかデジモンたちの求心力になっている侠気や、一見無謀だけど効果的な作戦をもたらすひらめきは大そのままです。
思えば、彼が大を慕うようになったのはDATS入隊前。立ち位置がどこだろうと兄貴は兄貴、そう考えるのも道理ですね。
それにしてもコブシ入れて記憶復活とは、えらいショック療法です。そんなんでいいんですか記憶操作。
真面目なシーンのはずなのに笑ってしまうのは、外から見てるぶんにはあんまり深刻な場面になってないからでしょうか。
あのまま記憶が戻らないと思って見てる人は、そうそういないと思いますし。
・トーマ
倉田の顔を見て反応したり、グローブをじっと見たり、物足りなさ満点でした。ぜんぜん記憶消去できてない。
それは執事も同じで、無意識にふたつ分のティーカップを出したりしてます。日常的にティータイム嗜んでるんだ、ガオモン…。
彼もすっかり熱い男になりました。初登場のころの彼だったら、倉田とまっこうから対立するかどうか迷ったかもしれないのに。
新コスチュームはおぼっちゃま度全開でなんだか微妙です。
・ガオモン→マッハガオガモン
DATS隊員であることを他のだれより誇りに思っていた節があるので、落ち込みようが他より大きいと感じました。
そこから、アグモンやララモンに引っ張られるように「私だって……!」と奮起するあたりがなんだか可愛らしい。
彼はただの飼い犬ではありません。明確な意思表示手段があり、唯一無二と心に決めたマスターがいます。
そのマスターとともに戦うことこそが、彼にとっての誇り。Proud of DATSなんですね。
トーマのもとに現れたときの子犬みたいな表情がなんだか印象的でした。
・淑乃
フツーに友達と街で遊んでました。
学校に行ってまいが友達は作れるからべつに不自然じゃないんですが、ヘタすっと10年レベルで記憶をなくした可能性があるので、
まともに生活できるかどうかさえあやしいと思うんですが……それとも、忘れさせられたのはデジモンに関することだけ?
そんな都合のいい選定なんぞ、どだい不可能じゃないでしょうか?
そうです、絶対無理ですよ。ララモンはずっと、彼女のそばにいたのですから…切り離すなんて、できるはずがないんです。
・ララモン→ライラモン
守衛を眠らせたり、地味ながらスペックの高さを発揮しています。
コゲコゲでケホケホ言ってるのが可愛らしい。
そういえば、倉田の言葉がたしかなら自力でギズモンを倒したことになるのか…
この場合は彼女たちが強くなったというよりむしろ「倉田予算ケチりすぎじゃないの?」と思ってしまいます。
・イクト
あらすじで書いたとおり、なぜか彼だけが記憶を消されず、監禁されたままでした。
デジタルワールドで育ったわけだし、記憶を消しても意味がないと判断されたのかもしれませんが、
倉田が興味を示していたようなので、調査のためでしょう。この上まだ利用する気だったみたいです。
どんな調査や実験ををされるのかなど、考えたくもありませんが。
遮二無二倉田へ向かっていったものの、今回も負け。
一発ぐらいはコブシを入れるチャンスがあるといいんですが、それはまだ先みたいですね。
・ファルコモン→ヤタガラモン
完全体になったものの、初登場属性が切れてあっさり敗北を喫しました。
意外に見せ場というか、快勝が少ないので、なんとか挽回をしてほしいですね。
まあ正式なメンバー入りをしたばかりだし、これからですよ、これから。
・クダモン
24話の回想で初めて隊長の体から離れるシーンが描かれてましたが、今回はそもそも隊長がいないので、
単独で動きまくり。普通に走ってるし、普通にリーダー張ってます。オペレーターさんたちからも敬語。
隊長代理としてりっぱに機能してますね…いや、ふたりで隊長だから代理というのはおかしいかな。
次回では私服の隊長と合流して指定席へおさまるようなので、いよいよ戦う姿が見られるかも。期待です。
・ 白川さんと黒崎さん&ポーンチェスモンズ
いっさい喋らないチェスモンズですが、オペレーターさんたちと控えめに抱きあうシーンで地味に絆をアピールしていました。
捕まってたときの力強い頷きからみても、無口の奥に熱いものを秘めていそうです。
黒崎女史は意外にイクトとの絡みというか、声をかける場面が多いと思いますね。
バタバタした状況にあって、あれこれ世話をやいていた一人かもしれません。
・大門一家
この方々も執事同様、しっかり記憶を消されてました。描かれてませんが、たぶん淑乃の家族も処理を受けたでしょう。
といっても、アグモンとは大の次くらいに長い期間をともに過ごしているため、やっぱり全然消去しきれてませんでしたが。
知香はピヨモンのことも忘れさせられてしまったのでしょうか……へたすっと本当にこのままフェードアウトだな。
たとえメンバーとして参加できなくてもピヨモンのデジタマは残ったし、知香の心にも残っているからと思っていたのに
まったくもってヒドイことをしてくれるものです。
忘れたといえば、みんな湯島のおっちゃんのこと忘れてる気がします。彼はどこに?
・倉田
虚偽の報告をして大たちを陥れる卑劣さといい、その上で保険としてギズモンを伏せさせておく周到さといい、
いつのまにか謎の新戦力を調達している得体の知れなさといい、先回りしてDATS本部ごとデジタルゲートを破壊する憎らしさといい、
悪っぷりが完全に板についてきています。自分自身のためだけになら、悪魔的な能力を発揮するタイプかな。
予告に写っていた子飼いと思しき3人のデジモン使いたちも、たぶん彼と似たような思想の持ち主でしょう。
デジモンを相棒としてではなく、単なる道具として扱うタイプの輩。これが第3クール当面の敵ってことになりそうですね。
それら矮小な悪をすべて呑み込むような闇こそ、おそらく最後の敵ということになっていくのでしょう。
ところで例のシルエットの一体は、どうもサンダーバーモンのように見えるんですが…
そうすると、ヤタガラモンは格下に負けたことになってしまいます。
まあ連中のこと、なんらかの処理をして心がなくなる代わり、戦力が上がるような仕掛けをしているのでしょうが。
でもそれはギズモンも同じだったような…。
・羽柴長官
あれだけ長年貢献してきたDATSの面々を抗弁すら聞かず、あっさり切り捨ててしまいました。
倉田とグルなのかと思ってましたが半分くらい真実じゃなくて、彼の言い分としては実績のあるほうを採用した、ということかも。
うまいこと言いくるめられて、それで全部片づくのならやぶさかでない、と判断した可能性があります。
しかし、もちろんそれで擁護する理由にはなりません。
こいつはただ単に、責任を取りたくないだけでしょう。デジモンのことは憎いというより厄介なものだと思っていて、
責任をとらずに済むなら向こうがどうなろうと関係ない。そういう思想の持ち主なのです。
だけど倉田も彼も、いまの方針の先に待つものの意味を知りません。
すべてのデジモンを殺そうというなら、あちらとの間に取り返しのつかない泥沼を呼び起こすことになり、
ひいては両方の世界に想像を絶するような恐ろしいことが起きる可能性だってあるのですから。
長い目でみれば、旧DATSのやり方のほうが結局は正しいのです。
いつまでも隠さず、早めに大々的な協力を国や人々へ仰ぐべきだったとは思いますが。
・ギズモン
倉田の命令で大たちを監視していたみたいですが、あっさり倒されてしまいました。
あまりにも簡単にやられてしまい、あっけに取られてしまったものです。いくらなんでも弱くなりすぎだ。
まあ、あんなものにいつまでも苦戦する大たちなど見たくなかった気持ちもあるんですが……。
ああなった理由はいくつか考えられます。
1.前回の同型はメルクリモンを倒すための特別誂えだった
2.デジモンたちがすでに対策を編み出しており、それで簡単にやられてしまった
3.疑似デジソウルがエネルギー源で、その充填が不十分だった(そもそもXTへ進化できなかった)
4.お話の流れ上、もはやギズモンは重要な存在ではない
1番はありそうな話なんですが、一言もそんなセリフがなかったので弱いですね。
2番。実はあのD崩壊弾、真正面から撃たれて当たったことがありません。全部不意打ちです。初見ならともかく、能力を知られてしまった以上
まともに当てるのは難しいでしょう。あの初弾を当てられてなかったら、メルクリモンを倒す事はできなかったはずです。
また、見たところ撃つ直前に発射口へ攻撃をくらうと自分がダメージを受けるようです。この弱点を利用されたら厳しいでしょう。
といっても今回は合体攻撃で普通にやられているので、これも根拠が弱い。
3番。これは近くに誰もいなかったし、単独で動いていた可能性があります。
少なくとも完全体への進化はできないので、能力を知っていれば勝てるチャンスはあるでしょう。
4番。実はこれがいちばんありそうな線です。むしろ今後は雑魚としてボコボコ出てくるんじゃないでしょうか。
セイバーズは序列ごとの強さが意外にフレキシブルで、悪く言えばいい加減なんですが、このギズモンは
それをさらに助長させていきそうな気がします。厄介な。
★名(迷)セリフ
「もう! 人間ってなんなんだよ!
デジモンを守ろうとしたり、傷つけたり…ぼくにはさっぱり!」(ファルコモン)
別にデジモンだってそうなんですが、彼らにくらべるとやっぱり人間のほうが業が深いです。
人の身には耳の痛いセリフですよ。
「私とマスターの絆だって、誰にも負けはしない!!」(ガオモン)
いや、そんな拳にぎりしめて力説せんでもわかってるから…可愛いなあ。
「フッ…よかろう。私もこのまま倉田のいいなりになるのは、本望ではないからな」(クダモン)
最初からそのつもりだったんだろうなあ、というセリフ。
部下たちには単に覚悟を聞いただけ。いざとなったら自分ひとりでも動くつもりだったに違いありますまい。
さすがは隊長です。一番ちっちゃいのがまたギャップを生んでいい感じ。
「そうだ! 兄貴は恐れることなく、オレを受け止めてくれた。本気でぶつかってきてくれた!
オレはそんな兄貴をカッコよく思ったから、子分になったんだ!
そのオレのことを……子分のことを忘れちまったっていうのかよ!!」(アグモン)
彼、いつもはあんな調子だけど……やっぱり嬉しかったんでしょうね。
大がいたから、彼は処分されずにすんだし…居場所も手に入れた。大門一家と、仲間たちと出会えた。
いわば大が、彼を漢にしてくれたのですから。守るべきもののある漢に。
このセリフは、大という漢そのものへの問いかけとも取れます。
大門大とはその程度の漢だったのか。自分が慕った大という男は、あんな機械ひとつで消えてしまうような程度の気持ちで、
子分に接していたのか。疑っているわけじゃなく、そうではないと信じたいからこそ、出てきた言葉なのでしょう。
ただ、大の目を覚ましたものは言葉じゃなく、拳でした。
アグモンの拳に込められた万感の想いが伝わった……そんなところでしょうね。
「ギズモン! 始末してしまいなさい」(倉田)
この冷酷な一言にこそ、彼の考え方がうかがえます。
彼が守りたいものは、自分のちっぽけな虚栄心だけ。それを傷つけたデジモンたちを皆殺しにすることでしか、満たされることはない。
そのためになら平気で同胞であるはずの人間を騙し、陥れ、消すことも厭わないでしょう。
殺すための力というのは、そういうものです。
師である大門博士は、デジモンとともに生きられるデジヴァイスを創り出しました。
そこに込められた意味を理解できない限り、彼は一生、心が休まることなどないでしょう。同情はしませんが。
★次回予告
新キャラが三人ほど確認できます。倉田のまわりにいた三体の持ち主でしょうか?
インターバル? 何ソレ? ってな具合の急展開ですね。今回もお話は進んでいたわけですし。
こうなると、そろそろ後手に回ってばかりというのは癪です。シャイングレイモンの登場が待たれるところ。