進化不可能! デジヴァイス崩壊

 脚本:山田健一 演出:門田英彦 作画監督:伊藤智子
★あらすじ
 傷つきながらも、なんとかデジタルワールドにたどり着いたセイバーズ。
 まずは情報を得るため、ジュレイモンの森に向かうがその途中、マッシュモンたちを虐殺しているギズモンXTの一団に出くわした。
 だがさらに強化されたギズモンは手強い。ピンチを救ったのは、突然あらわれた謎のデジモン・バンチョーレオモンだった。
 その凄まじい強さは、またたくまにギズモンXTの群れを粉砕せしめる。彼は去り際、意味深な言葉を残した。

 「お前たちには足りないものがある。それは力だ。答えはお前たちの中にある」

 心当たりのあるイクトと別行動をとり、大たちはジュレイモンの森にやってくる。そこには、傷ついたデジモンたちが大勢かくまわれていた。
 倉田らの非道に、あらためて怒りをつのらせる大。
  そこに、3大バイオデジモンが現れた。消息を絶ったギズモン分隊について調査に来ていたのだ。

 彼らの口から薩摩隊長の死を聞かされた大は逆上して挑みかかり、3対3の乱戦がはじまるが、バイオデジモンたちにはどうしても勝てない。
 ついにはジュレイモンとニョキモンらに危機がおよぶに至り、絶叫する大たちから巨大なデジソウルが迸る。
 倒れたライズグレイモンたちに宿ったその力は、想像を絶した。バイオデジモンたちに強烈なダメージを与え、撤退を強いたのである。

 かろうじて窮地は切り抜けたものの、代償は大きかった。完全体の上をゆく力に耐えられなかったデジヴァイスが、完全に破損してしまったのだ。
 大門博士ならば、修復できるかもしれないが……彼はいま、どこに?

 そして、殺したデジモンたちのエネルギーを集めている倉田は何を企んでいるのか…?



★全体印象
 28話です。なんかもう2分遅れがデフォルトになってるようですね。
 でもいつ戻るかわからないので、予約はやっぱりそのままにしておきますが……カットが面倒。

 今回でデジヴァイスicはお役御免。次回から登場するはずの、デジヴァイスバーストへとバトンタッチとなります。
 色や細かいディテールが変わるケースはこれまでにもありましたが、今度は全体のイメージこそ維持してはいるもののシルエットまで変わっており、
  アニメ謹製としてはまたまた初めてのケースとなりました。ネーミングは当然、バーストモードにも掛かったものでしょう。

 この28話はぶっちゃけ、その前フリエピソードにすぎないのですがバンチョーレオモンを絡めたり、早くも究極体の影をちらつかせたりして、
 うまいこと繋いでいます。予告だけ見ていると、次回の段階で早くも3体まとめて進化するかのよう。もたもたしている状況じゃないとはいえ、
 てっきり順番に進化していくものだとばっかり思っていたので裏をかかれた気分です。このぶんだと、バーストモードを「複数」出す気かもしれません。

 でもまだファルコモンが残っているし、チィリンモンだって究極体に進化できないとは一言も言ってないし、おっちゃんもいるので、
 上記の隠し球を抜いてもいちおう、まだ弾はあります。まあ、後の二人の進化バンクはあまり期待できないかもしれませんが。
 それにしても、このセイバーズって番組はホントに出し惜しみってものをしませんね。悪い傾向じゃありませんけど。

 作画はいつもの伊藤さん。でも、かなり動いてます。わりに戦闘がメインなんですが、おかげであまりダレることはありませんでした。
 内容はといえば、味方側がひたすら耐える展開なので爽快感は少ないですけど。
 まあ、バイオデジモンの3人が当て馬になりかねん勢いで飛ばしているので、それももう長くはないでしょう。

 そういえば、ここ数回になって大和屋暁氏の名前を見なくなりました。
 氏は秋の新番「武装錬金」でシリーズ構成を務めているので、もしかするとその関係で離れたのかもしれません。
 かわりに?25話から入ってきているのが、今回の脚本もつとめる山田健一氏。
 担当がバトルメインの回のみなので真価はいまだ未知数ですが、大筋では途中参加の責を果たしていると思います。



★各キャラ&みどころ

・大
 バンチョーレオモンの強さを素直に賞賛したり、ブチ切れてコウキに殴りかかったり、今回はけっこう起伏はげしいです。
 ただ今回のアレが感情にまかせた暴走気味の結果だったのか、デジヴァイスicの設計が古かったために起こってしまったことだったのか、
 そのへんはまだわかりません。わりに、どちらとも取れる描写だったかも。
 状況を考えたら単純に極限状態から呼び起こされたもので、でもまだ不完全な力と取ることだってできますし。

 材料だけ見れば暴走ともとれるし、結果はといえばあんまり暴走の後って雰囲気じゃないので、私はいまのところ3番目とみてますが。
 力を放出したあともアグモンたちは別に普通で、デジヴァイスにしか後遺症は出ていなかったようですし。


・ アグモン→ライズグレイモン→????
 今日も今日とて大苦戦です。完全体になったはいいけど格上の相手ばっかりで大変ですね。
 究極体の兆候を見せましたが、上記のとおりその後は割にケロッとしてました。これが深刻さ、もっと言えば暗さを軽減してます。


・淑乃
 せっかく才能を開花させましたが、すぐに壁が乱立してしまって彼女たちも試練の時を迎えています。
 今回などはあまりの戦力差に目をそむけるシーンが見受けられ、かなり追い詰められていたのもたしか。
 しかし無力を思い知らないかぎり、次のステップへは進めないものなのかもしれません。


・ララモン→ライラモン→????
 重量級のバイオステゴモンが相手なので、見るからに分が悪そうです。
 ギズモンXTにはガードの上から吹っ飛ばされたりして、痛そうなシーンばかり目立つ構成。
 まあそれだけに、ロゼモンになった後が楽しみではあるんですがね。


・トーマ
 今回はギズモンの持っていた銃をするどく観察して推論を導き出したり、バンチョーレオモンの言葉を冷静に受け止めたりなど、
 ひさびさに頭脳派&現実派らしいところを見せました。力不足を認めるというのは、意外にできないものです。
 ガオモンも見たところ彼の言葉を率直に受け止めてるので、阻害材料は少ない。あとは、きっかけだったってことでしょうか。


・ガオモン→マッハガオガモン→????
 細く柔軟な体躯を備えるうえ、ナナミの天才的頭脳を持つバイオクアトルモンに押されっぱなしでした。
 しかし、究極体が持つ爪の軌跡であればあの動きを捉えられるかもしれません。もう少しの辛抱です。
 

・イクト
 前回で一連のエピソードが落ち着いたのを受けるかのように、別行動と称して早々に姿を消してしまいました。
 まあ、20話からこっち特に破格の扱いだったので、やむを得ますまい。強くなって帰ってくるのを待ちましょう。
 それにしても、どこを目指して飛んでいったのかな?


・ファルコモン→ヤタガラモン
 進化が遅かったせいか、弱体化の急激なインパルスにやられてしまった例です。
 こりゃ、シリーズ屈指の空気完全体になりそう。まあその分、漫画のネクストで目立ってくれそうなのが救いですけど。
 それに一応は初陣で勝利を飾ってるだけ、マシってものですし。

 戻ってくる段階ですでにさらなる進化が可能になっているのか、それとも一話分くらい取って進化エピソードをやるのか…さて。


・薩摩隊長とクダモン
 コウキの発言からみて、どうやら無事みたいです。
 いずれまた、美味しいところで駆けつけてくれるでしょう。


・バンチョーレオモン
 出ました番長。出ちゃいました。デジモンストーリーでおしとやかな個体ができそうになったときは顔面蒼白になったなあ。

 予告のとおり、片手でギズモンを片付ける素敵に圧倒的な拳が鮮烈なデビュー戦を錦で飾ります。
 その上草笛の音色に乗せて崖の上から登場だなんて、どこまで漢の心得を実践してる方なんですかこの人は。
 よく見ると学ランの袖には「天上天下唯我独尊」の文字が縫い付けてあるし、ってデジモン文字はどうしたデジモン文字は(^^;)
 おまけに一人称が「俺様」ですか。あんたはボウケンシルバーか。そして今ここに新たな俺様キャラが降臨。

 声の竹本英史氏には正直「そうきたか……」という感想が。
 もっと渋いベテランの方を想像してたんですが、竹本氏にはまだまだ若さがあります。これが「番長」という、老獪さとは対極にありつつ
 軟弱さとも無縁なイメージになかなかのマッチ具合。加えて竹本氏は「レジェンズ」のJ1や「ボンバーマンジェッターズ」の
 サンダーボンバーといった、かっこよさとコミカルと天然が同居した役をこなしていた経緯がありますし、他方では「HUNTER×HUNTER」の
 ウボォーギンやら「キン肉マン2世」のウォーズマンのように殴り合い上等の漢くさい役も経験が豊富。たしかに、はまり役といえます。

 それにしても、あそこで都合よく通りがかったというのはいかにも不自然ではありますね。
 あるいは大門博士にたのまれて、息子を見かけることがあったら指南してやってくれないか、なんて頼まれていた可能性はあります。
 それどころか、彼自身が大門博士のパートナーである可能性すらありますが……いまの段階では、なんとも言えません。

 あそこまでやられると、死ぬかどうかわからなくなってきました。もしかしたら死なないかも…。
 そうなれば、アニメ版登場のレオモン系に立ちはだかるジンクスを殴り飛ばした存在として語り継がれることになるでしょう。


・ジュレイモン
 ずいぶん前みたいな気がしますが、再登場です。
 出るやいなやひどい目に遭いましたが、とりあえずは死ななくてよかった。でもかなりやられたので、しばらく登場はないでしょう。
 メルクリモンには従ってなかったのですがそれは彼のルールを守っていたからで、メルクリモンを嫌っていたわけじゃないようですね。

 匿われていたデジモンたちの中には、コンゴウモンやヴィカラーラモンの姿が…
 亥のデーヴァもすっかり一般デジモンになってしまったもんです。なんか縮んでるし。姿が姿なんで、違和感はありませんでしたけど。


・ギズモンXT
 バイオデジモンたちが出てきたあたりから予想済みでしたが、完全に雑魚化しました。
 今回はとうとう、サーベルレオモンやメルクリモンに致命傷を与えたあのD崩壊弾まで弱体化。直撃をくらったはずのヤタガラモンが、
 ファルコモンに退化する程度で済んでしまっています。なんとまあ…

 メルクリモンのようなタイプと、デジソウルやデジヴァイスを媒介に進化したデジモンは違うと言われれば、それまでのことですが。  
 テイマーズの話になりますけど、完全体のデータを一度廃棄して成長期に戻り、その間に退避するというのもアリみたいですし。
 一種の強制排除ですね。

 ところで、13分隊ということは最低でも残り50体近くが来ていることになります。(4体=1分隊)
 たしかに、完全体レベルが3体ではどうにもなりません。 逆に言えば進化しさえしたら、三国無双状態になるってことですが。


・コウキ→バイオサンダーバーモン
 このデジモンセイバーズという作品、人であろうとなかろうと良いヤツは良いヤツ、悪いヤツは悪いヤツと線引きがハッキリしていて、
 微妙な立場ならそれなりの理由もかならず用意されるんですが、こいつは完全に悪役に分類されるうえ、そこらのダせェチンピラと同等です。
 それを証明するのが、大は決して使わない「殺」という単語と、弱い者をクズと見下す態度。
 不利になればとたんに余裕がなくなるあたりにもチンピラ臭を感じますね。

 邪魔だと思えば子供でもためらいなく手にかけるあの残虐性こそ、大と彼との決定的な違いです。
 たぶん、自分より強い者と戦ったことがないんでしょう。ある意味、力にめぐまれすぎていたのかもしれません。
 そういう意味では、大の裏側を象徴しているのかな。リュウセイ・ダテに対するテンザン・ナカジマのような。

 ついでに言うと幼い者を手にかけようという所業は、未来の否定とイコールでもあります。
 倉田の子飼いにふさわしい思想ではありませんか。


・ ナナミ→バイオクアトルモン
 設定では、世の中に退屈していたという天才の彼女。明らかにトーマの裏側を意識したキャラでしょう。
 女性ですが、アバレキラーに通じる造形でもあります。

 彼女がデジタルワールドに求めるものは「ときめき」であって、そこにあるもの全ては遊び道具でしかありません。
 だから興味の対象以外がどうなろうと、心は動かないのでしょう。コウキとは似た者同士といえるかもしれませんね。
 そういえば、コウキが曲がりなりにも敬意を払ってる数少ない対象のようです。はじめは姉弟かと思ったぐらいのもので。

 悪意はあんまり感じないんですが、それだけにタチが悪いタイプじゃないでしょうか。


・イワン→バイオステゴモン
 バイオ3人衆のなかでは異色といえるメンバーです。ひとりだけ他の倍近い年齢で、戦ってる理由も単に金で傭われたからだそうですし。
 改造を受け入れたのは、今後の仕事にも役に立つと判断した結果なのでしょうか。
 だとすれば、だいぶ割り切った性格です。今度のことは完全に仕事と捉えていて、それ以上でも以下でもないのかな。

 愛妻家らしかったり、負傷したナナミを支えていたり、根はお人よしっぽいのですが…説得は難しそうです。
 金を積むかお色気で誘えば、ひょっとしたら……ってところでしょうか。
 どっちも現実的じゃないけど。


・倉田
 まんまと計画を次の段階へ進めてご満悦の様子。視聴者はこの姿を見て、ますますカタルシスへの期待を高めていくことになります。
 普通に考えて、エネルギーを集めているのは「アレ」を稼働させるためなんでしょうが…はたして扱い切れるのかな。
 暗黒の力を侮るべきではありませんよ。

 部下たちは状況からみて、倉田よりも先に別ルートからデジタルワールドに入っていたようです。
 どんな思いで彼に従っているのかはうかがい知れません。良心の呵責はあるのかもしれませんが、まあ人間じゃないしと割り切ってるのかな。
 でなきゃ、全員がいわゆるアルジャーノン患者とか。



★名(迷)セリフ

「通りすがりの番長…! バンチョーレオモンだ!!」

「天上天下ぁ! 唯我独尊! 俺様の拳にぃ! 曇り無しぃっ!!」

「フッ……俺様と拳を交えるには、百萬と参拾伍年早ぇ」(バンチョーレオモン)


 いきなりエントリーですか。
 この後の思わせぶりなセリフなどから、彼が大門博士の知己であるという推測が生まれるわけですが…さてさて。


「番長に、悪い奴はいねえ!」(大)


 後半のシリアスを緩和してくれる場面です。何か22話を連想させるセリフ。そういえばあれも、レオモン系がらみでした。


「隊長? ああ、あのおっさんか。死んだよ」(コウキ)


 ダウト。ちゃんと確かめましたか?


「決めた! オレの自伝でのお前らの名前は、ザコA・B・Cだ!! ヒャハハハハハ!!」(バイオサンダーバーモン)

 あんまり飛ばしすぎると、それだけ早く息切れしてしまいますよ。



★次回予告
 なんだかマイメロみたいな展開になってきました。
 進化バンク来てましたね。やっぱり三体同時に進化するんでしょうか? 本編になったら、あの影は取れるのかもしれませんね。