力こそ正義! 獣騎士ドゥフトモン

 脚本:稲荷明比古 演出:園田誠 作画監督:出口としお
★あらすじ
 大と英を迎えるためにも、ゴーストタウン同然と化した横浜市にとどまり続ける大門小百合、そして知香。
 淑乃とイクトは護衛をつとめていたのだが、そこにデジタルワールドから幼いデジモンたちが飛ばされてきた。
 なんと、あのピヨモンの姿まである。しかし、転生した彼に知香の記憶はなかった。

 知香の気持ちを汲んだ淑乃の宣言もあり、奇妙な同居人がふえた大門家はたいへんな駆け込み寺の大所帯となる。
 やんちゃな幼年期デジモンたちに振り回されながらも、淑乃とイクトは居場所を失った彼らも守る決意を固めていった。

 やがて、安息のひとときを切り裂くようにロイヤルナイツの一人・ドゥフトモンが現れる。
 敢然と立ち向かう淑乃らだったが、二人がかりでも歯が立たない。ついに大門家のすぐ前まで追い詰められてしまう。
 デジタルワールドを救うことこそ正義と語るドゥフトモンは、同朋のはずの幼年期デジモンたちを巻き込むことも厭わない。
 危地に陥った知香を進化してかばったのは、ピヨモンだった。記憶がなくとも、絆は残っていたのだ。

 奮起した淑乃とイクトは、ついにバーストモードを発動。一気にドゥフトモンを打ち倒すことに成功する。
 間もなくトーマも合流し、ともに大を援護するため、デジタルワールドに向かうのだった。

 一方その頃、大はデジタルワールドでゴツモンと再会し、ふたたびイグドラシルを目指そうとしていた。
 だが、彼らの前にはまだまだ難敵が立ちはだかっている……。
 
 
 
★全体印象
 43話です。

 今回はだいぶ詰め込み気味のエピソードでした。淑乃とイクトのバーストモードに知香とピヨモンの再会と新しい絆、
 両方をやっているうえにドゥフトモンを割り込ませているので、ひとつひとつの要素は少し薄いものとなっています。
 といって、2話をかける内容でもなかったかもしれないので微妙なところ。
 もし淑乃とイクトで1話ずつかけるなら、トーマのように活躍舞台を分けるしかないかもしれません。

 流れ的にはふたり同時とはいえしばらくぶりの完勝だし、もっと盛り上がってもいいんですがやや低空飛行と感じてます。
 動いてはいるんですがバンク以外の作画が厳しく、戦闘演出もなんだか単調だったし。
 どうも、あっさり流された気はします。シナリオが駆け足な分は別の要素でうまく盛り立てるのが理想なのですが、
 世の中そううまくはいかないですね。

 ともあれこれで、役者は揃いました。あとはラストへ向けて突っ走るだけでしょう。
 残り話数から考えてオメガモンで話数をかけるつもりなのかもしれませんが、最後の敵は誰になるのでしょう?
 
 
 
★CM
 サンバースト&ムーンライトのCMが第二・第一弾の順で2パターン放映されてました。
 発売日が変更になったので、それをより強調して告知するためなのでしょうか。

 まあ、スパロボと世界樹遊んで待つことにします。
  
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大&アグモン
 少ないながら、先週とちがって出番はあります。
 なにげに、生きていたゴツモンからリベンジをくらう形になっていました。謝らなかったバチがあたったようです。
 
 
・淑乃
 無限氷壁のあたりではいろいろ悩んでた彼女ですが、それ以降は男連中が迷走しているのを横目にしながら
 つねに自分のできる全力を尽くしつづけてきました。もともと職業意識もやたらと口に出さないだけで非常にたかいし、
 DATSに入隊してふたつの世界の治安維持に青春をささげる決意をしたのは、ララモンと親友になれたことがおおいに関係してるはず。

 だから、倉田が出てきてからの戦いは彼女にとってとうてい本意ではないし、辛いものだったでしょう。
 ひとつひとつは小さな事柄でも、未知の存在と理解しあう努力を重ね、いつかはもっと広く交流の輪を広げていきたい。
 その理念がDATSにあると信じたからこそ、荒事も少なくない現場へ飛び込んでいったはずなのですから。

 今となっては、DATSも機密庁もありません。
 しかし、淑乃がかなえたいと信じた未来への理想は、まだ死んではいない。彼女の心が折れてしまわないかぎり。
 そしてそれこそが、セイバーズ魂。正義という名の理不尽、悪という名の暴虐から弱きものを守る心。
 絶対に負けられない戦いを背負ったとき、彼女にかけられた最後の封印が解き放たれたのです。
 
 
・ララモン→ロゼモン→ロゼモン・バーストモード
 淑乃がなんか言ってる横でへろっとツッコミを入れるのがだいぶ前から定位置になっています。
 が、それはいつものレクリエーション。戦闘となれば呼吸ぴったりなので、さすが10年来の親友といったところ。

 バーストモードではいきなり白薔薇になります。デモンローズ→ブラッディローズというわけか。
 ということはルインモードだとピラニアンローズにでもなるんでしょうか?

 で、よく見ると本体の変化は色の変化とマントが光ってる程度なのですが、まわりに変なビットが浮かんでいます。
 どうやら必殺技を媒介するはたらきがあるようで、活用することでオールレンジ攻撃が可能になるようす。
 文字通りのローゼスビットということですね。ローゼスハリケーン出せるかな。

 進化バンクはここまで来といて3Dじゃなくなってしまったのですが、お色気は10割増し。まさにバーストです。
 今までとどちらがいいかと言われたら、悩んでしまうかも。
 
 
・イクト
 数奇な運命をたどってきた彼。
 登場当初はその複雑な境遇をのろい、人間を憎悪することでしか自身を守ることができませんでした。
 猪突猛進で好戦的に見えたのも、余裕が無くて地に足がついてなかったからなのかもしれません。

 しかし大たちに受け入れられ、自身の境遇をも受け入れて戦いつづけているうちに、彼も大きく成長しました。
 最初は自分自身の感情さえ持て余していたのが、今では居場所をなくしたデジモンの子供たちを慮るまでになっています。
 事情を知らなかったとはいえ無理やり卵を奪い返そうとして、事をこじれさせた責任は相方ともども感じているはず。

 悲しみや怒り、憎悪を昇華して余裕をもてるようになったんですね。
 この物語の中ではいちばん大きく心情を変化させた人物のひとりであり且つ、もっとも成長を遂げたひとりでしょう。
 伸びしろだけなら大をも凌ぐかもしれません。いつまでも変わらない倉田とは好対照をなしていました。

 そんな彼が選択する道は、どちらか一方が滅ぶ未来ではなく……両方が手を取り合い危機を乗り越えてゆくものなのです。
 人間とデジモン、両方が力を合わせれば出来ないことなど無いと、やっと信じられるようになったのですから。
 
 
・ファルコモン→レイヴモン→レイヴモン・バーストモード
 当初から、イクトとは双子の兄弟のようなものでした。彼のほうがちょっとだけ常識派ですが。
 どんなつらい時でも、いつだって一番近くにいてくれた存在。イクトにとってのファルコモンの定義はそれがすべてです。
 結局、最初から人間とデジモンの共存ってものを表現していた実例のひとつだったんですよね。

 これまでは進化してもいまいちスッキリしない戦績ばかりだったんですが、今回は初ともいえる完勝中の完勝。
 ただしロゼモンとセットな上、決めたのもロゼモンなのでまあ……アレだ……頑張れ。

 前にも書いたと思いますが、バーストモードでは全身を使っての攻撃動作が目立ちました。
 翼そのものが武器と化した異形なので、むしろ通常時よりモンスターっぽくなっている気がします。

 それにしてもロゼモンの例を見るに、条件さえそろえばどんなデジモンでもバーストモードを発動できそうな気がしますねえ。
 ものすごく極端な例を言えばメタルエテモン・バーストモードなんてのもありえないとは言えません。
 興味深い話です。
 
 
・トーマ組
 ラストシーンでさわやかに登場。
 病院を出立した時点では夜が明けかけていたので、42話と43話は同時進行(且つ終息は42話が先)
 ……と考えるのが自然ってことになりそうです。大が出発してからもそんなに経っていないようですし。
 
 
・知香
 淑乃やイクトに準ずるくらいの扱いでした。つまり今回の第三の主役。
 忘れた頃にピヨモンも復活していろいろすごい勢いで補填されてますが、なんつーかホント出来すぎの娘さんだ。
 兄のことをさんざん子供と言ってましたが、じゃあ自分はどうなんだってことになっても隙がありません。
 10話あたりではけっこう子供っぽかったんですが。

 欠点があるとすれば、歳のわりにオトナすぎることくらい……ですが、逆にメイン格に据えるにはふさわしくないタイプ。
 だからああいう性格になったのだろうとさえ言えてしまいます。

 彼女もいつかDATSに志願して、ピヨモンと一緒に働くときが来るのでしょうか。
 このまんまだと、最終話あたりでそんなことになってても不思議じゃない気がしてきました。
 ああいう性格だから、それと決めたらもう誰も止められない気がするし。

 で、続編を作るとしたらきっと成長したイクトと一緒に新主人公チームに入隊して………
 ……あれ? どっかで見たような構図…
 
 
・ピヨモン
 上に書いたとおりホントに忘れてた頃、あきらめかけてた頃の登場。スタッフさんにはありがとうを言いたいです。
 で、やっぱり記憶はなかったんですが、無いなりに知香のことは気になっていた様子。彼女のアプローチもあるでしょうけど、
 記憶がなくても心の片隅に何かこう、感じるところはあったのだと思われます。

 実のところ、はっきり「記憶が戻った」とは言及も表現もされてないわけで。
 でもひょっとしたらフツーに思い出すより、失われた記憶を越えて今このとき、思いやってくれる誰かを
 守りたいと思った自分の想いを信じて、それが進化をもたらしたと考えるほうが浪漫かもしれません。

 かつての想いと何から何まで同じではないかもしれませんが、この二人の場合はあまり関係なさそうです。
 思い出は知香が持っているんだし、ならばもう一度共有していけばいいのですから。
 
 
・小百合ママ
 知香のほうが目立ってはいますが、あいかわらずの剛の者です。
 突然の闖入者も害が無いとわかったらあっという間にミルク飲ませているしあなた一体何者ですか。
 人数が爆発的に増えてもご飯の作り甲斐があっていいなんて言ってのけるし…。

 当初はデジモンへの感情に負の側面を感じたりしたものですが、そんな小さな人じゃなかったということですね。
 いや、わかってるはずだったんですが……やっぱりこの人、大門博士の妻ですわ。
 もし将来、知香がDATSに入るなんて言い出しても最終的には理解を示してしまいそうな気がします。
 
 
・幼年期デジモンたち
 プニモン、ピョコモン、バブモン、オタマモン、プカモン、トコモン、ニャロモン、ユキミボタモン、ポロモン。懐かしいメンツです。
 大半は過去にパートナーデジモンをつとめたこともあるので、昔からのファンにはたまらないでしょう。
 どの個体も赤ん坊か幼児とおんなじなので、転生した経緯が無いのかもしれません。
 もっともピヨモンは成長期になってから突然まともにしゃべるようになったので、コロモンのときはやっぱり例外なのか。

 …ロイヤルナイツにもこんな頃があったんですよね。ドゥフトモンの場合は想像もつかないけど。
 
 
・ドゥフトモン
 唐突に出てきて唐突に死亡したロイヤルナイツの一人。
 全員集合のときいなかったのは何故だろうなと思ったら、みずから動くことがなかったからだったのですね。
 …でもそれって単なるサボりじゃありませんか?戦略家だというので何か仕掛けるかと思ったら普通に来ただけだし。

 おまけに、子供を巻き込んでもかまわぬとまで発言するとは…。
 戦争でだって人をよけて爆撃しているわけではあるまいそれと同じだククククとでも言うつもりなのでしょうか。
 圧倒的に優位なのですから同朋を逃がすまで待ったり、巻き込まないように場所を変える余裕だってあるはずなのに
 積極的に巻き添えにしようというのは、すでに騎士でも戦士でも兵士でもありません。
 戦略家だから誇りより合理性を大事にでもしてるんでしょうか。

 そんな態度だから、かえって淑乃たちの逆鱗に触れてしまったといえるわけで。
 最終的には、2大バーストモードの完全な当て馬でした。あの二人でかかればベルフェモンだって倒せるでしょうから、
 ボス属性を持ってさえいない彼では持ちこたえられるはずもありません。合掌。

 ストーリーの主軸からはずれてる上、作画も演出もあんまり良いとはいえない回に当たってしまってなんとも悲惨な扱いです。
 これが初舞台だというのに……。
 まあアレだ、実績のない個体はつらいなという話ですよ。彼にくらべたら、ロードナイトやデュナスのほうが遥かにマシです。
 スレイプモンと相討ちで退場(しかもまだ生きてる可能性が大きい)のデュークモンとは、比べること自体意味が無いでしょう。
 
 
・クレニアムモン
 冒頭でイグドラシルと会話していました。ロードナイトモン戦死の報告でしょうか。
 といってもロイヤルナイツの卵はすぐに回収されるので、イグドラシルとしてはとっくに承知の上だったでしょうけど。

 そして次はついにこの男との再戦です。果たして完全決着となるのか、それとも。
 
 
・イグドラシル
 ここで大だけでなくトーマたちまで来るとなると、そろそろのんびり構えてもいられないでしょう。
 アルフォースブイドラモンとデュナスモンを呼び戻すというわけにもいかないし、残りのクレニアム・マグナ・オメガモンで
 どこまで持ちこたえられるかといったところ。40話とはまるっきり状況が違います。

 …こうなるとロイヤルナイツとは別に何か、打ち倒すべき最終目標が出てきてもおかしくないなあ。
 実は生きていた倉田というのも、まるっきりあり得ない線とはいえなくなってきました。

 そういえば、いちおう各国にもちゃんとDATSが存在していてロイヤルナイツと戦っているという情報も出てきました。
 戦力がどの程度かは知りませんが、デジモン犯罪の激増地域だった日本支部より強力なチームなど、都合よくあるとは思えません。
 アメリカあたりは人数なら山ほどいそうですけど。
 
 …というか案外、ギズモンを再利用していたりして…
 
 
★名(迷)セリフ

「…足の踏み場もないのに?」
「…何してんの、淑乃?」
「面倒みられてるのは淑乃のほうだと思うけどー」

 ララモン……。
 淑乃も、いいキャラに育ちましたわ。いやホント。
 
 
「…とにかく、あたしもね。頑張らなきゃって思うんだ」(淑乃)

 なにげなーく流されてるような言葉ですが、これが進化のきっかけってことなんでしょう。
 もっとドラマティックな展開からでもよかったのでしょうが、この流れと詰め込み具合ではここまでが限界かな。
 わかりやすくはあります。
 
 
「…おれ、みんなのアニキになる。
 マサル、みんなを守った。おれもみんなを守る。おれ、おまえたちを守る!」(イクト)

 大に受けた影響が非常に大きいことがよくわかるセリフです。
 過去のしがらみを越え、居場所を失った自分を受け入れてくれたあの度量を自分も身につけたいと願った結果でしょう。
 その願いはおそらく極めて純粋なもので、大の背中を見てはいても間違いなく彼自身のもの。
 まあ、直後にマクラ投げから入るあたりいろいろ間違ってますけど。

 そして今回でやっとデジヴァイスもバースト化しました。隊長のと同じでカスタム化されていたのかも。
 ……そういえば隊長はどこに行ったんでしょうか。
 
 
「デジタルワールドを救うことこそ正義! そのためには僅かなデジモンの命など、取るに足らぬ!」(ドゥフトモン)

 ちょっと手をどければ傷つけずに済むものを、看過するのが正義だそうです。
 冗談は顔だけにしてください。
 
 
「知香は……ぼくが守る!」(ガルダモン)

 ピヨモン、かっこいいぜ。
 

「一方的な正義は!」(イクト)
「正義じゃない!」(淑乃)

 まあ上ではああ書いてますが、イグドラシルなりのもっとも確率のたかい生き残り策が人間界殲滅なんでしょうね。
 少々の犠牲を払ってでも、一番高い確率で同朋全体が生き延びる方法を採ることが正義ではないとはかならずしも言えません。
 言えませんけど、イグドラシルは正しすぎるのです。だからセイバーズとは相容れない。

 弱きものを守るというのはもしかしたら、自然界の法則からすればおかしなことなのかもしれません。
 だけど、それをやれるのは人間と、人間と同じ心をもったデジモンだけなのです。
 彼らが戦いをやめてしまったら、戦いを知らない人々や生き延びる力のないデジモンたちを誰が助けるというのでしょう。
 
 
「…大切なものを守るためには、もう戦うしかないの」(淑乃)

 こちらは、ごく自然な摂理だと思います。だから広義では、ロイヤルナイツ側も同じ理論を持っていることになるでしょう。
 そこから外れた外道はいまのところただ一人、倉田だけだと思います。
 
 
 
★次回予告
 いよいよクレニアムモンとの直接対決。
 早くもトーマたちも駆けつけてきそうですし、予想以上の急展開を見せてくれるのでは?
 作画もよさそうだし、期待してしまいます。