デジメモリ、輝く!

 脚本:吉田玲子 演出:芝田浩樹 作画監督:高橋晃
★あらすじ

 アーケロモンがバグラ軍に囚われたことを知り、救出の決意を固めるクロスハート。
 そのとき、島そのものを背負っていたキングホエーモンが目覚めます。ホエーモンは毎年デジノワを捧げてもらう代わり、
 腹の中にある宝を護り続けていたのでした。その宝こそがコードクラウンなのです。

 そこへ、お供え物のデジノワを持ったバグラ軍が現れました。フライモンの群れです。
 ところが、お供え物のなかに爆弾が混じっていました。ホエーモンを傷つけさせまいと、体を張るシャウトモン。
 見かねて止めようとしたタイキは、シャウトモンもろともホエーモンの大口に呑み込まれてしまいます。

 果たして、コードクラウンはそこにありました。便乗したフライモンたちがシャウトモンを毒に浸して強奪しようとしますが、
 アカリやチビカメモンたちの祈りとシャウトモンの心意気を受け取ったホエーモンが闖入者を追い払い、
 シャウトモンの毒も取り除いてくれました。コードクラウンもタイキの手に渡ります。

 怒り心頭に発したネプトゥーンモンは、エビドラモンを放ってきました。オクタモン以上の強敵に押されるX2。
 しかし、ホエーモンの助言でチビカメモンが取ってきたもう一つの宝「デジメモリ」によって形勢は逆転。
 召喚された魔王・リヴァイアモンの技によりチャンスを掴んだX2の斧が、エビドラモンを真っ二つに叩き伏せるのでした。

 喜びに沸くクロスハートでしたが、ネプトゥーンモンの怒りは収まりません。
 今度はシードラモン軍団を差し向けてきました。この大攻勢、切り抜けられるのか!?
 
 
 
★全体印象

 5話です。はええもんだぜ、クロスウォーズが始まってからはや一ヶ月。

 脚本は前回に引き続いて吉田玲子氏ですね。演出の芝田氏も、デジモンではもうおなじみの方。
 そして作監の高橋晃氏は、前番組の怪談レストランでキャラクターデザインを担当していた人です。
 ぱっと見独自の癖はみられませんが、安定していますね。

 お話的には前回を受け、コードクラウンをめぐる展開がメインとなっています。
 さらにコードクラウンの持ち主にして、大状況そのものでもあるキングホエーモンが登場することもあり
 キャラの絞られた流れになってました。煽りを受け、アカリやゼンジロウの出番はあまりありません。
 一方でチビカメモンやシャコモン、プカモンらアイランドゾーン組の出番はそれなりにありました。
 アーケロモンも微妙に強かな雰囲気を漂わせています。

 サブタイトルにも出ているデジメモリですが、実はあまり取り沙汰されてません。コードクラウンのオマケです。
 危機にあたって「実はこんなのもあるんだけど……」と突然出てくる扱いでした。組み込みづらかったか。
 よりによってリヴァイアモンが出てきた理由があまりといえばあまりで、納得と同時に何じゃそりゃという気持ちにも。
 だよなあ、確かに名前からして強そうだもんなあ……地形効果といい、ナイス選択だったぞタイキ。

 それにしても、次から次へと事態が進んでいって息を抜く暇がありません。毎回クライマックスとはこのことか。
 どっかで箸休めエピソードでもあればと思うんですが、今の時間帯である限りは難しいかもしれませんね。
 
 
 
★各キャラ&みどころ

・タイキ

 気のせいか、三条脚本のときよりもちょっと線の細いイメージがあります。
 前回はあまり顕在化してませんでしたが、今回でなんとなくそれを感じたといいますか……
 要は自分でムリヤリでも何とかしてしまうのではなく、ホエーモンという大きなものに頼ってたせいなんですけど。

 もっと言っちゃえば、デジメモリを出すためにデジクロスも作戦も通じない局面へ放り込まれた形なのです。
 使ってみたら勝てました、というのは1話もそうですが、アレともまた少し違うような……
 でも、おかげでシャウトモンとの絆をより強めたようにも見えましたね。

 
・アカリ&ゼンジロウ

 今回はジジモンともども、めぼしい出番がほとんどありません。
 タイキたちの無事を祈り、ホエーモンの心を動かす役は果たしましたが「その中の一人」扱いでした。
 
 
・シャウトモン

 アイランドゾーンに入ってからはヤンチャでリアクションの激しい側面がやや弱まった代わり、
 猪突猛進ぶりがより強調されているように感じました。急にやたら悟ったことを言うかと思えば無言で体を張ったり、
 照れが入ってないというか、いきなりガチで妙にカッコいいことをしだす印象を受けたんですね。
 単にグリンゾーンの時期よりも描写上の比重が下がっただけとも言えるんですが。

 というか、今回は活躍してても吹っ飛んでたりやられたりしてるばっかりなのであんまりカッコよくありません。
 上で書いたような理由と、さっぱり目に流してる演出のせいでしょうか。
 
 
・クロスハートの仲間たち

 今回はピックモンズ(柔)がコードクラウン捜索で活躍しました。まさに生ビックリドッキリメカ。
 しかし一体一体はさすがに弱いようで、フライモンに尾行されたあげくノックアウトされたりしています。

 バリスタモンとスターモンは今回、完全にカプセル怪獣待遇。
 ホエーモンの口の中でいきなりデジクロスを始めたので「?」と思ったら、連れ歩いてたんですね。
 先にピックモンズを出した時点で気づくべきでした。彼らしか連れてきてないはずがありませんものね。

 このへんの省略っぷり、一応デジメモリを際立たせる狙いもあるのでしょう。
 
 
・ドルルモン&キュートモン

 前回で思わせぶりに出てきましたが、今回は出番なし。ま、次回で補填されるでしょう。
 
 
・シャウトモンX2

 ただでも不得手な水上戦、さらに強敵の登場とあって精彩を欠いたバトルです。
 それでも最後は召喚のおかげでチャンスを掴み、敵へ飛翔脳天撃を決めて面目を保ちました。
 X3以上になれないので苦戦は免れませんが、そのぶん連携というか、動く人数が増えて楽しいのも確かだったり。
 
 
・アイランドゾーン組

 前回に続き、チビカメモンが勝利に貢献しました。
 直接戦ってこそいませんが、デジメモリを取りにゆくという大役を立派にこなしてみせています。
 シャコモンやプカモンも爆弾を撃ち落としたり、X2の援護をしたりと地味ながら勇敢に戦っていました。
 このように、多数のデジモンたちへ出番が与えられやすいのもクロスウォーズの特徴といえるかもしれませんね。

 アーケロモンはボケてるように見えてその実なにげに時間を稼いでいたり、強かなところを見せていました。
 ホエーモンがこれと認めたものでなければコードを渡すことはないと知っていたんですね。長老だし。
 その実、単に酔った勢いでしゃべっちゃって後からシラフに戻っただけみたいに見えるのもポイント。

 ところで潤滑油酒って何?
 
 
・キングホエーモン

 島そのものを背負った、超巨大な海棲デジモン。なんとリヴァイアモンより大きく見えます。あれ?
 あまりの巨体ゆえか行動サイクルは緩慢で、しかし知能は高度なものがありますね。
 テレパシーみたいなものも使えるようですが、これはクロスローダーのおかげかもしれません。

 その体に溜め込まれた油脂は強力な解毒作用があり、フライモンにやられたシャウトモンの体を完治させています。
 実際の鯨の場合、薬用に使えるのは肝油とのこと。もしかして、あの部屋は肝臓だったのでしょうか?
 であれば肝心要ということで、イメージには合ってますね。たとえ毒を使われても無効化してしまうことでしょう。

 ホエーモンといえば、大きさゆえによく体内に入るケースが見受けられます。
 さらに言うとこの種が重要データの持ち主、というプロットは「Vテイマー」を強く想起させるもの。
 味方イメージが非常に強いぶん、レオモンほどではありませんが死亡率もかなりのものだったりします。
 今作ではどうなるでしょうか。今回の山場を乗り越えたとしても、まだまだ安心はできません。
 
 
・リヴァイアモン

 タイキが複数のデジメモリから「一番強そうなのを!」ということで選び出された魔王型デジモンです。
 他の魔王らにくらべてマイナーな存在と思いきや、まさかの味方待遇としてアニメ初登場を果たしました。
 ネプトゥーンモンがびびりまくってたので、かつては海の魔王として君臨していたものと思われます。

 とはいえ、あくまでも召喚。見たところ、本当の意味での実体や意志は持っていないようです。
 他のクロスローダー持ち、例えばキリハの手に渡れば恐ろしい敵になる可能性もあるでしょう。
 実際、次回にキリハが出てくるのがちょっと怪しいんですよね。

 タイキが発動させた「ロストルム」は設定ですと、巨大な顎ですべてを呑み込む技。
 本作では長大な体を振り回して水竜巻を作り(『カウダ』か?)、口からのエネルギー波で敵の腕を飛ばしてます。
 どれがどうロストルムなのかわかりませんが、とりあえずエネルギー波のほうにしといたほうがいいでしょうか。

 よく見ると、使った後のメモリがシルエットになってるショットがありました。まさか使い捨てでしょうか?
 
 
・ネプトゥーンモン

 なんか怒ってばっかりの人。
 自らガンガン出張ってくるマッドレオモンとは違い、後ろに引っ込んで部下にやらせるタイプです。
 そういう意味では司令官という言葉がふさわしい行動パターンなんですが、いかんせん場当たりなイメージも。
 体がアーケロモンと比べても大きすぎるので、どのみちああするしかなかったんですが。

 また、いちおう貴重な情報源であるアーケロモンにキレたりなど短気な面も見受けられます。
 どちらかといえば、物量をたのんだ力押しが得意なタイプなのかもしれません。

 オリンポス十二神としての威厳はもはや欠片もありませんが、彼のせいではないので許してやってください。
 これでもあのメルクリモンと同格なんです。
 
 
・フライモン

 ネプトゥーンモンの部下。どうやらこの部隊、航空戦力は昆虫型のようですね。

 なにげに、今まで出た同種ではいちばん頭の働く方々です。
 このデジモンは大半のシリーズに登場してるんですが、今まではどれもお脳の弱い怪獣的描写しかされてませんでした。
 今回ではピックモンズを泳がせてコードクラウンの在処をつきとめたりと、驚くほど狡猾です。
 さらにシャウトモンを一時は死の淵へ追いやっているので、隠れた強敵という感じでした。

 そのぶん、体はずいぶん小さくなっています。タイキともさほど変わらない程度。
 これが災いしてホエーモンに排除され、潮吹きの形で体外へ放り出されてしまいました。
 その後どうなったかは不明ですが、羽虫に水は大敵。たぶん、ろくな事にはなっていないでしょう。
 
 
・エビドラモン

 ネプトゥーンモンの部下。キングホエーモンから出ようとしたタイキたちを待ち伏せしていました。

 全身これ鉄のような甲殻で覆われ、強大な破砕力を持つハサミを備えたデジモンですがこれでもドラモン系。
 シードラモンから派生したのでしょうか? とにかく、本作ではネプトゥーンモンの懐刀的扱いです。
 必殺技が「ツインネプチューン」なので、その縁ですかね。

 裏付けるかのように、周囲からの持ち上げっぷりが凄いことになっていました。
 単体としての戦闘力がハンギョモンはおろかオクタモンをも凌ぎ、チビカメモンが自分が合体しても勝てないと言ったり
 ヤツには勝てまいとネプトゥーンモンがドヤ顔を見せたり、とにかく半端ありません。

 実際の実力もX2を全く寄せ付けぬほど高く、左手のハサミで捕まえて右のハサミで殴りまくるという一方的展開。
 少々間抜けな絵面でしたが、マッドレオモンさんが不憫になってくるぐらい苦戦を強いていました。
 それでもさすがにリヴァイアモンには敵わず、吹っ飛んだところでX2にたたっ斬られてます。

 ネプトゥーンモン隊からはこの他、前回のギザモンやマンタレイモンも登場してます。後者に至っては正しく背景ですが。
 
 
・キリハとネネ

 今回はお休み。
 前者については乱入が確定していますが。後者の動向は不明なままです。
 アイランドゾーンに来ているということは、やはりキリハもコードクラウンを持っているということか……
 そりゃそうだけど。
 
 
・デジメモリ

 キングホエーモンの真下の社に安置されていたアイテム。
 伝説のデジモンのデータが収められていると言われ、五枚一組で入ってました。完全防水ですな。
 内訳は今回使ったリヴァイアモンに加えてマリンエンジェモン、アグモン、ガルルモン、ホーリーエンジェモン。
 今回みたいな調子でガンガン使っていくとなると、ハデなことになりそうです。
 
 
 
★名(迷)セリフ
 
 
「ホエーモン! こいつを…シャウトモンを助ける方法はないか!?
 こいつ…デジノワにまぎれた爆弾をおまえが間違って食べないように、体を張って爆破するようなヤツなんだ!」(タイキ)


 今回はセリフでどうこうという話じゃないのですが、選ぶのならばこれ。
 思い返してみれば、誰かのために体を張ったり頭を下げたりできるタイキという少年をよく現したセリフです。
 もちろんこの言葉どおり、それはシャウトモンも同様で……だからこそ、ホエーモンの心にも届いたのでしょう。

 一番大きなキッカケがシャウトモンの食い意地だったという流れだったのは、まあアレですが……
 
 
「いくらなんでも、このエビドラモンには勝てまい…!」(ネプトゥーンモン)

 ついでに、ネタ気味の一言を一献。
 これほどまでの自信がいったいどこから来るのか、小一時間問いただしてみたいです。
 いや、強かったけどねエビドラモン。



★次回予告
 
 ネプトゥーンモン艦隊の総攻撃。
 死闘と同時にちょっとしたギャグも垣間見えます。どうやら、早くもマリンエンジェモンを使うようですね。
 そして、キリハ乱入の意図は……?