X4、危機突破!
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脚本:吉田玲子 演出・絵コンテ:小村敏明 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
シードラモン艦隊に完全に包囲され、デジメモリとコードクラウンの引き渡しを要求されるタイキたち。
アーケロモンは死を覚悟し、コードクラウンを使って次のゾーンへ逃れるよう諭すのですが、タイキは悩みながらも拒否。
アカリたちも肚をくくるのですが、策は思い浮かびません。
そのとき、ネネから情報を得たキリハがゾーンを越え、戦いの場に乱入してきます。
彼はデジメモリと引き換えに救援を持ちかけるのですが、タイキは礼を述べつつもこれを拒み、デジメモリを使います。
現れたのはマリンエンジェモン。その力がバグラ軍を眩惑させている間に、アーケロモン救出に成功しました。
しかし、ネプトゥーンモンもそう甘くはありません。海に叩き落とされたうえにシードラモンの技で固定され、大ピンチ。
危機を救ったのはドルルモンでした。デジクロスを果たし、スターソードを手にしたシャウトモンX4が立ち上がります。
これに対し、ネプトゥーンモンは愛用の槍・キングスバイトを放ちました。意志を持ち、無限誘導してくる恐ろしい武器です。
タイキは一計を案じ、X4を誘導して逆にネプトゥーンモン自身を射たせます。
自滅の形になったネプトゥーンモンは最後の力で大波を起こしますが、キングホエーモンのおかげで事なきを得ました。
キリハはタイキの戦いぶりを目にし、あらためてその力を欲するようになります。
戦い終わって、チビカメモンを正式な仲間に加えたクロスハート。
タイキはドルルモンも仲間に誘うのですが、束縛を嫌うドルルモンは去っていってしまいました。
しかし、彼とは意外に早い再会を果たすことになるのです。
★全体印象
6話です。X4の読みは当然「クロスフォー」。
脚本は4話、5話と同じく吉田玲子氏です。1〜3話が三条氏ですから、区切りごとにホンの人を変えてゆく構成でしょうか?
平成ライダーが2話構成なら、こちらは3話ということなのかもしれません。
作画にはデジモンと言えばこの人、の八島氏が復帰。これで全作の作監を担当したことになりますね。
ただし、そのわりにさほど八島カラーはありません。もう一人の原画である市川吉幸氏の力が大きいものと思われます。
市川氏は鬼太郎にも参加していた方で、経歴を見るかぎり相当のベテラン。
演出の小村氏はといえば、あのプリキュア5でSDをやってたほどの人です。こんな人まで呼ばれているのか……
何か総力戦の様相を呈してきました。プリキュアに行きっぱなしの人もいるんですけどね。伊藤智子さんとか。
さて内容ですが、やはりバトル主体のハデな展開となっています。
でも作ってるほうも見てるほうも慣れてきたのか、だんだんこなれてきたような印象を受けました。
まだしばらくはこの勢いで進んで、落ち着いたころに内面話をやってゆく流れでしょうかね。
いずれ確実に来るキリハとの戦いが、ひとつの節目になるのは間違いないと思います。
そのキリハとタイキですが、考え方の違いをあらためて浮き彫りにしつつ交渉の余地も覗かせはじめてます。
というか、キリハの方が少しずつタイキに惹かれてるような描写にもなってますね。
現状ですでに器負けしてる段階ですから仕方ないんですが、だからこそ引っ張り込みたいのでしょう。
果たして最終的にどうなるか……
★各キャラ&みどころ
・タイキ
彼らしさというものを、あらためて強く刻むお話でした。
確かに代案は無いかもしれないけど、そもそもバグラ軍に取引などという言葉があるとは到底思えません。
見捨てても見捨てなくても刃を向けられるなら、救う可能性がゼロではない方を選ぶほうがベターとさえ言えます。
少なくともクロスハート的に、またヒーロー的にもブレはありません。
というか、いくら彼が冷静でも見捨ててさっさと逃げ出す道を選ぶなんて視聴者は誰も思ってなかったはず。
困っている誰かを放っておくことができない性格だということは、今までのお話で示されていますしね。
やはり1話で立てておいたのが効いてる。
そういえば、ネプトゥーンモン戦ではクロスローダーを介してパートナーに指示を与えてる描写がありました。
もちろん通信機もありますが、クロスローダーを使うほうが確実なのかもしれません。
水中でもしっかりと届くんですね。まさにアップリンク。
・アカリ
今回もたいした活躍はしてませんが、少しは慣れてきたのか取り乱すことはここ数回でぐっと少なくなりました。
まあ戦おうにも、ゼンジロウのように剣を取って前に立つことはできないから仕方ないんですけどね。
キリハとのやり取りを見ていると、結果はどうあれジェネラル二人の橋渡しもやりそうな気はするんですが……
・ゼンジロウ
逃げちゃえるんじゃね? と現実的なことを言い出したのは彼ですが、それでいてタイキに劣らぬ勇敢さを発揮してます。
スターソードのおかげか、ギザモンの群れを薙ぎ倒す場面もありました。かと思えばアーケロモンを傷つけないように
縄だけを斬る器用さも発揮しており、技術面の確かさも窺えます。どうやら肩書きは伊達じゃないようですね。
サポート人員としての頭角をメキメキ現しつつありますが、今後のポジションはどうなるんでしょう。
ちなみにアーケロモンの縄を切ったのは「東雲一刀斬り」だそうです。「江東斬り」との関連は名前以外不明。
「江東スラッシュ」が名前のわりに刺さってたのは追求しないであげたほうがよさそうです。
・シャウトモン
初めっから戦う気まんまんだった人。むしろ、タイキの言葉を待ってた雰囲気でした。
でも今回はX4になるので、単体での見せ場はあまりありません。
タイキにおねだりしてチビカメモンの軍団入りを承知してもらうなど、微笑ましい場面もあります。
・クロスハートの仲間たち
正式にチビカメモンが加入しました。条件こそ限定されますが、戦術の幅自体は広がったことになります。
描写を割く余裕がないのでバリスタモン、スターモン、ピックモンズ、ジジモンは今回も合体パーツ扱いか空気でした。
皮肉にも、テンポの早さが彼らひとりひとりの個性を薄くする側面があるようですね。
クロスハートとしての方針はブレてないんですが、なんとも痛し痒し。
・ドルルモン
なんだかんだ言って、一番ヤバい時には助けてくれる人。そんな印象を受けました。
でもこの間の爆弾発言のせいで、仲間がいらないというよりキュートモンと二人だけのほうがいいんじゃ……
という微妙な印象を受けて生暖かい気持ちにさせられたりもしています。
アカリやキュートモンともども、次回でのスポットに期待することにしましょう。
ちなみにキュートモンはワンカットしか出ておらず、戦場に顔を出してさえいません。
3話ではこのキュートモンのほうが首を突っ込む図式でしたが、今回は逆でしたね。
・シャウトモンX4
作画・演出ともにX3よりも断然めぐまれての登場ですが、初陣としてはちょっぴり地味でした。
出たと思ったらネプトゥーンモンの槍に翻弄され、タイキの策で逆利用に持ってゆくというまさかの頭脳戦です。
マッドレオモンのときと同じく圧倒的パワーで粉砕するのかと思いきや……だったので、肩透かしは否めません。
7話も出るようなので、慌てることはないのかもしれませんけど。
それによく考えてみたら、X4といってもX3が剣を持っただけです。本当にただそれだけ。
合体そのものはX3の時点でほぼ完成していますもんね……あれはあれで、間違ってはいないのかもしれない。
なおX2も出ますが、ほぼ移動用でした。
・アーケロモン
トボけていますが、なんだかんだで長らしく覚悟のあるところを見せてくれました。
でも、あんなことを言われたら余計行けなくなってしまうのがタイキ。結果的に良い方向へ繋がっています。
今回のことがアイランドゾーンの皆の心に残したものは、決して小さいものではないでしょう。
ひとやま越えた途端にボケキャラに戻るのもお約束でした。タイキもさすがに呆れています。
・シャコモン
なんと数十、数百もの仲間を引き連れて橋を作りました。こんなにいたのか……
おまけに彼らはバリスタモン+シャウトモン+タイキ+ゼンジロウ+スターソードの重量にも沈まない根性の持ち主。
彼らにデジクロスしてもらって槍を絡めとったほうがよかったんじゃ……と思えてきてしまうほどでした。
シードラモンが氷を張ったあと、仲間らがどこへ行ったのかは不明です。ちりぢりに逃げたのかな。
プカモンもいるはずなんですが、今回は空気でした。
・マリンエンジェモン
伝説のデジモン。デジメモリ召喚で早くも登場です。
アニメでは北川健太の相棒として「デジモンテイマーズ」に登板している、れっきとしたパートナー経験者。
その技・オーシャンラブはデ・リーパーをも怯ませ、ゾーンを霧散させる特殊な効果がありました。
今回はといえば、バグラ軍全体をチャーム状態にしてしまうという凄まじい効果を発揮しています。
何十匹にも分身しているからできたことなのでしょう。兄貴、戦いは数だよ。
この効果はかなり長持ちしており、シャコモンが仲間を集めてえっちらおっちら橋をつくり、
その上を救出部隊がわーっと滑ってゆくまでずーっと続いてました。手を出さなかったらいつまでそのままだったろう。
・キングホエーモン
誰もフルネームで呼んでくれない人。
とりあえず前回でお役御免なのであまり目立ってはいませんが、最後にアカリたちを保護しつつタイキたちを助けています。
けっこう荒っぽい方法でしたが、とりあえずけが人は無かったようですね。よく無事ですんだもんだ。
人智を越えた不思議な力があるのか、上記のとおり島に残ったアカリたちを丈夫な泡で守る場面があります。
かなりの衝撃を受けても割れなかったので彼の力で維持されていたか、または彼の力そのものなのでしょう。
・ネプトゥーンモン
あっさりマリンエンジェモンの状態異常に引っ掛かったのを見たとき、ポジションをあらためて確認しました。
というか、ギャグもできるあたり悪役としてはけっこう優秀だったのかもしれません。
マッドレオモンさんに負けず劣らずの天然っぷりを感じた次第です。
しかし後半はさすがに面目を保っており、クロスハートをギリギリまで追い詰める良いところまで持っていっています。
運悪く近くにドルルモンがいたせいで、何もかも台無しになってしまいましたがこれも悪役のさだめ。
とはいえX4相手でも最初は優勢だったので、素でマッドレオモン以上の力を持っているのは間違いないところでしょう。
コードクラウンは持ってなかったようなので、もともとあのゾーンの出身なのかもしれません。
その最期は秘技「ボルテックスペネトレート」による自滅でした。
ひとたび開放すれば、獲物を仕留めるまで攻撃をやめない自慢の槍にトドメを刺された恰好です。
描写だけみると、本来は彼の持ち物じゃなかったんじゃないかという風に見えますね。どこかで手に入れたとか?
そんな自業自得ながら仮にも神の名を戴くデジモン、死ぬ間際にあっても抵抗を試みてクロスハートに一矢を報いています。
最後に見せた「ウェーブオブデプス」は極大の津波を起こす技だそうで、しかも巻き込んだ者を海の底に引っぱり込む様子。
キングホエーモンがいなかったらヤバかったかもしれません。
・ネプトゥーンモン艦隊のみなさん
今回はシードラモンがメインです。指示を受けて海を凍らせたりしていました。
ギザモンは相変わらずの木っ端で、マンタレイモンに至ってはいることを忘れそうなぐらいの背景。
ネプトゥーンモンが倒れたあと、どうなったのかは不明です。逃げたか、それとも津波にのまれたか。
生き残りがいるにせよ、もはや大した影響力は持っていないでしょうね。
・キリハ
乱入組。推参場面でコードクラウン持ちであることを事もなげに主張しています。
相変わらずの冷徹ぶりですが、今回でまた少し印象を新たにしました。
少なくとも、まず相手に取引を持ちかける程度の段取りは踏むようです。前回も一応そうでした。
もっとも、当の本人はデジメモリよりタイキ本人のほうによほど興味があるようですが。
この主人公を見下してはいないというあたりも、油断のなさを感じさせてくれます。
ふーむ。悪人オーラは出してますが、行動そのものにはやはりどこか筋が通ったものを感じますね。
彼の判断基準はあくまでも力。代価として求めたのもデジメモリという力だし、一番欲しがってるのも
タイキというクロスローダーを持つものの力および、その判断力です。ネネと違い、裏もないんですよね。
クールに見せかけて、実はものすごい熱血漢なんじゃねえかという気がしてきました。
悪く言えば、どっか単純な人なのかもしれません。
ネネは彼の青を「強い」と表現しています。彼の色は「強さ」なのでしょうか。
何を犠牲にしてもそれを糧にしてさらに強くなり、すべてをつかみ取ろうとする覇道を進む者の。
退かぬ媚びぬ顧みぬ、ってやつですかね。
・メイルバードラモン
どこか別のゾーンで、キリハと共に戦っていました。青軍のデジモンからは今回、彼しか出てきません。
しかしその戦闘力はデジクロスするまでもなく圧倒的でオオクワモンを全く寄せ付けず、シードラモンを薙ぎ倒します。
少なくともオオクワモンが単なるクワガーモンより弱いとは思えません。それを圧倒しますか。
これでグレイモンと合体したらどんだけ強いというのでしょう。恐ろしい。
3話ではほとんど本気を出してませんでしたが、今回はもう全開バリバリです。
特に腹からのプラズマキャノンは強力で、オオクワモンをも一撃で消し飛ばしてしまいました。
戦うことになったら、おそらくX3以上でないとまともにやり合うことさえ難しい相手でしょう。グレイモンはそれ以上か。
シャウトモンたちもマンモンの群れをボコボコにしてましたが、とりあえず忘れることにします。
なんせクロスウォーズには過去の常識が通用しないので。
・ネネ
キリハにタイキのことを教えていました。またまた神出鬼没です。耳もあまりに早い。
ここまで来ると、それが彼女とそのパートナーたちの力の一端ではないかと思われてなりません。
今回は間接的にタイキへ考え直す余裕を与え、良い結果へ転がるキッカケとなりましたが、次はどうするでしょう。
設定では、逆にバグラ軍を煽動してタイキたちを苦しめることもあるようですが……
★名(迷)セリフ
「そんなことできるかよ! オレたちがこのまま逃げたら、アーケロモンの命はない…!
島のみんなだって、どうなるかわからないんだぞ! このまま放ったらかして、逃げるわけにはいかない!」(タイキ)
いい大将というものは普段周囲を諌めつつ、いざという時には士気に直結する判断をする者だと言います。
実際きわめて危ない橋でしたが、結果的にはむしろクロスハートの結束をより固める選択だったんじゃないでしょうか。
少なくとも、ここで逃げたらそれはヒーロじゃないと思います。
「おまえ…誰かを犠牲にして、自分だけが助かるなんてこと……したくないんだろ?」(ゼンジロウ)
逃げちゃえると言った本人ですが、わりとすぐに腹をくくりました。
当人的には思いつきで言っただけで、細かいことはあんまり考えてなかっただけなのかもしれません。
それにしても、なんだか妙にカッコよくなってきました。
「お前の力は借りない…… 命の大切さがわからないヤツの力は、借りない!
…でも、いちおう感謝するぜ! お前のおかげで、少しは敵の戦力も減ったようだし」(タイキ)
手出し無用と言いつつ、既にやってもらったことには感謝する。こういうことができるのは主役ならではですね。
キリハ的に後半部分はかなり意外だったようで、虚を衝かれたような顔をしていました。
これでますますタイキに興味を持ったに違いありません。
「愛されるより、愛したい……!」(ゼンジロウ)
オーシャンラブ発動時。100%、岸尾氏のアドリブだと思います。
「だが、最後に必要なのは力だ…!」(キリハ)
こちらはキリハの考え方がよくわかるセリフ。
なんとなく、思うところがありそうな含みのある言葉です。彼の過去に何があったのか、気になってきました。
★次回予告
次なるゾーンは火山地帯。みごとに予想通りの人が出てきました。
テロップでは正式名称が出るけど本編ではボルケーモンとしか呼ばれないに一票。
なんとなくノリに慣れてきました。