黒騎士デジモン、参上!

 脚本:三条陸、石井健太 演出:角銅博之 作画監督:市川慶一
★あらすじ

 これまでの圧政を詫び、ルーチェモンへの大統領譲位を宣言するスラッシュエンジェモン。
 実は選挙管理委員だったシャッコウモンのお墨付きも入り、いよいよルーチェモンに大統領の座が託されます。

 しかし、これで真の平和が来ると喜んでいた民たちとクロスハートの期待は一瞬で裏切られることになりました。
 ルーチェモンは、バグラ軍の手の者だったのです。封印されていたというコードクラウンを手に入れるため、
 今までずっと善きデジモンのフリをし続けていたのでした。
 しかも彼に封印を解く呪文を教えたのは、あのネネ。その側には暗黒の騎士、ダークナイトモンの姿が。
 ジェネラルの素性を明かしたネネは、コードクラウンと共に現れた暗黒空中庭園へと赴きます。果たしてその目的は。

 空中庭園が現れた影響で大地は割れ、溢れ出た邪悪がヘブンゾーンに蔓延しはじめました。
 かつてヘブンゾーンは闇の力に包まれていた場所。それをコードクラウンの力で空中庭園へと封じ込め、
 デジモンたちの善き心で維持してきたのでした。

 闇の力で暴れはじめたヘブンゾーンの民を放置し、リリスモンのもとへ戻ろうとするルーチェモン。
 阻止しようとするクロスハートですが、ダークナイトモンの一撃でシャウトモンが倒れており、デジクロス不能。
 しかし、あまりにも悪辣なルーチェモンの言葉がシャウトモンの魂に火をつけ、再び立ち上がらせました。
 シャッコウモンの協力もあり、X4Bの一撃によってルーチェモンは大地へ沈みます。

 コードクラウンを取り戻し、空中庭園の闇を止めようとするクロスハート。
 果たして、ネネがクロスローダーを使い闇を吸い取っています。押し問答に割って入ったのは、
 倒したとばかり思っていたルーチェモンでした。闇を吸収し、逆転の力を手に入れようというのです。
 ところが制御し切れず、ネネを巻き添えにその体が異形へと変化しはじめて……




★全体印象

 16話です。
 脚本はふたたび入れ替わり、三条氏担当。もう一人の石井健太という人はよくわかりません。新人でしょうか?
 作監は市川氏で安定してますが、演出が当たり外れの激しい角銅氏なのでビジュアル総合は普通です。

 さて、終わってみれば「や、やっぱりこうなってしまったか……」という印象。
 ダークナイトモンこそ現れたものの、ネネ共々悪役とは言い難い扱い。その分すべてをルーチェモンが受け持ってます。
 期待をみごとに裏切り、別の意味では完璧に叶えた暴れっぷりでした。まあ、そのへんは後述。
 トワイライトについてはまだ目的がわからんので何ともいえませんね。次回待ちです。

 シャウトモンが目立っていたり、熱いセリフを吐いたりなど三条節がかなり判りやすい回でもあります。
 状況に合わせるだけではなく盛り上げに貢献し、しかも憶えやすいセリフ回しを書かせたらこの方は本当に上手い。




★各キャラ&みどころ


・タイキ

 今回はシャウトモンに譲る形。出番こそ確保してますが、そんなに前へ出てはいません。
 どちらかというと、シャウトモンの気魄に引っ張られる形でバトルへ突入してます。2話もそうでしたね。
 ただルーチェモンの本性に一瞬だけ早く気づいたことと、状況の把握も早いあたりは流石でした。


・アカリ&ゼンジロウ

 タイキでさえ上の流れですから、この二人が目立つはずもありません。目立たなくていい局面ですし。
 それでも抜け目無くアドリブ入れてそうな岸尾さんには脱帽です。


・シャウトモン

 大統領=キングという彼らしい繋げ方で、後半の熱さへとリレーしてます。
 ルーチェモンの本性に激昂するくだりで大輔を思い出したのは、たぶん偶然じゃあないと思いますね。
 スタッフ側が狙って立てたわけではないのでしょうけど。

 彼はいわゆる優等生ではありません。知識もないだろうし、勉強は大の苦手。
 でも、王にいちばん必要なものは学ではなく、人々を守りたいという強い意志と責任感です。
 それがあれば努力や結果、そして支えは自然とついてくるもの。足りない部分は補ってもらえばいい。
 キングという目的についてちょっと認識が薄れかけてたので、いい燃料投下になりました。

 それにしても、三条脚本になるとホント思い出したようにあのセリフが飛び出しますね。
 逆に表現すれば、ここ一番で口にしてくれるとも言えますが。


・クロスハートの仲間たち

 前回に続き、ベルゼブモンが目立ってます。まだ販促期間が続いているということですかね。
 次回ですぐX5が出ますが、彼は単体だと飛べるのでX5と並んで戦う形になるんじゃないでしょうか。
 戦闘力的にはその状態でも充分にサポートできるはずですし。

 スタッフが心得てきたのか、バリスタモンがパワーや防御力を活かした行動をよく取るのはいいですね。
 前回やサンドゾーンの時もしょっちゅう援護防御役に廻ってたし、こういう細かい描写があると嬉しい。


・シャウトモンX4B

 連続登場。繋ぎに近かったX4Kと違い、アピールに余念がありませんね。
 カオスフレアは、どうやらこの状態になって初めて使えるようです。しかも今回はゼロ距離射撃。

 ただ、描写は前回に及ばないと思います。ただワーッと直線的に突っ込んで剣を突き出すばかりでしたし。
 予告にもあった、バラバラ砲を射ちながら普通に飛んで来るカットには塩気すら感じます。あれはヤバい。
 まあ、シャウトモンの熱さで半分以上は帳消しにしてくれましたけど。


・シャッコウモン

 選挙管理委員でしたか。これは予想外でした。かろうじて「新しい仲間」には近いですが。
 ある意味もっと予想外だったのは、その上でルーチェモンの悪人フラグを叩き折ったことですけど。
 ここまでやっといて悪玉でしたなんてやられちゃ、もうどうしようもありません。

 彼(?)のような立場はたいてい、お前はいったいどういう審美眼をしてるのかと視聴者に呆れられがちです。
 しかし今回に限っては、とても責める気になれません。描写的にも99%隙が無かったですし、
 何より私自身がルーチェモンを信じたかったので。トホホ。

 声は丸山女史の掛け持ちですかね。同行しても特に問題はなさそう。
 見る目をもっと養うとか、理由はいくらでもつけられます。


・スラッシュエンジェモン

 ものすごい勢いで善玉化しています。まるで憑き物が落ちたかのよう。
 自分でもそう言ってるので、ひょっとすると何かされて……自分でも気づかないうちに暴走してたのでしょうか。
 ルーチェモンがというより、リリスモンが仕込んどいたのかもしれませんな。

 こうなると、事が終わったのちのヘブンゾーンはふたたび彼が治めることになりそうです。
 今の彼であれば、たぶん大丈夫でしょう。


・ルーチェモン

 結論から言って、とてもガッカリしました。
 予想を越えるものを見せてくれなかった、という脚本的な意味じゃありません。
 前回を踏まえれば、ああ持ってゆくのは自然とさえ言えます。でないと確かに話が動きませんもの。

 それでも彼には期待していました。信じたかったです。
 どうせ過去の常識は通用しないんだから、たまには善玉を通すルーチェモンがいてもいいじゃないかと。
 外面はいいんですし、やろうと思えばできない事はなかったと思うんですよね。

 そのぐらい、彼の演技は完璧でした。実は前回に1カットだけ「ん?」があったんですけどね。
 「いやいやいや、疑っちゃいけないよね、うん。噂も出てるけど信じないもんね」と振り払ってました。
 公式にネタバレが出てたとも聞いたので、見た人からすれば噴飯ものでしょうけど。

 その上今回においてすら「その場にいないので迎えに行ったけど普通に出てきた」および
 「シャッコウモンが何か言いにきたと思ったらお墨付きをくれた」という二重の極みが入りましたからね。
 それを、あの邪笑が全部ご破算にしてくれたわけです。ええ、わたしゃ泣きましたよ。
 君は結局、どこまで行っても悪党にしかなれんのですね。その設定とふたつの姿を持つがゆえに。

 しかもルーチェモンのくせにリリスモンの子飼いという、さらに泣けてくる設定です。プライドはどこだ。
 まあ実績を考えれば、極めて有能な工作員であることは疑いないんですけど……それでも、ねぇ。
 結局、戦闘力や格付けからいっても過去最低のルーチェモンです。これがホントのフォールダウン。
 三条節もあって、悪辣さだけは清々しいまでに高レベルでしたが。雰囲気もちょっとだけ若いですね。

 ラストでは暴走してサタンモードになってしまうので、これで実質さようならです。
 いい夢見させてもらいました。けどな、そりゃ夢だ。ただの夢なんだよ……(声:大の兄貴)


・リリスモン

 ちょっとだけ登場。いつ戻っていたのか、城からヘブンゾーンをモニタリングしてました。
 どーゆー経緯でルーチェモンを配下にできたのか気になる。かなり気になる。
 潜入させるぐらいですから、そのへんの部下よりはよっぽどその腕を買っていたのでしょうけど。

 褒め方が「えらいわよ」と部下っちゅーより側小姓向けっぽいのもなんか気になりました。
 いったい両者の関係は……


・ネネ

 こっちは上の偽善者と真逆に、黒い描写を先行させることで「実は…」とする流れですかね。
 それでもルーチェモンがコードクラウンを持ち帰ってしまえばヘブンゾーンの民は全滅しかねないわけで、
 阻止できそうなクロスハートを一時とはいえ封じ込めた以上、その悪行に今のところ釈明材料がなかったりします。
 うーん、黒い娘だ……

 コードクラウンを無視してでも闇を手に入れて、いったい何をしようというんでしょうね。
 もしかして、コードクラウンにはあまり興味が無いんでしょうか? だとしても、一体どうして?
 封印を解く呪文をなぜか知っていたことといい、謎が増えまくってる気がします。

 ホントに何者なんでしょう、この娘さん。


・ダークナイトモン

 本編初登場。合体状態がデフォなのか、いきなりこの姿で登場しました。
 デジクロスしっぱなしってことは、それだけ彼らの能力が高いって証左かもしれません。

 しかも高い攻撃力を誇りながら精密な一撃も可能で、シャウトモンだけを一発でダウンさせるなど
 なかなか底知れない実力の持ち主。状況が変わったので、まだその真価を見せることもないでしょう。
 いずれにせよ、クロスハートにとって最も手強いライバルの一人であることに変わりはありません。
 少なくとも今は。

 立ち居振る舞いは騎士らしく堂々としたもので、あの一閃も不意打ちとはいえ見事な手際。
 でも悪役度はネネより幾分高いですね。目的のためなら多少の犠牲には気を払わないように見えます。
 流れから見て、ネネを導いたのも封印の呪文を知っていたのも彼かもしれません。

 声は小杉十郎太氏です。こういう役で見るのは久し振りかも。いや「ゴセイジャー」があったな。
 でも担当キャラのロボゴーグは小杉氏の声をまるで活かせてないダメキャラなので、こっちで補填しますか。


・スパロウモン

 今回は基本的にネネの足役。しかしラストの状況を受け、次で一気に補填されるでしょう。
 そのままタイキのもとに出向するシナリオの芽も出てきました。なるほど、こう繋げますか。
 シャウトモンとは早くもケンカ友達になりそうな雰囲気を醸し出してますが、果たして……



★名(迷)セリフ


「知らなかったぜ…! キングになるのに勉強が必要だったなんて…!
 オレならここの本1ページ読んだだけで、確実に寝ちまうよ! あいつ、えれぇなぁ……!」(シャウトモン)


 一部略。そんな自信たっぷりに断言されても困ります。
 やや抽象的だったルーチェモンへのリスペクトが、具体的に形を取った瞬間ですね。株はまさに青天井状態。


「じゃあ、今までのは全部芝居だったってのか!?
 みんなのリーダーになるために、あんなに頑張ってたのも……全部!」
「この野郎…! お前のこと、すげえヤツだって…! 尊敬できるヤツだって思ってたのに!
 このゾーンのみんなだって、そう信じて…お前にハートをくれたのに!」(シャウトモン)


 そして直滑降。下り最速とはこのことです。ルーチェモン、君はどこに堕ちたい。
 大輔を思い出したのはこの場面ですね。もっとも、糾弾の対象となった賢がその後どうなったかは周知の通り。
 こっちがどうなるかは…とりあえず、考えるまでもないでしょうね。


「見てのとおり、ただの貴族さ…」(ダークナイトモン)

 どこが貴族なんだ。

 このセリフだけで三条脚本だと確信してしまいましたが、その通りでした。
 稲田絵とコマ割で思い浮かべてしまえるぐらい、この言い回しはド直球の三条節だと思います。ツッコミ所も含めて。
 小杉氏はこういう役をやらせたら滅法ハマるのさ、これがな。


「行かせるわけないだろうが、この偽善野郎め…!」(ドルルモン)

 どういうわけか印象に残ってしまったので、殿堂入り。
 うん、そうだよね……偽善者って、やっぱりこういう奴を言うと思うんですよね。信じたかったけど。


「聞きてぇか… 聞きてぇだろうな…! オレがなぜ立ち上がってきたのか!!
 てめぇの言ってることが腹ぁ立ちすぎて! 痛みが吹っ飛んだからだよ!!!」(シャウトモン)


 シャウトモン定番の言い回しであると同時に、これまたものすごい三条節です。
 なんだかわからんけど、とにかく印象に残るんですよね。私的に。


「みんなを犠牲にする王様なんか、絶対にあり得ねえ!
 そんなヤツが一瞬でも支配者になったことが! オレには赦せねえんだぁっ!!!!
」(シャウトモン)


 吼える吼える。後半は完全にシャウトモンの独壇場ですね。不足気味だったシャウトモン分が一気に補充されましたよ。
 と同時に、彼の王としてのあり方が補強された瞬間でもあります。何かガッシュっぽくもなってきた。




★次回予告

 いよいよX5が登場。X4Bも飛べるようですが、空ならばやはりこちらの方が上でしょう。
 敵はサタンモードだし、さすがに手強そうです。ダークナイトモンの動向も気になりますが、出てこれんのかなあ。