奇跡のデジクロス、シャウトモンX5飛ぶ!

 脚本:木原大輔 絵コンテ・演出:土田豊 作画監督:高橋晃
★あらすじ

 空中庭園の暗黒球に取り込まれ、サタンモードとなり暴走を始めたルーチェモン。
 抱えたままの暗黒球の中には、巻き込まれたネネが……

 これは放っておけないと、ネネを救おうとするタイキ、そしてクロスハート。
 しかし闇の力を破壊エネルギーとして乱射してくる上、空を飛んでいるルーチェモンへは近づくこともままなりません。
 スパロウモンもまたネネのために奮闘するのですが、返り討ちに遭って気絶してしまいました。
 やがて、ルーチェモンは住民を苛む闇をも吸収してさらなるパワーアップを始めます。

 いったん退却し、作戦を練り直すタイキたち。目を覚ましたスパロウモンにも協力を持ちかけるのですが、
 ネネのみをジェネラルとして慕うスパロウモンは頑に受け入れようとしません。
 そして、今やゾーン自体のデータを食らいはじめたルーチェモンはやはり生半可な策で制せる相手ではありませんでした。
 頼みのベルゼブモンも翼をやられてしまい、万策つきたかと思われたそのとき、スパロウモンが再びネネ救出に奮闘。
 決死の一念が暗黒球に穴をあけることには成功するものの、ついに捉えられてしまいます。

 諦めかけたスパロウモンを救ったのは、デジメモリの力を借りて馳せ参じたタイキとX4でした。
 放り出されたネネを、スパロウモンが無事に救出。互いの心が初めて通じ合ったとき、奇跡のデジクロスが生まれます。
 ついにX5となり、高速飛行能力を得たシャウトモンがルーチェモンを打ち倒すのでした。

 かくてゾーンは救われ、皆の祝福を受けるクロスハート。が、そこにトワイライトの姿はありませんでした。
 闇の力を取り込み、不気味に笑うダークナイトモン。ネネが秘めるという闇とは……?



★全体印象

 17話です。脚本の木原大輔氏は、またまた初登場の名前。鬼太郎で書いていたことしかわかりません。
 しかし経歴と初参加というハンデをあまり感じさせない、優等生な仕事ぶりでした。土田氏の安定した演出がカバー。
 作監の高橋氏は三度目ですね。全体的にはやや柔らかめの絵です。

 今回のメインはほぼスパロウモン。それをクロスハートが全力でフォローすることにより、デジクロスへ繋がります。
 かなりドラスティックに心理が動いた展開ですが、タイキの人となりが示され続けたこれまでの積み重ねと、
 ネネへの一念が岩をも通すほどに強いスパロウモンの描写が畳み掛けられることでうまい具合に魅せていますね。
 言うなれば、ネネが媒介となって生まれたデジクロスとも言えます。

 そしてこの勝利がクロスハートの王道を証明し、またダークナイトモンの冷酷をも示してみせていました。
 トワイライトの意図がわからなかったのは残念ですが、いずれは示してくれるでしょう。

 ここ最近はいい意味で展開が読めず、毎回楽しませてもらえてます。
 今回のヘブンゾーン篇もルーチェモンの処遇に一喜一憂し、突然現れたダークナイトモンに予想を撹乱され、
 最後にスパロウモンとX5が意外なほど熱く締めてくれたりなど、次々と変わる状況を楽しむことができました。
 レイクゾーンを端緒に鰻登りで面白くなっています。この勢いで最後まで突っ走ってほしいものですね。

 しかし、今回も脚本が違うのか…
 1ゾーンにつき脚本ひとりという体制は、どうやら完全に崩れつつあるようですね。
 残り話数がどれだけあるかはわかりませんが、どっかでまた話数調整もしてきそうです。総集編もありですな。
 



★OPと挿入歌

 OPは前フリがなくなり、最後のシメもちょっと短くなった感じ。
 挿入歌もX4Bに続き、新たなものが採用されています。ナンバーが変わるほどの強化を盛り上げていました。




★各キャラ&みどころ

・タイキ

 相手が強すぎるため、作戦もなかなか功を奏しませんでしたが後半で全部取り返します。
 バアルモンの時といい、彼がああいう人間だということは視聴者を含め、皆わかっているので今さらという感じ。
 それが大抵の場合においてよい結果を生むということも、私たちはすでに知っているはずです。

 それにしても、一体どうしてパタモンのデジメモリの効果がわかったんでしょうか。
 リボルモンが説明書でも持ってたのかな?


・アカリ&ゼンジロウ

 今回もこれという出番はありません。驚き役としては充分に機能しています。
 ゼンジロウの方だけは妙に目立ってますが、これは岸尾氏の功績というやつですね。

 つうか前半でゼンジロウだけ置いてかれたのは何故なんでしょう。
 定員オーバーか、はたまた住民への押さえ役か。シャッコウモンと二人じゃキツそうですが。


・クロスハートの仲間たち

 前回とうって変わり、シャウトモンを含めてスパロウモンへなかば譲る形。
 というか、X5にデジクロスを遂げる直前まではあんまりいいところがありません。

 単体での活躍においては、最も能力の高いベルゼブモンがやはり際立っています。
 タイキに直接救われた経緯からか、シャウトモンにも負けないほどジェネラルを信頼してる人物でもありますね。
 ほとんど昨日の今日ということもあり、真っ先にタイキの方針へ賛同したのもさもありなんというところ。
 機動力があり、戦闘力もそれなり以上に高い彼は脚本的にもかなり使いやすい仲間といえるでしょう。

 そんなベルゼブモンの影に隠れ、最近やや埋没気味なのがドルルモン。
 今回は一時的ながら、作戦に異を唱えたことでちょっとだけ存在感を示してました。
 他のメンバーと違い、やや冷静な視点からタイキを観察してる面はあるのかもしれません。

 それにしても、バリスタモンがリスターを作ることができるとは驚きでした。
 ああやって人数分作ってたんだ……便利だな。しかも早ぇ。

 なにげに、キュートモンが救護班として八面六臂な回でもありました。
 物語として回復役を目立たせるのは難しいんですが、いないとものすごく困る役職なんですよね。
 戦闘で役に立つ日は果たして来るのでしょうか。


・スパロウモン

 今回の主役待遇にして殊勲賞。あそこで打開のキッカケを作った奮闘があればこそ、タイキの叫びが活きます。
 なんにもできずにただ助けられるままなら、逆にネネへの一念は伝わりにくかったでしょう。

 空中での機動力において、彼(?)に比肩し得るデジモンは少ないでしょうね。
 ベルゼブモンでさえ及びません。ただひとり、サタンモードの弾幕を素で回避できるという設定でした。
 そのかわりサタンモードを倒すほどの決め手には欠けるので、X5の登場となるわけです。

 性格的にはかなり幼いというか、それゆえの黒さもある感じ……というのが第一印象だったんですが、
 ネネのためなら一直線というパートナーぶりや、一度認めた相手には全力で応える素直さを見せてくれました。
 これでだいぶ補完されたと思いますね。

 トワイライトにおいて、スパロウモンは数少ないネネの本当の味方という印象を受けます。
 ダークナイトモンはあの調子だし、モニタモンたちも何を考えてるのか実はぜんぜんわかりません。
 互いを心の支えにしているというセリフもありましたし、両陣営の架け橋になりそうですね。
 最もありそうな流れはネネが何らかの形で囚われてしまい、その救出のためにも協力を申し出るパターンかな。
 今回で下地はできました。リスターを後から回収してたので、アレが鍵になりそうです。

 菊池さんは低音域だと大谷育江さんに近い声質になりますね。憶えておこう。
 というか、ガッシュベルのときの主役代理はこの人でもよかったんじゃないでしょうか。


・シャウトモンX5

 シャウトモンX4にスパロウモンを加え、高速飛行が可能になった姿。
 各部にスパロウモンのパーツが黄金のアクセントを作り、頭飾りも変わりました。ここがキモか。
 X4SではなくX5ということから、能力そのものも大きくパワーアップしている可能性がありますね。
 決めポーズはほとんどスカイガイキング。

 スパロウモン由来のスピードは体積と質量が増しても衰えるどころか、サタンモードを翻弄するまでに上昇。
 また防御力もアップしており、盾でバーガトリアルフレイムをも防ぎ切るほどでした。
 盾そのものからもインパクトレーザーなる技が発射可能で、サタンモードにダメージを与えています。

 必殺のメテオインパクトはその疾さを活かし、突進して顎を打ち抜くという運動エネルギー万歳な技。
 どっかのバーストモードが使ってた技に名前が似てる気がするのはこの際気にしないことにします。
 スターソードの立場がありませんけど、まあ剣を使った技もあるんでしょうね。

 強力さゆえ、今のところは限定条件でのみ登場可能な姿。
 フォレストゾーンにもトワイライトは参戦するので、案外すぐ再登場するかもしれませんが。


・ヘブンゾーンの方々

 シャッコウモンは同行しないのか…ちょっと残念。
 まあルーチェモンがあんなヤツだった以上、スラッシュエンジェモンと二人で何とかせんといけませんし。
 考えてみればいちおう民意も尊重せんといかんので、シャッコウモンの方が大統領をやる流れかな。
 スラッシュエンジェモンが出戻るのもなんかちょっと締まらない気がしてきました。

 やたら濃いキャラだったガーゴモン警部は再登場せず。
 かわりに多数のガーゴモンが出てきており、ヘブンゾーンでは珍しい種族ではないことがわかります。
 スラッシュエンジェモンもワンカットのみの登場で、セリフ無しでした。


・ルーチェモンサタンモード

 闇の力に取り込まれ、破壊の化身となってしまったルーチェモン。
 ネネと違いノリノリで暴れてるので、一瞬たりとも放っとけないとは思ってもらえなかったようです。
 前回のあまりにも完璧な変わり身っぷりが見事に印象を塗り替えました。黒いなぁ。

 しかしまあ、ラスボスを2度もつとめただけありさすがに強い。
 なにげに初披露な気がするディバインアトーンメントは凄まじい弾幕となり、クロスハートのデジモンたちでは
 これを避け切ることができません。ベルゼブモンでさえあの有様です。
 抱える暗黒球に単体で到達できるのはスパロウモンだけですが、当然ながら格闘能力も強烈。
 口からのパーガトリアルフレイムは、近距離でも放つことができます。

 …冷静に考えてもメチャメチャな相手だ。三元士を除けば過去最強のボスですね。ルーチェモンの面目躍如。
 あらゆるデータを喰いまくる貪欲なところも、出ただけでゾーンが滅びそうになるのも設定通りです。
 X5の登場がなかったら、自信ありげだったダークナイトモンら以外は全滅していたかもしれません。

 ですから、そんな彼を制したのはスパロウモンの想いと、クロスハートの王道ということになります。
 闇を打ち払うものが何なのか、はからずも再び証明されたことになりますね。


・ネネ

 今回のヒロイン役。
 正体不明でミステリアスな印象が先行してましたが、ちゃんとパートナーシップも持ってる事がわかりました。
 意外というべきか、キリハより先に新しい側面をハッキリした形で見せたことになります。

 タイキとしてもいろいろ教えてもらった恩があるし、どんな意図があるんだろうと疑問は抱いていても
 キリハと違って警戒、というほど露骨な感情は見せたことがないはず。助けようと考えても不自然ではありません。
 ルーチェモンと違い、何か理由があってあんなことをしたのではないかと考えていてもおかしくはないです。
 まあ、タイキならアレがキリハでも放っとかなかったでしょうけどね。

 ただ彼女には何か目的があり、それゆえにダークナイトモンを仲間にしているようです。
 あの場に顔を見せなかったのも、タイキに礼を言う描写がなかったのも両陣営の溝を示していました。
 あるいはダークナイトモンこそ、彼女をジェネラルとして引っ張り込んだ張本人なのかもしれません。
 彼女の抱える何かに自分と合致するものを感じたからこそ、あんな行動に出たのでしょうし。

 過去に何があったんでしょうね、彼女。ろくな想像が湧いてきません。


・ダークナイトモン

 一連の黒幕といっても過言ではない人物。
 目的はいまだもって全く不明ですが、腹の裡がネネ以上に真っ黒なのは疑う余地がありません。
 まんまとバグラ軍をダシに使ったことといい、ラスボス候補に挙げてもいいんじゃないかってくらいの黒さです。
 ネネに言葉だけ優しい声をかけるあたりがまた黒い。その黒さがどこを向いているのか、気にはなりますが。

 いずれにせよ、ネネはやがて彼に裏切られるかもしれません。
 でなければ全て覚悟の上で共に目的へ邁進するか、そのどちらかでしょう。
 目的を越えて真の相棒になる線は超大穴でしょうね。うまく見せてくれさえすれば、それでも面白そうですけど。

 小杉氏の猫撫で声がいい感じです。




★名(迷)セリフ

「コードクラウンなんて、もうどうでもいいです……このチカラガアレバ!!」(ルーチェモン)

 あ、壊れた。
 暴走モード、という今回の設定。よく考えてみたら、フロンティア版も半分は似たようなものでした。
 違いはルーチェモンラルバの有無ですね。それが無い今回は、もはや破壊の化身でしかないということです。


「オレは従うぞ!」(ベルゼブモン)

 ネネを救う。クロスハートの意志を決定づけた一言です。
 茨の道ですが、そこに真の戦士を見た彼なら当然の答えですね。そして、結局はこれが正しかったことになります。
 このパターンが通じない展開は出てくるんでしょうか。見たいような、決して見たくないような。


「…まったく。変わったジェネラルだ」(ドルルモン)

 ベルゼブモンの発言を受けて。
 自分もまたその変わり者に救われた一人だと思い出したのでしょう。それが後に繋がる何かを作ってきたことも。
 過去のセリフ通り、一度クロスハートを離れる展開になったとしても驚きませんよ。それも後に繋がるでしょう。
 タイキ側の反応で全てが決まる、結構リスキーなパターンですけど。

 直後でシャウトモンの反応を軽く流してたのは、サンドゾーンでやったばかりだから妥当な流れですね。
 さすがに最初のリアクションは「はぁ!?」って感じでしたけど。


「なんて弾幕だ…! これをスパロウモンは避けていたのか…!」(ベルゼブモン)

 スパロウモンが機動性において彼を上回ることを証明するセリフです。後への仕込みでもありますね。
 純粋魔人ブウと戦ったときのベジータを思い出したのは秘密。


「ちょっと、イヤな夢を見ただけ……」(ネネ)

 あんだけの闇に呑まれてもあの程度で済むほどの心の闇って、どれほどのもんなんでしょう。
 嫌な想像しか浮かんできません。これで「え? そんな事で?」な過去だったらどうしましょうか。
 その意味で、ハードルの上がった回でもあります。


「そう簡単に死にはしないさ…まあ、ゆっくり見ていようじゃないか。球の変化をね…」(ダークナイトモン)

 暗黒球に囚われたネネへの見解。
 見方を変えれば信頼のセリフですが、ダークナイトモンが言うのでは全然違う意味に聞こえてしまいます。
 いや、ある意味では信頼なのかもしれません。ネネの抱える負の感情とやらを知っているがゆえの。
 スパロウモンとは、その点で考え方に大きなズレがあるようです。 


「諦めるな!!!」(タイキ)

 誰かのため、最大限の努力をしている者へ贈られるヒーローの言葉です。
 X4の一刀がスパロウモンの運命を変え、ネネの運命を変え、クロスハートの運命さえも変えました。
 運命を切り開く者こそがヒーロー。タイミングも完璧です。


「ネネ…!」(スパロウモン)
「…うん…!」(ネネ)


 以心伝心。スパロウモンがこの瞬間何を考えているか、ネネにはたぶんすぐに理解できたと思います。
 ちょっとだけ間が空いたのは迷いからでしょうか。スパロウモンがタイキのチームとデジクロスしちゃうのが
 少し嫌だったのか、合体そのものが本当に可能なのかわからなかったのか、いろいろ含みは想像できます。


「タイキ! おまえのネネを助けたいって言葉、嘘じゃなかった!」(スパロウモン)
「スパロウモン! 届いたぜ、お前の心!」(タイキ)

 誰かのために。陣営や考え方は異なれど、それだけは確かに相通じるものがある。
 スパロウモンの想いがタイキに届いた瞬間です。今この時、心と心は垣根を越えました。
 それがデジクロスという力にも凌駕という祝福を与えたのは、次の刹那のことです。


「…望むところだ!」(タイキ)

 シャッコウモンの激励と忠告を受けて。意外とこういう場面は無かったので、ひとつの節目かもしれません。
 アカリの安請け合い云々ってセリフで「Vテイマー01」を思い出したりも。
 そういや、あっちのタイチは実質ゼロとふたりだけで戦い抜いたんでしたね。それはそれで凄い。


「君が無事でなによりだよ…あまり心配させないでくれたまえ。フフフ……」(ダークナイトモン)

 黒い、黒いぞダークナイトモン。
 スパロウモンがネネの手を握るカットでは、まるで借金のカタに働かされているメイドとその親友に見えました。
 なんでそんな風に見えたのか自分でもよくわかりません。こいつが貴族なんて名乗ったからかな。



★次回予告

 次はフォレストゾーン。
 スティングモン登場とは、またまた懐かしい顔です。しかも大密林の勇者という破格の扱い。
 森の中ならベルゼブモンでさえ敵わないように見えますね。クロスウォーズならではの展開です。
 リリモンに続いてライラモンも登場。セイバーズ時代よりも可愛らしさが強調されてますね。
 なにげに青アトラーも初登場だったり…

 後はタクティモンですか。キリハ共々そろそろ点数を稼がないとヤバいので、活躍を期待しましょう。