スティングモン、デジモン大密林の勇者!

 脚本:三条陸 演出:池田洋子 作画監督:大西陽一
★あらすじ

 次なる舞台、フォレストゾーンにやってきたタイキたち。

 ところが、いきなり上空に放り出されたクロスハートはバラバラに逸れてしまいます。
 アカリとゼンジロウ、それにキュートモンを守って密林をゆくベルゼブモンを何者かが襲いました。
 大密林の勇者を名乗るスティングモンです。戦いに巻き込まれたアカリたちを救ったのは、ライラモンでした。
 アカリたちが敵ではないと知ったスティングモンは、密林の聖地へと彼女たちを導き入れます。

 タイキたちのもとには、バグラ軍の手勢が。ドルルモンが捜索に出ていたため、デジクロスできません。
 現状出せるだけの戦力で迎え撃ったものの、タクティモンまでが現れて苦戦を強いられます。
 そこへ、ようやくベルゼブモンと合流したドルルモンが戻ってきました。X4Bが登場し、タクティモンと激突。
 その力に驚嘆したタクティモンは態勢を整えるべく、ゾーンを撤退していきました。

 ドルルモンからアカリたちの居場所を聞いて駆けつけるタイキ。しかしそこにはキリハと、そしてネネの姿が。
 バグラ軍や彼女たちの狙いは聖地に眠るコードクラウンと、そして最強のデジモンの力だったのです。
 スティングモンらを拷問してでもその場所を聞き出そうとするネネと、弱い者を嬲る趣味はないとそれを拒否する
 キリハとの間で意見が割れ、ダークナイトモンがメタルグレイモンを攻撃しはじめていました。

 錯綜した状況の中、敗れたスティングモンの戦士としての意志を聖地が受け入れ、彼を呼び寄せます。
 その後を追うダークナイトモン。このまま、最強デジモンとコードクラウンは彼の手に渡るのでしょうか。
 そして、ダークナイトモンに連れてゆかれたネネは……?
 


★全体印象

 18話です。大密林は「ジャングル」と読みます。
 脚本は16話に続いて三条氏。演出の池田洋子氏は初めて見る名ですが、どうやら「怪談レストラン」「あさたろう」
 に参加していたようですね。作監が大西氏なのは、タクティモン絡みでしょうか。

 前哨戦という感じの今回。
 森という環境を活かし、離散という形でデジクロス困難な状況へ持っていって並行的に事態を紡ぎ、
 一本化されるのが最後という内容。奇抜なデジクロスと軽快なセリフ回しは構成ならではの出来映えです。
 アカリとゼンジロウの出番も逸れたことで増えており、ベルゼブモンとの絡みも見られる美味しい事態となりました。
 加えてタクティモンも武人の面を覗かせ、さらなる力を予感させることで株を大幅に上げています。

 一時のことだろうとはいえ、ワリを食っているのがキリハですね。
 ダークナイトモンのことをなんにも知らなかったっぽく見えるばかりか、メタルグレイモンをボコられる始末。
 13話の次がこれだと、少々情けないものがあります。現状じゃネネの方が目立ってしまってますし。
 せめて漫画版のように、タイキとの直接対決が一度でもありゃまだ違ったんですが……

 ワリを食っているといえば、表題のわりにスティングモンもあんまり目立ってません。
 話を動かすのに必要な後半のバトルシーンもほぼ端折られており、場面が変わったらもうやられてる有様。
 シャウトモンX4Bとタクティモンに比重を置き、あとは削ってる状態です。これをどう見るかは人それぞれですが…
 演出も全体的には良いんですけど、なんか薄味でした。

 とまあ細かい疑問や不満はあるものの、最近のクロスウォーズらしく概ね楽しんで見られる一篇です。
 状況がバタバタと変わるので、それだけでも目は離せません。



★OP

 もとに戻ってました。先週のは…尺をちょっとでも確保するため?



★各キャラ&みどころ


・タイキ

 ネネに対し「ほっとけないスイッチ」が絶賛発動中の模様。
 ダークナイトモンに怪しげなものを予感したり、土壇場で新デジクロスを思いついたりと彼らしさが全開です。
 アカリやゼンジロウの分だけ出番は減ってるはずなんですが、それを感じさせないあたりはさすがというべきかも。
 三条氏の脚本というより、タイキというキャラの存在感という意味で。

 ブルーフレアとトワイライトの諍いを仲裁する形になったのも、実にさもありなんという感じです。
 状況を確認する前にとにかく止めたほうがいい、となってしまうんでしょうからね。彼ならば。


・アカリ

 ひさびさに喋りまくり。それにしても、タイキとは別の意味でいろいろとライバルの多い娘です。
 バステモンに続いてネネまでとは、気の休まる暇もないかもしれません。

 ゼンジロウとはギャグ面で良いコンビを形成してますし、今回も例に漏れずなんですが、
 今回のアレは果たしてコンビ以上へのフラグには繋がるんでしょうか。どちらとも言えません。
 世の中、何がキッカケになるかわかりませんし……それに変な話ですが、彼女の立ち位置は自分で思ってるより
 遥かに安定しています。少しくらいは波乱が立ってもおかしくはない、かもしれません。

 まあ、無い気がするけど……


・ゼンジロウ

 明確なギャグシーン以外ではマトモに喋る場面が多いので、案外フツーに目立ってる印象です。
 岸尾氏のアドリブもなんか抑えめという感じ。中の人本人は相変わらず大車輪ですけれど。
 そのせいで岸尾氏のキャラを岸尾氏のキャラが助けようとするという、愉快なことになっていますし。

 それにしても、こうギャグキャラとして有能だとホントは実務でも有能だって忘れそうになります。
 アカリに大幅な補完があったことだし、彼にもそろそろ何か欲しいですね。


・クロスハートの仲間たち

 今回はドルルモンがギャグ含めてかなり目立っていました。レイクゾーン篇以来の自重っぷりを埋めんばかりです。
 バグラ軍の噂はドルルモンに聞け、というパターンが形成されてますね。ベルゼブモンとは違って正規軍だったし、
 そのへんの情報が入ってきやすい立場だったのでしょう。隊長格でしたからね。
 一連がタクティモンの登場と無関係じゃないことは、議論を待つまでもないところでしょう。
 キュートモンへの好き好き光線も増幅されてたのはなんですが、リボルモンとはいいコンビになりそう。

 後半のバトルではX4Bに加え、繋ぎとはいえ久々にX2が登場。
 すっかり予備戦力扱いですが、それでも多少の雑魚ならなんとかなるようですね。今回は相手が悪かったけど。
 他にナイトモンとポーンチェスモンズも出てるんですが、こっちはセリフ無しです。いつのまにかいないし。

 ベルゼブモンは飛べることもあって、相変わらず非常に便利なキャラです。
 アカリやゼンジロウと話す機会をもらえたし、ギャグもこなして幅が広がりつつある感じ。
 単体でもかなり戦えるのが大きいんですよね。ボス格以外とならだいたい渡りあえる汎用性ですし。
 弱体化してるといえばしてるんですけど、強キャラメンバーに変わりはありません。


・スティングモン

 かつてあの一乗寺賢のパートナーとして戦った伝説のデジモンです。
 その活躍に関しては、今さら語るまでもないでしょう。10年ぶりの出演です。10年か……一昔だな。

 今回の役割は、フォレストゾーンの勇者。今までほぼ一人で聖地・雄叫びの森を守っていたそうです。
 その実力は確かにたいしたもので、ベルゼブモンともかなり渡りあうほどでした。
 さすがに予告で受けた印象のように、圧倒するとまではいってませんが……
 アカリとゼンジロウの危機というハンデがなければ、最終的にはベルゼブモンに分がありそう。

 そんな具合ですから、ボス級であるメタルグレイモンには全然歯が立っていません。
 上に書いたとおり、やられシーンすら出してもらえない状態。ここは出来れば欲しかったところ。
 比重をX4B対タクティモンへ置いた以上、仕方ないことかもしれませんが……

 人のよさそうな声は、織田優成氏によるもの。「ガイキング」でケインの役だった人です。納得。
 つまり、前半のアレはノーザ対ケインだったわけだ。もしかして三条氏のちょっとしたお遊び?


・ライラモン

 言わずと知れたセイバーズのメイン格。今回は(自称)スティングモンの恋人として登場です。
 花に虫というわかりやすい組み合わせですな。おまけにどっちも準主人公格ときた。

 相方同様にちょっと思い込みの激しい性格で、アカリとゼンジロウを勝手に恋人同士とみなしてました。
 もっとも、そのおかげで助かったのですから世の中何が作用するかわかりませんな。
 バトル面では最初から期待してなかったので、あんなもんだとは思います。
 なぜかスティングモンより目立つ扱いでしたけど。

 声は笠原留美氏。「地獄先生ぬ〜べ〜」の郷子や「To Heart」の宮内レミィと、金髪を連想する人です。
 前作と違って凛々しいというより可愛らしさを強調した演技ですね。


・フォレストゾーンのみなさん

 大型の昆虫型がうじゃうじゃしてます。タイキたちの側を通って行ったのは明らかにスナイモンですね。
 アトラーカブテリモン(赤)の姿もありました。青はバグラ軍側についたとか、そういう事情があるのでしょうか。
 他にウッドモンやクネモン、コクワモンの姿も確認できます。


・タクティモン

 ひさびさに前線へ出陣。
 マグマゾーンではなんか小者っぽく見えましたが、正面から戦うことで武人アピールをなし、一気に株を上げてます。
 万全ではない状態で戦うことを避け、一度退くあたりはある意味で完璧主義者らしいところ。
 結果だけではなく過程を楽しむところも出してきており、このあたりは原作の描写とも合致しますね。

 戦術を重視するゆえか、戦力差を鑑みて部下の失態を大目に見る面もありました(まあ、勘違いですけど)。
 部下を駒として見ているのは確かですが、だからこそ気分だけで減らすのは主義に反するのでしょう。
 もっとも、吹っ飛ばされてきた駒は障害物扱いして憚らないようですけど。

 やはり正統派悪役ですね。バグラ軍の重鎮として、今後も存在感を出してくれるでしょう。


・リリスモン

 ヘブンゾーン篇であんまり出なかったと思ったら、いつのまにか新デジモンをペットに迎えていました。
 なんかもう、いろんな意味ですっかりイロモノ系の人です。卑劣で残忍、そのうえヨゴレまで。
 キャラはものすごく立ってきてますが、まさかこんな立ち方をするとはファンも思わなかったことでしょう。


・?モン

 もとは名前公募中のデジモンで、リリスモンのペット的存在。よりによってリリスモンかと思う反面、
 よく考えてみたらこれ以上のポジションは無いかもしれない扱いとなりました。
 しかも、声はなんと菊池正美氏。氏はこれで、デジモンシリーズ皆勤となりました。素晴らしい。
 まあ、さすがに前作や前々作ほどは目立てないでしょうけど。

 見かけはアレですが跳ぶときに妙なフィールド然を出したり、侮れない雰囲気。
 いったいどんな暗躍をするのでしょうか。


・バグラ軍のみなさん

 ちょっとだけ再登場したブラストモン、その部下のイビルモン、アトラーカブテリモン、コンゴウモンと
 今回は脇も充実してます。赤じゃないとはいえ、アトラーの扱いはいささか悲しすぎますが。
 それ言ったら、この状況で出してさえもらえないヘラクルはもっと悲惨ですけど。なぜ出ねぇ。
 バンダイと東映はヘラクルカブテリモンになんか恨みでもあるんでしょうか。

 コンゴウモンは短い中に中間管理職の悲哀を滲ませた、やけに印象的なキャラです。
 せっかくタクティモンにお目こぼししてもらったと思ったらキリハとネネにフルボッコされたり、不運でした。
 しかもなぜかこの扱いで稲田徹氏。どういうことだ、トロンベ!


・キリハ&ブルーフレア

 今回いちばん貧乏籤を引いたかもしれない方々。
 (語弊はありますが)弱いものイジメをやらされたあげく、ダークナイトモンにボコられてます。
 タイキとの対決が無いままこれだと、ライバルとしては現状ダークナイトモンの方が格上になっちゃった印象。
 次回はなし崩しで共闘に至るようですし……それとも、アニメ版についてはそういう路線なんでしょうか。
 
 もっとも、より強い力を渇望するためには敗北も必要な因子。
 デッカードラモン絡みがどうなるかわかりませんし、挽回のための溜めと見ることもできるかもしれません。


・ネネ&トワイライト

 ミステリアスさが影をひそめ、すっかり「目的のために何かを我慢してる人」になりつつあるネネ。
 スパロウモンも物騒なことを言っていた初登場時の印象が緩和され、スティングモンらに同情的でした。
 まあネネの明確な敵には容赦なくても、そうとは言い切れぬ相手には手心を加える性質なのかもしれませんな。

 そして、あまりにも黒すぎるダークナイトモン。
 何か大きな目的があり、そのためにネネを利用していることがますます強調されてきました。
 必要とあれば共闘してるはずのキリハたちまで攻撃したり、容赦というものがありません。何を狙ってるのでしょう。
 現時点ではデッカードラモンですが、その先に何を見ているのかな。




★名(迷)セリフ


「絶対下見んな……!」(タイキ)

 いいか、押すなよ? 絶対押すなよ? と言われてついやってしまうのはギャグ的お約束にして人間の心理。
 そして高所だと認識した途端に重力が発生するのもお約束。
 なぜか同時に落ちてないあたりはものすごくツッコミたいんですが、演出と思うしかありません。あと話の都合。


「とっさにドリルでヘリコプターか……
 むう……しかしこの恰好……キュートモンに見られなくてよかったぜ…」(ドルルモン)


 思わず噴いてしまった場面。予測は一瞬前についたんですが、回避できませんでした。
 キュートモンは彼のこの姿を見てどうするのでしょう。
 泣くでしょうか。それとも一週間ぐらい思い出し笑いし続けるのでしょうか。なんか後者な気がします。


「40点満点だから問題なーし!」(ブラストモン)

 いっぱしに批評をする?モンに。ポジティブにも程がある。
 たったこれだけの出番でもミョーに印象を残します。再出戦が楽しみだ。いろんな意味で。


「気にするな。弱い者を守るのは、戦士の仕事だ」(ベルゼブモン)

 ちょっぴり直裁すぎる言い方ですが、彼の前世を考えれば納得のいく言葉でもあります。
 言われた本人のアカリは特に気にしてる風でもありませんでしたが、直後にそれどころじゃない状態へ陥ることに。


「あーら、見てわからないの? この二人が、まごうことなき……ラブラブカップルだからよ!」(ライラモン)

 なぜ侵入者を助けるのか、とスティングモンに問われて。
 こんな理由で誰かを助けたキャラは人・人外を問わず、わりと初めて見ました。


「いまさら言えやしない…ほぼスティングモン一人に苦戦していたなんて……」(コンゴウモン)

 めずらしく脇キャラからのエントリー。悲哀が滲み出ているセリフです。言えないよなあ、そりゃ。
 これで保身を得たと思いきや結局ボコられてしまうので、どこまでも運のないヤツでした。


「クロスハートか…わかった、覚えよう。フフフ……ハハハハ!」(タクティモン)

 去り際、X4Bのチーム名宣言を受けて。
 タクティモンのセリフは印象的なものばかりだったんですが、やはりこれを挙げときましょう。
 戦いの前の「さ、始めようか」の発音も好きです。


「断る。オレが戦うのは強い者だけ。負けた者には興味がない」(キリハ)

 スティングモンらの拷問を持ちかけるネネに。別に情けで言ってるわけじゃないのがポイント。
 より上だけを目指す彼にとっては、ある種当然な答えかもしれません。力が行動原理だし。
 それにしても、相変わらず真っ直ぐというか……駆け引きや腹芸ができない子ですね。
 根が熱血漢だからなんでしょうけど。


「強い者にしか興味がないというのなら、力で屈服させられれば満足かな…?」(ダークナイトモン)

 勝手にリロードしてメタルグレイモンをボコった時のセリフです。
 力が正義というのなら、より強い力にぶちのめされれば満足なのか……「ダイの大冒険」にもあったセリフです。
 三条氏自身によるセルフパロディというより、これが氏のテーマのひとつなのかもしれません。

 それにしても、ネネを「私のネネ」とか言ったりこの暗黒騎士、ノリノリである。
 キリハ組をボコってる時もえらく楽しそうです。



★次回予告

 Vジャンプにも載ってたデッカードラモンが登場。なんか見かけのわりに良いヤツっぽいぞ。
 とりあえずタイキとキリハが利害一致で協力するようですが、タクティモンも剣の封印を解くようですし、予断を許しません。
 果たしてデッカードラモンはどの陣営に……?