伝説のデッカードラモン、動く!

 脚本:三条陸 演出:三塚雅人 作画監督:竹田欣弘
★あらすじ

 伝説のデジモンを手に入れるべく、聖地へ突入してゆくダークナイトモン。
 後を追おうにも、入口は塞がれてしまっています。道を開く方法はただひとつ、愛ある者であることを示すダンスのみ。
 アカリとゼンジロウがほとんどヤケクソで躍っている中、タイキは残されたスパロウモンやキリハに声をかけます。
 果たして、開いた道に突入したのはタイキたちだけではありませんでした。

 ダークナイトモンの前に立ちはだかるシャウトモンX4、そしてキリハのメタルグレイモン。
 が、ダークナイトモンはこの二体とも圧倒的な強さで渡り合います。自在な分離合体に翻弄される2チーム。
 ネネを止めようとするタイキですが、彼女には人間界に戻るという譲れない目的がありました。
 そして、何らかの危険な状態にあるらしい弟の存在が初めて明かされます。

 ならば強くなれ。そう語ったのはキリハでした。何者にも屈しないその心に反応した伝説のデジモン、
 デッカードラモンが彼のもとへ馳せ参じます。ブルーフレアに新戦力が加わった瞬間でした。
 それでも余裕を見せるダークナイトモンは、ネネとともに意外なほどあっさりと撤退してゆきます。

 去り際、ダストゾーンという行き先を示唆して去って行ったネネ。
 これに何らかのサインを受け取ったタイキは、とことんまで彼女を追うことにします。
 回復したスティングモンらにゾーンを任せて移動をはじめたクロスハートでしたが、早くも障害が…
 


★全体印象

 19話です。縦軸が大きく動きました。
 脚本は前回に続いて三条氏。作画の竹田氏は無論、演出の三塚氏も本作においてはもはや鉄板です。
 動きひとつ取ってみても、力の入り具合がわかろうというもの。

 キリハ、そしてネネの過去が断片的ながら明かされた非常に重要な回でもありますね。
 二人とも、どうやら肉親への愛が考え方や行動への動機になっているようです。タイキとは確かに違う。
 そこいらへんの相違は後でじっくり語るとしましょうか。

 ダークナイトモンの異様な強さも心に残りました。
 キリハとタイキ、二人のデジクロスで挑んでも押され気味とは……常軌を逸しています。
 その意味でも、デッカードラモンがキリハのところへ行ったのはバランス的に悪くないでしょう。
 どのみち、タイキにはまだまだ仲間が増えることになるでしょうから。

 それにしてもヘブンゾーンからこっち、ネネのヒロイン度数が倍々に増えていってますね。
 ダークナイトモンがそう簡単に退場するとも思えませんし、どうなるでしょうか。



★各キャラ&みどころ

・タイキ

 デッカードラモンが言っていた通り、彼は「広い愛」を持ってる男なんでしょう。
 信頼を築けるとわかれば、たとえ敵であっても味方に加えてしまう度量の広さが何よりも示しています。
 それでドルルモンやベルゼブモンといった強力なメンバーを仲間にしてきたのですから。

 今回などキリハを煽ったりスパロウモンを誘ったりと、一種の根回しをしてましたし。
 将として考えれば、彼ほどジェネラルに相応しい男はいないかもしれません。
 ただ、デッカードラモンが求めていたものとはちょっと違っていたのかなという印象。そのあたりは後で。

 ダンスから完全逃走したのはまあ、仕方ありません。気持ちはわかる。
 それにある意味、アカリとゼンジロウだからギャグとして成立するわけで……


・アカリ

 ネネへのシンパシーを抱くことになる、彼女にとっても重要な回です。
 ゼンジロウとの踊りは妙に気合の入った演出もあって悲愴感漂うものがあり、それがギャグを呼んでましたが
 後半はテンションが上がってきたのか、何やらノリノリになってました。一時の熱量みたいですけど。
 特に後へ引っ張るような描写もありませんでしたしね。

 つうか上にも書きましたけど、あんなのは逆にゼンジロウとしかできなかったと思われます。
 タイキとやる羽目になったら別の意味でダンスにならない気がするぞ。


・ゼンジロウ

 リアクション大王として日々、磨きをかけ続ける毎日。
 ただし今回はアカリにネネ、キリハと描写が分散してたので、さすがにそこまで目立ってはいません…
 と見せかけて、最後のアレで存在感を見せつけた状態です。そう来ましたか……

 アカリとこれがキッカケで接近したりは…しないんだろうな。ネネのために踊ったようですし。


・クロスハートの仲間たち

 キリハ組とネネの描写に重点が置かれているので、相対的に影が薄くなってる…と思ったらそうでもないです。
 主戦力だけが仲間ではないからこそできるチーム分けやダンスに湧くシーンなど、いろいろ描写されてます。
 流れとしてはサブ気味でも、トータルではライバル達にも負けていません。

 ベルゼブモンは残留組のリーダーを勤めていた感じですね。
 確かにあのメンバーなら、彼が適任でしょう。戦闘力は高いし、戦士としての素養も充分にある。
 X4Bになれないのは難点ですが、そこをキリハかスパロウモンに埋めてもらおうというのがタイキの肚でした。
 結果として片方は無理でしたが、もう片方は読みが当たったことになります。

 最後はベルゼブモン+スターモンズ=メテオキャノンによる全体攻撃で締め。
 状況的に残留組のほうが大変なんじゃないかと思ったら、別にそんなことはありませんでした。


・スティングモン&ライラモン

 残念ながら仲間入りはなし。デッカードラモンに言われたとおり、ゾーンを守らねばなりませんしね。
 たとえコードクラウンがなくても、バグラ軍の脅威までが消えてなくなるわけではありません。

 それ言ったらレイクゾーンはどうなるのという気もしますが、ある意味城がそのまま来てるからなぁ。
 最重要人物であるバステモンがクロスハートと一緒に行動してるんじゃ、今攻める意味はないでしょう。
 バグラ軍とて暇じゃないはずです。

 それにしても、ライラモンのあの思い込みがよもやあんな形で繋がるとは……
 世の中、何がキッカケになるかわからないものですね。
 そしてスティングモンの影が薄かったです。意外と目立たない方でした。今回も特に何もしないし。


・ブルーフレア組

 タイキと初共闘。
 キリハはある意味、完全にタイキに見透かされてます。良くも悪くも生き方が真っ直ぐすぎるからなぁ。
 将というよりは、やっぱり戦士といったほうが近い生き方をしています。

 その彼が実は最も「強い愛」を持つ者だというオチでしたが、あの回想シーンを見るかぎり想像はできます。
 ヘタすっと両親がいないか別に暮らしていて、実質ひとりで生きてきたのかもしれません。
 だから強くなり、何が何でも生きようとした。愛にはぐれ、愛を憎み、愛を求めた。強さは愛だ。
 弱いものいじめはしないという側面も加わった今となっては、全てが愛ゆえの反動に見えてきます。

 …漫画版とはだいぶ印象が違うなあ。
 今回は入れる隙間がなかったのか、メタルグレイモンもあまり喋りませんでしたし。


・デッカードラモン

 彼が求めていたのは、タイキのように仲間が勝手に増える男よりもキリハのような男だったのかもしれません。
 力にこだわるキリハのことですから、生半可なデジモンでは味方に選ぶことがないでしょう。
 そんな彼にこそ自分が必要だと見抜き、あえて彼についたのではないでしょうか。
 別の言い方をすれば「こいつは危なっかしいから、儂がついててやらんと…」といったところかもしれません。

 賢者のような老練な性格のまま行ったので、ブルーフレアの動きにも幅が出ましょう。
 クロスハートとの橋渡し役になったり、キリハに助言を与えたりと戦闘面以外の活躍も期待できます。
 ……あの外見でこの性格とは、まさに意外性の妙ですな。ある意味で三条氏の本領発揮だ。

 声は前回の通り、矢田耕司氏。かの青二プロ創立メンバーの一人でもある大ベテランであり、五老峰の老師です。
 キリハが山羊座のシュラなので、どっちもドラゴン紫龍の関係者ですね。ちなみに紫龍はドルルモン。
 別の見方をするとトランクスとDr.ゲロなので、不倶戴天同士になりますけど。

 実力的にはまだ顔出しというところで、デジクロスもしていません。これからですね。


・トワイライト組

 もはや完全に姫キャラになってしまったネネ。
 峰不二子かなんかのように謎めいたまんま引っ張るのかと思ってたら、意外と早くネタバレしました。
 蓋を開けてみたら単純な理由でしたね。でも、帰る方法がまだ全然わからないので説得力はあります。
 今のところ、彼女が求めている方法しか帰る道はないということになりますからね。

 弟であるという「ユウ」とは、もしかすると一緒にデジタルワールドに喚ばれたのかもしれません。
 そのときにユウがなんらかの事故に巻き込まれ、人間界に帰らないとまずい状況になったとか、そんな感じかな。
 弟をある種助けたのがダークナイトモンで、逆に言えば弟の命はヤツの胸先三寸とか……

 でも、もしネネを呼んだのがダークナイトモンなら彼女を還すことに協力するとは思えません。
 それどころか、帰る方法があるという言葉すら嘘である可能性があります。
 弟が何かの危険に巻き込まれたのもヤツの差し金かもしれませんし……それでも縋らねばならないぐらい、
 彼女にはのっぴきならぬ事情がまだある感じですね。人間界にいたときにも何かあったのかな。

 ピリピリしてるネネに配慮をしたのか、スパロウモンは彼女のフォローに終始していました。
 X5へのデジクロスもネネの許可あってのことだし、今はタイミングが悪いですね。


・ダークナイトモン

 外見だけでなく内面も真っ黒な方。 悪党度ではバグラ軍以上かもしれません。
 いかなる時もクールな態度と圧倒的な強さが、その悪辣を一種のカッコ良さに昇華しています。
 最後まで憎らしいほど余裕たっぷりでしたが、まだ崩す場面ではないのでアレで正解でしょうね。

 ネネが謎から外に出たので、かわりに彼が謎を担う立場となっています。
 目的は何なのか、そのためにネネを呼んだのは何故なのか、何のために闇を集めたりしたのか…
 現状、何もかもが謎だらけです。未知があの底知れぬ強さにも直結してる印象でした。

 本来の姿はスカルナイトモンのようで、クロスオープンすることで複数の敵にも対応できます。
 相方のデッドリーアックスモンともども、その姿でもX4と互角みたいですね。強ぇ。
 ヘブンゾーンの闇もこの強さと無関係ではないのでしょうけど。

 それにしても、デッカードラモンを手に入れたのがキリハなら問題ないってどういう意味なのかな。
 最悪、タイキにさえ渡らなければ良かったということ? だとしても、何故……?
 三条氏のことですから、何らかの答えは用意してると思いますが……


・バグラ軍のみなさん

 三元士の方々は基本的に見てるだけ。タクティモンのみ、着々と次の戦いに備えている描写があります。
 次に戦うときは刀を抜き、本気を見せてくれるでしょう。その時こそ山場になりそうです。

 フォレストゾーン現場では、コンゴウモンが意地を見せてグランクワガーモンを大量に連れてきました。
 だがしかし、戦う場面すらほとんど無いまま全滅の憂き目に遭っています。か、悲しすぎる……
 自己主張だけは強力にこなして消えてゆくコンゴウモンに、お前はガリー・タンかと思わずツッコんでしまいました。
 アトラーカブテリモンも敵味方問わずボコボコ死んでるし、そのへんは心臓に悪いです。ハイ。

 そして結局ヘラクルカブテリモンは出ませんでした。
 タイラントカブテリモンともども、ネタを温存してると思いたいところですが……うぐぐ。



★名(迷)セリフ

「いちいち命令はいらない。私は命令する側だ」
「やれやれ……つまらん歓迎だねぇ…」(ダークナイトモン)


 ネネとダークナイトモンの関係性がよくわかるセリフです。
 クロスハートが心で、ブルーフレアが強さで繋がっているなら、トワイライトはダークナイトモンの圧倒的な悪によって
 ネネをも巻き込み、ひとつに纏められていると言えます。彼を退けぬかぎり、道は開けないでしょう。
 それにしても、いちいちセリフが決まりすぎですねダークナイトモンは。


「「こういう時こそ、ほっとかないでぇーー!」」(アカリ&ゼンジロウ)

 普段さんざっぱら繰り返されてる「ほっとけない」を逆手に取ったギャグです。
 でも誰だってこういう時こそ逃げると思うんだ。許せ、ふたりとも。


「でもさ…やられっぱなしのお前じゃないよな?」(タイキ)

 これに思わず「なにぃ!?」と反応してしまうキリハ。本当にわかりやすい人です。
 しかもこの後まんまと乗せられて増援へ馳せ参じるのですから、まさに計画通り。
 この状況に乗っかって漁父の利を得ようとか、そーゆー事は全然考えてません。あくまで結果論です。

 気のせいか、タイキからすると扱いやすいヤツ待遇なような……キリハの明日はどっちだ。いろんな意味で。


「半端ねぇ恥ずかしさだ…」(ドルルモン)

 愛のダンスを見ながら。
 妙に印象的なセリフです。思いっきり引いた立ち位置と、漫画版を思わせるドルルモンの表情がポイント。


「そんな目で見ないで! …ユウ…!」
「放っといてよ! 関係ないの! 私はただ、ユウと人間界に帰りたいだけなの!
 …それを実現してくれるなら、相手が悪魔だっていい!」(ネネ)


 思わずこんなセリフを口にしたということは、ユウはどことなくタイキに似た雰囲気の少年なのかもしれません。
 そういえば、新しいクロスローダーが出ると噂にチラッと聞いたことがあるんですが…その持ち主だったりして。
 今のところ他に該当者がいないし、可能性はありそうですね。だとすると、果たして敵か味方か。

 ところでお嬢さん、タイキに「放っておいて」はNGワードだと思うよ。完全に逆効果。


「帰りたい…? あたしと、同じ……」(アカリ)

 アカリがネネに共感をおぼえた最初の一瞬といっていい場面。
 未知の存在に等しかった何かが、ようやくただの少女として認識できた瞬間でもあります。
 案外、後半で良好な友達関係を築いたりするかもしれません。希望的観測。


「だったら強くなれ、ネネ! オレがそうなったように…! 強さでしか、悲しみは癒せない!」(キリハ)

 ネネに投げた激励の言葉。いや、これ激励ですよね。どう考えても。
 回想シーンにあったようにこれは彼の実感であり、ネネから得た共感が誘発した言葉でもあります。


「オレは屈しない! デジタルワールドの全てを変える…! オレの力で!」(キリハ)

 恐れず怯まず退かず。戦え最後まで、男なら。勝利を我らに!
 そんなノリで生きてきたキリハだから吐ける、ある種傲慢なセリフです。でも、これが彼の信念なのでしょう。
 そして望む形かどうかはともかく、彼の力がデジタルワールドを変える一翼となることはきっと間違いないと思います。


「憶えておけお前ら! オレの名はコンゴウモン…!」(コンゴウモン)

 て、て、天敗星の……
 ガリー・タンかと思ったら、トロルのイワンだったようです。
 コンゴウモンか……わかった、覚えよう。もう覚えてるけど。10年前に。

 しかしまさか、二連続で同じ脇キャラからエントリーするとは思いませんでした。




★次回予告

 グランドロコモン、トレイルモン、メタルマメモン、ハグルモン、ガーベモン、そしてピノッキモンと、
 懐かしい顔ぶれがまたまた大量に登場します。これだけキャラ資産が多いと、ネタには困りませんね。しかも増え続けてるし。
 そういえば、ピノッキモンがウソを武器に使うのはひょっとしてこれが初めてなんじゃないでしょうか。