スイーツゾーン甘党デジモンバトル!

 脚本:米村正二 演出:三塚雅人(絵コンテ:小村敏明) 作画監督:竹田欣弘
★あらすじ

 半死半生で助けを求めてきた謎の声の正体。それはスイーツゾーンの戦士、スパーダモンでした。
 クロスハートの噂を聞き、バグラ軍に支配された故郷の奪回に助力を請いに来たのです。
 一も二もなく頼みを聞き届けたクロスハートは、さっそくスイーツゾーンへ向かうこととなります。

 かくて訪れた当該地は、超甘党のマタドゥルモンがパティシエのみを城に閉じ込め、スイーツを作らせていました。
 用心深いマタドゥルモンは滅多に姿を現すことがなく、会えるのはパティシエのみだといいます。
 救出作戦のため、タイキたちはアカリをデジタルワールド一のスイーツマスターに仕立て上げて城へ潜入。
 間隙を縫って、裏からネネと緑モニタモンズがパティシエたちの救出にあたります。

 一行を待っていたのは、同じくデジタルワールド一のパティシエを名乗るワルもんざえモンとのスイーツ対決でした。
 軽口から祭り上げられてしまったものの、実はほとんどスイーツを作った経験がないアカリでしたが、
 策略で調理を妨害するワルもんざえモンの悪辣に奮起。間に合わせの食材ながら、どうにかケーキを作りあげます。

 結果、勝利したのは想いを強く込めたアカリ側のケーキでした。
 ネネら別働組によりパティシエたちの救出も成功するのですが、他の住人たちの居場所はようとして知れず。
 姿を現したマタドゥルモンも当然のように情報提供を拒否。ワルもんざえモンらを合体させて差し向けてきます。
 巨大ワルもんざえモンは強敵でしたが、スパーダモンの参戦でX4Sが完成。押し切って勝利しました。
 さらに救出されたスパーダモンの友人・コロナモンから、キュートモンの両親がこの地下にいるらしいとの情報が。

 そのとき、突然マタドゥルモンが大地を割りました。呑み込まれたクロスハートが辿る先は……奈落!



★全体印象

 27話です。3クール目ですね。そろそろ少しずつ大筋が動き始める時期ですが、一発目は箸休めが入りがち。
 今回はその典型であると同時に、恐らくバレンタインデーに引っ掛けたスイーツネタとなっています。

 脚本は昨年以来の米村氏。すっかりクロスウォーズに慣れた感がありますが、後半を盛り上げるのがややヘタ、
 という弱点がかえって浮き彫りになった印象もあります。また突然コードクラウンが出てきたらどうしよう。
 キュートモンの両親にネタ振りをしたのは氏ですから、次回もやっぱり氏が書くのでしょうし……
 あと、氏の回だと印象に残るようなセリフが少ない気がします。回を追うごとにマシになってはいますけど。

 とはいえ演出、そして色を全開にしはじめた作監@竹田氏の力もあって意外とテンポよく見られる一篇です。
 特に戦闘シーンはスピード、作画のパワー、ともに相当のもの。なぜギャグ回でと思ってしまうクオリティでした。
 まあ本作は過去のシリーズよりも回による作画・演出の落差が少ないので、気にするほどのことじゃないのですが。
 作画についてだけ言えば、ほぼオールスターみたいなもんですし……伊藤智子氏など、いない人もいますが。

 一方でゲスト声優に平田広明氏が登場し、コロナモンも初登場するなどファンなら見逃せないファクターもあります。
 平田氏はせっかくなら味方側で出てほしかった気もしますが、この際贅沢は言えないかもしれません。
 さらに次回はキュートモンの物語に急展開。ここで打ち込んできますか。




★各キャラ&みどころ


・タイキ

 米村脚本だとヒラメキの人、という側面がやたら強調されるのですが、ゴーグルを指で撥ね上げる仕草も12話からでした。

 今回の作戦はかなり無茶なのですが、とりあえずギャグ回なので不問となる程度ではあります。
 とにかく前向きに一同を盛り立てたり、ワルもんざえモンに騙されていきり立つシャウトモンを制止して代案へ切り替えたり
 やや脇に回ったぐらいでは相変わらず全く存在感が衰えません。これは誰の脚本でも同じです。


・アカリ

 ……もしかして、料理面ではそれほどハイスペックじゃないんでしょうか。意外な弱点だ。
 でもレシピが頭にちゃんと入っているところをみると、そうとばかりも言えない気がするんですが。
 単に経験がないのがデザート作りだけってことなのかもしれません。そんなことがあり得るのかわかりませんが。
 いや、だって女の子ですよ?

 ともあれ、やたら力の入った作画の影響もあって23話以上に輝いて見えます。
 やってることはギャグなんですが、こういう場面で目立たなきゃあヒロイン、ましてや女房役の名が廃るというものでしょう。


・ゼンジロウ

 脇でギャグを言ってるだけ。そして既に、だけでも別に問題ないキャラに育ちつつあります。
 いると喧しいけど、いなきゃいないで途端に寂しくなるタイプですね。


・ネネ

 裏方が似合う女。ヒロインの華・スイーツ対決だというのに、天井裏で忍者の真似事をしていました。
 しかしながらモニタモンズの隠密力とスパロウモンの機動力もあり、極めて有能な裏方なのも確かだったりします。
 弟捜しはせんでええのとかいらん心配もしたくなりますが、作戦の要を担ったのは確かでしょう。


・クロスハートの仲間たち

 キュートモンが序盤からやけに目立ってると思ったら、後半へのネタ振りでしたか。いかん、すっかり忘れてた。
 それにしても、まさかジャイアン級だったとは……なにげにかなり恐ろしい技じゃないですか、アレ。
 あと、今回初めてキズナオールの技名が出ました。見ても聞いても回復薬みたいな名前だ。わかりやすいけど。

 新顔を除くと出番があるのはメイン格だけですが、いずれにもそれなりのセリフまたは出番が用意されています。
 さすがにこの時期になると、どの脚本も人物をどう動かしたらいいか理解してきている感じですね。
 この作品はキャラが立ってる方ですから、書くほうも割とやりやすいでしょう。

 そんな中、スターモンとピックモンズについては賑やかし専門なところがあるためか、微妙に扱いあぐねてる印象。
 デジクロスのときにも、いつのまにかいるケースが少なくありません。地味ではないんですけども。


・スパーダモン

 スイーツゾーンの戦士という設定。登場経緯も設定もゲームとは全く違います。
 というかアッサリとデジクロスもしたし、別にDS版専用のキャラというわけじゃなかったようですね。
 ゲスト扱いかもしれないので、同行するのかどうかまではまだわかりませんが…

 シャウトモンと似た背格好ですが、素直で且つ勇敢な性格。逆に言えば癖のない性格です。
 マジで本当に癖がないので、仲間になったとしても速攻で空気になる危険すらあります。大丈夫かな。
 声は真田アサミ氏。鉄槌の騎士ヴィータです。突破力の点でかなり納得。喋りが普通すぎて物足りないですが。

 友人がコロナモンなのは、獅子モチーフっぽいところが共通してるためでしょうか。安直といえば安直だ。


・シャウトモンX4S

 X4へさらにスパーダモンがデジクロスし、両腕に武器を装備した超攻撃重視の形態。
 なかなかの強敵といえる巨大ワルもんざえモンを正面から捩じ伏せ、天高く吹っ飛ばしてしまうほどの攻撃力があります。
 X4Kが防御、X4Bがスピード、そしてこのX4Sは攻撃をパワーアップするというわけですね。いろいろと揃った。

 ってか、両手持ちできたんですね。槍だというからてっきり両手で扱うのかとばかり。
 利点は応用がききやすいことでしょうか。少なくともX4Bとは理論上共存できることになります。
 いかんせんX5以降は左腕の盾がネックになっているので、パージしない限りスターソードとの2択になってしまうんですが
 いざとなればゼンジロウが使う展開にもできなくはないので遊びすぎることはないでしょう。

 問題はスパーダモンが仲間になるかどうかなんですが……さて、どうなるか。


・スイーツゾーンの方々

 まずはパティシエの皆さんが登場。スイーツという一点のみで結びついているためか、かなり雑多です。
 トーカンモンがいるのは一種のギャグというかお遊びというヤツでしょう。森永的に考えて。

 そんな中、コロナモンがまさかのパティシエとしてアニメデビュー。この発想はなかったわ。声は誰かな?
 なんにせよ、オーブン要らずの冷製は苦手な職人という気がします。
 ルナモンと連続で登場したのはいいんですが、まるで接点がないのは痛いところ。出逢えるのかさえわかりません。


・キュートモンの両親

 忘れた頃の登場。今回は一枚絵のみですが、クレジットにちゃんと担当声優さんも出ています。
 なんのためにここへ移されてきたのかはまだ不明。実は二人してパティシエだというのならわかるんですが……
 ゲスト扱いなのか、合流したとして何ができるのかはまだわかりません。救護班が増えるのは本当はありがたいのですが。


・バグラ軍のみなさん

 上に書いたとおり、平田広明氏がマタドゥルモン役としてゲスト出演。強めに作った奇矯演技です。

 マタドゥルモン自身もずいぶんと予想を外したキャラでの登場。こいつ、本来は吸血鬼なんですぜ?
 血のかわりにスイーツを食べたら、それで生きて行けるようになっちゃった変わり者というところでしょうか。
 性格的には狡猾っぽいんですが、スイーツに込められた想いを理解するなど粋なところもあります。
 このあたりが後半で活かされるかどうかで処遇が決まってくるかもしれませんね。

 部下および敵パティシエ役としては、もんざえモンとワルもんざえモンが登場しています。
 スイーツゾーンに似つかわしい姿ですが、合体したときの強さはX4でも押されがち。絶対マッドレオモンより強いぞ。
 よく考えてみたら自分で合体できるのだし、その時点でけっこうな強者なのかもしれません。分離はって? さあ。
 しかしX4Sには全く歯が立たず、アッサリ爆散してしまいました。
 前座の悲しさというところですが、作画・演出の点でたいへん優遇されてたと思います。

 三元士はタクティモンのみ出番あり。いや、今は実質二元士だったか。
 今はスイーツゾーン担当官であるマタドゥルモンを立てて様子見してますが、参戦する気まんまんです。
 一段落した途端に攻めてきたとしても、クロスウォーズ的には驚くにあたらないでしょう。




★名(迷)セリフ


「……し、心配するな! オレたちみんなで協力する! せっかくマタドゥルモンに会えるチャンスなんだ…
 ここは勝つしかないッ!」(タイキ)


 ちーんと終了のお知らせな効果音が流れる状況から、無理矢理バトルを盛り上げるセリフです。
 言葉以上にどこからともなく現れたガケやら、後ろに流れるメインテーマアレンジ「攻防」に引き込まれるシーン。


「…なんか、微妙にキズつく……」(ドルルモン)

 撹拌器がわりにされた挙句、ドリルをクリーニングされる状況に陥って。
 シノビゾーンといい、最近ギャグ回でいじられる率が急上昇している気がします。いろんな意味で馴染んでる証拠かな。
 その分、次でカッコいいところを見せる率も高いんですけど。今度も例に漏れずのようです。

 それにしても君、ホントにキュートモンに甘いね。スイーツゾーンのお菓子より甘い。


「おいしいスイーツを作るのに、いっちばん大切なことはね…
 スイーツを食べてくれる人がみんな幸せになりますようにって、心をこめて作ることだと思うの。
 なのに、こんな卑怯な手でスイーツ作りを邪魔するなんて…あんただけは、絶対に許さない!
 (アカリ)


 こないだ始まったばかりの新プリキュアを思い出してしまうセリフです。特に最後が。
 とはいえ、今回ピックアップするならこのセリフを選ばない手はないでしょう。言ってることは普通ですが、
 普通なことほど意外と忘れがちなものです。慣れてくればくるほど余計に。

 ただ、受け取る側にも心がないと駄目な場合があります。少なくとも、マタドゥルモンにはその心があった。
 そこいらを完スルーして普通に倒されそうな予感がしますけど。


「わたしたちは、このゾーンを救いに来た…チーム・クロスハート!」(ネネ)

 裏方ながらも、きっちりと存在をアピールした一瞬です。
 そして、今や誇りをもってクロスハートの名を名乗れるようになったのですね。一瞬の間がいい感じ。
 言うぞ言うぞという期待感が、一瞬のうちに高まります。




★次回予告

 ついにというべきか、やっとというべきか、キュートモン一世一代の見せ場が到来です。
 何やらネネも活躍しそうな雰囲気なので、桑島無双の予感。
 究極の破壊デジモンとやらの正体も気になりますね。タイトルバックからみて、グランドラクモンかも?