生徒たちが消えた! ゆらめくサゴモンの影

 脚本:三条陸 演出:三塚雅人 絵コンテ:八島喜孝 作画監督:榎本勝紀
★あらすじ

 タイキとユウもまたクロスローダーを持つ者と知り、ますますデジモンハントに燃えるタギル。
 勇躍、飛び込んだデジクォーツで河童のようなデジモンが子供たちを攫うところを目撃、追跡するのですが、
 敵の攻撃力と素早さに敗北を喫してしまいます。居合わせたリョーマは並の相手ではないと忠告するのですが、
 かえってタギルたちの闘志に火をつける結果となりました。

 やがて敵──サゴモンの潜伏場所が学校のプールと判明します。ユウを伴って急行するタギルとガムドラモン。
 今度はアレスタードラモンで挑みますが、それでも苦戦を強いられます。やはり並大抵の相手ではありません。
 そこへ駆けつけたタイキが、クロスローダーの中にいるデジモンから一体選んでデジクロスできることを教えます。
 彼もまた時計屋のおやじに会い、デジクォーツにおけるルールブックを受け取っていたのでした。

 さっそく以前に捕まえたメタルティラノモンとアレスタードラモンをクロスアップさせ、サゴモンを圧倒するタギル。
 しかしサゴモンは生徒たちの心から力を得て姿を消す能力を獲得し、なおも優位に戦いを進めます。
 たて続けの危機にタイキが飛び出そうとしたとき、デジタルワールドからシャウトモンが参上しました。
 抜群の連携に追い込まれたサゴモンを、アレスタードラモンの技が捉えます。こうして二体目が捕獲されました。

 ブランクを全く感じさせない強さと、数多くの仲間を引っさげて参戦したタイキ。
 負けじと次のハントに向かうタギルですが、タイキを越える男になるのはいつのことになるのやら…



★全体印象

 56話です。脚本は前回に続いて三条氏。その他のスタッフにも基本的に新顔はみられません。
 八島氏は絵コンテとしての参加。相変わらず八面六臂ですね。

 タギルとガムドラモンの描写に力点を置いていた前回を受け、今期におけるルールを説明するお話です。
 出せるデジモンは一度に一体。デジクロスの時も選べるのは一体だけ、ということがわかりました。
 つまり、前期までの合体で使えるのはX2までということになります。特例はスターソード程度かな。
 裏技を使ったとしても、たぶんシャウトモンDXはひとりじゃ無理でしょう。あれは三体合体ですから。
 それ以前にキリハが出るのかどうかさえわかりませんが……

 これによって天井知らずのデジクロスが設定レベルで封じられ、パワーバランスが均質化されました。
 というか、デジクォーツにおいてはもはや前期までの常識は通用しないと考えてしかるべきでしょう。
 問題はなぜこのような空間が生まれ、なぜデジモンたちがここに迷い込むようになったのかですが…
 まあ、いろんなものをブチ込むのにはちょうどいい状態になったことだけは確かでしょう。

 タギルについてはまだ本当に興味本位という感じで、タイキと違って非常に危うさがあります。
 積極的に絡むのはユウの役目で、タイキはお膳立てをする役割になりそうですね。



★各キャラ&みどころ


・タギル

 勢いで挑んでボコられて、すぐ起き上がって挑んでボコられかけ、タイキの助けでどうにか勝った流れでした。
 ある意味ものすごい勢いでキャラが立っています。本当に見たまんまだね、君。
 情けなさをさほど感じないのは、それゆえの打たれ強さと前向きさが描かれているからでしょう。
 失敗し続けていても、心まではそう簡単に折れないタイプですね。

 ただ、今は上に書いたとおり「面白いから」という理由だけで戦っているように見えます。
 一度決めたら引かないその性格が、そのうち暴走を呼んでしまいそうな気がしますね。
 タイキが暴走度ゼロだったので、よけいに予感が強まります。


・ガムドラモン→アレスタードラモン

 超進化したにもかかわらず、二話目でいきなりボコられる展開となりました。
 相手がデスジェネラル並みに強いというわけでもないので、ある意味超進化の株が暴落した瞬間と言えます。

 ただこれはどちらかというと相性の問題で、クロスアップ前でも当たれば効いたんだろうという気もします。
 怒ったらタギル以上に猪武者になるみたいなんで、そういう性格的弱点が出た回でもありました。
 タイキ組と違って今のところ殴り合いしかできませんし。


・メタルティラノモン

 結局何をしでかしたのかわからないまんま、気づいたら無理矢理デジクロス要員になってた人。
 とはいえ、戦った相手をそのまま有効活用できるのは過去のシリーズにおいてもありそうで無かったことです。
 「フロンティア」では敵のデータをスキャン=浄化するだけで、実体ではないのであまり意味がなかったですし。
 ライダーで言えば「ブレイド」を連想させるシステムですね。アレもカード化した敵を技に組み入れたりしてました。

 なにげに、主人公の仲間になるのはアニメじゃ初めてだったりもします。何を思ってあそこにいるのかは不明ですが。
 あいにくと単独で戦うシーンは大してなく、後半でもすぐにデジクロスに使われてしまいました。
 たぶん今後も扱いはあまり変わらないと思います。


・アレスタードラモン・クロスアップ

 メタルティラノモンとのデジクロスにより、防御力がアップした姿。
 合体というより能力付与で、むしろフォームチェンジに近いですね。マイティ→タイタンという感じ。
 姿もあんまり変わっておらず、明らかにアレスタードラモンが主体。メインとサブの差ですね。

 この姿になったことで、一時はサゴモンの槍が通用しないほどの守りの堅さを手に入れます。
 同時に、サゴモンをガードの上から持ってゆくほどの打撃力も加わっていました。
 ただしそれは真っ正面から気を張っての事なのか、不意を衝かれるとそれなりにダメージが通る模様。
 もちろん、あれは単純にサゴモンの攻撃力が上がったからと考えることもできるでしょう。

 最終的にはドルルキャノンの援護を受け、必殺技でサゴモンを仕留めるのですが前回と違う技でした。
 あれがアレスタードラモン自体の技なのか、この姿固有の技なのかはまだ不明です。


・タイキ

 裏であれこれと動き、情報を仕入れてきました。彼の助言と救援がなかったら危なかったでしょう。
 慎重なようでいて、シャウトモンが来る前にタギルを助けに動こうとしていたり、ホント相変わらずです。

 しかも限定的とはいえデジクロスの存在がわかり、バリスタモンたちも来られると判明したので
 いきなり多数のメンバーを連れてきてしまいました。タギルの感想が全てを物語っています。
 たびたび言及されている通り、彼がバランスブレイカーであることはスタッフも理解しているようですね。
 仲間の多さと、それを成し遂げるだけの器を持っているのですから。

 まだ謎だらけですが、タイキ的には向こう側の都合など知ったことではないと言わんばかり。
 そこに助けを求める誰かがいて、手の届くところに己の腕がある限り、彼はどこへでも行くでしょう。
 ゆえに、動きを制限させられるケースも出てくると思われます。

 タギルに対しては割と放任状態ですね。
 そこはユウに任せているのか、口で言っても今は聞かないから黙ってフォローに徹しようと思っているのか…
 キリハにさえあんまり煩くは言わなかったし、もともとこういう人だといえばそうかもしれません。


・シャウトモン→オメガシャウトモン

 ワイズモンにデジクォーツへ行ける転送装置を作ってもらい、王みずから堂々の参戦を果たしました。
 いつも思うけど、ワイズモンって本当に便利屋ですね。ステファン・ジェバンニか君は。

 姿を現して早々、アレスタードラモンすら圧倒していたはずのサゴモンを超進化もせずにブッ飛ばし、
 デジクォーツ内のルールもあっという間に使いこなし、ドルルキャノンの弾幕でサゴモンの隠行を一蹴。
 トドメこそアレスタードラモンに譲渡したものの、アゴが外れるほどの圧倒的な強さを発揮しました。
 ドルルキャノンを連射できたのは超進化状態だからなのか、ローカルルールだからなのか、どっちでしょう。

 ガムドラモンについてはタイキ同様、弟分として目をかけていたようです。
 あまりに乱暴者なので彼を反省空間に放り込んでいたという設定もあるみたいなんですが、言及されるのかな。
 タイキがガムドラモンのことを黙っていた件については言及してません。あるいは見抜いてたのかもしれないなぁ。
 「ありゃあガムドラモンを庇ってるな。たぶん後輩のパートナーだ。オレが直接確かめてみるか」という具合に。

 前期にくらべ明らかに成長しており、全身これ歴戦を物語るかのような傷だらけです。耳にキングの文様あり。
 同一個体にもかかわらず、経年によって進化ではなく成長を遂げた珍しいケースですね。仲間たちはそのままみたいですが…


・ユウ

 今のところはタギルのお目付役という感じ。
 よく言えばメリハリのある、悪く言えば極端な性格ゆえ、興味本位のタギルに強い反発心をおぼえているようです。
 あれだけ命を大事にしたいと思っていた自分でも、ちょっとした認識の差であんなに間違えてしまった。
 今のままではタギルが痛い目をみることになると確信し、釘を刺そうとしているんですね。

 でも、それは彼の優しさの顕われでもあります。
 痛い目に遭わないとわからない。そのことは彼が身をもって体験し、一時はダメになりかけたこともあります。
 タギルには自分と同じ思いをしてほしくないんでしょうね。放っておくこともできるでしょうに。
 ここから口では軽侮していても、本当はタギルのことを友人として大切に思っていることがわかると思います。

 今はダメモンがいないため、まだ生徒たちの救出に回るぐらいしかできません。本格参戦にはまだ少しかかりそうです。
 一方で、サゴモンが生徒たちを拉致した理由や姿を消すことができた理由にいち早く気づいてたりしてました。
 やはり頭の回転が速いですね。解説役としても有能だ。

 
・リョーマ、レン、アイル

 今回もどっちかというと傍観者です。
 ただリョーマに関してはタギルを助けたり、基礎知識やサゴモンの危険性を教えてくれたり、けっこう親切でした。
 もちろん、タギルが忠告を聞かずに再度サゴモンへ挑むことも読んでいた可能性は高いのですが。

 今のところ、タギルに対しての期待度はそんなに無いのかもしれません。タイキに至っては警戒レベルになってますけど。
 そーいえば、人間界のことをリアルワールドと言ってましたね。聞き流すところでしたが、やはりテイマーズも意識してる。


・時計屋のおやじ

 タイキにデジクォーツの戦いにおけるルールブックを託しました。
 物言いから考えて敵ではなくても味方とも言い切れぬ、中立に近い立場の人なのだとわかるようになっています。
 新たにデジモンハンターを選出できるあたり、ゲームマスターに限りなく近い存在と見ることもできるでしょう。

 タイキの参戦はあまり歓迎していませんでしたが、どうしてもと言うなら止める気はなさそうでした。
 あれこれ知ってはいても、参加を止められるほどの力は持っていないのでしょうか。


・サゴモン

 スポーツや塾など、現実世界のプレッシャーから逃げ出したいと願う生徒たちの負の心に引き寄せられ、
 彼らを拉致して力を集めていました。学校が舞台というのも含め「セイバーズ」を強く連想させる流れです。
 力を求めているデジモンは、すべからくデジクォーツに招聘されるのでしょうか?

 その最大の武器はやはりスピードで、攻撃力自体も相当のもの。手数とパワーにおいてアレスタードラモンを圧倒しました。
 もともとそれだけ強いのか、負の心を集めた結果かどうかまではわかりません。
 ただ、クロスアップしたアレスタードラモンに対抗するため負の心から力を集めてパワーアップする場面があったので、
 蓄積したぶんの上乗せがあったと考えることもできるでしょう。超進化前では相手にすらなりませんでした。

 最終的にはシャウトモンの乱入によって大ダメージを受け、アレスタードラモンに敗れて捕獲されます。
 かなりの強さだったので、クロスアップを果たせば結構なパワーアップが期待できそうですね。
 メタルティラノモンと違い、現行犯なので強制連行と社会奉仕はまあ止む無しというところ。

 見ての通り、かつてのカメモンの完全体「シャウジンモン」の色違いです。
 アイルがチョ・ハッカイモンを連れていることは確定なので、あとはゴクウモンがどこに出るかですね。
 生徒たちをさらう場面は軽くホラーが入っており、なんだか懐かしい気持ちになりました。

 声はなぜか千葉繁氏。ゲームなどでディアボロモンを演じていたベテラン声優にして名バイプレイヤーです。
 にもかかわらず、唸り声しか上げないという勿体ない使い方でした。喋らせてやれよ。
 次回からペラペラ喋り出したら笑いますが。



★名(迷)セリフ


「ゲームだかなんだか知らないが、デジモンが人間界に被害を及ぼす可能性があるなら、
 オレはそれを放っておけない!」(タイキ)


 あまり首を突っ込まないで欲しいと語る時計屋のおやじに。安定の一言です。
 人間→デジモンでも同じことを言うかもしれません。デジモンの方に非が無い場合ならなおさらに。
 今回は人類が襲われる方ですが、どちらにしてもゲームとは関係なしに参加理由があるわけです。

 おやじもタイキがそう答えるとわかっていたのか、それ以上何も言いませんでした。
 基本的には「プレイヤー」の意志を尊重しているのかもしれません。


「…つまり、こういうことだろ?
 ヤツをお前より先に取っ捕まえたら、オレはスーパースターだ!」(タギル)


 リョーマにサゴモンには手を出さない方がいい、と言われての返答。
 何故そうなると言いたくなるぐらいのポジティブシンキングですが、これがタギルという男なのでしょう。
 同時に、スゲーことを成し遂げたいだけという動機の弱さも描かれているような気がします。
 こういう考え方で押し通すのもアリなんですが、彼なりの壁はやっぱり用意されてるんじゃないでしょうか。

 リョーマはこれを聞いてちょっと意外そうな顔をしてましたが、すぐに別の手を考えついたようです。
 タギルをダシに使ってサゴモンを弱らせ、横からかっさらう気まんまんでした。
 タイキの登場で、むしろその戦い方を見る方にシフトしたようですが。

 そーいえば、リョーマとの組み合わせはヨーコとシモンなんですね。小西氏がいりゃ完璧でした。


「勝手にあの空間には行かせないよ。
 デジモンの戦いをゲームみたいに楽しもうなんて…ぼくは許せない!」(ユウ)


 サゴモンに再挑戦しようとしていたタギルに。一年前の自分に語るかのようなセリフです。
 もし時間移動ができたら、彼は一年前の彼自身をぶん殴ってでも止めようとするのかもしれません。
 かつて、タイキがそうしてくれたように。

 だからこそ、タギルに同じようなものを感じて危機感を募らせているというか、ほっとけないのでしょうね。
 ここいらは彼を通し、それなりにツッコミを入れてくれそうです。
 ただ、タギルとユウとでは状況も性格も違います。同じにはならないような予感もしますね。


「こいつは絶対オレが仕留めるんだ! デジモン持ってないヤツはどいてろ!」(タギル)

 ふたたび現れたサゴモンを睨みつつ、ユウに投げた一言。
 無神経なようですが、彼はユウの過去を知りません。だから、それについては仕方ない面もあります。
 ただし裏に自分の方が優位だという(たぶん無意識の)アピールが隠れており、そこで相殺されてるんですね。
 オレがオレがって言ってるうちはまだ未熟って、お台場の石田さんが言ってた。


「…タイキ! ひさびさに聞きてぇだろ、オレの叫び!」(シャウトモン)

 疾風のごとくサゴモンをぶっ飛ばし、アレスタードラモンを奮起させた上でタイキにかけた安定の一言。
 もともとタイキ同様にブレない男でしたが、前作キャラ補正を得て手のつけられないレベルに達してます。
 そりゃあ、設定レベルで縛んなきゃどうにもならんわけだ……

 デジクロス場面では「We are クロスハート」が流れ、健在ぶりをアピール。
 和田さん、たとえ今は動けずともあなたのソウルはこうして、今も活動しています。


「ええー!? いきなりそんなにいるのー!? ずりぃよ、タイキさ〜ん!」(タギル)

 タイキが示したクロスハートの面々を見て。数だけじゃなく、全員高レベルでしょうからたまりますまい。
 この全部載せぶり、「FFT」の雷帝シドを思い出さざるを得ません。あの人も本来は古将でしたっけ。
 シドと捉えると、タイキ禁止令が出るのもわかるような気がしてきました。



★次回予告

 ピノッキモン登場。今度はロボット部員の情熱を利用したようですね。負の心だけではないのかな?
 前作20・21話に登場した個体と同一かどうかは、見てみないとわかりませんね。
 乗ってるのはブレイクドラモンかな? アレも前作に出てるんですが、過去のルールが通用しないので苦戦しそうです。