ロボット部の夢、 ピノッキモンの誘惑
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脚本:米村正二 演出・絵コンテ:園田誠 作画監督:直井正博 |
★あらすじ
ロボット部員が突然、揃って欠席しはじめるという奇妙な事態が発生。
一連の裏にデジモンの影を見た少年ハンターたちは、部員のひとりでタギルの同級生でもあるトキオの家を訪ねるのですが、
人が変わったようになった彼に追い出されてしまいました。不審に思ったタギルたちが見張っていると、
パソコンを通してデジクォーツに入ってゆくではありませんか。あわてて後を追う一同。
転送先ではトキオたちが正気を失い、言われるままに巨大な機龍デジモン・ギガブレイクドラモンを建造していました。
それを指揮していたのは何とピノッキモン。かつてタイキと友情を結んだ、ダストゾーンの彼だったのです。
思わず飛び出したタイキですがピノッキモンは何故か記憶を失っており、トキオたちに命じてギガブレイクドラモンを起動。
ハントを狙ってリョーマたちまでもが現れ、戦いは大混乱に陥ります。
そんな中、体を張って仲間であるピノッキモンを守るタイキ。目の当たりにしたピノッキモンは、ついに正気へ戻り
シャウトモンとクロスアップを果たします。連続攻撃により、ギガブレイクドラモンは倒れました。
ロボット開発の行き詰まりからピノッキモンに操られる形だったトキオたちも、無事に夢への邁進を再開。
心意気で仲間を取り戻し、友情のデジクロスを成し遂げたタイキにタギルはますます憧れを強めるのでした。
★全体印象
57話です。脚本は米村氏。三条氏は入れ替わりに「フォーゼ」で書いてました。最近えらい仕事量だ。
演出の園田氏は初登板です。専ら「ワンピース」で腕を振るっていた模様。かの大ヒット作「STRONG WORLD」
では助監督をやっていたそうですから、かなりの実力はあるものと思われます。
作画では直井氏に加え佐々門氏、進藤満尾氏の顔ぶれもありました。なんじゃこの「星矢」シフトは。
今期になって一話完結色が非常に強くなったわけですが、それを象徴するような通常運転回でした。
どの要素も基本的にその中で解決するようになっており、且つお話そのものが布石にもなってます。
同じく一話完結を採用していた「02」「セイバーズ」前半に似たノリを感じるのも無理からぬところでしょう。
というか、このふたつをミックスして空気をテイマーズっぽくしたのが今期という乱暴な言い方もできます。
人間にもデジモンにも謎のデジクォーツという空間が最大の新要素でしょう。
お話については特に際立って悪いわけじゃないけど印象にも残りにくい、いつもの米やんです。
しかしこの方の長所は良い意味でも悪い意味でも安定していることと、筆の速さであろうと思われるので
内容の質についてはある程度目をつぶった方がいいんじゃないかという気が最近してきました。
差し引いても43話は頭を抱えたくなりましたが。
とはいえ、持ちネタでもあるピノッキモンとブレイクドラモンの再利用、さらにそれを踏まえた
ピノッキモンのデジクロス要員昇格と、前期までを見ていればそれなりに入り込みやすい仕上がりではあります。
まあ、言わば二重洗脳でややっこしい事になってる上に乱入者まで出るのでバトル関係はグダグダめでしたが……
リョーマたちが相当ワリを食った気がしますね。
★OPと挿入歌
だいぶ耳に馴染んできました。
特にOPは最近脳内でヘビーローテーションしており、曲に関して「ネバギバ」「NEW WORLD」以上のお気に入り。
トゥワイルだと聞いて「またか…」と思ったことをここに白状しておきます。正直すまんかった。
★各キャラ&みどころ
・タギル
ユウに勝手にお使いを懸けたジャンケンを申し込んだり、負けると3本勝負に変更してツッコミを入れられるあたりが
今回のピークです。このあたりの行動は悪感情ギリギリの線で、ゆえに印象にも残りやすいのでしょう。
細かいところをよく見ると、おバカっぷりがヘンなところでブーストされてたりもしました。
それでいて、彼に関してはあんまり引っ掛かりを感じない回です。
一応、よく言えばひたむきと表現できる側面がトキオたちを正気に戻すキッカケになってるんですけれど……
・ガムドラモン→アレスタードラモン
こちらも正直あんまり心に残ることをしてません。
今回の敵はかなり強かったはずなんですが、サゴモンと比べても苦戦度合いがいまいちだったからでしょうか。
クロスアップもしてませんし、捕獲役はもらったものの実質的にはタイキ組に持ってかれた感じ。
なお、鼻が利くことが判明してます。独自設定じゃなきゃいいんですが。
・タイキ
ロボット部の集団欠席をいきなりデジモンに結びつけるという超理論を展開してましたが、誰もツッコみませんでした。
話した相手が相手だし、実際に事件が起きていたので問題にはなってません。
デジクォーツにおいては東に走ればトキオを真人間に戻し、西に突撃すればピノッキモンの記憶を取り戻しと
相も変わらずの天然ハンターっぷりを発揮。タギルの言っていた通り、関わった相手の心をも虜にしてしまう男です。
米やん回だとたまにやり過ぎなほどで、ある意味トラブルは全部キリハにぶん投げられていました。
それだけにタギルの描写がモノスゲー心配だったんですが、今回に限っては何とかギリギリという感じ。
・シャウトモン
後半から登場。最初はタギルたちに先陣を任せ、説得に忙しいタイキのガードに回る形となっていましたが
ピノッキモンが戻ってきてからは彼とのクロスアップを会得し、あっという間にギガブレイクドラモンを追い詰めます。
しかも、よく見たら超進化さえしてません。サゴモンを殴り飛ばした時にも思いましたが、やはり段違いに強い。
設定だけでなく話でも縛るようにしないと駄目かもしれませんね。バランスブレイカーにも程がある。
なんらかの事情で手が離せなくなるなど、タギルたちに解決を委ねる展開も出てきそうです。
・ユウ
今回も戦闘には参加せず。まあ、さすがに次回で復帰かな?
タギルとの掛け合いを見ていると、軽く見ているようで実際には対等に近い関係なんだろうなと思わされます。
言いたいことを遠慮なくぶつけられるという意味において、彼にとってのタギルは貴重な存在なのでしょう。
もちろん黙ってることもあって、そのうちそれが噴出することになるのだと思います。
タギルの反応も見どころですね。
・マミ
なんだかんだで毎回出てるんですが、現状は「○○さんの様子がおかしいけど、どうしたのかなあ」などと宣う
名前ありモブの域を出ません。一応公式サイトに名前は載ってる(東映の方では何とユウより上)ので、
何かあるんじゃないかと思ってるんですが……一応、記憶に留めといたほうがいいかな。
・リョーマ組
ギガブレイクドラモンの強さをものにしようと乱入してきました。
ろくに戦わぬうちにさっさと撤退してしまいますが、レンとアイルのメインパートナーが初めてまともに登場。
また狙いがあくまでもハントなためメリットの無い戦いはしようとしなかったり、ピノッキモンを庇うタイキを見て
呆れる場面があったり(そしてそれを仲間が咎めない)、考え方の違いはハッキリ見えています。
というか味方にタイキがいるせいもあって、今のところあんまり強さを感じません。脅威というより足枷の方が近いかも。
今回みたく強敵を前に状況をカオス化したり、時にはタイキを足止めする役割を振られそうです。
・ピノッキモン
予告でもしやと思ったら、やっぱり前作からの出張組でした。鼻を見て早くも確信できます。
こうなるとタイキ組的にはそっちへも集中を割かざるを得なくなるわけで、タギル組が頑張る意味は出てきてます。
言わば「ほっとけない発動による行動制限その1」ですな。
正気を取り戻してからは、自ら志願してまさかのデジクロス要員昇格となります。
まあ、もともと仲間になっててもおかしくない立ち位置だったのでそんなに不自然ではありません。
X2〜7という一種の格差要因がなくなった結果、やっとお鉢が廻ってきたと言うこともできるでしょう。
ただ本編中ではなぜデジクォーツにいたのか、なぜ記憶を失っていたのか肝心なところへの説明がありませんでした。
彼のように知能犯的なこともするデジモンもいるとわかっただけでも、お話に幅はできますけどね。
上記については、さすがにそのうち疑問提起があるんじゃないでしょうか。
ギガブレイクドラモン=ブレイクドラモン共々、もとは米やんの持ちキャラでもあります。
ダストゾーンやスイーツゾーンは演出のよさもあって同氏担当回じゃかなり良い方ですし、お気に入りなのかもしれません。
・ギガブレイクドラモン
記憶を失ってひたすら力を求めるようになった(ように見える)ピノッキモンがロボット部員たちを操る形で利用し、
組み上げさせた破壊兵器。見かけ上はあんまり元と変わりませんが多少カラフルになってる気が。また体も大きいようです。
ギガとついているからには、単にブレイクドラモンへスーパーキノコを食わせただけの代物なのかもしれません。
しかし未完成のまま動き出したせいか暴走してしまい、タギルたちに阻止されることとなります。案外にあっさり。
一応技がハマればX5も苦戦せしめる個体の強化版なはずなんですが……シャウトモンなんて進化すらしてねえし。
アレがせめてオメガシャウトモンになった後ならまだ納得がいくんですけど、いろいろ縛りがあるのかな。
それに、よく考えたら誕生の過程もなんかヘンです。
ロボット部員たちの腕を利用したのか、心を利用したのかよくわかりませんし、それが組み立てとどう関係してるのかも
実は全然わかりません。やってることは凝ってるんですが、肝心なところが伝わりにくいです。
たぶん、本当のところは組み立てというより修復だったのでしょうけど……
生身の部分がほぼゼロに等しいそうなので、修復にあたってロボみたいに組み立てられるのは一応間違ってません。
設定と照らし合わせてみても、タイキに破壊兵器と称されてもしかたない存在です。理性も感情も無いのですから。
・ロボット部員のみなさん
タギルのクラスメイトであるトキオを筆頭に、ギガブレイクドラモンを作らされていた今回のゲスト。
みんな正気を半ば失っており、ギガブレイクドラモンを完成させることしか頭にありませんでした。
もともと作っていたロボットとの共通点は、件の機龍が胴体に備えるショベルぐらいしか見て取れません。
最後には正気に戻り、設計を根本から見直したのか部活動が好転へ向かう描写があります。
トキオの部屋を見る限り元から優秀なチームみたいなので、それゆえのプレッシャーもあったのでしょう。
ちなみに、トキオの中の人は岡村明美氏。デジモン的にはフロンティア映画でベアモンを演じてた方です。
シリーズが続いてることもあって、結構いろんな人が出演してますよね。
・小ネタ
デジモンをハントする時に出る輪は、フロンティアのデジコードスキャンを強く連想させますね。
あちらは一種のデータ露出で、こちらは言わば拘束輪という違いがありますけど。
ついでに言うと、予告編のOPアレンジも凄くフロンティアっぽい。
★名(迷)セリフ
「タギルっ! お前、都合よすぎるだろ!」(ユウ)
ジャンケンに負けたとたんに3本勝負にしたタギルに。
良くも悪くも、彼がこれだけ遠慮なくモノを言えるのはたぶんタギルぐらいだと思います。心中は複雑でしょうけど。
「あいつらは、真っ正面からぶつかることしか知らないけれど…でも、自分の力で、自分たちの夢を叶えようと
必死になっている! 君たちはどうなんだ!?」(タイキ)
言われるがまま、それが何なのかわからないままに破壊兵器を作ってしまったトキオたちへ。
タイキ的には、今後どんな問題があっても体当たりで乗り切っていけると期待しているのかもしれません。
ちょっと後のプリキュアでも「これがお前のやりたかったことなのか?」という類のセリフが出てきたうえに
それが米やん回だという、奇妙な偶然が発生していました。
まあ、単にたまたま起こったことなのでしょうけれど。
「自分の体を張ってデジモンの攻撃を受けるなんて、バッカみたい」(アイル)
上ではああ書きましたが、このセリフをよく見ると仲間を庇うことそのものは否定してないように見えます。
単に人間がデジモンの攻撃を受けようとする無謀さに呆れてるだけ、と取ることもできますね。
それについては「ま、まあ確かに危ないよな…」と言えなくもありません。
しかしそれよりも、あんな即席の盾で防げるアスタモンの技のほうが問題なような……
アレがギガブレイクドラモンの装甲板の余りだったり、実はヴィブラニウムだったりしたら話は別ですが。
「そう言いつつ、タイキさんはハントしちゃったんだよ…デジモンの心まで!
あー、オレもタイキさんみてーに、心までハントしてぇー!」(タギル)
ラストシーンにて、タイキはただ仲間を放っておけないだけだと語るユウの言葉を受け。
その発想はなかったわというか、ハントからデジモンに入った彼らしいものの見方だと思いました。
今はまだワクワク感だけで動いてますが、すぐ近くに模範があるのは恵まれた環境と言えるでしょうね。
もっとも、このセリフを聞いたタイキはどっちかとゆーとドン引きしてましたが。
★次回予告
ようやくユウが戦線復帰でしょうか。予告にダメモンが映ってないのは視聴者をヤキモキさせるためかな。
古参デジモンのブロッサモンも登場。メインを張るのはセイバーズ以来の3度目です。
あとはレンがどのような活躍を見せるかに期待ですね。