優等生が狙われた! ブロッサモンの微笑
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脚本:村山功 演出:細田雅弘 作画監督:梨澤孝司 |
★あらすじ
相棒のガムドラモンと喧嘩しながらも、毎日楽しそうなタギル。
一方、ユウは最近どこか精彩を欠いていました。パートナーがいるタギルを心のどこかで羨んでいたのです。
そんな彼の前に、クラスメイトの須藤ミホが語りかけてきます。異様な雰囲気に何かを感じ取るユウ。
やがて授業中に生徒たちが次々と痩せ細り、何かに抑えつけられたように動けなくなる事件が発生しました。
タギルはデジモンとの関連を疑い、ユウはミホとの関連を疑って各個に調査を始めます。
やはり一連はデジクォーツと関わっており、生徒たちは頑丈な茨のようなもので縛られてしまっていました。
タギルは現れた戸張レンのアドバイスを受けて茨の本体たるデジモンを発見。急行します。
その正体は半ば須藤ミホと一体化した植物系デジモン、ブロッサモンでした。
常に一番だった彼女は中学に上がって以来伸び悩む成績に苦しみ、ブロッサモンに目をつけられていたのです。
彼女に心の奥の羨望を指摘され、動揺するユウ。駆けつけたタギルとガムドラモンも触手で動けません。
異常を感知したタイキとオメガシャウトモンが馳せ参じるも、ミホはその動きをも封じようとします。
その時、姿を消していたレンがリョーマとアイルを伴って現れました。
ブロッサモンの触手をタギルたちに集中させた上で、横から楽にかっさらおうというのです。
ミホの安全を考慮しないその行動を受け、ガードに回るタイキとオメガシャウトモン。
乱戦の中、ユウの心を利用しようとしたミホは逆に己の愚かさを悟り、過ちを悔いてゆきました。
弱体化したブロッサモンの隙を衝き、連続攻撃によって事件は解決しました。
記憶は朧げながらも、ユウに心を救われたことを感謝するミホ。
ダメモンとの再会を新たに信じてコートを駆けるユウに、また一人ファンが増えていました。
★全体印象
4話です。脚本はフリーの村山功氏。
経歴から東映系アニメとの関わりが深く、特にプリキュアではオールスターズ全作を任されている人物です。
脚本家としてはまだ若手ですが「トリコ」のシリーズ構成も担当するなど、活躍著しいものがありますね。
クロスウォーズには確か初参加。サブライターとしては久し振りの新顔です。
作画など、他はおなじみの顔ぶれ。
今回でダメモンが復帰…と思いきや、なおもお預けという一見拍子抜けの内容。
でも相棒がいない引け目にユウを真っ正面から向き合わせ、克服する重要な内容となっています。
問題への極めて真っ当な取り組み方は、さすがにプリキュア経験者が書いたホンというべきでしょうか。
見ようによってはかなり説教っぽい内容ですけど、以前のユウに感じたことと一致してるので納得はできました。
長い目でみれば、こういうお話があるのは悪いことじゃないと思います。
次回の対アイル戦でダメモンが復帰すると考えた場合、この回があると無いとじゃやはり印象が変わりますからね。
そういう意味で、サブライター回としては前回よりも重要度の高いお話といえるんじゃないでしょうか。
★各キャラ&みどころ
・タギル
オバカな面は出てますが、今回はさらっと流してユウの心理を補強する役割を果たしていました。
ユウの本心を知ったときの反応が気になってたんですが、あいにくとリアクションは弱め。
そのせいもあって、脇に回ってる印象を拭えないところです。
それでも、ユウにダメモンについてフォローを入れる場面があったのは救いですね。
ユウの不調を縫ってゴールを決める場面では輝いてましたが、ラストシーンでズッコケるあたりはお約束。
オチ担当もできる男です。
・ガムドラモン
人気の無いところでは2話のように時折クロスローダーから出て、パートナーと余興を楽しんでいるようですね。
タギルを揶揄う場面もあります。これはタイキとシャウトモンの間柄では見られなかった光景。
ただ、それがユウの羨望を強める結果になっていたようです。
バトルでは早々に動きを封じられてしまい、タギル共々しばらく蚊帳の外でした。
・クロスアップ・アレスタードラモン
サゴモンとのデジクロスで現れた形態。
合体時になんとサゴモンが喋ります。2話では叫び声しか上げてなかったのに…暴走してたんでしょうか。
クロスアップを果たすとサゴモンの手持ち武器を携え、全体的に細身のスタイルとなります。
具体的にどこがパワーアップしたのかまでは描かれてませんが、とりあえず素早くはなっているはず。
また相手の攻撃を防ぎつつ、こちらからは攻撃できる攻防一体の技を披露していました。
トドメというか、HPをキャプチャー圏内に押し込んだのはオメガシャウトモンなんですが捕獲したのは彼ら。
これは俗な言い方をすると、捕獲コマンドを出していたのがタイキ組ではなかったからでしょうね。
・タイキ
異常な事態を感知し、シャウトモンを伴って後から駆けつけました。
前期までと違って常に一緒に行動しているわけではないので、こういう状況が作りやすいといえます。
場合によっては中途でリョーマ達や別のデジモン、本命が出した分身に阻まれて到着が遅くなるケースもあるでしょう。
タギルたちが頑張れる余地は充分にあります。まあ、今回は完全にお助けマンでしたが。
・シャウトモン
前半でちょこっと素でも出てますが、バトルには最初からオメガシャウトモンとして参戦。
それもあって、ブロッサモンの触手を受けてもある程度動ける程度の力は残していました。
ただ、その力は専らミホのガードとリョーマ達への牽制に使われています。無難といえば無難な扱い。
その割にブロッサモンへの駄目押しはきっちり果たしており、相変わらず美味しい立場でした。
・ユウ
一話をかけて掘り下げを行ってもらいました。今後への財産になるお話だと思います。
前期とあわせて考えると、彼は確かにタイキを破ってナンバーワンになろうとしていた時期があるんですよね。
それが叶わぬとわかったら今度はコンプレックスを噴出させ、ダメになりかけたこともありました。
しかし最終決戦を乗り切り、クロスハートの本当の意味を知った彼はそこでまた変われたのだと思います。
ダークナイトモンと照らし合わせて考えれば、彼があの域から脱したことは今回でよりハッキリしますね。
ある意味、彼は焦っていたのかもしれません。それに、ダメモンが現れぬ理由もわからない。
目に見えない不安が、タギルやタイキを見ているうちに顕在化しはじめていたのでしょう。
ミホはそんな彼に何かしらの匂いを嗅ぎ取ったのでしょうが、結果的には彼を助けることとなりました。
・須藤ミホ
タギルとユウの同級生。ベリーショートに眼鏡をかけた理知的な外見です。
小学生のころは常に成績トップだったという優等生で、それゆえ伸び悩みに苦しんでいました。
自分こそが一番だと思い込み、タイキたちに戦いを挑んだ頃のユウの過去の移し身といえます。
それもあって、これまでのゲストの中では破格の扱い。
ユウの心を直接感じ取り、端的に言って惚れたとも取れるような顛末を迎えています。
まあ劇中で名前が出たのは二人目ですけど、今後彼女以上の待遇を貰えるゲストがどれほどいるかどうか。
中の人は水橋かおり氏。今年の当たり役はなんといっても「魔法少女まどか☆マギカ」の巴マミでしょう。
デジモン作品では「デジモンワールド」に出たことがあるようなので、これが初出演ではありません。
結構なベテランなんですが独特の可愛らしい声質のため、まだまだ10代前半もいける感じです。
それでいて案外ダークな役をやることもあり、表現力にはたいへん高いものがありますね。
最初に名前を意識したのは「ちっちゃな雪つかいシュガー」のペッパーですが、あれも眼鏡キャラでした。
…それにしても、マミと外見が被ってるのはいかがなものでしょう。
これではマミのモブ色が強まるばかりのような気がします。
・レン
リョーマ組ではリーダーであるリョーマを除き、初めて単独でタギルに接触した人物です。
レアものを捕まえることに血道を挙げている節があり、そのため実戦経験も豊富な模様。
騙されやすいタギルを釣ってハントしやすい状況を作り上げたり、頭も切れます。
ただ、ハントにあたって被害を受ける人間がいたとしても気にしない冷酷な節もあります。
このあたり、アイルと並んでリョーマと相性がいい考え方なのでしょう。
いかんせん、文字通り百戦錬磨のタイキ組の牽制には動きがとれなかったようですが。
なんというか、新キャラの中ではいちばん地味な人物ですね。
中の人がひとりだけ前期続投にあたる桑島氏なのも、そこに拍車をかけている気がします。
・リョーマ組
レンがいつのまにか呼んでいた二人。
かなりの必勝戦術だったはずなんですが、結局ユウとタイキに全部引っくり返されてしまいました。
これまでの戦績は実質的に全敗です。今回に至っては余裕ぶちかます暇もありゃしません。
そろそろ挽回しなきゃ拙い頃ですが、次回でアイルが良くも悪くも目立ってはくれそう。
・ブロッサモン
ミホの心に応え、半ば一心同体となって彼女よりもランクが上の生徒たちを襲っていました。
きわめて単純かつ短絡、刹那的な感情が拠り所なので、あまり計画性のある行動は見せてません。
劇中で指摘されていた通り、ミホの激情によって暴走していると表現するべきかもしれませんね。
触手による攻撃は極めて厄介なもので、ミホの心の力を得てさらにパワーアップしているようです。
オメガシャウトモンでさえ動きを制限されてしまったのは、ミホの感情の強さゆえでしょうか。
反応速度も極めて鋭敏なもので、タギルたちは進化する暇もないままに一時縛られてしまいました。
ミホとの同調はたいへん深いレベルに達しており、触手たる茨を傷つけられるとダメージがあるほど。
なんだかマトリックスエボリューションを思い出してしまう設定です。
しかも暴走という設定まで語られており、ひょっとしたら誰かが暴走するかも? なフラグを立ててました。
・先生たち
なにげに何人か出てきました。
特にタイキの担任は初登場なわけですが、なんだか変な人です。
よく見ると、タギルたちの教室にはちゃんとトキオの姿も見えまね。席はどうやらミホの後ろか。
★名(迷)セリフ
「デジモンは、人間の心に影響を受けて…暴走する場合があるんだ!」(ガムドラモン)
フラグともなりうるセリフ。人間ではなく、デジモンであるガムドラモンが言ったのがポイントです。
この場合、主人公格で一番危ないのはやっぱり当のタギルとガムドラモンでしょうか。
タイキ組にも、一度間違いを犯しているユウにもその可能性が極めて薄い以上は、そう結論づけざるを得ません。
まあ、もっと危ないのはやっぱりリョーマ組ですけど。特にレンが危険な気がします。
「…確かにぼくは、ガムドラモンがいるタギルを羨ましく思っていた……でもそれで、タギルを蹴落としたりしない!
嘘なんかじゃない! ぼくは、かつて大切な友達…ダメモンを失った…! しかもそれは、ぼくのせいなんだ!
…初めて出逢えた、ほんとうの友達だったのにっ…!
確かに、いつもデジモンと一緒にいるタイキさんとタギルが羨ましかった! みんなと一緒に戦いたかった!
でも…自分のせいでその大切な友達を失ってしまった…!
だからっ! 自分で乗り越えなくちゃいけない! 他の人を恨んでも、何の解決にもならないんだ!
それより、自分がやれることをやらなきゃ! 今自分にできることを精一杯…!!」(ユウ)
やりとりなど略。かなりの長セリフですが、採り上げないわけにはいきますまい。
一時は凹んでいましたけど、彼がとっくにあの時点の境地を乗り越えていたことがわかるセリフです。
もっと言えば、ミホのおかげで再確認できたのかもしれません。
ミホ自身はそれを受け、妬むどころか負の心を溶かされるほどに衝撃を受けていました。
彼女もまた、人を捨ててはいなかったということなのでしょう。
というか、ぶっちゃけどう見ても惚れたんだと思います。
「…鼻が…いたいの…」(タギル)
ミョーに心に残った本編最後のセリフ。
おバカで憎めない側面がとてもよく出ています。井上氏のスッキリした声質もひと役買っていそう。
★次回予告
アイルが全面的に目立つだけでなく、キュートモンの出番もあるお話です。
今でもクロスハートで一線を張っているだけあり、キュートモンの力はなかなか侮れないものになってる模様。
しかしチョ・ハッカイモンには苦戦しそうです。タギルたちは何処にいるのかな?
そして今回を踏まえ、いよいよダメモンが復帰しそうですね。結構引っ張ったなぁ。悪くない経緯ですが。