かわいさ要注意! キュートハンター、アイルの罠!
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脚本:三条陸 演出:三塚雅人 絵コンテ・作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
いまだに姿を現さぬパートナーに思いを馳せるユウ。
そんな彼を癒そうと、キュートモンが勝手にクロスローダーから出て行動を共にしようとします。
ところがその夜、公園でダメモンを偲んでいたユウが襲われる事態が発生。襲撃者はアイルでした。
可愛いデジモンを集めているアイルは、キュートモンがユウのパートナーだと思い込んで奪おうとしたのです。
その場はタギルたちの援護で事なきを得たものの、翌日に今度はキュートモンがいなくなりました。
あの公園にユウのパートナーにまつわるカギがあると見て、単身調査に出ていたのです。
当然そこを見逃すアイルではなく、捕まってしまうキュートモン。追うタギルたちの前にはリョーマとレンの妨害が。
その場をタイキに任せて救出に奔走するタギルとアレスタードラモンですが、本気のアイルに苦戦を強いられることに。
戦いの中新たに奮起したユウは、キュートモンを全力で救おうと体を張ります。
強い決意を受け、遂にダメモンが復活しました。すぐさま抜群のコンビネーションで復帰戦を飾ります。
ハンターのデジモンは奪わない。ユウの宣言したルールにより、アイルはすぐに開放されました。
かくて、ユウとダメモンは一気に期待の新戦力としてその存在感を新たにするのでした。
見逃された形のアイルはリベンジに燃えるのですが、果たしてそれは敵愾心だけのものなのかどうか…?
★全体印象
59話です。これだけ変わってると5話と呼びたくなりますが、連番じゃしょうがない。あと1話で60話達成ですね。
脚本は2話以来となる三条氏です。演出も安定株。ただしアイルが前面に出るお話の割には作監が八島氏であり、
そのため全体的に淡白な絵面でした。このへんは少々勿体ないと思わざるを得ないところです。
もっとも、竹田氏あたりに任せたらそれはそれでえらいことになっていたような気がしますが……
そういえばスタッフ入れ替えの関係で、バンクもテカテカじゃなくなってますね。見慣れた後だとちょっと寂しい。
お話は一応そのアイルの紹介なんですが、三条氏にしてはちょっぴり雑な印象を受けました。
ユウの描写が4話からあんまり綺麗につながってなかったり、ちょっと強引な流れがあったり、放置パートがあったり。
単純にフォーゼとの掛け持ちで練り込みが不足したとか、いろいろ理由があるかもしれませんが…
まあ、それでも全体的なレベルでは別にどうこう言うほどのものではありません。なんとなくそう感じただけです。
アイルも氏が得意とする悪女系プラス拘り持ちなだけあって、バランスの取れた描写になっていました。
やってる事は大いに問題アリなんですが、なんか憎めない仕上がりです。
ユウに関しても、性急に頭数だけ揃えようとせずに段階を踏んで復帰させたこと自体は良いと思いますね。
並行してタギルの考え方も補完されましたし。ともあれ、これで役者が揃ったことになります。
問題は次の山場ですが…3on3の睨み合いから事態を動かすには、それなりの大きな力が要りそうです。
ところで後半のバトルは物語の流れもあり、デジクォーツ外での展開となってます。
いわゆるリアルワールドでの戦いにも制限が無いということですね。これが今後にどう影響するのか。
★挿入歌
ユウ&ダメモンの専用曲として「Shining Dreamers」が披露されました。
作詞の三条氏はいつも通りですが、作曲として岩崎貴文氏が登場。確かデジモンシリーズは初参加です。
戦隊シリーズ他、数多くのアニメに楽曲を提供している氏ですが、今回はボーカルも担当してくれました。
もともと歌手でもあるので不思議でもなんでもないですが。なんだか太田美智彦氏を思い出しました。
★各キャラ&みどころ
・タギル
ハントに関する考え方を改めてハッキリ提示しました。
ユウメインのお話なのですが、彼にとってもけっこう重要なエピソードの一つかもしれません。
ここでポイントと言えるのは、何よりもまずハントが面白いと語っていることと、全力であたっていること。
その中で人や被害者側のデジモンを助けることもやぶさかではなく、むしろ一石二鳥だと豪語しています。
…この考え方、何かを思い出すと思ったら「ボウケンジャー」のボウケンレッドに近いんだ。
好きなことをやってるだけで人々を守ることに繋がるなら最高だって、あの男なら断言しそうですし。
…あ。
そういえば、ボウケンレッドの名字も「明石」じゃなイカ! さとるとタギルで名前まで似とる。
なるほど謎はすべて解けた。真実はいつも一つというわけですね。
え? 単なる偶然の一致ですって? 嫌だなあ、もちろん偶然に決まってるじゃないですか。
…ちょっとびっくりだ。
・ガムドラモン→アレスタードラモン
割とどうでもいい話題で盛り上がってしまいましたが、バトル面での彼らはあんまり良いところがありません。
苦戦はもはやステータスですし、やられっ放しというわけでもないんですが、かといって見せ場もないし。
加えてツワーモンがあっという間に事態を収束させてしまったので、余計に強調されてます。
確かに今回に限っては、ダメモンにダメ出しされてもしょうがない面はあるかもしれません。
ただ、ツワーモンの能力がアイル組にとって相性最悪だったことは考えに入れないといけないでしょう。
それにタギル含め、前半における救出行動移行の素早さは特筆に値します。
・タイキ&シャウトモン
単身裏で事件を探っていたり、リョーマたちの相手を引き受けて表舞台から自らフェードアウトしたり、
扱い的にたいへん自重していることがわかります。とはいえ2対1でも全く不安を感じません。相変わらず異様な安定感。
どうやら根本的にハントには興味がなく、またその必要もあまり無いのでしょう。まあ、あんだけいればね……
ピノッキモンのように、かつての仲間を回収する形でならば別みたいですが。
ハンデ戦を引き受けてどうなったのかと思いきや、事が終わったらケロッとそこにいて噴いてしまいました。
いったい何があったんだ。見てないところで本気でも出しちゃったんでしょうか。
・ユウ
前回同様、曇った表情が多かったです。
4話であれだけ啖呵を切っていた割には何やらぶり返したような印象を受け「?」と感じたのが正直なところ。
やってることも4話の繰り返しに近いところがあり、そんなに語ることはなかったりします。
でも前回無しでいきなりこのお話をやっても、それはそれで唐突な印象を受けたかもしれません。
彼が諸々を乗り越えて強くなり、何かを掴みかけていることはすでに充分描かれてくれているわけですから、
むしろ安心して見ていることができた、というのが正解に近いのかもしれません。
それだけに、少々ちぐはぐだった気がするのは残念ですが…ホンだけじゃなく、演出の影響もあるでしょうけど。
タギルとは良くも悪くも、対等の友人関係を築いているようで何よりです。
美人の姉はアイドルとして成功中ですし、ばかでかい固定資産もあるし、生活力も年齢を考えれば破格。
ダメモンも戻ったので何の問題もありません。あんたもう人生勝ったも同然だよ。いやマジで。
・ダメモン→ツワーモン
一種の地縛霊状態だった人。化けて出るどころか思いっきり復活してるのが最大の相違点ですが。
ここまで時間が懸かった理由は自分で語ってくれましたが、ユウには何のコンセンサスもありませんでした。
自分で「復活条件」に到達するのを待っていたことになります。
その条件とは
・ユウが思い出の場所を訪れること
・ユウがたとえ力及ばずとも 今できることを全力でやろうとする強さを身につけていること
・これらを踏まえた上で自分の力が本当に必要な時が来ること
こんな感じなわけで、ある種自分で設定したトリガーに見えなくもありません。
魂だけはどう見ても復活してた感じなので、忍者らしく何か仕掛けでもしていたんでしょうかね。
なんだか念能力みたいな話になってきましたけど。
さて、ツワーモンといえば嘗てはクロスハートと激戦を繰り返した男。
のみならず、単純な実戦経験ならあの当時のメインキャラ中でトップクラスだった可能性があります。
ブランクが長かったので今ではシャウトモンに追いつかれてると思いますけど。
とにかくそんなわけで、再登場補正を鑑みても実に鮮やかな勝ちっぷりでした。
変わり身の術によるお約束回避から始まり、相手の罠を逆利用して捕まえるという余裕の勝利ですからね。
捕縛というのは単純にゲージ削ってハントするより難しいはずですから、実力差がなければできないこと。
あれではアイルに勝ち目があるとは思えません。向こうが強くなるのならばともかく。
・ネネ
写真でのみ登場。
一年の間にまた美人になった上に体型もえらい成長してますが、あの特徴ある髪型は前髪以外そのまんま。
しかし香港でアイドルやってるという話、ネタかと思ったらマジだったんですね……
ユウは事件のことを姉に報せてるんでしょうか。彼の場合、どっちの路線もあり得ます。
桑島氏もいるわけだし、決戦ぐらいには駆けつけてくれるかもしれませんね。
デフォルトでクロスアップも可能でしょうし。
・キュートモン
そのネネの中の人が掛け持ってる一人。
形的にユウは姉(の中の人)に励まされた形……と書こうとして別に成果を上げてないことに気付きました。
それどころかユウに逆にもてなされたり(タギルとガムドラモンも一緒にだけど)、泣き出したり、勝手に行動したり、
勝手に「愛の戦士」なんて名乗ったり、良くも悪くも全然変わってません。うーむ。
ありていに言って、むしろウザいです。正拳突きを食らわせたいと語る人がいる理由がやっと少しわかりました。
つうか君、ソニックボイスはどうしたんだ。まさか忘れたのか。
しかしまあ、キュートモンはこうでなきゃいけないのかもしれません。狙って立てられてるのは間違いない。
ウザ可愛いというのは彼のためにあるような言葉でしょう。存在感は妙にあるんですよね。
タギルの「キュー助」という愛称も嵌ってます。というか、アニメでデジモンに愛称を使う例って珍しいような…
・マミ
ユウを揶揄う…というよりボケ倒していたタギルを拳固でぶん殴るという、光速ツッコミスキルを発動していました。
タギルとの絡みが多いはずなんですが、今のところ本人がユウ目当てなのでなんとも微妙な状態が続いてます。
そもそもこの二人、どーゆー関係なんでしょう。いわゆる腐れ縁というヤツでしょうか。
・アイル
キュートハンターの二つ名を戴く少女。
言わずと知れたリョーマ組の一人にして、本作メインキャラでは貴重な女性メンバーです。
そのハントスタイルは自分で言ってる通りトラップ主体のもので、しかも罠は自作。
どういう原理でデジモンを捕まえるだけの機能を載せたのか説明は一切ありませんが、手先は器用みたいですね。
だからといって、裁縫が得意かどうかというとそれはまた別のお話という気がしますが。
性格は強引グマイウェイ。目的のためなら、人のデジモンを分捕ることも厭いません。
可愛いデジモンにしか興味がなく、眼鏡にかなうもの以外は仲間に押し付けるという我侭な性格でもあります。
しかし原理はともかく彼女の罠は確かに効果的で、リョーマたちにも一目置かれている模様。
とはいえ、ユウにはいきなり完敗を喫してしまった上に見逃されるという苦杯を嘗めることになりました。
残念ながらこの時点でもはや何をやっても格下です。挽回のためには彼女自身が変わるしかない。
どうやら、ユウとのライバル関係が見えてきましたね。なにかと女性に縁があるなあ。
キャラ的には確かに悪女ですが案外どぎついところが少なく、決して憎まれ役タイプではないです。
どっちかというとギャグ回で場をカオスに引っ掻き回す部類ですね。自爆もよく似合いそうだ。
・オポッサモン→チョ・ハッカイモン
アイルのパートナー。元はテイルモンから進化するというアーマー体です。
彼女自身もアイルにべた惚れというか、可愛い自分を見て欲しいがために側にいるような感じ。
ゆえにキュートモンへは相当のライバル心を抱き、アイルの態度に一喜一憂していました。
自己顕示欲の高さという意味じゃ、相方と似た者同士のいい勝負でしょう。
超進化を遂げると一転、まさに猪突猛進なキョーボー娘となります。
極めて趣味的なデザインなのですが、八島氏の絵のおかげか全く気になりませんでした。
声は相撲取りを意識したかのような太いものとなり、ガラッと差別化されてます。
オポッサモン共々、アカリやメルヴァモンと同じ人とは思えません。声優さんってすげえ。
彼女の戦い方はどっちかというと、罠主体のアイルとは相性が悪いように見えます。
無論いざとなったらパワーで押すこともできるということですし、その力も相当のものでした。
でも主役側にツワーモンがいるのでは、現段階じゃ役者不足の感があります。
・リョーマとレン
アイルを補助するため、タギルとタイキの妨害に現れました。
タギルを先に行かせたタイキに2対1のハンディキャップマッチを強いることになるんですが、なんと放置。
結果がわからないまま、気付いたらタイキが皆と一緒に笑ってました。何があったんだパート2。
相手が悪いというべきなのか何なのか……一応、サイケモンの初進化などネタはあるのですが。
考えてみたらこの人たち、初登場からずっといいとこなしですよね。
タイキに首を突っ込まないでくれと言っていたのは、挑発じゃなくて本心で言ってたのですか。
そりゃまあ、いきなり百戦錬磨が殴り込んできたのでは無理もないですけど。
タイキ本人にハントする気がなくても、後ろにくっついてるタギルが全部攫って行ってしまうし……
うーん、このまんまだとライバルというよりお笑い集団になってしまうぞ。
かといってライバルが強すぎる連敗展開も望まれてないと思いますし、さじ加減が難しいですね。
ところでタギルはリョーマをライバル視してますが、当のリョーマはタイキを意識しています。
しかし現状では、リョーマの相手は今のタギルでも充分つとまる気がしてならないんですね。
そうすると、地味なレンがものすごい勢いでいらない子になっていくのです。今のままじゃ誰とも釣り合わない。
問題だ。これは問題だ。
地味キャラのまんま終わらなきゃいいんですが……
タギルとガムドラモンがやらかす可能性が減ったんで、代わりに暴走を起こす役ぐらいしか今は思いつきません。
★名(迷)セリフ
「キュートモン…なんてド直球な名前なの! グッドよ! 超グッドよ、あの子!」(アイル)
キュートモンを見つけて。…誰もが思ってて言わなかったこと言っちゃったよ。
しかも性格的にキュートモンとは相性がいいというか、キュートモンの性格が好みに合ってたみたいですね。
中の人が声優としては素朴寄りの声質と演技なので、独特の雰囲気を醸成しています。
「待つキュ! ユウに手を出すとこの愛の戦士、キュートモンが許さないっキュ!」(キュートモン)
ユウを襲ったアイルに。君は愛戦士ニコルか。
キングとなったシャウトモンと共に戦うなかで、自分なりの肩書きってものを名乗るようになったのでしょうか。
ひょっとしたら調子に乗ってるだけなのかもしれませんが、そこまでは追求しないでおきます。
「ほう…2対1をあえて選びますか。さすがだ…!」(リョーマ)
タギルとユウを先に行かせ、単身で立ちはだかるタイキに。
表情から何かこう、抑え切れぬ「嘗められたもんだ…!」感が溢れ出ている気がします。本質は凶暴なのかもしれません。
デビルマフィアなアスタモンの外見がそれを助長していますね。
ただ、他ならぬ彼本人の発言からタイキとはまだあまり戦いたくない、という本音も垣間見えるんです。
逆に考えて、伝説の英雄にも比肩できる何かを追っていると考えることもできます。動機はなんだろう。
フツーに考えれば、今回は時間稼ぎだけしてさっさと撤退したんでしょうね。リスクを取るタイプには見えません。
「…そうか。だからゲームみたいにハントしているオレに突っかかってきたのか……
だがな、言っとくぞユウ! オレの遊びは半分じゃねえ! 全部だっ!
ハントは面白ぇよ! デジモンも助けられるんだから、一石二鳥じゃねえかっ!
だからオレは今、あの泣き虫のキュー助を助けるんだっ!」(タギル)
ダメモンへの想いを吐露したユウに。君は道明寺誠か。
ユウの気持ちが今の彼に分かるはずもないし、本人もそれを自覚しているのでしょう。
ただ、彼はユウと違ってより現実に近いところでデジモンの存在を知っています。ゲームだから傷つかないと思ってもいない。
危険を乗り越えてでも触れる価値のある何かを感じているからこそ、きっと彼らは走るのです。
そんなタギルの行動は、言外に「お前の相棒への気持ちも、遊び半分だったのか? そうは見えねえ」
と示しているように、少なくともユウには思えたのかもしれません。それだけは、ユウにも確実に否定できることです。
「何やってんの、チョ・ハッカイモン! 無能なヤツはグロカワじゃなくて、グロよ!」(アイル)
アレスタードラモンの妨害に手を焼く相方に。斜め上な価値観だ。
それにチョ・ハッカイモンがギリとはいえ許容範囲とは、意外と広範な美的感覚を持っているようですね。
「蘇るのはこの場所と決めていた…でも、それにはユウが強い心で導いてくれなきゃダメだったの。
一人でも戦い抜く、強い心で……強くなったんだね、ユウ!」(ダメモン)
ユウと再会して。
なんか、自分で仕掛けたようにもそうじゃないようにも取れるセリフです。
最も無難な解釈は
「魂は戻ってるんだけど肉体が戻らず、復活にユウの手を借りる必要があるとわかったので思い出の場所で待っていた」
という感じでしょうか。相棒がいなくてもやり抜くと決意した途端に戻るとは、ある意味で皮肉です。
やっぱりユウの心の色は「決意」なのかもしれません。男の仕事の8割を占める要素ですね。
それにしてもダメ出しが得意なだけあって、なかなか高いハードルを用意していたものです。
ユウの心が折れて、デジモンに関わるものから遠ざかるのではないかという危惧もひょっとしたらあったのかもしれませんが。
「でも、あんな相手に苦戦するようじゃまだまだダメダメね」(ダメモン)
ラストシーンにて。さっそく得意技のダメ出しが炸裂しています。
でも裏の意図のない、純粋に揶揄いのためだけのダメ出しというか…心から楽しんでの一言という気もしますね。
ダメ出しされたタギルたちの方はいい面の皮ですけど。「あんな相手」扱いされたアイルたちはもっとか。
★次回予告
次は剣道とコテモンですか。ますます「セイバーズ」っぽい。ってか、なんで皆剣道着つけてるんでしょう。
もしここでゼンジロウの話が出なかったら、もはや存在抹消されたと思うことにします。果たして。