お好み焼きパニック! パグモンだらけの街

 脚本:吉田玲子 演出:中村亮太 絵コンテ:岡村正弘 作画監督:榎本勝紀
★あらすじ

 お好み焼き屋でいきなりデジクォーツに入り込んだタギルたちは、店主を脅迫していたパグモンを捕まえます。

 意外と人懐っこいパグモンに気を許すタギルでしたが、続いて追うことになったジャガモンとの戦いで
 そのパグモンを巡り、ガムドラモンと思いもよらぬ大喧嘩をしてしまいました。
 臍を曲げたガムドラモンはクロスローダーを飛び出し、居合わせたリョーマのところへ行ってしまいます。

 気晴らしも兼ね、パグモンにお好み焼きを作ってやるタギル。
 ところが、お好み焼きの味を知ったパグモンは大暴走し、体を変質させて増殖しはじめました。
 あまりの数の多さで、さしもの少年ハンターたちも対応に大わらわ。そこへ、ガムドラモンが現れます。
 彼はリョーマのもとに身を寄せてからも、相棒のことが気になって仕方がなかったのでした。

 タギルのもとに戻ったガムドラモンは一計を案じ、パグモンの群れをプールに誘き寄せて生地のように変質させ、
 中から本体を引っ張り出します。パグモンの暴走も収まり、とりあえず一件落着となりました。
 大失敗を相棒にフォローしてもらったタギルは、あらためてガムドラモンの存在の大きさを実感することになります。

 とはいえ、何かと口喧嘩を繰り返してばかりの二人。まだまだ先が思いやられそうなのでした。



★全体印象

 61話です。ハンター篇としては7話にあたる回。
 脚本はキャニオンランド顛末の44話以来となる吉田氏。1クール以上ぶりの参加となりました。

 作画監督の榎本氏は56話でも作監をやってましたが、90年代から実に様々な作品で描いている方です。
 東映でも「ガイキング」「プリキュア」とあちこちに関わっているようです。実にいろいろやってる
 (ちなみに56話の作監表示は間違いでした。修正します)。

 特筆すべきは仕事量の多さで、しかも質が高いです。
 同じくモンスターアニメである「陰陽大戦記」でも重要な位置を占めていたようで、大変頼もしい方のようですね。
 氏や高橋晃氏が所属しているスタジオダブはクロウォ一期から参加してるみたいですが、ここまで前に出たのは確か初めて。
 大塚氏や富田氏が抜けた影響がこんなところにも出ているようです。

 絵の話が長くなりましたが、演出の中村亮太氏や岡村正弘氏も新顔です。
 あいにくと担当作品に見たことのあるものが少ないのですが、少なくともデジモンには初参加の模様。
 今期はかなり急遽立ち上がったみたいなので、今後もこういった飛び入りが増えるかもしれません。
 それもまた楽しみといえば楽しみです。

 やっとシナリオの話題になりますが、さすがによく纏められていて展開にあまり無理がありません。
 巨大お好み焼きとかちびくろサンボ状態のパグモンとか無茶なファクターはありますが、笑ってツッこめるレベル。
 吉田氏はデジモンの場合、作品次第で打率が乱高下する傾向があるのですが、クロウォでは大ハズレがない印象ですね。
 そのぶん担当が少なく、デスジェネラル篇に至っては3話しか書いてないのでこれという一本がありませんでした。
 
 しかして今回は名篇、とまではいきませんが定番の喧嘩→和解回というのもあるし、序盤から選ぶなら候補のひとつ。
 ライバルキャラも実力や度量をハッキリ出してくれており、胸をなで下ろしました。
 今期の場合、誰かに選んで見せたい回としては55、56、58、59、そして今回が目下の候補になりますね。わりといい感じ。

 ……書いてみて見事に米やん回だけが除外されてることに気付いた。我ながらひでえ。



★各キャラ&みどころ


・タギル

 タイキたちが申し訳程度にしか活躍しないので、1話以来の全面的主役回です。
 今回もおバカで危なっかしい瞬間湯沸かし器ですが、パグモンやガムドラモンとのやり取りで柔らかい所を見せており
 それ一辺倒ではありません。ここいらは「東京大激突」や「夏への扉」を書いた吉田氏の面目躍如というところ。
 おかげでキャラの幅が強調されました。ありがとう吉田さん。

 それにしても、苦戦や失敗をやらかすのが相方ともども既にデフォになってますね。
 たぶん、彼らの本当の強さはそこから立ち上がって撒いた種を自分で刈り取る努力をするところなのでしょうけど。
 一度始めたことには、無茶をしてでも最後まで責任を取る。タイキもそういう所を気に入っているんだと思います。

 今回もかなり大失敗をしでかしてるんですが、事が事なので深く追求はできそうにありません。
 いや、だってあんなの誰が予想できるというんです。無理。お世話したら事件発生ってどういうトラップですか。
 タイキとユウの反応がジト目に留まったのは、ですから必然です。あのあたりが限度でしょうね。
 たぶん、誰が預かっても同じくらいえらいことになってたでしょうし。

 演出の部類に入る件かもしれませんが、ガムドラモンの売り言葉で一瞬絶句するあたりも印象的でした。
 ガムドラモンあってのデジモンハントだと、頭ではきちんと理解しているようです。頭では。

 ところで、ああ見えて料理は得意みたいですね。
 お好み焼きしかできない可能性もあるけど、言及されてないので証拠不十分です。


・ガムドラモン

 タギルと同じか、それ以上に頭に血が昇りやすい方。
 ムラっ気があるのでペースも乱されやすく、パグモンに引っ掻き回された前半はだいぶ精彩を欠いていました。
 挙句の果てには勢いだけでタギルのもとから家出してしまい、リョーマのクロスローダーへ押し掛ける始末です。
 ライバルに間借りする主役パートナーなんて前代未聞だ……ある意味規格外すぎる。

 しかし後半では大胆な発想力と行動で一気に事態を収束させるという活躍を遂げ、挽回に成功しています。
 誰も思いつかないような飛躍した発想で突き進み、最後にはものにしてしまう。転んでもただでは起きない。
 それもまた彼やタギルの持ち味なのでしょう。逆境に陥りやすいけど、跳ね返す力も持っているという。

 というかあの顛末はタギルが半ば一方的に助けられる形なんですが、あまり変には感じませんでした。
 なぜなら、感情にまかせて相棒を怒らせたのは彼です。タギルはむしろ仲裁しようとしていたはず。
 つまりあそこでガムドラモンが失敗をかまし、その後でタギルが失敗をやらかす形だったというわけです。

 互いの失敗を許し、フォローしあう。似たもの同士だからできることがあるということですね。


・タイキとユウ

 タギルとガムドラモン、それとパグモンに振り回された方々。
 クロスローダーが小麦粉漬けにされたり、今回もっともひどい目に遭った二人です。
 シャウトモンも後半ちょっと技を出しただけですし、ダメモンに至っては出てさえいない。まあ、こんな日もあります。

 それにしても、タギルにはタイキでさえしばしば手を焼いているみたいですね。良くも悪くも。
 基本的に行動は読みやすいタイプのはずなんですが、時折斜め上のことを始める爆発力があるからなあ。


・メタルティラノモン

 55話でタギルたちにハントされ、56話でもちょろっと出てきた古参デジモンです。
 今回ではなんと、ガムドラモンの代わりに一時自ら戦いを駆って出ました。無口ですが、タギルに懐いてることがわかります。
 あの時点では暴走してただけで、本来はああいう忠犬タイプなのかもしれません。
 もともと、ティラノモン自体が見かけのわりに性質が穏やかで主人の言いつけをよく聞くタイプみたいですが。

 しかしながらパグモンの数の多さで事態収束には至らず、残念ながらそれで出番はおしまい。
 ですが、本パートナーが不在でも一応戦えることをハッキリ示したのは良かったですね。
 相性もあるし、クロスアップもできるガムドラモンがいなきゃ戦力ガタ落ちなのは間違いないところですが。

 ともあれ、ガムドラモンやシャウトモンがライバル達のクロスローダーに閉じ込められるような事態にも対応できるわけです。
 対応できるということは、そういう事態も起こり得るということですね。


・リョーマ

 今回いちばん得をしたかもしれない人。
 ジャガモン相手の華麗なハントで実力を示したと思えば、ガムドラモンへの意外とさばけた態度や、
 長い目で見れば不利になるかもしれないと承知の上でタギルに返す度量など、キャラを大幅に広げています。
 少なくとも、人並みに情は持ち合わせていることがよく実感できました。

 無論ハントには手段を選びませんし、仲間があくどいことをしても止める素振りも見せません。
 それに欲しいデジモン以外はたとえ人間界に害が及ぶ可能性があっても狙わないであろう側面もあり、
 「それはそれ」「これはこれ」と割り切るタイプということはわかります。
 要するに典型的「デジモンハンター」というわけなんですね。

 だからタギルにだけ妙に親切なのも格下と見ており、放っておいてもタイキほどのイレギュラーにはならない、
 と踏んでいるのかもしれませんし、ガムドラモンも好みに合わないので厄介払いしただけ、とも見れます。
 ただ、それだけでわざわざ返しに行くとも思えないので、まあ動かされるだけの心はそれなりに持っているのかなと。
 彼自身は実は悪行と呼べるほどのことはしていないので、仲間になる可能性が増えました。

 …問題はそのとき誰と戦うことになるのか、ですが。


・サイケモン

 進化前の状態で初バトル。今回は誰も超進化バンクがありません。
 ジャガモンをまさに瞬殺しており、ハンターとしてのリョーマ組の力を印象づける役割を果たしました。
 単なる色違いデジモンから異例の大出世を遂げた例ですね。ロゼモンもそうですが、こういうことがあると嬉しい。


・パグモン

 今回のハント対象。というか、ハントした後からが本番という珍しいパターンです。
 小型というか幼年期ですけれど知性はたいへん高く、よく喋ります。ただ、悪気はあるようであんまり無い模様。
 調子に乗って言いたいことをポンポン喋ってしまい、後から謝るタイプですね。今回だけで二回謝りました。

 そういう性格だからなのか何なのか、非常に暴走しやすいみたいです。
 お好み焼きを口にすることで体がマヨネーズ色に変化し、分裂するというとんでもない特性を発揮していました。
 その間の記憶はどうやらほとんど無いようです。分身も結局は虚像のようなもので、正体はお好み焼きの生地でした。
 どうやって形成したとか考えたら負けになりそうです。

 が、これ以外は麻痺性の毒アワしか持たない非力なデジモンでもあります。まあ幼年期だしなぁ…
 でも、もしうまく特性を逆活用できれば撹乱や時間稼ぎになら大いに役立つかもしれません。
 一カ所に集まればまた別の力を発揮する可能性もあります。
 発動にトリガーが必要そうなのは厄介ですが……しかも条件を満たしたところで、必ず出るとは限らないのです。

 中の人は西村ちなみ氏。デスジェネ篇のロップモンですね。
 よりイタズラっ子っぽい演技になってますが、声を含めてたぶん過去に出たパグモンでは一番可愛いのではないかと。


・ジャガモン

 商店街でジャガイモを食いあさっていたデジモン。テイマーズ以来の出演です。10年ぶりか。
 トリッキーな戦法でガムドラモンを翻弄するのですが、現れたリョーマ組に一瞬でハントされてしまいました。
 タギルとガムドラモンの喧嘩の遠因のひとつですね。
 捕まって消えた人たちはどこに行ったんでしょう? ハントされたことで元に戻ってればいいんですが。

 このデジモン自体も、あの後どうなったんでしょうね。
 何しろ単にお手本を示すためだけに捕まえられたので、あのリョーマがいつまでも持ってるとは思えません。
 レンとアイルが拒否ったらリリースするしかないかもしれません。

 そういえば、クロスローダーと捕まえたデジモンの紐ってどうやって外すんでしょうね。
 平たく表現するなら、どうやったら逃せるんだろうって話になりますが。


・お好み焼きのとんちゃん

 タギルたちがパグモンと出くわした店。後半で店ごとデジクォーツに引っ張り込まれます。他にも被害多数。
 この事実が示すものは、なにげに超危険。事によっては、世界じゅうがデジクォーツに引き込まれることさえあり得るわけです。
 そうなったらもう、ハントだなんだと言ってられないかもしれません。まあ、大状況ですから起きても終盤でしょうが。

 ところでこの店、たびたび襲われているところからみて相当美味しいのでしょうね。お好み焼きが食べたくなってきた。
 店主も何かこう、いかにもという感じの人です。最後には半ば開き直る形で作戦に協力してくれました。



★名(迷)セリフ


「行ってみようか? ま、彼がこの事態をどう収めるか、私も興味あるしね」(リョーマ)

 タギルをしきりに気にしているガムドラモンに。
 このセリフによって彼らがあくまでもライバルであり、敵にはなっても本物の悪党や大ボスにはなり得ないとわかります。
 あと格下とは思ってるかもしれませんが、タギルの行動力には一目置いていることもよくわかりますね。


「喧嘩しにきたんなら後にしてくれ。こっちは早くこいつらを何とかしなきゃならねえ…!
 大変なことになっちまうんだ!」(タギル)


 再び現れたガムドラモンに。
 本当にヤバい時は事態へ真剣に向かい合い、優先順位を間違えない。それがタギルという男ですね。
 単純にいっぱいいっぱいで、他のことに気持ちを向ける余裕がないだけかもしれませんがそれは言い過ぎな気がします。


「…ありがとな、ガムドラモン。やっぱお前がいてくれないと、オレは…」(タギル)
「…オレも、タギルと一緒のほうがおもしろいぜ!」(ガムドラモン)

 和解シーン。演出込みで印象に残る場面です。直後にまた口喧嘩を始めるのもお約束。
 今回はタギル、ガムドラモンともにいろんな表情を見せてくれているので二人がツボな人には割とたまらん回でしょう。



★次回予告

 一般公募デジモンのガネモンが早くも正式登場。
 新キャラとして新たなハンターも出てきますが、なんとなく地味そうです。ドーベルモンはともかく本人が。
 この先入観がいい意味でひっくり返るといいんですが。