おいしい? まずい? デジモン・ラーメン勝負!

 脚本:米村正二 演出:角銅博之 作画監督:小松こずえ
★あらすじ

 ラーメン。それは人類、とりわけ日本人にとって慣れ親しんだソウルフードのひとつ。
 タギルのクラスメイトであるマサルの家も、そのラーメン屋でした。ところが、すぐ隣にラーメンの行列店ができ、
 以来客足が途絶えてしまっていたのです。

 ここは一肌脱ごうと業績改善のアイディアを持ち寄るタギルたちですが、店は一転して大盛況になっていました。
 しかしマサルの父である店主は人が変わったようになり、客に怒鳴りつけるようになってしまっていたのです。
 マサルの証言から尋常でないものを感じたタギルたちが調べてみると、事はやはりデジクォーツ絡み。
 デジクォーツでラーメン屋を開いていたオーガモンとフーガモンに店主が協力し、スープを提供していたのでした。
 オーガモンたちは代わりに激辛調味料と怪力でコシの強い仕上がりにした麺を提供し、客足を伸ばしていたのです。

 事件性のあることは何もしていない彼らを止めるべきかどうか、迷うタギルたち。
 が、マサルは納得がいきません。以前の父は何よりも客に喜んでもらうことを望み、自分の味を押しつけなかったからです。
 もとの父に戻ってもらうため、マサルはタギルたちの全面協力のもと、店主にラーメン勝負を提案。

 果たして勝負の日、店主は驚愕に襲われました。マサルのラーメンは、店主自らが得意としたスープを使っていたからです。
 しかも新たにアサリを味に加えて。客に暖かい気持ちになってもらいたいという、店主自身の原点がそこにありました。
 今のあり方を考え直そうとする店主でしたが、納得がいかないのはオーガモンとフーガモンです。

 力づくで店主に協力させようとする二体。もちろん、そのような暴挙を少年ハンターたちが許すはずもありません。
 かくて捕獲されたオーガモンたちは反省し、店主と和解。店主もマサルの示したヒントをもとに、再出発を誓うのでした。
 こうして、お客の心を大事にする優しい味のラーメンがひとつ守られたのです。
 


★全体印象

 66話です。脚本は米村氏。作画の小松氏はあまり作監をやってませんが、その腕はやはり確かなものがありますね。

 デジモンには何かと縁のある、ラーメンを題材にしたお話です。
 内容としてはほとんどグルメアニメで、最後にちょろっとバトルする以外はデジモンでやる話かどうかさえ少々疑問。
 しかし、そういう話として割り切るならば出来はさほど悪くありません。ラーメンが食べたくなります。
 …ただ、悪くはないんですが……誰かにわざわざ見せたいと思える話でもないんですよね、これが。

 というか、ダメモン復活以降はハッキリ言って63話のアカリ登場ぐらいしかコレというお話がなかったりします。
 あとはパグモン回とヒデアキ回程度でしょうか…64話のネネ回はあんまりオススメできない出来ですし。
 他もそこまで悪いというほどじゃないんですが、ちょっと地味すぎやしないでしょうか。語れる箇所も少ないし。
 
 この時ハン篇は、急遽決まったものと聞いています。
 だとしたら、初期設定のあとどう展開するか全然決まらないまま走ってるのかもしれません。そう見えます。
 68話がひとつの転機になるのか、それとも……



★各キャラ&みどころ

・タギル

 相変わらずおバカならぬバカが強調されてますが、今回は他のメインキャラ同様ほぼ脇役なので、あまり目立ちません。
 あの割とバカ丸出しなアイディアが結局採用されなかったのは救いです。そこらへんは妙にバランスが取れていたりする。
 剣道回でも結局、公式戦では一回も勝っていなかったりしますし。

 でも、ユウをうまくペースに乗せたあたりは良かったかもしれません。
 性格的に、計算でやったことじゃないんでしょうけどね。やったとしても咄嗟にでしょう。


・タイキ

 メインキャラでは一番目立ってなかった人。最近、いくらなんでも自重しすぎではないかと思いはじめました。
 まあ、こういうお話で目立っても意味がないといえばその通りですが……


・ユウ

 裕福で本人もプロ並みの腕前を持ってるので、店主のラーメンに唯一何かを感じ取れたのは納得の人選。
 そんな勝ったも同然な人生を歩みつつも結構感情の起伏が激しく、タギルに乗せられてしまうあたりはバランスですね。
 この二人はなんだかんだと対等な感じです。タイキの存在が上に平等に乗っかってるおかげもありましょう。


・パートナーたち

 超進化したのはアレスターのみ、しかも戦闘中じゃないという珍しい扱いです。
 相手がそんなに強くないし、そっちにあんまり尺を取るのもヘンですから別にアレでいいんでしょうけど。
 毎回クライマックスは疲れますが、毎回デフレというのも案外気が抜けますね。うーむ。

 …ところで、ダメモンに麺を叩かせるのは何かと問題があるような気がします。衛生的な意味で。
 え? たまたまああいう形をしているだけですって? そう言われても。


・マサル

 ゲストキャラ。どっかの喧嘩番長みたいな名前ですが、とても喧嘩が強そうには見えません。
 今回の実質的主役でもあります。登場こそサブキャラ風ですけど、扱い的には完全に中心人物といっていいでしょう。
 ものが食とそれへの拘りという割にわかりやすい題材なので、立てやすかったろうなとは想像できます。

 料理、ことにラーメンは年齢を考えるとかなりの腕前。父に原点を思い出させるほどですから、相当のものです。
 ただし店主には「まだ客に出せるレベルではない」と言わせているので、描写的にバランスは取れています。
 勝敗ではなく、父に初心を思い出させるためと考えれば妥当な落としどころでしょうね。

 今回のみのゲストと考えれば、王道ながら良くできてる人物です。
 今後のお話には他のクラスメイト同様、モブとして出られれば幸いというレベルですが…これはまあ仕方なし。
 それにたとえ僅かな登場でも、それが視聴者のテンションを上げることはままあるので。

 声は浦和めぐみ氏。何の因果か、02のラーメン回でメインだった伊織の中の人です。
 クロスウォーズ的にはドラコモンの人ですね。一応ビミョーに再登場フラグが立った気がする。


・店主

 マサルの父でラーメン屋の店主。決して異能者でも超生物学者でもありません。本名はカツジで、店も同じ名前です。
 小さくても客に喜びを与える優しい味の店を…という典型的な物言いですが、それが悪いとは思えません。
 本人は行列店のやり方も否定していないので、考え方の違いにすぎないのでしょう。

 ただ、味と話題性を兼ね備えた店がひとたび近くにできれば潰れるのはそういう店のほうです。
 だから外から見た場合、彼の選んだやり方とその心情もわからないわけではないんですよね。
 オーガモンたちの協力で客足が伸びたのは事実なので、余計にそう感じます。
 ましてや、客をフラフラ誘うような小細工は一切仕込んでいないわけでしょう。

 客や金が欲しいのなら、あのやり方でも本当は間違いじゃなかったのだと思います。
 要はそれでみんなが納得できるのか、何よりも彼自身がそれでいいと心底思えるのかどうかなのでしょう。
 前にもどっかで書きましたが、最適な方法だけを選べるほど人は強くないし、割り切れもしません。
 間違っても傷ついても、自分で納得できる方を選ぶ必要があるのです。要はそういうことなのでしょうね。

 中の人は山崎たくみ氏。デジモンには確か初出演です。
 塩沢兼人氏の代役を数多く演じている方ですが、昔からそれだけではない幅を持った人でした。
 今回のような頑固オヤジをやらせてもハマりますね。というか、どっちかというと根は善良な役が多いので
 スパロボOGのアーチボルト・グリムズみたいな生粋のクズ野郎は結構珍しい役柄だったりします。


・オーガモン&フーガモン

 デジクォーツでラーメン屋を経営していた二人組です。
 いったいかの世界の構造はどうなってるんだろう……なんか割と大勢のデジモンたちが生活してるようですし。
 アレってシャウトモン的には行方不明者扱いなんじゃないんでしょうか?

 さておき、怪力で打ち出した麺は美味いらしいのでそっちの腕については確かみたいですね。
 しかしスープについてはさっぱりというか、そもそもダシを取ることさえ知らなかったようです。
 たぶん人間界に近づいてラーメンの存在を知り、見よう見まねで始めてみたというのが正解に近いでしょう。
 その割にはいい線いっていたほうかもしれませんね。

 でも結局は真似なのか料理に込めた心までは理解しきれず、それが店主にも伝染した模様。
 要するに店主ともども、少々暴走していたというわけですね。こういうのも暴走というのかはともかく。
 だからなのか、捕獲されたあとはすっかり大人しくなってました。これは他のハント対象にもいえることです。
 デジクォーツに根城をかまえるデジモンたちは、基本的にどっかおかしくなっているのかもしれません。
 コテモンのような例外はあるにしても。
 
 声はオーガモンが大友龍三郎氏、フーガモンが高戸靖弘氏です。ヴァンデモンとエレキモン。
 クロスウォーズ的にはセトモンとアイスデビモンですね。いずれにしても結構な豪華キャストでしょう。

 ところで、ヒョーガモンって一回もアニメに出たことありませんよね。日の目を見るのはいつのことか……


・モブのみなさん

 ミケモンにポロモン、エレキモン、オタマモン、フローラモン、キウイモン、ハヌモンが見受けられます。
 デジクォーツでラーメンを食べていたのはゴブリモンでした。このデジモン、なにげにろくな目に遭ってません。
 


★名(迷)セリフ


「なーにゴチャゴチャ言ってんだ! こーゆーのは一言『うめえ!』でいいんだよ!」(タギル)

 スープの感想を述べるユウに。意外と印象的なセリフが多い回です。食がらみだからでしょうか。
 直後にタイキにまでタメ口を叩いていて「アレ?」となったりもします。


「話題性はもちろん大事だけど、やっぱり基本はラーメンの美味しさですよ。
 その上で今弱いのは……麺!」(ユウ)


 アイディア持ち寄りの場面で。
 どう考えてもデジモンアニメのセリフではないのですが、いちおう印象的だったので挙げずにはいられませんでした。
 タイキともども、タギルの案を採用するでもなくスルーし切るでもなく、微妙な扱いにしていたりします。


「客が来ねえ苦しみにくらべたらマシだ!」(店主)

 夜、オーガモンたちと働いてる場面を抑えられ、昼夜働きっぱなしでは倒れると言われて。
 割に魂の叫びです。気持ちはわからないでもありません。いやマジで。


「アサリだよ」(マサル)

 ラーメン対決にて、スープの味にもうひとつ加わっていると気付いた店主に。
 これも物凄くグルメ漫画なセリフなんですが、書かずにはいられませんでした。一応クライマックスですし。
 それにしても米村氏はラーメンに一家言あるようです。仮面ライダーカブトで共に仕事をした井上敏樹氏の影響でしょうか。

 ああ、そうか。何か思い出すと思ったら、カブトっぽいんだこのお話。



★次回予告

 気合の入った鉄っちゃんのお話。
 ロコモンといえば暴走がついてまわるのは、もはや宿命みたいなものなのでしょうか。