友達欲しい? フェレスモン悪魔の約束
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脚本:相内美生 演出:細田雅弘 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
タギルは通学途中、見知らぬ少年にぶつかってしまいます。
少年が落としたストラップを探しているうちに彼は遅刻してしまうのですが、学校に来てみるとどうも様子が変でした。
クラスメイト皆があの少年…マコトを異様なまでに歓待し、普段ならやらないような行動まで取り始めていたのです。
事件はフェレスモンの仕業でした。親の転勤続きで友達ができないマコトを唆し、彼を通してクラスメイトを操っていたのです。
行動はまたたく間にエスカレートし、学校中の生徒から先生に至るまでがマコトたちの言いなりとなってしまいました。
タギルもタイキも、ユウたちが相手では手出しできません。囚われた目の前で、フェレスモンは恐ろしい儀式を始めます。
校庭に集めた学校の皆をデジタル化して取り込み、最強のデジモンになろうというのです。
そうはさせじと攻撃を仕掛けるタギルたちでしたが、敵の妖術にかかってしまい動きが取れません。
勝ち誇るフェレスモンは、マコトをも取り込もうとします。従いかけたマコトを止めたのは、タギルでした。
彼はマコトの寂しさを一目で感じ取っていました。ストラップを探したのも、そんなマコトの友達になりたいと決めたがゆえ。
自分にはもう、最高の友がいた。己の愚かさを悟ったとき、マコトはフェレスモンの魔力を振り払っていました。
激怒するフェレスモンはマコトを攻撃しようとするのですが、アレスタードラモンらが弱まった呪縛を打破。
連続攻撃によってフェレスモンは捕獲され、学校の皆も無事もとに戻ったのです。
マコトはフェレスモンに、いつか本当の友達になろうと語りかけるのでした。
後日、タギルは卓球部の仲間と部活動に勤しむマコトの姿を見つけます。
学校にまた一人、デジモンの存在を知る仲間が増えたのでした。
★全体印象
69話です。脚本は初参加の相内美生氏。実写ドラマで活動していたようですが、2008年あたりを境にどういった心境か、
アニメ中心へシフトしたみたいですね。シリーズ構成担当としては「スティッチ!」三期があります。
同番組は東京において当初クロスウォーズの直前時間に放映しており、その意味では浅からぬ縁。
ここへ来て新顔スタッフ投入とは、いろいろと事情が鑑みられますね。
まず、去年9月から始まった「仮面ライダーフォーゼ」に三条氏が参加しており、デジモンへの比重が弱まっていること。
事実、氏の執筆回数は「時ハン」以降の5回に対し、フォーゼはサブライターにも関わらず8回とバランスが傾いています。
次に、米村氏がもうすぐ始まる「スマイルプリキュア」においてシリーズ構成を担当していること。
これによってデジモンへの比重が小さくなるのはさすがに目に見えているため、その穴を埋めるためにも
相内氏が呼ばれた可能性があります。スティッチには一応、両方とも関わっていましたからそっちの縁かも。
こうなるとプリキュアが心配ですが、それはまた別の話。
さて内容はというと、村上氏にちょっと似た直球路線ですね。前回のようなお話をこなせるかどうかは未知数ですが、
通常運転回であればとりあえず何の問題もなさそうです。タギルがいいヤツすぎる気がしないでもないんですけど、
変にバカになるよりはいいですね。というか初参加なのに米やんより(ry
いずれにせよ、区切りごとにボスがいた一期や強敵強敵また強敵の連発だったデスジェネ篇に比べ、
この時ハン篇に地味な印象を拭い切れないのは確かなところだと思います。前回はむっちゃ派手でしたけど。
ただ、途中から入るぶんには割と見やすいでしょうし、その気になれば長く続けやすい形式なのもまた確か。
どのような路線転換があったとしても対応できる、実はかなり手堅い構成なのかもしれません。
なんか、このままラスト前まで通常運転な気もしてきましたが……
そもそも何話構成なのでしょうね、今期って。半年でも一年でもいけそうなんですが。
★各キャラ&みどころ
・タギル
ストラップが飛んでいったのを見て、謝るのと同時に探しに飛び出したあたりが好感度大です。
あれがあるから、後半のセリフにも大きな説得力が出るんですね。小さいかもしれませんが、重要なことです。
それも含めて、上に書いたとおりちょっといいヤツすぎるきらいも無くはないのですが、
もともとタギルは気に入らないヤツとも連携してみせるし、凄いと認めた相手の言葉はもっとよく聞きます。
必要以上に意地を張って、自分の過ちを認められないような子でもありません。もともといいヤツなのです。
ですので、今回の描写も普通にアリな範疇だと思いますね。なんといっても主役っぽかったし。
タイキたちと比較されがちな彼ですけど、主役級としての待遇は充分もらってると思います。
ユウとは対等だし、タイキは空気を読むし、キリハとネネはたまにしか出ないという形で空気を読んでいるし。
その上で彼なりの考え方や彼なりの良さも出せてると思うんですが、いかがなもんでしょう。
・ガムドラモン→アレスタードラモン
タギルに引っ張られたかのように、こちらも結構アツいセリフを吐きまくっていました。
相棒のことを熟知したセリフには、見ているこちらも思わずニヤリとしてしまいますね。
プリズムギャレットは相変わらずの必殺率。体格が同じなら、当たればほとんどの敵をKOしている気がします。
ヴォルクドラモンあたりになると、さすがに正面からじゃ厳しいでしょうけど。
・タイキ
行動を起こそうと逸るタギルをやや強めに制したり、今回は先輩風がちょっぴり強いです。
実際には今回もタギルを立てるような行動パターンなので、ファンの目にはいささかもどかしいかもしれません。
端々で音頭を取ってはいるものの、結果だけ見ると見せ場はほぼ全部タギルなのですから。
かといって目立ちまくるようだと、それこそ出番自体を封じられることになるし…難しいですね。
・シャウトモン→オメガシャウトモン
アレスタードラモンよりも先にフェレスモンの呪縛を打ち破り、カウンター気味のオメガ・ザ・フュージョンという
本気と書いてマジな一撃を拝めました。この技出したのって、「時ハン」じゃ確か初めてですよね?
それだけ、フェレスモンが設定と豪語に違わぬ強敵だったということなのでしょう。
・ユウ
マコトを通してフェレスモンの呪縛にかかってしまっていたため、見せ場はほとんどありません。
おまけに一発芸と称して変な顔をさせられるし、散々な目に遭った回です。
タギルにこのことを揶揄われて顔を真っ赤にするくだりは、二人が対等であることをよく示す場面。
このような事情から、ダメモンの出番は全くありませんでした。
呪縛にはまってる間、いったいどこにいたんでしょう。事情もわからないまま鞄の中、かな。
・田村マコト
見るからに気弱そうな転校生。
親の転勤が頻繁なために転校が多く、なかなか友達を作れないという悩みをかかえていました。
ゆえに友達が欲しいという想いが人一倍強かったのでしょう、フェレスモンに目をつけられることになってしまいます。
この設定を見て誰かを思い出すと思ったら、確か「フロンティア」の輝二がそうだった憶えがあります。
ただ輝二の場合はあくまで設定に留まっており、本編では強調されてなかった記憶もあるのですが。
そーいえば「フロンティア」全体においても「友達」というものが各メンバーの重要な成長ファクターでしたっけ。
これは特に24〜26話あたりにおいて描写されていたはずです。
閑話休題。とにかく、フェレスモンの甘言に乗った彼を待っていたものはベタベタな独裁政治でした。
あれは友達関係ではなく、それどころか人間的関係ですらありません。ロボットの方がまだマシというものです。
何故ならロボットは自分で努力して作ることもできますが、このケースは人心を妄りに操って従わせているのですから。
もちろん、そのような関係は彼の望んだものではありませんし、それは本編の描写から明らかです。
にもかかわらず、あのような暴走をした背景には「どんな形でもいい、独りになるのだけは嫌だ」という想いが
あまりにも鬱屈しすぎていた事実があるのでしょう。しかもそれは誰のせいでもなく、堪えねばならぬ環境ゆえん。
フェレスモンは、そんなマコトに応えようとしただけなのかもしれません。
そう見ますと、今回はデジモンのお家芸でもある家庭問題や社会問題にも積極的に切り込んだお話といえそうですね。
誰のせいにもできないという点において更に。
中の人は小林ゆう氏。デジモンには確か初参加です。
声優としての活動開始はフロンティアより後と割に最近ですが、演技には定評があるブレイク真っ最中のお方。
もちろん男の子役も多数こなしており、今回も力の入った演技を聴かせてくれます。
・フェレスモン
天使を装ってマコトの前に現れました。実際は皆さんご存知の通り、堕天使デジモンです。アニメ初登場。
後から正体を現すあたりは再び「フロンティア」からの引用になりますが、アシュラモンを思い出しますね。
その悪行は上に書いた通りですが、端々に彼自身も独りで寂しさを持て余していたっぽい描写があるため、
完全な悪役というわけではありません。少なくとも、マコトと友になりたいという気持ちだけは本当みたいですね。
ただ、シャウトモンたちと違って人間のことを知らなさすぎるためにあのような行動を取ったようです。
無論ものには限度というものがあるので、現行犯逮捕はやむないところでしょう。
実力はたぶん素でもかなりのものですが、ユウたちから力を吸い上げて巨大化、さらにパワーアップしています。
必殺のブラックスタチューは破壊力よりも、当たった対象を石化してしまう効果の方が非常に厄介といえましょう。
事実、直撃を受けたタギルすら直接的ダメージは受けていませんでした。
ただこの石化はマコトの精神状態に左右されるのか、彼が正気に戻ると極端に弱まってしまう難点があります。
それは本体の戦闘力にも影響するのでしょう、すぐ後の連続攻撃であっさりと捕獲されてしまいました。
救いがあるとすればマコトが声をかけてあげたことと、その際の表情ですかね。
中の人は堀川りょう氏。言わずと知れたベジータの人です。端正な声なので、昔はもっぱら美形役でした。
デジモン的にはマクラモンが意外な配役として印象的です。あれからもう10年以上か…
・学校のみなさん
マミを筆頭に、過去のゲストが大勢顔を出しました。2度巻き込まれたメンツがかなりいることになりますね。
モブにとどまってはいますがトキオにミホ、キイチ、マサルもちゃんといます。
前半には全員の席を俯瞰で眺められるシーンがあり、たいへん貴重な資料といえるでしょう。
この中のあと何人がデジモンと絡むことになるのか、注目したいところですね。
★名(迷)セリフ
「平和で居心地のいい世界をつくるには、皆と友達になるのがいちばんだ。できれば、私ともな」(フェレスモン)
怪しさ大爆発の表情から急にトーンダウンし、ひどく自信なさげな顔になるという、どちらかといえば絵的に印象的なセリフ。
彼もまた友を作り損ねた経験が山ほどあり、君は友達になってくれるだろうかと不安が表に出たのでしょう。
偽りの友情の中にある数少ない真実が、このやり取りで垣間見えます。そのあとの普通に嬉しそうな顔も含めて。
もっとも、フェレスモン的にはウソなんて一度もついてないつもりなのかもしれません。
「オレのこと憶えてるのか!? だったら余計諦める理由がねえ…!
お前には、渡したいもんがあるからな!」(タギル)
今朝に少し会っただけだろうと、夢見のままに口走ったマコトへ。
その手の中にあったものは、マコトが想いをこめて持ち歩いていた大切なものでした。
ふたつの人形をしっかりと結ぶ緑の紐は、誰が結んだものなのでしょう。マコト自身と考えるのが妥当でしょうね。
「そいつは無理ってもんだな…!
タギルってヤツは、一度心でぶつかるって決めたら…ぜってぇ諦めねぇ、しつこいヤツなんだよ!
今朝だってそうだ…! マコトと絶対友達になるんだって、張り切っちゃってよ…!
おめぇはな…こんなことしなくたって、とっくにタギルっていう最ッ高の友達ができてたんだよ!」(アレスタードラモン)
一部略。もう諦めろと凄むフェレスモンへの切り返しです。。後半はマコトに向けたセリフ。
タギルと軽口をたたき合い、時には大げんかして、それでもまた手を取り合った彼らならではのセリフです。
説得力ではタイキ組より上かもしれません。
「フェレスモン…ボクたちいつか、本当の友達になれるかな?」(マコト)
捕獲され、クロスローダーの中にいるフェレスモンに。
私をまだ友と呼んでくれるのか… そう口走らんばかりなフェレスモンの表情が印象的です。
デジモンと人間。テイマーと呼ばれ、デジモンと信頼関係を築く人々の手にはいつも特別なデバイスがありました。
そうした媒介抜きに、人とデジモンが友情を築くことはあり得るのでしょうか?
あったらいいな、と個人的には思います。だって、そのほうが面白いじゃありませんか。
★次回予告
なにやら「鬼太郎」を想起させる怪奇篇になりそうな雰囲気です。
どうやら新キャラっぽい心霊ハンターに加え、アイルとも共闘ムードと華のある一編にもなる気がしますね。
ホラーには女性の悲鳴がつきものですし。
え? キャストのほとんどが女性だろうって? 言われてみればそうだ。