ドキドキ恐怖体験! 心霊ハンターが吠える!!

 脚本:米村正二 演出:貝澤幸男 作画監督:直井正博
★あらすじ

 霊界からの声が聴こえるという公衆電話のウワサを聞き、デジモンが絡んでいるのではないかと調査に赴いたタギルとユウ。
 そこで出逢ったカオルという少女は心霊ハンターを自称し、独自に噂を追っていました。

 彼女の後を追うようにしてやってきたのは発電所跡。そこで不意にかかってきた電話にカオルが出た瞬間、
 扉も窓も閉まって開かなくなってしまいました。その上、カオルは何かに呼ばれるように奥へ進んでしまいます。
 追う一同の前に、アイルが現れました。彼女も事がデジモン絡みではないかと睨み、調査に来ていたのです。
 しかしオポッサモンが行方不明になってしまい、途方にくれていたのでした。

 アイルも加えてカオルを追うハンターたち。しかし、そのカオルが皆の目の前で手品のように消えてしまいました。
 続いて、今度はアイルが謎の現象に襲われます。彼女が罠を仕掛けたという大穴に赴いてみると、そこにはオポッサモンの姿が。
 が、何かに取り憑かれているのかアイルの声も届きません。その上超進化が仇となり、大暴走が始まりました。
 アレスタードラモンたちが止めようとするのですが、結果的に大穴の中にいたカオルへ危機が及びます。

 そのカオルを助けたのは、大穴の中にいたパタモンでした。
 彼が罠にかかってしまったので、仲間のポヨモンが怒ってオポッサモンとアイルを襲っていたのです。
 アイルも二体の平穏を乱したことを謝罪し、一同はそっと発電所をあとにします。

 ありがとう。
 カオルの朦朧とした記憶にもパタモンたちの感謝が電話を通し、ひっそりと届いているのでした。



★全体印象

 70話です。前番組である「怪談レストラン」を強く意識しているであろう一編。
 ただし演出は同番組に参加していない貝澤氏の手になるものなので、空気は異なったものになっているはずです。

 その怪談レストランでシリーズ構成を務めていた米村氏が脚本を務めているのも、わりと納得できる人選。
 もしやと思って調べてみたら、ゲストキャラのカオルの中の人が怪談レストランの主役級でした。
 そもそも白石涼子氏も同番組の主役級なので、なにげにヒロイン役が二人揃ってることになります。
 たぶん、このあたりは狙ってやってることなのでしょう。

 内容はというと、細かいところにはいろいろありますが全体の印象を大きく損ねるほどのものではありません。
 ただ、どちらかといえばキレの良い貝澤SDのホラー演出を堪能する回かもしれませんね。
 なにしろ貝澤氏は上記の怪談レストランにこそ参加していませんが「鬼太郎」四期・五期に「ぬ〜べ〜」と
 ホラー系の経験が豊富です。クロスウォーズでも、スイーツゾーンやヴァンパイアランドが記憶に新しいところ。
 おかげで決して規模の大きいお話ではないにもかかわらず、見応えのある一編に仕上がっていました。

 デジモンと心霊ものは、やはり非常に相性がいいと思います。
 身近なものを通し不可解なことが起きるかもしれないという意味において、大きな共通点があるのですから。
 まあデジモンの場合、正体がわかると今度は目に見える危険に変わるのが厄介なところなのですけど。
 そこらへんの空気は「テイマーズ」あたりも色濃いですかね。

 ちなみにタイトルと異なり、別にカオルは吠えたりしませんでした。



★各キャラ&みどころ


・タギル

 どういうわけか、やたらとユウにしがみつく描写が多かった人。誰に投げてるサービスなんだろう。
 今回はそんなに目立ってませんが、堂々と正体を明かそうとして肘鉄を入れられるくだりは
 ああ、米村脚本だなと妙に納得してしまいます。短い間によくもまあ仕込むもんだ。

 というか、無闇にビビリでしたけどオバケ嫌いでしたっけ。今回のみの設定じゃないでしょうね。
 相手がデジモンかもとなった途端に奮起するあたりは、まあ彼らしいかもしれませんが……


・ガムドラモン→アレスタードラモン

 窓を叩いてる場面でちょっと違和感をおぼえました。シッポはどうした、シッポは。
 もちろん、まだそこまでする必要がなかったからなのでしょうけど。いざとなったらやってたでしょう。
 ただ、それでも開かなかった可能性はありますね。

 バトルではチョ・ハッカイモンを止めようとしますが、逆に弾かれてしまってます。
 そのあとのくだりもパタモンがいなかったら大変でしたし、割にいいところなしでした。
 今回はそういう話じゃないので仕方ありませんけど。


・ユウ

 タギルが前半ビビってたこともあり、ほぼ全般的にイニアシチブを取っていました。
 結果だけ見るとそれほど大したことをしてるわけじゃないのですが、アイルを落ち着かせて話を聞いたり
 いざとなれば体を張って庇ったりと、王子様キャラ全開。前回のぶんを取り返した形になりましたね。

 少なくとも、これでアイルから彼への好感度はかなり上がったとみてよいでしょう。
 後に活かされるかどうかはともかく。


・ダメモン→ツワーモン

 忍者キャラらしく気配に敏感なところを見せてはいますが、こちらもさほど活躍してるわけではありません。
 バトルでは、アレスターと二人掛かりでもチョ・ハッカイモンに弾かれてしまっています。
 正面からのパワー勝負では分が悪いようですね。普通の状態じゃなかったから仕方ないかもしれませんけれど。


・アイル

 オポッサモンが行方不明になって不安だったのか、いつになくしおらしい姿を見せることが多かったですね。
 合間に強気なところを挟んではいるものの、ギャグで流されていました。

 オポッサモンを返してと真剣な顔で訴える場面では、視聴者からの好感度も上がったと思います。
 メインパートナーに選ぶだけあって、なんだかんだ言っても大事にしているみたいですね。
 主人公たちとは違う考えを持っているとはいえ、本質的には悪人というわけじゃないのです。

 引っ掛かるのは前々回と比べてもユウへのラブラブ光線を隠そうともしていないことや、
 いったいどのぐらい前からオポッサモンを探していたのかよくわからないことでしょうか。
 
 でも件の心霊情報って、彼女が現地に行く前から流れてませんでしたっけ。
 「ここに」オバケが出ると証言していたので、以前から目撃情報があったのかもしれません。
 つまり、あの電話とは別口ということなんですが…あの動画がネットに流れたのって、いつなのかな。


・オポッサモン→チョ・ハッカイモン

 罠にかかったデジモン(パタモン)の姿を確かめに行った際、恐らくポヨモンに襲われて昏倒していた模様。
 どのぐらいの間気絶してたのかは不明ですが、ポヨモンの力で強制的に意識を奪われていたのかもしれません。

 バトルにおいてはその戦闘力を利用され、手に負えない暴れっぷりを発揮。
 特に超進化から必殺技の態勢に入ってしまうと、アレスタードラモンたちでさえ止めるのは至難の業みたいです。
 モチーフが猪八戒だけあって、純粋なパワー勝負に持ち込めば相当のものがありますね。
 無論、ポヨモンの影響でより凶悪なパワーを発揮していたと見ることもできるでしょう。

 今回で、とりあえずアイルには大事に思われていることがわかりました。
 自分のパートナーが操られて大暴走するとは、ロコモンの件でやらかしたバチが当たった感もありますね。
 もっとも、あの時は正気に戻ったロコモンにすぐさま仕返しされたんですが……

 総じてろくな目に遭ってないコンビです。トラブルメーカーではあっても、ライバルには程遠いでしょう。
 太一たちが出張ってきたら、ますます立場が弱くなりそう。


・カオル

 心霊ハンターを自称する少女。
 なかなかの美人なのですが、心霊現象の追跡に血道を挙げる変わった趣味の持ち主です。
 霊現象に微弱な電磁波が伴うことをヒントに自前の心霊レーダーを使い、事件の舞台である廃発電所へ
 タギルたちを導きました。ただし、本人はあまりタギルたちのことを意識していません。

 霊とみるとテントまで用意して現地へ赴いたり、スマートフォンを改造したと思しきレーダーといい、
 実家はかなり裕福且つ放任主義の可能性があります。変わった趣味にのめりこんでいったこと自体は、
 家の環境とあまり関係ない気がしますけど。
 なぜならば、どうも一種の霊的な力を彼女自身が持っているようだからです。ならばこれは運命かも。
 お話終盤ではこの力がパタモンと結びつき、窮地を脱する力となりました。

 というわけで、デジモンのことは知らないままでした。パタモンがデジモンであることすら知りません。
 発電所での出来事は夢のような曖昧な形でしか憶えていないようですが、パタモンの声は確かに届きました。
 特殊すぎる立ち位置なのでもう出てこないかもしれませんけど、またパタモンと出逢うことはあるのかな。

 中の人は浅野真澄氏。「怪談レストラン」ではメインキャラの佐久間レイコを演じていました。
 個人的には「ちっちゃな雪つかいシュガー」のサガ・ベルイマンが印象的です。
 サガやレイコ、このカオルがそうであるように、キリリとしたしっかり者を演じることが少なくない模様。
 「鬼太郎」のミウもそんな感じでしたっけ。

 ところで、心霊レーダーは実際にいろんな形で存在するとのことです。
 電磁波を感知するというのも同じ。今回のはそのうち、iPhoneアプリとして出ているものをヒントにして
 大型のレーダーを増設、ビジュアル的にいかにもな感じの一品を目指したものと思われます。


・パタモン

 廃発電所にいたデジモンの片割れ。言わずと知れた元祖パートナーデジモンの一体です。
 その愛らしさからたびたび出番にもめぐまれており、レギュラーを2度も経験したことがあります。
 ちゃんと喋る役として出たのはクロスウォーズ始まって以来のこと。

 彼がアイルの罠にかかってしまったことが、物語の発端となったようですが…
 その前から、当該場所でちらほら目撃されてたのかもしれません。アイルに興味を抱かせる程度には。
 外見からしていかにもアイルの広汎な美的感覚に合致するものがありますし。

 とにかく見た目は成長期ながら、明らかにそれ以上と思しき力を持っています。
 電話を通して人々に助けを呼びかけたり、霊的な力で窓や扉を開かないようにしたり、
 かなりのことができる模様。そのわりに自力で抜け出せないあたり、物理的力はさほどないようですが。
 ただし特定の人間と直接的接触をすることで、通常では考えられないほどの力を出せるようです。

 それがカオルだったということは、やはり彼女にはなんらかの霊的な力があるのでしょう。
 助けを求めるパタモンの声を直接聴くことができたのは、実のところ彼女だけなのですし。
 逆に言えば、このパタモンには霊的なものを操る力があるのでしょう。

 罠にかかっている以上、実体はあるとみていいのでしょうが…最後で消えてるんですよね、二人とも。
 単に姿を消すすべを心得ているだけなのかもしれませんけど…ちょっと怖い想像をしてしまう。
 結局、両方ともとっくに死んでるってことなんじゃないでしょうか?

 中の人は佐藤智恵氏。90年代から様々な役柄で活躍している方です。
 個人的に最も印象的な役は「絶対無敵ライジンオー」の小川よしあき(ヨッパー)でした。
 ポケモンにおいても、ポケモン役として何度も出演しているようです。


・ポヨモン

 パタモンの仲間。
 外見そのものは普通なのですが、緑色にあやしく光るため夜道ではけっこう怖そうです。

 霊的パワーの顕現ではパタモン以上のことをやっていまして、カオルを痕跡すら残さずに連れ去ったり
 オポッサモンを不意打ちとはいえ昏倒させて取り憑いたり、生半可ではありません。
 しかも一度取り憑いたら、超進化をしても引き剥がすことはできませんでした。

 とはいえ悪意をもってやっていたわけではなく、パタモンが罠にかかってしまったので
 張本人であるアイルたちや、それを手助けするタギルたちを危険とみなして排除しようとしていただけでした。
 パタモンが罠から開放された後は、すぐにオポッサモンを開放しています。
 カオルを連れ去ったのも、パタモンを助けられるのが彼女だとわかっていたようですから
 導いた、という表現が正しいのでしょう。その際、カオルが発電所の手前でこしらえた怪我を治しています。

 …とまあ、悪い手合いじゃないのは確かなんですが……
 カオルをデジクォーツに連れ去った際、デジモンとしての痕跡を一切残してないのが気になるんですよね。
 やっぱりデジモンとしてはもう死んでいて、霊的な何かの力を借りて存在を維持しているのかもしれません。
 その「霊的な何か」がいったいどういうものなのか、実は何もわかっていないのです。

 中の人は庄司宇芽香氏。時ハンにおいては、タギルの級友やモブとして多数出演してますね。
 声優としては活動を始めてまだそれほど経っていないので、これからに期待です。


・タイキ

 ラストシーンで登場。野球部の助っ人をしていたので、事件のことは知ってましたが関わってはいません。
 アカリの介抱でグロッキー状態という、なかなか羨ましい状態でした。本人にとっては当たり前なのですが。
 君らホント夫婦だよね。


・アカリ

 セリフ無しのワンシーンのみで登場。チラッとでも出るとなぜか妙に安心します。
 彼女のフォローがあったから、タイキも思いっきり頑張ることができたにちがいありません。
 ゴーグルを頭にかけた姿がお茶目。



★名(迷)セリフ


「もしも科学で解明できないことがあれば…そこにある真実が見える!」(カオル)

 ゲストキャラより一献。セリフより演出の回というのもあって、コレというものは他にありません。
 口ぶりから、彼女にはそういう経験があるのだとわかります。
 慌てず、騒がず、軽く見ず、冷静に判断してみて…それでも科学的にどう考えてもおかしい。そんな経験が。
 たぶん学校にもちゃんと行っていて、成績もいいのでしょう。そんな気がする。



★次回予告

 どうやらギャグ回になりそうです。
ベツモンがアニメに登場するのはこれが初めて。いったいどんな声になるのでしょう。山ちゃんだったら面白いかも。
よく見ればハーピモンもいます。クロスアップするかな?