海底大冒険! 夢の財宝デジモンを探せ

 脚本:米村正二 演出:園田誠 作画監督:榎本勝紀
★あらすじ

 釣りに出掛けたタギルたちは、サブマリモンを連れたトレジャーハンター兼デジモンハンターのミズキと出逢います。
 ミズキは沈没船に眠る財宝を目指していたのですが、近辺に根城をかまえるダゴモンに邪魔されていました。
 彼女の依頼を受け、少年ハンターたちは偶然出逢ったアイルと共に沈没船へ赴きます。

 果たして訪れた沈没船にはデジクォーツの入口があり、その先の洞窟に結界が張られていました。
 人間でなければ破れないその結界の先にいたのは、デジタマを護るプレシオモンでした。
 しかし、ダゴモンもまたその場に乱入してきます。ミズキを操り、結界を破るチャンスを狙っていたのでした。

 ダゴモンはさらにミズキへ命令し、デジタマを奪おうとします。必死で止めるタイキ。
 アイルの無謀な戦法でユウも足を挫いてしまい、タギルは強敵を前にアレスタードラモンとギガブレイクドラモンを
 クロスアップさせるのですが、強すぎるパワーで暴走をはじめてしまいました。
 しかし、タギルは咄嗟の機転でクロスアップアレスタードラモンを操縦。互角の戦いに持ち込みます。
 ミズキもタイキとプレシオモンのおかげで正気を取り戻し、クロスアップで援護。これにより、やっと勝利となりました。

 海の平和を愛するミズキはプレシオモンと別れ、海竜はふたたび静かなくらしへと戻ります。
 タギルたちはダゴモンのような凶悪なデジモンが現れたことや、全てを承知しているかのようにミズキへデバイスを与えた
 時計屋のおやじの動向に、一抹の不穏を感じ取るのでした。



★全体印象

 73話です。脚本は米村氏。氏は今週、プリキュアとハンターでも書いてたりします。仕事しすぎ。
 榎本氏の作画はもう一目で判別できるようになりました。演出の園田氏は、64話でも米村氏と組んでいます。

 今回は趣向を変えて、海のお話。
 加えて明確に悪意を抱いたダゴモンの登場など、今後の波乱を予感させるような仕込みも含まれた回ですね。
 結界を張ってまでプレシオモンが護ろうとしていた卵はいったい何なのか、結界は誰が張ったのかなど、
 謎も多く残りました。明かされるかどうかはわかりませんけど。

 瞬時にして終わる講習やらなぜか酸素ボンベもなしに行動するガムドラモンやら、
 ギガブレイクドラモンを活かしたのはいいとしてミズキとタイキのやり取りがまんまトキオの時の繰り返しだったり、
 ユウアイルの存在意義が不明だったり、細かいところではあいかわらず雑です。
 タギル・タイキ・ミズキだけで成立する話ですもの。頭数は多いほどいいと言ったのはミズキですし、その通りなのですが。

 それでもまあ、他の米村回の中ではかなりマシな方です。
 セリフに力が無い場合が多いのは、もはやお約束。三期になってからますますその傾向が強くなっています。
 やはり、演出や絵コンテでカバーしないと駄目なタイプですね。担当回にバラつきがあるのはそのへんが原因かも。
 もしくはPやSDの意向で主導するパターンですか。プリキュアはこの類ですかね。



★各キャラ&みどころ


・タギル


 ギガブレイクドラモンをうっかり出して暴走させてしまうも、そこからのリカバーが光りました。

 他の場面ではタイキに出番を吸い取られがちですが、その分かえってまともに動かさせてもらったという皮肉。
 迂闊な場面で目立つと途端にバカをやらされるからなぁ、米やんの場合……
 というか、ギガブレイクドラモンを出したこと自体がアレですね。すぐ取り返したからまだよかったけど。


・ガムドラモン→アレスタードラモン


 タギルのうっかりで暴走させられてしまいますが、どうにか挽回してパワー勝負に持ち込みました。
 …これも一応、暴走ネタに入るんでしょうか? ああ、ここで失敗をかまして…それで次回に繋がるんだな、とか
 深読みしていた瞬間が私にもありました。別に全然そんなことはなかったわけですが。
 次回で普通にそのことを引っ張ってたら、個人的にそれはそれで「え?」となるかもしれません。


・クロスアップ・アレスタードラモン

 ギガブレイクドラモンとクロスアップした姿。
 しかし制御不能のパワーはそのままだったようで、ガムドラモンと合体したまま暴走する羽目に陥ってしまいます。
 幸いなことにタギルがすぐ打開策を思いついてコントロールに回ったので、大事には至らずに済みました。
 とはいえ、さすがにもう滅多なことでは使われないでしょうね。

 ちょっと久し振りに合体形態オンリーの技も披露しました。インフィニティプリズムギャレットです。
 インフィニティボーリングのドリル全てがプリズムギャレットになる技で、さすがに元より数段強そうに見えました。

 
・タイキ


 ミズキとちょっぴりいい感じになった人。実際、お姉さんキラーではあると思います。アカリがあの場にいなくてよかった。
 その分、後半では操られたミズキにかかり切りとなってバトルに絡めていません。
 参加できない理由づけがあるだけ、だいぶ良い方ですけど。


・シャウトモン


 水中が舞台ということで、珍しくほぼ終始クロスアップしっぱなしでした。
 しかし上述の通り、タイキが手を離せない状態だったので超進化できないまま戦う羽目に陥っています。
 というか、バトルは実質タギルとミズキの二人で行ったようなものですね。


・チビカメモン


 めっちゃ久し振りに出ました。水中ときたら彼に出てもらわない手はありません。というか出てよかった。
 といっても大半はシャウトモンの潜水服扱いですが、一応単体での出番も少しあります。


・ユウ

 割と何のためにいたのかわからない人。バトルには参加すらしていません。
 強いて言うなら、アイルとの距離をより一層縮めるためでしょうか。ユウが彼女を助けたケースはこれで二度目です。
 というか、ダメモンは出てすらいないような気が……


・アイル

 たまたま居合わせた人。しかも保護者同伴。家族がえっらい地味な方々で逆にびっくりしました。
 時系列がさっぱりわからんのですが、彼女を含めていったいどのぐらいの間この海にいたのでしょうか。
 ダイビングの基礎を学ぶといったって、一時間やそこらじゃ無理な気がしますし…

 主人公チーム以外では、最も優遇されてるレギュラーにもなりつつありますね。
 これまでも今回も役に立たないどころか、逆にトラブルを増やしてしまう有様なのですが。
 重ねているのがユウとのフラグだけというのは、さすがにどうかと思われます。

 そもそも、回によってユウへの態度すら割と一定しません。
 デレてきたかと思えば今回はツンでしたし……性格上、気分で態度を変えるだけなのかもしれませんけど。
 その一方、ユウの足を応急処置するという意外な技術も見せています。手先が器用なのは罠だけじゃないようですね。


・オポッサモン→チョ・ハッカイモン

 ダメモンが出ない分をちょっとだけ補う形で出番がありました。
 が、アイルの指示で洞窟を崩し、顔を出したダゴモンを迎撃したのはいいものの、狭い中だったために
 パートナーであるアイルの身にまで危険が及び、ユウの負傷を誘発しています。
 この子もやる事なす事裏目というか、いいとこなしですね。


・ミズキ

 トレジャーハンター兼デジモンハンター。
 実際には本人が言っていた通り、海を掃除するボランティアといったところでしょうか。個人っぽいけど。
 拾い物の中に価値のあるものがあるといいなーという程度で、財宝そのものにはそれほど興味がない風情でした。

 ただし財宝を求める気持ちが全く無かったわけではないようで、ダゴモンに操られてしまったのは
 恐らくそこを衝かれてのことでしょう。結果的にダゴモンを先導してしまった形になります。
 さらにデジタマを奪う役目もやらされますが、これについてはタイキとプレシオモンに阻止されました。
 そのあとはサブマリモン、プレシオモンとともにタギル組の援護に廻っています。

 性格的には明るくさばけた気さくなお姉さんという感じ。
 たぶん年齢は20代前半。クロスローダー持ちとしては、時計屋の親父を除いて最年長の域でしょう。
 タイキを褒める場面では、大人の余裕を垣間見せていました。

 声を演じるのは雪野五月氏。確かこの人もデジモン初出演です。
 このミズキのように気っぷのいいお姉さんを演じることが多いのですが、気弱な役も大得意と広い芸風を誇ります。
 「フルメタル・パニック」のかなめや「ガイキング」のシズカ、「サイボーグ009」の003が個人的にオススメ。


・サブマリモン

 ミズキのパートナー。同時に皆さんご存知の通り、かつては伊織のパートナーデジモンでした。
 水中に特化し、他の生き物と連携を取るための気密空間まで獲得した興味深い存在であり、その天然潜水艦っぷりは
 ミズキを乗せて潜行する姿から今回も遺憾なく発揮されています。これで生物なんだぜ。

 性格的にはミズキの弟分という感じで、言葉遣いもアルマジモンというよりゴマモンを思い出させます。
 ただし、尺の都合もあってミズキとどのように出逢ったのかは華麗に省略されました。
 最も自然な解釈は、時計屋のおやじが紹介したケースです。というより、それ以外にはちと考えにくい。

 中の人は日比愛子氏。モブ役や一回限りのゲストが持ち役のほとんどを占めています。これからの活躍に期待。
 でも、こういう人たちが売れっ子を支えているのでしょう。


・プレシオモン

 幻と呼ばれる海竜デジモン。テイマーズに一回出てますが、まともに喋ったのは確かシリーズ初です。
 物言いや卵を守っていたところからみて、恐らくメス寄りの個体。少なくともイメージは完全にメスです。
 徹頭徹尾穏やかな口ぶりで、かなりの長い期間を生きて来た存在であることを匂わせていますね。

 ダゴモンとはどうやら敵対する間柄のようで、結界を張って卵を守っていました。
 この結界を誰が張ったかで、今後に関わるお話なのかそうじゃないのかがわかるような気がします。
 単純にオス寄りの個体がもう一匹いて、ダゴモンとの戦いでやられる前に結界を張って妻子を隠したとか?
 それとも別の何者かが卵を重要なものとみなし、結界を張ってガードしていたとか?

 もっとも、あの卵はプレシオモンにとっては確かに大切なものでしょうけれど、縦軸に関わるかと言うと
 だいぶ怪しい気がします。単に大事な卵だから護っていたとか、そんなオチじゃないでしょうか。
 そもそも私のほうが深読みをしすぎているんじゃないかと思えてきました。

 中の人は渡辺美佐氏。「ワンピース」でビビを演じていたこともありますが、最近は大人の女性もよく演じています。
 悪女をやらせても上手いですし、何より貫禄がありますね。
 そして、この人もデジモン初出演。今回のゲストはなんと全員が初出演ということになりました。


・クロスアップ・サブマリモン

 サブマリモンとプレシオモンがデジクロスした姿。
 プレシオモンのシンプルな姿にサブマリモンがちょうど鎧のように重なり、なんだかわからんけど無駄に強そうです。
 クロスアップ・アレスタードラモンとがっぷり四つになっていたダゴモンを背後から狙い撃ち、勝利の一翼を担いました。
 ちょっぴり卑怯な気がしますが、この際贅沢は言えません。

 必殺技はオキシジェンソローブルー。
 クロスアップ・アレスタードラモン同様、技名をくっつけただけです。サガフロンティアか君らは。


・ダゴモン

 海底の破戒僧だとか、邪神だとか深きものとかあれこれ言われすぎな人。
 そんな巷の評判を受けてというわけではないのでしょうが、今期始まって以来のガチな悪役として登場しました。
 プレシオモンの卵を執念深く狙い、周囲を通る船はすべて排除していたようです。これは放っておけない。
 ある意味では最もモンスターらしいデジモンのひとりと評してもよいのですが。

 実力は極めて高いものがあり、体格もアレスタードラモンたちの数倍はあるため、真正面からでは厳しい戦い。
 ギガブレイクドラモンとのクロスアップでようやく互角に持ち込めるあたり、パワーの高さが窺えます。
 プレシオモンとその卵をぶっちゃけ食うと宣っていたように、数多くのデジモンたちを取り込んできたのでしょうか。
 悪知恵も大変はたらき、ミズキを操って結界に穴を開けさせ、破壊に至らしめる狡猾さを示しています
 (もっとも、事情をよく知らないタギルたちなら放っといても結界を開いた可能性は高いのですが……)。

 最後はそのプレシオモンとサブマリモンのクロスアップ体に狙い撃たれ、怯んだところを
 インフィニティ・プリズムギャレットでKOされ、捕獲に至っています。逆に言えば、やっと捕獲できました。
 恐らく「時ハン」では過去最強クラスの悪行デジモンでしょう。次のルークチェスモンはもっと強そうですが。

 中の人は飯塚昭三氏。言わずと知れたキング・オブ・悪の首領です。
 意外な話ですが、なんとこの人もデジモン初出演なんですよね。そして、一発屋にはもったいないぐらいの大物。
 一昔であれば、皇帝バグラモンを演っていても全然おかしくないほどの人です。
 悪としてのみ描かれてきたダゴモンには、確かにハマリ役ですけれど。



★名(迷)セリフ

「そうだ、制御できないなら……! オレが操縦してやるっ!」(タギル)

 今回もあまりいいセリフは無いのですが、演出も加味してこちらが滑り込みました。
 受け身を取れずに転んでも、涙目で立ち上がってまた走り出すのがタギル流。この場面ではそれがうまく出ています。



★次回予告

 暗く滲んだような画面がやたらと印象的です。
 噂のアレがどのように姿を現すのかも楽しみ。激闘になりそうですね。