大橋特許事務所

       弁理士 大橋公治

当事務所は、品川区と大田区との区境に近い、JR大森駅から徒歩2〜3分の場所にあります。

・ 新しく開発した製品や製法に含まれるアイデア
・ 消費者の目を惹くように工夫したデザイン
・ 商品やサービスの品質を保証するトレードマーク

これらの知的財産を特許権、実用新案権、意匠権あるいは商標権として権利化し、他人が真似するのを防ぎ、また、これらの知的財産を経営資源として積極的に活用しようとお考えの方は、どうぞご相談下さい。
お手伝い致します。

  • 話題(切餅判決)

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  • 切餅判決

     (東京地裁判決)

    切餅の特許侵害を争う裁判の判決言渡しが平成22年11月に東京地裁でありました(平成21年(ワ)第7718号特許権侵害差止等請求事件、平成22年11月30日判決言渡)。

    この特許は、方形の切餅が均一に焼き上がるように、その側面に溝を設けたもので、特許請求の範囲には「・・・切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,・・・一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、・・・」と記載されています。

    原告(特許権者)は、「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく」とは、切り込みを設ける切餅の部位が「側周表面」であることを明確にするための「側周表面」の修飾語であり、「載置底面」や「平坦上面」に切り込みを設けない意味ではないとして、「側周表面及び平坦上面」に切り込みが設けられた被告の切餅が特許権を侵害していると主張しました。

    一方、被告は、「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく」とは、「載置底面」や「平坦上面」に切り込みを設けずに「側周表面のみ」に切り込みを設ける意味であり、被告の切餅は、「側周表面」だけでなく「平坦上面」にも切り込みを有しているので、特許権には抵触しないと主張しました。

    裁判所は「仮に切り込み部等を設ける切餅の部位が『載置底面又は平坦上面』とは異なる『側周表面』であることを特定することのみを表現するのであれば,『載置底面又は平坦上面ではない・・・側周表面』などの表現をするのが適切であることに照らすならば,原告が主張する構成要件Bの記載形式のみから,『載置底面又は平坦上面ではなく』との文言が『側周表面』を修飾する記載にすぎないと断ずることはできない」と判示し、また、明細書の記載や出願の経緯などを見ても原告の主張を根拠付けるものは無いとして、原告の請求を棄却しました。

    原告(特許権者)は、この地裁判決を不服として控訴しました。


     (知財高裁判決)

    この控訴審に対する知財高裁の中間判決が平成23年9月に言い渡されました(平成23年(ネ)第10002号 特許権侵害差止等請求控訴事件、平成23年9月7日 判決言渡)。

    この中間判決の中で、裁判所は「『載置底面又は平坦上面ではなく』との記載部分の直後に,『この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に』との記載部分が,読点が付されることなく続いているので,そのような構文に照らすならば,『載置底面又は平坦上面ではなく』との記載部分は,その直後の『この小片餅体の上側表面部の立直側面である』との記載部分とともに,『側周表面』を修飾しているものと理解するのが自然である。」と判示し、明細書の記載や出願の経緯などを見ても「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は,「側周表面」を特定するための記載であり,載置底面又は平坦上面に切り込み部等を設けることを除外する意味ではない、として、第1審とは逆に、原告(特許権>者)側を勝訴させています。

    このように「載置底面又は平坦上面ではなく」との文言をめぐって、第1審及び第2審の判断が逆転したことは、こうした表現を特許請求の範囲で用いる場合に、内容が曖昧にならないように十分に注意を払う必要があることを物語っています。

    特許電子図書館(IPDL)の公報テキスト検索で、特許請求の範囲に「ではなく」や「では無く」と言う表現が含まれる公開公報を検索すると約14,500件が存在します。この内、読点が続く「ではなく、」及び「では無く、」が約9,300件、読点が無い「ではなく」及び「では無く」が約5,200件あります。

    また、特許公報(公告・特許)を対象に検索すると、特許請求の範囲に、読点が無い「ではなく」及び「では無く」の表現を含む特許が約1,600件あります。

    そのため、他人の特許の請求の範囲に「Aではなく」と記載されているから「A」を実施しても権利侵害にならない、と単純に考えると、痛い目に合うかも知れないことを知財高裁の判決は示しています。

    特に、近年の実務では、特許請求の範囲を減縮する補正を行う場合に、将来の分割出願等を考慮して、請求の範囲から外れる実施例であっても明細書に残して置く事例が増えているため、明細書の記載と特許請求の範囲とが整合しないことがあります。

    それ故、紛れが生じないように特許請求の範囲を記載する必要性は、さらに増していると言えます。


    経歴

    昭和40年 特許庁入庁、 特許・実用新案の審査官、審判官、審査長、審判長を歴任
    平成 3年 特許庁を辞し、弁理士登録
    平成17年 特定侵害訴訟代理業務付記登録
    平成21年 OTTON知財事務所のメンバーに加わる
    特に、大学や中小企業の知的財産を守る活動に力を入れています。


    技術分野

    電気材料、半導体、電気部品、移動体通信、アンテナ、AV機器、デジタルデータ処理、電力供給システム、超伝導、超音波技術、光学、レーザ、軸受、マニュピレータ、計測器、熱電変換、電気自動車給電、自動二輪車、ETC関連技術、医療機器、土木機械、ビジネス特許、介護製品、ペット用品、その他諸々


    連絡先

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