はみパロ6『親子〜その始まり』

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[1]

昨日までの雨もあがり、青空が広がっていた。
心地よい風も吹き、道行く人々もどこか晴れ晴れとした表情を浮かべている。

兵吾は口笛を吹きながら、軽やかな足取りで歩いていく。

「こんにちは。」

兵吾に声をかけられた川村真弓は、相手が兵吾だとわかるといつも仕事で見せる笑顔以上の笑顔になった。

「高見さん。こんにちわぁ。」
「最近仕事が忙しくって来れなくってさ…」
「そうですよぉー。全然顔見せてくれないから、心配してたんですよ。」
「あはは、ゴメン、ゴメン。」
「謝るんなら私にじゃなくって…」

と、そこに兵吾の姿を見つけたタケルの声が響いた。

「ひょうごー!」

タケルは兵吾めがけて走ってきた。そんなタケルを兵吾は軽々と抱き上げる。

「お!タケル、元気だったか?」
「うん。兵吾、今日はどうしたの?」
「んー、今日はな、仕事が早く終わったからな。」
「今日は、もう、おしごと無いの?」
「ああ。だからいっぱい遊べるぞ〜。」
「ほんと?ホントにホント?」
「ああ。」
「わーい。」

タケルは兵吾の首にしがみつく。

「おいおい、苦しいよ。それにしてもお前、重くなったなぁ。」
「だってもう小2だし、それに背もちょっと伸びたんだよ。」
「そっかぁ。」

タケルと顔を突き合わせて兵吾はニコニコしながら話していた。
そんな2人を真弓も微笑んで見つめている。

「…そうしているとまるで親子ですね。」
「え?そう見える?そんなこと聞いたら、タケルの親父さん、悔しがるだろうなぁー。」
「『なぁー』」

兵吾の口調を真似たタケルがおかしくって、兵吾も真弓も笑い出す。

「タケルの親父さんには断ったんで、タケル連れて帰っていいですかね?」
「はい、どうぞ。ちょうど学童保育の時間も終わりますから。」
「よーし、タケル。帰るぞ。荷物取ってこい。」
「うん。」

タケルは教室に慌てて駆け戻り、帰り支度をして出てきた。
兵吾と手をつなぎ、真弓にニコニコと手を振りながら門を出て行こうとしたその時、
表の通りを主婦らしき女性が通りかかった。

その人を見るとタケルの体は強張り、立ち止まってしまった。
今度は反対方向からスーツを着たOLらしき女性がきびきびと歩いてくる。
更にその人に気付くとタケルはもっと緊張して、兵吾の後ろに隠れてしまった。
そして、通りを見ないように下を向いてしまっている。
そんなタケルの様子を見て、兵吾と真弓は顔を見合わせた。2人とも困惑した顔をしている。

表の人通りが途絶えたのを確認して、兵吾はタケルの前にしゃがんで話し掛けた。

「…タケル、帰ろっか?」

先ほどまでの元気はどこに行ってしまったのか、タケルは兵吾を見つめてただ無言で頷いた。

兵吾に手を引かれ、真弓に元気なく手を振り、タケルは帰っていった。

(…まだまだタケルくんの心の傷は癒えていないのね…)

真弓は帰っていく2人の背中を見送りながら心の中でつぶやいた。

 

ずーっと考えてたネタなんですが、まだイマイチ全体像ができてないんです…(^_^;)。
なので、なかなか進まないと思います。
でもとりあえず書き始めないと頭の中でも話が進んでいかない気がして。

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[2]

香坂健一は仕事を終え、自分の住むアパートへと帰ってきた。
扉を開けると部屋の中からは食べ物のいい匂いが漂ってきた。

「おとうさん、お帰りなさい。」
「ただいま。」
「お疲れ様です。勝手にお邪魔してます。」

タケルが健一を出迎え、入口のすぐ脇にある台所から兵吾が声をかける。
兵吾はカレーを作っている途中だった。

「高見、悪いな。メシまで作ってもらって。」
「作るっていってもそんなたいしたことできませんから。それにタケルも手伝ってくれたんですよ。な?」
「うん。」
「お、そうか。えらいな、タケル。」


健一と兵吾は同じ大学の先輩と後輩であった。そして健一もまた刑事であった。
今まで同じ署にもなったことがなく、仕事の上では直接の接点はなかったが、
兵吾にとっては良き相談相手であった。特に新人の頃はよくグチを聞いてもらったものだった。


食事を終え、風呂にも入り終わったタケルは隣室でぐっすりと眠ってしまった。
健一と兵吾は漬物を肴にビールを酌み交わしている。

「ほんとな、高見には感謝してるんだ。」
「なんですか、急に。」
「タケルのことだよ。…あいつ、お前にはよくなついてるし。こうしてお前も気にかけてくれるしな。」
「俺、タケルのこと可愛いですから。」
「…アイツがいなくなって、タケルが自分の殻に閉じこもっちまった時、正直俺1人ではどうしていいかわからなかったよ。そんな時、お前が一緒になってタケルの世話焼いてくれたのは本当に助かった。」
「そんな、俺なんかたまにしか顔出せないし。先輩はがんばってますよ。仕事も、タケルのことも。」
「タケルがあんな状態になってな、俺は刑事辞めることも考えた。でも、その時『もうちょっと頑張ってみましょうよ!俺も手伝いますから!』ってお前が言ってくれただろ?あれでさ、俺ももう少し踏ん張ってみようかって気になったんだ。」
「俺もたまにはいいこと言うんですよ(笑)。」
「たまにな(笑)。」
「あ、ひっでーな(苦笑)。でも、俺だけじゃないですよ。児童館の真弓先生。彼女がいなかったら、タケルはここまで回復しなかったかもしれないですよ。」
「ああ。なんでかわからないがタケルのやつ、真弓先生には心を開いてるからな。先生の方でも色々と努力してくれたんだと思うけど。」
「先生に聞くと『私なんてなーんにもしてないですよ』ってニコニコ笑うんだけど、俺はあの笑顔がタケルの心を溶かしたんじゃないかって思うんですよね。」
「なんだ高見、惚れたか?」
「そんなんじゃないですよ(苦笑)。でもホント、いい笑顔だと思うんですよ。」
「…タケルが心を許せる相手が俺以外にも、高見と先生って増えただろ。それで俺は安心したんだよ。少しずつでもこうやって広がっていけばな、って。」
「焦っちゃだめですよ。今はなんとかクラスメートや学校の先生とはいくらか話せるようになったじゃないですか。」
「ああ。だけどな、見ず知らずの大人の女の人はやっぱりダメみたいなんだよな。緊張しちまうらしい。」
「…少しずつ、少しずつですよ。」
「そうだな。」
「それにしても…」
「ん?」
「真弓先生だって大人の女性なのに、タケルのやつはなんで最初っからOKだったんでしょうかねぇ?」
「そう言われりゃ、そうだな。…タケルから見ると、先生は大人には見えなかったってことか?」
「それ、真弓先生が聞いたら怒りますよ(笑)。」
「お前、黙ってろよ(笑)。」

「ま、もともとタケルは家族以外の人と接する機会が少なすぎたんですよ。徐々に慣れていけば大丈夫ですよ。俺も顔を出せそうな時は来るようにしますから。」
「よろしく頼むな。タケルのやつ、お前が来るとほんと嬉しそうなんだよな。…でも広域も忙しいんだろ?」
「ま、ぼちぼちですよ。そんなこと言ったら、先輩のトコだって忙しいんじゃ?」
「まあまあだな。最近新しく調べた始めたこともあるし…。タケルにはすまないと思ってるんだが…。」
「タケルは刑事としてがんばってる父親のこと尊敬してますから、大丈夫ですよ。」
「え!?そんなこと言ってたのか、タケルのやつ。」
「『お父さんの帰りが遅くて寂しいか?』って聞いたら『ううん。だって悪いやつを捕まえるお父さんはかっこいいもん。』だって。愛されてますよ、お父さん!」
「からかうなよ〜(照)。そういう高見はどうなんだ、最近はみゆきちゃんとは?」
「聞いて下さいよぉー!みゆきのやつ最近大人びちゃって、あんまり俺と遊んでくれないんですよぉ。」
「遊ぶって…、みゆきちゃんだって高校生だろ?お前のはちょっと異常なんだよ(苦笑)。」
「なんですか、異常って!だって、やっとみゆきが留学から帰ってきたんですよ。みゆきのいない間、俺がどんなに寂しかったか…わかってるんですか!もっとベタベタしたいですよ!」
「あー、わかった、わかった(苦笑)。あんまり大きな声だすなよ、タケルが起きちゃうだろ?(笑)お前の気持ちもわからんでもないがなぁ、相手は女子高生だぞ。世間一般の女子高生はそんなに父親とベタベタしてないぞ。逆に敬遠するもんだ。『お父さんなんて、キライ!』ってなもんだぞ。」
「みゆきがそんなこと言うわけないじゃないですか!!」
「あぁー、わかった!ほんと、お前はみゆきちゃんのことになるとうるさいなぁ…(苦笑)」

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[3]

広域の部屋。
先月より同一犯と思われる連続強盗事件が起きていた。
広域にも応援要請があり、捜査に関わることになった。
玲子から各自に指示が出され、みんな部屋を飛び出していく。
同じ様に捜査に出かけようとする兵吾を玲子が呼び止めた。

「高見さん。」
「?」
「あのね、食事、みゆきが都合悪いって。もうすぐ模試があるのよ。」
「そうか。それじゃあ仕方ないな。残念だけど…」
「みゆきも、『ごめん』って言ってた。」
「わかってる。…あとで、みゆきにテストがんばれって電話してみるよ。」
「そうしてやって。あの子、喜ぶわ。」

兵吾は玲子に頷くと、部屋を出て行った。
その姿を見送った玲子は深いため息をつきながら、椅子に座り直した。
正美がちらっと玲子を見るが、玲子は考え事をしていてそれにまったく気付かない。

みゆきが兵吾との食事会を断った理由は、テストのせいばかりではなかった。

昨夜。

居間のソファでくつろぐ玲子とみゆき。

「…そう。食事会やめるのね。そうね、テストも近いしね。」
「うん…。」
「何?どうしたの?」
「…」
「こーら!隠し事はなしでしょう?」
「別に、隠し事なんかじゃないよ。…ただね、考えが上手くまとまらなくて…」
「なあに?いいよ。みゆきが思っていること、思いつくまま母さんに言ってみて。母さん、ちゃんと聞くから。」
「…あのね、……」

みゆきは今の気持ちを正直に玲子に話し始めた。

カナダに留学して、長い間玲子と兵吾から離れて暮らしてみて、
2人がみゆきにとってかけがえのない家族なんだ、と改めて感じることができた。
留学中はやっぱりどこか寂しかったし、帰国してからは3人で過ごす時間がとても楽しかった。
でもある時、みゆきはふっと考えてしまった。
もし、私がいなくなったら、お父さんとお母さんはどうなるんだろうか、と。

今の兵吾はみゆきのことをベタ可愛がりしてくれる。それは他人が見てもそう見えたし、みゆき自身も感じていた。まるで3歳からの10年間を埋めるかのように。兵吾の愛情は今みゆきにすべて注がれている。何をするにもみゆきのことを1番に考えてくれている。そのことはみゆきにとってもとても嬉しかった。幼い頃より夢見ていた父親の愛情を一身に受けとめられるのだ。
でも…。もし自分が結婚でもしていなくなったら、その時、兵吾くんはどうするんだろうか?

それは玲子に対しても思っていた。
兵吾と離婚した後は女手ひとつで苦労してみゆきを育ててくれた。ずーっと深い愛情でみゆきを包んでくれている。では、もし、自分がいなくなったら、玲子はどうするのだろうか?、と。

親離れ・子離れをするほど、3人でべったりと多くの時間を過ごしてきた訳ではない(現に兵吾はこれからそういう時間を多く過ごしたいと思っているようだ)。でも、お互いに離れた後のことを考えるべきなのではないか、と。兵吾自身の人生、玲子自身の人生が幸せなものとなりますように。今が”親子”という、落ち着いて安心できる良い関係であるだけに、みゆき自身にとってもとても居心地の良いその関係がずっと続けばいいと思っている。だけど。ずっと続くなんてことは有り得ないということをみゆきはわかっていた。
自分自身も大人になろうとしている。3人の関係も”大人に”しなければいけないんじゃないか…。

こういったことをみゆきは考えていた。でもまだ上手く言葉にできないでいた。
中途半端に言葉にしたら兵吾を傷つけることになってしまいそうで怖いし、
それに頭ではこんな風に色々と考えるけれども、
気持ち的にはどこかで今の関係をできるだけ壊したくないという思いもある。
受験勉強もしなくちゃいけないし、考えはなかなかまとまらない。

みゆきはとにかく思っていることを全部玲子に話してみた。

「そっか。偉いね、みゆきは。それにありがとね。父さんと、母さんのこと、ちゃんと考えてくれて。
 母さんね、とっても嬉しい。」
「ほんと?」
「もちろん。みゆきも大人になったんだなぁ、って思うよ。ちょっと寂しいけどね。」
「お母さん…」
「母さんも考えてみる。高見さんにも、時期を見て、母さんから話して見る。
 確かに今の高見さんはあなたを猫かわいがりしてるだけだもん(笑)。」
「あ、でもね。別にそれが嫌なわけじゃないの。それはそれでとっても嬉しいの。」
「うん。」
「それにね、今すぐどうこうしたいって思ってるわけじゃないし…」
「わかった。…とにかくね、父さんと母さんは自分たちのこと、自分で考えるから。
 だから、みゆきは、自分のことだけを考えて。それだけでいいから。」
「はい。」

玲子は大人びた考えを持つようになったみゆきが嬉しくもあり、寂しくもあり、みゆきのことを抱き締めた。

「お母さん?」
「…なんでもない。」
「…あのね、考えがまとまらないうちに兵吾くんに会ってもね、なんか逆に心配かけちゃいそうで。
 だからね、食事会、キャンセルしたいんだ。」
「…高見さんには、まだ何も言わないでおくね。」

 

えーっと、時期的には、武田くんの出てこないパート6ぐらい、かなぁ。
5.5 ぐらいに思って読んでてください(^^ゞ

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[4]

とある酒場。
薄暗い店内には音楽が大音量で流れ、若い年齢層の客たちは、音に負けじと大きな声で話している。

その客の中に遠藤と中島はいた。2人とも浮かれ気味に機嫌よく酒を飲んでいる。
この2人が、今兵吾たちの追っている強盗事件の犯人だった。

彼らの手口は覆面をした黒づくめの格好で、ナイフなどで店員を脅して金を巻き上げる、という
至ってシンプルで古典的な方法だった。ある意味幸運だったのだろう。
今まで捕まらずに6件ほどの事件を起こしている。
従って1回の強盗でそれほどの大金は手に入らない。
が、彼らにとって強盗は、暇つぶしの、スリルを味わう”ゲーム”なので、金額にはこだわっていなかった。
また、強奪したお金もこうして酒場などで使ったりと、目立った豪遊をしている訳でない。
こうした点でも警察の捜査にひっかかりづらくなっていた。

そんな2人に1人の男が近づいた。

「よぉ。」
「あ、先輩。お久しぶりです。」

2人がぺこりとお辞儀をした。男は当然のように2人のテーブルにつく。
男の風体は見るからにカタギではなかった。
2人の中学の先輩にあたるその男は、今は北竜会という広域暴力団に属していた。

「お前ら、なんかゲームやってるんだって?聞いたぜ。」
「まあ。暇つぶしっすよ。」
「気をつけてやれよ。」
「へへへ。」
「ところで、そのゲームに、俺も協力したいんだが。」
「協力って?」
「…実はな、これなんだ。」

そう言って男は、懐から茶封筒を取り出してテーブルの上に置いた。ゴトリ。重そうな音がする。

「これは…」
「ああ。俺が今ある人から預かってるモノなんだが、ただ預かってるだけっていうのもな?(笑)
 だから。お前たちに貸してやろうかと思ってさ。」
「え?…でも、俺たち…」

そう言われて2人はさすがに尻ごみをした。
拳銃である。悪いことは色々してきたが、まだ拳銃なんて触ったこともなければ、もちろん撃ったこともない。

「ばーか(笑)。何も本当に使えって言ってるんじゃねぇよ。脅しに使うんだよ。
 これならどんな店でも一発だろ?な?」
「そりゃあ、まあ…」「…でも、大事な預かりものなんじゃないんですか?」
「だからさっきも言ったろ。ただ遊ばせとくのも勿体ねぇじゃねぇか。
 もちろんいくらお前たちだからってタダじゃ貸さないぜ。貸し賃は成果の1割。どうだ?」

2人は手数料を取るという話にどこかほっとした。
いくらなんでもタダで貸してやるというのでは、何か裏があるのではないかと疑いたくなる。
手数料を取るという話であれば、男も自分たちを上手く使って楽な小遣い稼ぎをしたいのであろうと
考えをめぐらせ、その気になってきた。

「どうだ?借りるのか?借りないのか?」
「…借ります。」
「よーし、商談成立だ。乾杯しようぜ。」

男は2人にビールをおごり一杯飲むと、茶封筒をそこに置いて店を後にした。

店の外にでると、男は携帯電話をかけた。

「あ、俺です。上手くいきました。」

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[5]

広域の外のソファ。
捜査から戻ってきた兵吾がタバコを吸ってひと休みしている。

「兵吾ちゃん、捜査の方、行き詰まってるんだって?」

菊枝がやってきて、兵吾の隣に座る。

「ああ。これといった手がかりがないんだよ。
 凶器もよくあるナイフやスパナだし、目撃されている逃走車両もまだナンバーの特定はできてないし。」
「そう…。それはそうと、最近みゆきちゃんとはどうなの?上手くいってるの?」
「なんだよ、いきなり。そりゃあ上手くいってますよ。
 …でも、ほら、最近みゆきも受験生だし、勉強の邪魔しちゃいけないから、ね…。」
「ふーん、あんまり会ってないんだ。」
「ま、そういうこと。寂しいけどさ、みゆきが頑張ってる訳だし、俺が我慢しないと。」
「じゃあ、課長さんとはどうなの?2人で出かけたりとかしてないの?」
「なんで、急に玲子の話がでてくるの!
 …みゆきが家で1人で勉強してるのに、玲子だけ食事に誘うのも変でしょ?」
「別に変じゃないわよ。色々と元夫婦、みゆきちゃんの親として、2人だけで話すこともあるでしょ?」
「べ、、べ、別にぃ。そりゃあ、残業で遅くなった時とか、ラーメンでもどうか、とか誘うこともあるけどさ…」
「断られるの?」
「(黙って頷く)。みゆきが家で待ってるから、て言うしさ。」
「兵吾ちゃん、あんた、みゆきちゃんにも課長さんにも、避けられてるんじゃないの?」
「な、何を言い出すの!菊チャン!!そんなことある訳ないでしょ!!!」
「なーんか、知らないうちに、2人を怒らせるようなことでもしたんじゃないの?」
「そんなこと…!菊チャンじゃないんだから、そんなことある訳ないでしょ!まったく…」

兵吾は呆れたように言うと、その場に菊枝を残して立ち去った。

「なによぉー、あたしは心配してるのよ、あんた達家族のことを。…ま、楽しんでる部分もあるけどさ(ニヤリ)。」

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