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2005.12. 1.Up Dated.
耐震強度不足の建物について
  
千葉の設計事務所の構造計算偽造問題が更に広がりを見せて、デペロッパー・建設業界を震撼させています。
今回のケースは、何よりも構造を担当した姉歯設計事務所の責任が重いのですが、元々、建物の品質は誰が責任を負うのかという点が今一つクリアーになっていません。
今回のケースのように鉄筋量を大幅に減らした場合、施工する側(建設会社)は工事を行う時点で気がつくはずですし、まして分譲マンションであれば、10年間の保証が付いていますので、施工会社がこのような工事を唯々諾々として行う事自体疑問があります。
私が、かつてマンションの施主として仕事をしていた時に、ゼネコンの現場主任に「設計上のミスにより建物の品質が落ちた場合、誰の責任を追求すれば良いか」と質問したことがあります。
答えは、「設計事務所の責任もありますが、施工者にも同等の責任があるというのがこの業界の考え方です」と教えて貰いました。
この考え方は、施工会社・設計事務所・施主の作る側での責任の所在ですが、完成建物を他に譲渡した場合は、当然ながら施主(売主)に第一義的責任があります。
従って、分譲マンション等では施主(売主)がエンドユーザーに対して責任を負いますので、建物の品質維持は重要な問題となります。
そこで、施主は建築現場に足繁く通い、毎週の現場定例会に出席して工事の進捗状況等の報告を受けるようにします。
このように書くと当然のように思われる方も多いと思いますが、大抵、建築現場は会社から離れた場所にありますから、午後の3時頃に会社を出て、現場を見てから、夕方からの現場定例会議に出席します。会議は2時間ぐらい続きますから、終ってから帰宅すると当然深夜に及びますし、近隣住民の方との話し合いがあれば、翌日になる事もしばしばです。
こういう状態が1年間ぐらい続いて、ようやく建物が竣工すると、さすがにほっとしますが、こういう仕事は単に施主の責任だからというよりは、自分の関わった建物に対する思い入れがあるからです。
建物は、後々まで残り、そこに人が棲み人生の拠点として使われる訳ですから、恥ずかしいものは作りたくないという気持がなければ勤まりません。又、こうして現場を見る事で多くの実務知識を得ますし、熱心に通えば現場主任も色々な事を教えてくれます。
実際に、工事のチェックポイント等も現場主任から教えてもらったり、どこに問題が発生しそうか等も示唆してくれました。
こういう関係になれば、少なくとも、今回のケースのような建物が出来るはずもありませんが、最近のデペロッパー業界は分業化が進み、又、売上重視ですので、こういう手間の掛かる仕事が出来る環境にはなさそうです。
今回のケースではデペロッパー業界からのコメントが少ないようですが、エンドユーザーに対して責任を負っている売主として、建物工事にどのように関わっていたのかが最も知りたい点です。
例えば、エンドユーザーからの信頼の厚い大手デペロッパーが実際にどのような手順で建築工事のチェックを行っているのか、果たして設計事務所任せなのかという事も知りたい所です。
最高益を更新している不動産業界が、物作りの原点と責任に対してどのようなコストと労力を掛けているのかが、今回の問題の本質のような気がします。